ボリビア内政・外交(8月)

令和3年9月9日

1 内政

(1)独立記念日における大統領演説

8月6日,ボリビア独立記念日(196周年)に際して挙行された国会名誉セッションにおいて,アルセ大統領は約一時間演説した。
 演説の前半は,モラレス政権の功績を述べ,アニェス暫定政権について批判し,中盤は,アニェス暫定政権関係者への訴追及び同政権がもたらした経済危機について語った。最後に,アルセ政権による経済回復政策,パンデミック対策及び今後の大規模プロジェクトについて述べ,最後に200周年へ向けて,国民の団結を呼びかけた。
 

(2)EUによる抗議声明

8月5日,在ボリビアEU代表部は,ボリビアにおけるクーデタにEUが荷担していたという与党MAS党及びMAS関係機関からの非難に対する抗議の宣言を発表した。
 

(3)2019年10月選挙の不正を巡る調査の終了

2021年4月から6月にかけて,サラマンカ大学BISISTE研究所によって実施された,2019年10月20日選挙のデータ(出典:ボリビア選挙管理委員会)解析において,「選挙プロセスにおける操作は存在しない」という結論が出た。
 これを受け,7月28日,国家検察庁は,2019年10月20日選挙にかかる選挙不正調査委員会による調査の終了を発表した
 これに対し,米州機構(OAS)民主主義強化事務局は「ボリビア政府が,選挙不正に関する調査を終了したきっかけとなったBISITE研究所による調査には欠陥と誤りがある。右調査が,集計プロセスに情報技術的問題があったことを断定した点は評価できる。それにも関わらず,『不正は無かった』という結論に至ったのは矛盾であり,遺憾である」旨述べた。
また,検察庁のエドウィン・キスペ(Edwin Quispe)事務局長は,選挙不正事件が解決されたことを確認し,OAS民主主義強化事務局の報告書は証拠を提供するだけであり,拘束力はない旨説明した。
 

(4)アニェス前暫定大統領の状況等

 8月3日,ラパス県第8裁判所は,現在予防拘禁されているアニェス前暫定大統領に対して,新たに「憲法及び法律違反」の容疑により6ヶ月の予防拘禁を認めた。これにより,3月14日に下ったクーデタ容疑にかかる予防拘禁(当初4ヶ月,後に6ヶ月に延長,往電第464号参照)とは別に,2022年2月3日までの予防拘禁措置が適用されることとなった。
 8月21日,アニェス前暫定大統領の弁護士によれば,7時40分頃,同前暫定大統領は,自らの左手首から前腕をクリップのようなもので傷つける自傷行為を行った。
 これを受け,国際機関や各人権団体は,同前暫定大統領の人権を遵守するよう求める旨の声明等発出している。
 一方,同21日,ランチパ国家検察庁長官は,サカバ及びセンカタにおける虐殺(Genocidio)の容疑(30年までの禁固)で,アニェス前暫定大統領に対する告訴状を最高裁判所(TSJ)に提出した旨発表した。
 TSJは,責任追及(弾劾)裁判実施のプロセスを進めるためには,当該告訴状を可及的速やかに国会に送致することとなる。
 

(5)米州人権委員会GIEIによる2019年政治紛争にかかる調査報告書

8月17日,ボリビア政府は,米州人権委員会(CIDH)学際的独立専門グループ(GIEI)による「ボリビアの2019年の政治紛争中に発生した暴力事案に関する調査報告書」を公表した。右報告書は,人権の観点から,モラレス政権及びアニェス暫定政権の人権侵害時効について調査,分析及び提言した
 

2 外交

(1)               大統領の無限再選に関する米州人権裁判所の回答

 8月12日,米州人権裁判所(Corte IDH)は,「大統領の無限再選が人権であるか否か」に関する回答を公表し,大統領の無限再選を人権ではないと結論づけた。
2019年5月23日,キロガ元大統領は,ドゥケ・コロンビア大統領と会合し,当時のモラレス大統領の再立候補の権利が人権に該当するか否かについて,米州人権裁判所に照会(Consulta)することを働きかけた。ドゥケ大統領は,右を受け入れ,米州人権裁判所に対して,(1)大統領の無限再選は人権であるか否か,(2)大統領の無限再選に制限をかけることは,政治的権利の制限として米州人権規約に反するか否かについて照会していた。
 

(2)気候変動枠組条約第26回締約国会合(COP26)議長のボリビア訪問

8月2日からアロック・シャルマ国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)議長がボリビアを訪問した。アロック・シャルマ国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)議長がサンタクルスに到着し,ママニ外務次官らの出迎えを受けた。
これを受け,アルセ大統領は「COP26議長との会談において,気候危機の解決をもたらす政策へのボリビアのコミットメントを繰り返す。地球の利益のために,このイニシアティブを主導する議長の約束に敬意を表する。」旨述べた。
 

(3)アルマグロ米州機構事務総長に対する批判

8月25日に開催された米州機構(OAS)常設理事会臨時総会において、マイタ外相及びリマ法相は、先般のOASによる2019年大統領選挙にかかる見解の一方的な公表を内政干渉であるとして、アルマグロOAS事務総長を激しく批判した。
 

3 コロナワクチン関係

 2日及び6日,シノファームが50万ドーズずつ到着。
 13日,アストラゼネカ製ワクチンが15.3万ドーズ到着(COVAXを通じたスウェーデンからの贈与)
 13日及び14日,スプートニクVが合計27.5万ドーズ到着。
 これにより,8月末までのワクチン受領数は,累計8,970,650となった。