2017年6月 ボリビア経済情勢

平成29年6月30日

1 ボリビア中央銀行(BCB)の2016年次報告書概要

(1)GDPに占める財政収支の割合(単位:%)

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
財政収支 4.5 1.7 3.2 0.1 1.7 0.8 1.8 0.0 -3.4 -6.9 -6.6
 

 2016年は,炭化水素価格の下落のため,財政赤字となった。

 前年より少ない歳入に比し,主として国営企業運営に対する公的投資が多かった。

 

(2)歳入(単位:百万米ドル)

2006 2013 2014 2015 2016 前年比
税収 2,475 5,593 6,318 6,630 6,505 -1.9%
その他の収入 2,669 9,311 10,532 9,037 7,974 -11.8%
合計 4,460 14,905 16,850 15,667 14,479 -7.6%
 

 石油・天然ガスの輸出減少の影響で,特に炭化水素部門及び金融部門の法人税収が減少した。

 2016年の税収は,歳入の45%を占めている。

 

(3)公共部門の支出(単位:百万米ドル)

2006 2013 2014 2015 2016 前年比
合計 3,946 14,707 17,952 17,927 16,686 -6.9%
経常支出 2,756 9,757 11,591 12,145 10,925 -10.0%
人件費 1,084 2,985 3,647 4,368 4,014 -8.1%
調達費 782 4,243 5,294 4,794 4,455 -7.1%
その他 890 2,529 2,650 2,983 2,456 -17.7%
設備投資 1,190 4,950 6,362 5,782 5,762 -0.4%
 

 2016年の人件費は,基本給及び最低賃金の引上げ等が実施されたものの,1か月分のボーナスしか支払われなかったため減少した(2013~2015年は2か月分が支払われた)。

 2006年から2016年の間に人件費は約四倍となった。国家公務員数は 75,290人(2006年)から125,281人(2012年)に増え,また,国営企業の雇用者数は3,146人(2006年)から15,000人以上(2012年)と約5倍に増えた。

 

(4)設備投資と公共投資の比較(単位:百万米ドル)

2006 2013 2014 2015 2016 前年比
設備投資 1,190 4,950 6,362 5,782 5,762 -0.4%
公共投資 879 3,781 4,508 4,892 5,065 3.5%
 

 2016年は前年比で僅かに設備投資が減少したが,公共投資は増加した。

 ボリビア国道管理公社(ABC),ボリビア電力公社(ENDE)及びボリビア石油公社(YPFB)の建設及び調達により,公共投資額が増えた。

 

(5)経済部門における公共投資(単位:百万米ドル)

2006 2013 2014 2015 2016 前年比
インフラ部門 482 1,329 1,440 1,696 1,822 7.4%
社会部門 263 1,084 1,448 1,341 1,192 -11.1%
生産部門 98 1,190 1,363 1,709 1,866 9.2%
複数部門 37 178 257 146 185 26.7%
合計 879 3,781 4,508 4,892 5,065 3.5%
 

 この数年間,インフラ部門(運輸,通信,水資源)及び生産部門(炭化水素,農牧業,鉱業,エネルギー,工業及び観光)に対し,全公共投資額の69~70%が当てられた。

 ガルシア・リネラ副大統領によれば,この数年間に生産及びサービス部門の国営企業が数多く創設されたことにより,2005年のGDPにおける公共投資の割合が16%だったのに対し,現在は38%となっている。

 2016年の公共投資の78%は,国内資金から出資された。

 

(6)外貨準備高の推移(単位:百万米ドル)

 上記(5)ウの公共投資に使われる国内資金は,主にBCBの外貨準備から出ている。

 BCBの第1670号法では「公共部門に融資することはできない」と定められているが,国家一般予算に関する法律を通し,2009年から政府はBCBが国営企業に融資するのを認可している。

 2016年末,外貨準備高は100億8,100万米ドルとなり,前年比で29億7,500万米ドル減少した。

 2012年及び2013年に,政府は約5億米ドルのソブリン債を2度発行し,2017年3月にも10億米ドルのソブリン債を発行しており,これらが外貨準備高に加算されている。

