ボリビア内政・外交(2021年4月)

令和3年5月9日

1 概況

(1)14日,チャラカジョ農村開発・土地大臣が収賄の疑いにより逮捕されたことから解任され,20日,レミー・ゴンサレスが新たな農村開発・土地大臣に任命された。
(2)地方選挙において,MAS党は,県レベルにおいては決選投票(4月11日実施)となった4県全てにおいて敗北し,結局全国9県のうちコチャバンバ,ポトシ,オルロの3県における勝利に留まったほか,市町村(Municipal)レベルでは全国336のうち240で勝利したものの,各県県都等の市長選においてはオルロ市及びスクレ市のみで勝利した。
(3)政府は,14日,ロシアからスプートニクV25,000ドーズを,20日,同じく20万ドーズを受領した。
(4)29日,欧州議会は,アニェス前暫定大統領の逮捕を批判し,彼らに対する政治的目的による訴訟を取り下げることを要求する決議を可決したが,同日,リクテル大統領報道官は,欧州議会の決議に法的拘束力はなく単なる勧告であり,現時点では回答する義務はない旨発言した。
 

2 内政

(1)政府の動向

14日,デル・カスティージョ内務大臣は,チャラカジョ農村開発・土地大臣(2020年12月1日就任)が,一部地域の開発にかかり38万ドルの賄賂を要求し,前払い金として2万ドルを受け取った収賄の疑いにより,13日に逮捕された旨発表した。20日,アルセ大統領は,チャラカヨを解任し,レミー・ゴンサレス(Remmy Gonzales)を農村開発・土地大臣を任命した。

(2)地方選挙関連

 3月7日に実施された地方選挙及び4月11日に実施された県知事選決選投票の主な地方自治体の公式集計結果は次のとおり。
 なお,MAS党は,県レベルにおいては決選投票となった4県全てにおいて敗北し,全国9県のうちコチャバンバ,ポトシ,オルロの3県における勝利に留まったほか,市町村(Municipal)レベルでは全国336のうち240で勝利したものの,各県県都等の市長選においてはオルロ市及びスクレ市でのみ勝利した。集計エラーなどが理由で無効となった4つの投票箱(全てラパス県)においては,4月25日に再投票を実施する。しかし,右投票箱を除き,4月20日時点での開票率は99.96%に達しており,公式集計結果に影響はない。
 県知事当選者
(ア)4月11日決選投票結果
  • ラパス:サントス・キスペ(Santos Quispe)Jallalla党(55.22%)
  • チュキサカ:ダミアン・コンドリ(Damian Condori)Chuquisaca Somos Todos党(57.32%)
  • パンド:レヒス・リクテル(Regis Richter)MTS党(54.68%)
  • タリハ:オスカル・モンテス・バルソン(Oscar Montes Barzon)Unidos por Tarija党(54.44%)
(イ)3月7日結果
  • サンタクルス:ルイス・フェルナンド・カマチョ(Luis Fernando Camacho)Creemos党
  • コチャバンバ:フンベルト・サンチェス(Humberto Sanchez)MAS党
  • ポトシ:ジョニーオスカル・ママニ・グティエレス(Jhonny Mamani Gutierrez)MAS党
  • オルロ:ジョニー・ベディア(Johnny Vedia)MAS党
  • ベニ:ホセ・アレハンドロ・ウンスエタ・シリキ(Jose Alejandro Unzueta Shiriqui)MTS党
 各県県都等主要都市市長当選者
  • ラパス:イバン・アリアス・ドゥラン(Ivan Arias Duran)Somos Pueblo党
  • サンタクルス:ジョニー・フェルナンデス・サウセド(Jhonny Fernandez Saucedo)UCS党
  • コチャバンバ:マンフレッド・レジェス・ビジャ(Manfred Reyes Villa)Sumate党
  • エルアルト:エヴァ・コパ・ムルガ(Eva Copa Murga) Jallalla党
  • ポトシ:ジョニー・ラリー(Jhonny Llally)MCP党
  • オルロ:アデマール・ウィルカラニ(Adhemar Wilcarani) MAS党
  • タリハ:ジョニー・トーレス(Johnny Torrez)Unidos por Tarija党
  • スクレ:エンリケ・レアニョ (Enrique Leano) MAS党
  • トリニダ:クリスティアン・カマラ (Christian Camara) MTS党
  • コビハ:アナ・ルシア・レイス (Ana Lucia Reis) MTS党

