ボリビア内政・外交(2021年3月)
令和3年4月9日
1 概況
(1)7日,全国において地方選挙(9県知事及び336市町村長等が対象)が実施された。(2)12日,検察庁は,アニェス元暫定大統領,ムリージョ前内務大臣,ヌニェス前大統領府大臣,コインブラ前法務・透明性大臣,ロペス前国防大臣及びグスマン前エネルギー大臣に対し,2019年の「クーデタ」にかかる調査の一環として,逮捕状を発出し,13日,アニェス元暫定大統領等が逮捕・拘留された。
(3)23日,15日に法務省が検察庁に提出したアニェス元暫定大統領に対する責任追及裁判の請求が受理された。
2 内政
(1)世論調査
4日,当地民間テレビ局ATBは,世論調査会社Q Social Nowが2月5日~21日にFacebook及びInstagramにより5,299名を対象に実施したアルセ政権の評価等にかかる世論調査(誤差:±1.35%)の結果を公表したところ,同概要次のとおり。ア アルセ大統領の政権をどう評価するか
とても良い:22%
良い:33%
(未だ)不明:6%
悪い:15%
とても悪い:18%
わからない:7%
イ ロシア製ワクチンが2万ドーズ到着したことをどう思うか
非常に良い方向に向かっている:22.7%
いい方向に向かっている:36.3%
いい方向とも悪い方向に向かっているともいえない:24.8%
悪い方向に向かっている:6.2%
非常に悪い方向に向かっている:4.4%
わからない:5.5%
ウ 政府がCOVID-19簡易検査を実施していることをどう思うか
良い:58.3%
良くも悪くもない:22.8%
悪い:10%
意見はない:8.8%
エ 政府は新型コロナウイルスに対してどのように対処しているか
アニェス政権より格段に良い:32%
アニェス政権より良い:20%
アニェス政権と同じ:11%
アニェス政権より悪い:20%
アニェス政権より格段に悪い:13%
わからない:4%
オ チョケワンカ副大統領をどう評価するか
とても良い:18%
良い:40%
(未だ)不明:13%
悪い:14%
とても悪い:11%
わからない:4%
カ 医療従事者がパンデミック中にストライキをするのは人道的行為だと思うか
思わない:64.2%
思う:25%
わからない:10.8%
(2)地方選挙関連
ア 7日,全国において地方選挙(9県知事及び336市町村長等が対象)が実施された。サンタクルス県コルパ・ベルヒカ市では投票箱21箱に,サンホセ・デ・チキトス市では52箱に,パイロン市では39箱に,サン・ラモン市では現在未知数の箱に,それぞれ有権者が放火し,ラパス県を含む投票地域外からの人々の不正移動を告発したが,それ以外はおおむね平和裏に実行された。イ アルセ大統領は,OASが監視団として参加することを理由として,TSEが主催した投票開始直前の開会式を欠席した。
ウ 15日,最高選挙裁判所(TSE)は,3月7日に行われた地方選挙の一部再投票及び4つの県知事選の決選投票について発表した。右に基づき,125の投票箱においては,3月21日に再投票が実施された。「得票率40%以上かつ次点との得票率差10%以上」を充足しないことから決戦投票が行われるべき県(ラパス県,チュキサカ県,パンド県,タリハ県)については,4月11日に県知事選決選投票が実施されることとなった。
(3)アニェス前暫定大統領ほかの逮捕関連