2 マクロ経済

(1)

 7日付報道によると,2007年から2016年のボリビアの対EU輸出額は66億1,400万米ドル,EUからの輸入額は78億6,100万米ドルとなり,ボリビア側の貿易赤字は12億4,700万米ドルとなった。


(2)

 10日付報道によれば,9日,モラレス大統領,ガルシア・リネラ副大統領及びボリビア経団連(CEPB)幹部の間で会合が開かれ,より高い経済成長及び投資促進を目的とする「生産的経済審議会」の創設が決定された。3か月以内に同審議会を創設し,必要な方策に関する協議及び経済評価等を,2~3か月ごとの定例会で行う予定


(3)経済・財政省の動き

 26日,健康上の理由によりアルセ経済・財政大臣が休職し,その間の大臣職にマリオ・ギジェン・スアレス前年金担当次官が任命された。

 28日付報道によると,ギジェン経済・財政大臣は,本年1月から5月のインフレ率が1%未満だったため,本年の年間インフレ率を当初の見通5,03%から3,5%に引き下げ,本年のGDP成長率が4,9%となるとの見通しを示した。


3 鉱物資源・石油・天然ガス

(1)リチウム関連

 27日,エチャス・エネルギー省高技術・リチウム・原子力エネルギー担当次官は,「炭酸リチウム製造プラントの建設,設置及び始動」プロジェクトのための提案有資格企業が10社選ばれ,本年7月10日までに秘密保持契約の締結,同9月に提案書の評価, 同12月に落札及び契約が行われるとの予定を公表した。


(2)ボリビア石油公社(YPFB)

 15日, YPFBによるイタリア企業のドリルメック(Drillmec)社からの天然ガス井戸掘削ドリル3本(約1億4,800万米ドル)の調達において,不正が行われたのではないかとの疑惑があり,モラレス大統領は,その責任者としてアチャ前総裁を解任した。同日,オスカル・バリガ前炭化水素省工業化・マーケティング・輸送・貯蔵担当次官がYPFB新総裁に就任した。

 28日,バリガYPFB総裁は,イタリアのテクニモント(TECNIMONT)社がプロピレン等の工場建設を22億米ドルで落札した過程において,少なくとも四つの不正の疑いがあったとして,契約を無効にすると述べた。同総裁は,今後20の契約過程についての不正の有無も確認すると述べた。


(3)鉱物資源関連

 12日付報道は,鉱業冶金省の統計公報によると,本年第1四半期の鉱物資源生産量は,昨年同期比で,すず・金・銀が17,13%減少したのに対し,亜鉛は2,8%,鉛は9,17%増加し,全体として10,7%増加したと報じた。同紙はまた,民間企業部門の生産量のうち,外国企業が82,2%(生産量約18万トン)を占め,ボリビアの鉱物資源の輸入主要国は,米,中,日,韓,ベルギー,アラブ首長国連邦であると報じている。

4 その他

(1)イタリア企業からの投資提案

 3日付報道によれば,サンタクルス輸出業商工会議所(CADEX)は,イタリア企業のICM SpA社がボリビア政府に対し,6億米ドルの融資により(1)パラグアイ・パラナ川水運に通じるブッシュ港の建設及び,(2)モタクシート,ムトゥン及びブッシュ港の間の鉄道建設のプロジェクトを提案したと報告した。


(2)建築分野の経済成長率

 8日付報道は,サンタクルス県建築会議所(CADECOCRUZ)の報告によると,2010年から2016年の間,建築分野は9,7%成長し(国全体の成長率は5,1%),2016年に限っても7,8%成長した(同上4,3%)と報じた。


(3)食料生産量の低下

 30日付報道によれば,東部農牧会議所(CAO)は,干ばつ,豪雨,病虫害のため,2016年のサンタクルス県の食料生産量が9,43トンとなり,2015年の12,45トンと比べ24%減少し,約5億米ドルの損失が生じたと報告した。また,民間シンクタンクのボリビア貿易研究所(IBCE)及び油脂小麦生産者協会(ANAPO)によれば,国内の食料の80%は同県が供給している。

(了)