(2)アニェス前暫定大統領ほかの逮捕関連

 1日,検察庁は,3月30日の出頭命令に従わなかったとして,二つの罪状(義務不履行及び不正任命)の容疑によりピンケルト前環境・水資源大臣(アニェス政権)に対する逮捕状を発出した。4日,同前大臣は,MASによる政治的迫害を主張してブラジルへの亡命を求める書簡を,知人のつてを使い発出した。
12日に逮捕状が発出されたが未拘留のヌニェス前大統領府大臣(アニェス政権)も同様に,ブラジルへの亡命を求めた。
 19日午前,アニェス元暫定大統領は,ミラフローレス地区の刑務所内で不整脈を発症した。担当弁護士は緊急事態であるとして,心臓超音波診断のために担当医が施設内に入ることを求めた。なお,親族によれば18日夜から同元暫定大統領の血圧は上昇と下降を繰り返しており,体温は38度で悪寒を伴う。顔面の一部及び手に感覚が無い。
 22日,アニェス前暫定大統領の家族は,アニェスの健康状態が悪化しているとして,病院への移送を要請した。同日,リンピアス刑務庁長官は「アニェスの健康状態は安定しており,同人家族の要請は奇異に感じる。」と述べた。同22日,検事は,アニェス前暫定大統領の医師団がミラフローレス刑務所にてアニェスの診察を行うことを認めるよう刑務所庁に指示した。右指示は,国連高等人権弁務官ボリビア事務所の代表が対処した後に発せられた。
 27日,フローレス下院議員(下院司法委員長)(MAS党)は,先に検察庁に提出していた,アニェス(前暫定大統領),ムリージョ(元内相)及びロペス(元国防相)に対するセンカタ虐殺及びサカバ虐殺にかかる刑事訴訟請求が却下された旨述べた。同日,検察庁広報担当は,当該請求は検察庁が却下したものではなく,検察庁のオブザベーションに対し,請求者が期限内に回答できないとして,取り下げを選好した旨発表した。フローレス下院議員は,センカタ及びサカバ事件について改めて訴訟請求を追求するとともに,モンテス事件(サンタクルス県)についても追加する可能性を検討する旨述べた。
 27日,ラパス県地方裁判所刑事法廷第10判事は,アニェス弁護団から提出された,テロ・扇動・陰謀の容疑にかかる裁判は責任追及(弾劾)裁判によるべきとする要請を拒絶した。したがって,当該裁判は通常裁判にて実施されることとなった。
 29日,欧州議会は,アニェス前暫定大統領の逮捕を批判し,ボリビア当局に対しアニェス前大統領,二名の大臣及びその他拘留されている政治家を直ちに釈放し,彼らに対する政治的目的による訴訟を取り下げることを要求する決議を,賛成396票,反対267票,棄権28票により,可決した。同日,リクテル大統領報道官は,欧州議会の決議に法的拘束力はなく単なる勧告であり,現時点では回答する義務はない旨発言した。
 27日,検察庁事務総長は「アニェス前暫定大統領に対する4つの責任追及裁判請求((1)IMF借款の違憲承認,(2)隔離措置(cuarentena)中の表現の自由にかかる侵害,(3)Fundaempresaにおける企業登記(Concesion)の違法延長及び(4)チリ在住ボリビア人に対する祖国帰還の不許可)にかかる調査期間の20日間延長を要請した。結果が得られ次第,国会に提出する。」と発表した。28日,最高裁判所(TSJ)は上記要請を受諾した。同日,シレス法務省法務次官は「20日間の間に,検察庁は本件をTSJに送検するか否かを決定することになると理解している。」と述べた。
 同日,金融システム監査局(ASFI)は,2週間前に検察庁から要請されていたアニェス,グスマン元大臣,コインブラ元大臣,アルセ元海軍司令官及びメンディエタ元陸軍司令官に対する国内金融資産の凍結を承認した。

