ボリビア内政・外交(2021年6月)
令和3年7月9日
1 内政
(1)2019年政治紛争を巡る議論
6月15日,ボリビア・カトリック司教会議は「2019年10月―2020年1月における平和へ向けたプロセスの事実記録」を公表した。右記録では,2019年11月7日から12月5日にかけて開催された「平和へ向けた対話のための会議」の内情が明かされており,主に(1)スペイン大使館,EU,カトリック教会がは意志決定に関与していない,(2)MAS党が会議に参加していた,(3)アニェス暫定大統領の合憲性,(4)クーデタの否定,といった事実関係及びカトリック司教会議の主張が述べられた。
これに対しMASは,(1)反政府派によるクーデタの企ては,2019年に始まったものではない。モラレス政権発足当初から長期的に計画されていた「戦略的非暴力クーデタ」である,(2)モラレスの再選は人権であり,最高憲法裁判所及び国際規約も認めている,(3)2019年選挙において不正はなかった。不正と呼ばれるものは一時開票システムのエラーであり,公式集計の結果にエラーはなかった,(4)立法府はモラレスらの辞任を承認していないことから,反政府派の指摘する「権力の空白」は存在しなかった,よって,アニェスの暫定大統領就任は違憲である,といった立場を取っている。
(2)エクアドルからの武器供与疑惑
6月12日,ボリビア内務省は,2019年10月から11月にかけての政治紛争において,エクアドルからの武器貸与が行われていた旨発表した。右発表では,「2019年のクーデタの際,ボリビア国民に対する弾圧のためにモレノ・エクアドル政権は催涙手榴弾及び催涙砲弾を貸与していた。武器にかかる全ての手配はアニェス暫定政権が行い,センカタにおける弾圧ではそれらの武器が使用された。」旨述べている。(3)アニェス前暫定大統領拘留及びその裁判の動向
6月8日,アニェス前暫定大統領は,検察庁において,自身の大統領就任前の状況につき証言した。6月12日,アニェス前暫定大統領は,拘留90日目を迎え,アルセ政権は復讐のための拘留を行っていると批判する手紙を公表した。
6月23日,アニェス前大統領がボリビア食品公社(EBA)総裁指名に際し,法的手続きを遵守していなかったことが指摘され,新たな容疑として追加された。
6月30日,アニェス弁護団は,同前暫定大統領釈放にかかる200の証拠書類と予防拘禁中止の請願書を裁判所に提出したが,裁判所は予防拘禁中止にかかる請求を棄却した。
(4)カルロス・メサ元大統領の検察庁召還
17日,カルロス・メサ元大統領は,クーデタの証人として検察庁へ召還され,検事総長室で証言した。しかし,回答したのは50問中3問のみで,政府の一部は捜査妨害で起訴すべきだと述べた。2 外交
(1)アルセ大統領のベネズエラ訪問
6月24日,アルセ大統領は,ベネズエラにて開催された第19回米州ボリバル同盟人民貿易協定(ALBA-TCP)首脳会議出席のため,カラカスを訪問した。右訪問に際し,アルセ大統領は,「第19回ALBA-TCP首脳会議のために訪問した我々に対する,ベネズエラ国民及びマドゥーロ大統領による温かい歓迎に感謝する。ラテンアメリカ国民の威厳及び主権のために共働し続けよう。」旨ツイートした。
(2)アルセ大統領のベネズエラ訪問にかかるマイタ外相コメント
6月27日,マイタ外相は,アルセ大統領による第19回ALBA-TCP首脳会議への出席は地域統合の重要性を確認したとして,ALBAのみならず,南米南部共同市場(Mercosur),アンデス共同体及びラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)もあり,これらの統合プロセスはボリビアのみならず地域諸国にとり非常に重要である旨述べた。(3)ボリビアの米州機構(OAS)担当大使
11日,モラレス政権時代の法務大臣であるルイス・アルセ・ザコネタが,ボリビアのOAS大使に任命された。同新大使は「ルイス・アルマグロOAS事務局長が,2019年のクーデタへ関与したことを示すために任命された」旨述べた。3 コロナワクチン関連
12日,スプートニクVが10万ドーズ到着。13日,アストラゼネカ15万ドーズをメキシコが贈与。
22日,シノファーム50万ドーズが到着。
24日,シノファーム50万ドーズが到着。
これにより,6月末までに累計4,016,050ドーズが到着した。