ア 客年10月20日,リディア・パティ・ムジサカ元下院議員(MAS党)は,アニェス元暫定大統領,元同政権大臣及び他の関与者(ハルフリ氏,テルセロス氏,メンディエタ氏,フェルナンデス氏)全9名のラパス,サンタクルス及びコチャバンバ県におけるテロ,扇動及び陰謀の罪状に関与した疑義を告発した。イ 本年3月12日,検察庁は,アニェス元暫定大統領,ムリージョ前内務大臣,ヌニェス前大統領府大臣,コインブラ前法務・透明性大臣,ロペス前国防大臣及びグスマン前エネルギー大臣に対し,2019年の「クーデタ」にかかる調査の一環として,逮捕状を発出した。アニェス前暫定大統領は,「これは「社会主義者」の常套手段で,恥を知ること無く嘘をつき,暴力を正当化するために歴史を塗り替えようとしている。(私は)クーデタではなく,選挙不正を理由として憲法に即して(大統領職を)継承をした。(自分の前に継承権利のあった者たちは)混乱状態にある国を受け止める勇気を持たなかったから辞任した。それは,最高責任者が逃亡したからである!」とツイートした。
ウ 同日未明,グスマン前エネルギー大臣が逮捕・拘束(予防拘禁)された。
エ 13日明け方,デル・カスティージョ内務大臣及びアギレラ国家警察長官(2020年11月16日就任)の指示により,国家警察が,ベニ県トリニダ市において,アニェス元暫定大統領を逮捕・拘束し,ラパス市へ連行した。同日,コインブラ前法務大臣も逮捕・拘束された。
オ 同日午前7時頃,アニェス前暫定大統領はラパス市に所在する犯罪特別取締局(FELCC)の留置所に連行された。同日,リマ法務・透明性大臣は,本件にかかる訴追続きは,アニェスを元暫定大統領としてではなく元上院議員として訴追する一般訴訟を目的とするものである旨明言した。
カ 15日,リマ法務・透明性大臣は,アニェス元暫定大統領と元大臣らに対する,四つの責任追及裁判の訴求((1)3億4670万米ドルのIMF借款における不正(最高政令第4277号),(2)Fundaempresaにおける企業登記権限(Concesion)の違法な延長(最高政令第4356号),(3)チリ在住ボリビア人に対する人権侵害及び(4)パンデミック中の規制)を検察庁に提出し,検察庁,最高刑事裁判所及び国会による措置の決定を待つ旨発言した。
キ 15日,サンタクルス,ラパス,コチャバンバ,トリニダ及びポトシにおいて,アニェスら逮捕に対する抗議集会やデモ行進が展開された。16日,サンタクルス市民委員会会議所に9県の市民委員会が集結し,アニェスらが釈放されない場合は全国的にストライキを実施すると宣言した。
ク 17日,マイタ外相は,アニェス前暫定大統領ほかの逮捕・拘留を受けての米国及びブラジルの反応に関連し,当国駐箚大使らを外務省に招致して介入を止めるよう申し入れを行った。
ケ 18日,法務省は,クーデタの容疑により拘留されたアニェス前大統領らは,国際人権規約及びボリビア憲法の定める基準に従って個人の自由が残されており,それが遵守されていることは米州人権委員会(CIDH)の声明によって認められた旨のプレスリリースを発出した。同日,内務省は,アニェス元上院議員の健康状態が安定していることを宣言するプレスリリースを発出した。
コ 19日,裁判所はオブラヘス女性刑務所(COF)に拘留されているアニェスの私立病院への移送を拒絶した。20日未明,政府は,アニェスをCOFからミラフローレス刑務所へ移送した。リンピアス内務省刑事施設管理局は,人道上の理由により拘留する刑務所を変更したとして,アニェスは家族及び人権擁護組織の訪問を受けることができる旨述べた。
サ 19日,全国民主主義擁護委員会(CANADE)の呼びかけにより,ラパス市において集会(cabildo)が開催され,様々な市民組織,社会組織,労働組合及び一般市民等が参加した。同集会は,(1)衛生緊急事態法の廃止,(2)農村土地開発省令068/2021(コカ葉市場の開設を容認)の廃止,(3)政治的拘留者の釈放及び(4)司法・検察改革の前段階として,モラレス元大統領及びアニェス前暫定大統領の責任追及,の4項目を要求するとし,モラレスCONADE代表は「これらの要求が実現されるまで永続的に活動を続ける。」旨述べた。