(3)新型コロナウイルス関連

 9日,政府は,4月8日付け複数省令第001号(別添)をもって,最高政令(DS)第4481号7条に規定された,ブラジルとの国境の一時閉鎖を4月16日00:00まで延長することを決定した。(1日当たり4時間までの国境移動は可能)その他の近隣諸国(アルゼンチン,チリ、パラグアイ及びペルー)との国境も1日当たり8時間までに制限される。
 11日,政府は,4月10日付け複数省令第002号をもって,パンド県コビハ市については,国境閉鎖措置(DS第4481号7条)の適用外とし,05:00~22:00までブラジルとの国境移動を認めるとした。
 3月31日付け最高政令第4481号を以て,政府は,次の措置を講じることを決定した。
  • 海外からの渡航者に対する入国前72時間以内のPCR検査陰性証明書の提出,入国後10日間の隔離(原則として自宅),入国後7日目のPCR検査の実施及び永住資格を有さない外国籍者に対する入国前にCOVID-19治療費をカバーしうる健康保険への加入の義務づけ
  • 国境地域に対するワクチンの優先接種
  • ブラジルとの国境の4月2日から7日間の一時閉鎖
 

3 外交

(1)               対ロシア

 6日,ママニ外務次官はLedenevロシア大使と二国間及び多国間のアジェンダについて会談した。
 14日,政府は,ロシアからスプートニクV25,000ドーズを受領した。
 19日,アルセ大統領はプーチン・ロシア大統領と電話会談し,ワクチンや経済関係,協議メカニズムの形成等について協議した。
 20日,政府は,ロシアからスプートニクV20万ドーズを受領した。

(2)               その他

 6日,外務省はグエン・スアン・フック新ベトナム国家主席の就任を祝福する声明を発出した。
 10日,外務省は火山噴火を踏まえ,セント・ビンセント及びグレナディーン諸島住民に対する連帯の意思を表明する声明を発出した。
 13日,マイタ外務大臣の招集により,外交団対象のワクチンにかかる説明会が開催され,同大臣は世界保健機構(WHO)及び世界知的所有権機関(WIPO)に対して,薬品産業の保護にかかる国際基準を緩和し合理化させるため知的財産権を制限又は最小化するといった方法で迅速かつタイムリーな対処を採ることを求めた。
 19日,アルセ大統領は,ラウル・カストロ・キューバ共産党第一書記の退任及びディアスカネルの第一書記選出にかかり両者を賞賛するメッセージをツイートした。
 20日,モラレス元大統領(MAS党党首)は,「我々と類似のプログラムを有しているペルーのペドロ・カスティーリョに対し,敬意及び賞賛を表明する。」旨,カスティーリョ候補との写真を添えて,ツイートした。同日,これに対して,ペルーのケイコ・フジモリ大統領候補は,「モラレス氏に対して,ペルーに介入するなと言いたい。我々ペルー人はモラレスのイデオロギーを容認しない。21世紀の社会主義は出て行け(fuera),共産主義は出て行け,マドゥーロは出て行け,ルラは出て行けと言う。」と述べた。
 モラレス元大統領が主導したRUNASURが4カ国の参加を以て創設され,24日及び25日,ボリビア,ベネズエラ,エクアドル及びアルゼンチンからの参加を得て,第一回専門家会合がコチャバンバ県において開催された。同会合において,RUNASURの原則及び組織が決定され,RUNASURは反植民地主義,反帝国主義,反資本主義,補完性及び主権を掲げる組織であるとし,最初の決議である「生命・健康の防衛」において抗COVID-19ワクチンの特許開放を要請した。
(了)