急性高山病について

令和2年1月6日


・ボリビアには標高3000mを超える都市が多くあり,滞在中に高山病にかかる危険があります。
・重症高山病は命にかかわる危険があり,早期の対応が重要です。
・適切な準備,滞在中の対応で重症高山病への進展を予防することができます。
・重症高山病は,直ちに医療機関を受診する,又は低地に移動する必要があります。
・緊急移送までカバーされている海外旅行保険に加入されることを強くお勧めします。

1.急性高山病とは

 高地(2500m以上)では,人体に様々な変化が生じます。多くの方は数日で適応しますが,高地に適応できずに高山病が悪化すると,肺水腫(肺に水がたまり呼吸ができなくなる),脳浮腫(意識障害,体が動かなくなる)などの命にかかわる重大な事態に陥る危険があり,その場合早期の対応が重要です。また,高山病を予防し,治療が手遅れにならないよう,渡航前に高山病の基本的知識を身につけ,万全の準備をしておくことが大切です。
 

2.急性高山病の症状

 症状は通常,高地到着後6~12時間で出現します。主な症状として、頭痛、食欲不振、吐き気、疲労感、めまい、睡眠障害がありますが,数日で高地に適応して軽快します。しかし,時に高山病が悪化することもあり,その場合は緊急に医療機関を受診する,又は,低地に移動する必要があります。

3.急性高山病のリスク

 ボリビアの玄関であるエルアルト国際空港は標高4000mにあり、多くの旅行者が訪れるラパス、ウユニの標高はおよそ3600mです。その他にもボリビアには標高の高い都市や観光地が多くあります。高地を訪問する約半数の方に高山病症状を認め,酸素吸入等の処置が必要になります。命にかかわることは少ないですが,毎年数例は発見・治療が遅れ,深刻な状態に陥る旅行者がいらっしゃいます。

4.高山病の予防

(1)高地渡航前

ア 自分自身のリスクを理解する
 高山病の重症化を予防するには、自分自身の適応度及び危険度を認知し、早期に対処することが重要です。高山病の既往、運動習慣の不足、喫煙習慣が高山病の危険因子と考えられています。アスリートの若年者で高山病にかかる方も少なくありません。また,循環器,呼吸器等の持病がある方は,渡航前に主治医,トラベルクリニックに相談しておくことをお勧めします。
イ 徐々に高度を上げるプランを立てる
 2000m程度の高地に一旦滞在して体を慣らす等,数日かけて徐々に高度を上げるプランを立てることをお勧めします。
ウ ゆとりのあるプランを立てる
 体調に応じて変更の可能なプラン,ゆったりと滞在ができるプランを作成してください。
エ 体調を整える
 飛行機内では,飲酒を控え,消化のよいものを食べるようにしてください
オ 海外旅行保険に加入しておく
 万一,重症の高山病になった場合,医療費,緊急移送に莫大な費用がかかります(数千万円かかることもあります)。緊急移送までカバーされている海外旅行保険に加入されることを強くお勧めします。
 

(2)高地滞在中

ア 激しい運動はさけ,ゆっくりと行動する
 自分のペースでゆっくり行動してください。息が切れたときは,ゆっくりと大きな深呼吸を繰り返してください。また,ホテルか空港で用意されている酸素ボンベを利用することをお勧めします。
イ 飲酒は避け,消化のよいものを食べる
 高地ではアルコールが回りやすいため,飲酒は避けてください。また,腸のガスがたまりやすく,消化不良,下痢も起こしやすいため、消化のよいものを適度に摂取してください。
ウ 長時間の入浴は避ける
エ お互いの体調を確認する
 お互いに,顔色(口唇の色など),表情,息づかいなどの健康状態を確認してください。一人旅行の方は体調不良の場合,無理せず,ホテルの受付等最寄りの人の支援を得てください。
オ 自分の状態を客観的に把握する
 動脈血酸素飽和度計(パルスオキシメーター;ネットや家電品店で購入可能)による、酸素飽和度(SpO2)や脈拍の変化が危険予知に有効です。
 

(3)薬物による予防

ア ダイアモックス(保険適用外)
 ダイアモックスを服用したら絶対に高山病にならないと言うわけではありませんが,ある程度の予防効果は期待できます。通常,高地到着24時間前から開始し、到着後3日間服用します。日本では,医師の診察,処方箋が必要です。副作用は、異常感覚(痺れ感、ピリピリ感)、多尿が5%以上に認められ、重篤なものとしては、アナフェラキシーショック、電解質異常などがあります。当地の薬局では,ソロッチェピル(Soroche pil)と言えば高山病の薬を購入できますが,偽薬もあるので注意が必要です。
イ コカ茶
 コカ葉は、ボリビア国内では伝統的に高山病に効果があるとされていますが、明確な効果は証明されていません。コカ茶はボリビア国内では一般的に飲用されていますが,コカ葉はコカインの原料であり、日本を含めてほとんどの国々で違法とされています。決して、ボリビア国外に持ち出さないでください。
 

5.高山病の治療

高山病になっても,早期に対応すれば,致死的なトラブルにはなりません。早期発見,早期治療がとても大切です。
 

(1)酸素吸入

 頭痛などの症状がある時は、酸素吸入を行います。椅子に座って、ゆっくりと深呼吸をしながら、毎分3リットル程度の流量で吸入してください。酸素飽和度計がある場合は、吸入中90%以上になることが目安となります。
 

(2)低地への移動

 最も確実な方法は、低地への移動です。特に,肺水腫、脳浮腫の兆候が見られる時は、早急の移動を検討する必要があります。
 

(3)薬物療法

 自己判断で服用せずに,医療機関で診察を受け処方された薬物を服用してください。
 
 
下記の様な症状(重症高山病の症状)があったら、直ちに医療機関を受診してください。

・精神状態の変化(傾眠傾向、おかしな事を言う等)

・運動失調(うまく歩けない等)

・意識障害

・安静にしていても呼吸が苦しい


その他、症状が改善しない等、少しでも心配な事があったら、躊躇せず、直ちに医療機関を受診してください。

 
 

在ボリビア日本国大使館 領事
Tel: (+591-2)241-9110(代表)