シ 23日,検察庁は,プレスリリースをもって,3月15日に法務・透明性省から検察庁に提出された,アニェス前暫定大統領及び元大臣らに対する,4つの責任追及裁判請求((1)IMF借款の違憲承認,(2)隔離措置(cuarentena)中の表現の自由にかかる侵害,(3)Fundaempresaにおける企業登記(Concesion)の違法延長及び(4)チリ在住ボリビア人に対する祖国帰還の不許可)について受諾し,右請求を最高裁判所(TSJ)に送付した旨発表した。検察庁からの訴求送付を受けて,TSJは必要な調査を行い,アニェス前暫定大統領に対する弾劾要請を国会に送付するか否かを決定することとなる。
ス 27日,外務省は,アニェス前暫定大統領ほかの逮捕・拘留を受けての米国の反応に関連し,内政干渉であるとする声明を発出した。
セ 29日,米州人権委員会(CIDH)は,3月14日にCreemos党がCIDHに申請したアニェス前暫定大統領ほかに対する保護措置の請求を拒否した。
(4)新型コロナウイルス関連
ア 15日,政府は,最高政令第4473号をもって,欧州からの渡航者又は過去14日の間に英国に滞在したボリビア在留資格を持つ外国籍者に対する入国管理措置及び過去14日の間に英国に滞在したボリビア在留資格を持たない外国籍者に対する入国制限を5月31日23:59まで延長することを決定した。イ 最高政令第4481号(別添,3月31日付)により,ブラジルとの国境が4月2日00:00より7日間閉鎖及び海外からの渡航者に対する入国措置が強化されるとともに,同第4480号(別添,3月31日付)により,国内規制等が4月30日まで延長された。
3 外交
(1) 新型コロナウイルスワクチン関連
ア 21日,マイタ外相及びアウサ保健・スポーツ相は,インドからエルアルト国際空港に到着したCOVAXファシリティを通じたアストラゼネカ社製ワクチンの最初のロットである228,000ドーズを受領した。イ 20日,アルセ大統領は,キューバにおける抗COVID-19ワクチン開発を賞賛するツイートをした。
ウ 30日,シノファーム社製20万ドーズ(購入分10万ドーズ及び中国寄贈分10万ドーズ)が注射器420万本とともにコチャバンバに搬送された。
(2) 対ロシア
8日,スプートニク通信によるインタビューに対し,マイタ外務大臣は,ラテンアメリカに対する米国の介入との均衡をはかる上で,ロシアの同地域における役割は重要であると発言した。(3)その他
ア 8日,英国Declassifiedが英国政府はボリビアにおいて「クーデタ」を支援した旨報道したことを受け,10日,ボリビア外務省は英国大使を外務省に召喚し政府見解を伝えた旨の声明を発出し,同日,英国大使館は当該報道はフェイクニュースである旨の声明を発出した。イ 8日,アルセ大統領は「ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)事務局長の訪問を受けた。我々はCOVID-19と闘いパンデミック後に経済を再活性化するための地域における戦略を分析した。クーデタによる凶悪な一年間の後,我々は統合を強化する同機関との関係を再開する。」とツイートした。
ウ 9日,アルセ大統領は,メルカド・メキシコ大使,オハロラン・アイルランド大使,ボクラル・スイス大使の信任状を受理したとツイートした。特に,メルカド・メキシコ大使の再赴任を喜んだ。
エ 11日,マイタ外相は,「私たちはソラ・アルゼンチン外相が40年間住んだラパスの街を歩いた。国内の政府関係者を訪問し,二国間の関係を深め,国民のための外交を行った。」とツイートした。12日,外務省は「ボリビア及びアルゼンチンは二国間の様々なアジェンダを促進する共同声明に署名した。」とツイートした。
オ 22日,ボリビア・スペイン政務・協力協議が開催され,ボリビア側はママニ外務次官,スペイン側はマルティネスAECID長官及びガランソ外務省イベロアメリカ局長等が参加した。
(了)