海外安全対策情報（2020年7月～9月）

（1）　2019年10月20日に実施された大統領選挙・国会議員選挙において、開票手続の不正の疑いを契機として、全国各地で反政府派と政府支持派が抗議活動及び道路封鎖等を行い、一部で両派間又は警察・国軍との衝突や暴力行為に発展した。11月10日のモラレス大統領の辞任後には、モラレス前政権支持派団体による抗議活動が一時的に激化し、特にエルアルト市、ラパス市、コチャバンバ県、サンタクルス県北部及び北西部などにおいて、一部の暴徒による暴行、略奪、放火等が発生した。
　11月12日のアニェス暫定大統領の就任、同月24日の新たな選挙を実施するための法律公布、同月25日のアニェス暫定政権と全国規模の抗議団体との「和解のための合意文書」の署名等を受けて、全国における抗議活動及び道路封鎖は停止された。
　国民保護庁ホームページの発表によれば、一連の抗議活動において、10月20日から11月末までの間に、全国で死者35名、負傷者832名が発生した。
　　　　
（2）　これまでもボリビア国内各地では、政治的要求等に基づく各職業団体、労働組合、市民団体、学生による行進、集会、道路封鎖等の抗議活動が頻繁に行われている。
　2019年6月、ラパス県ユンガス地方のコカ栽培者が、反政府抗議活動を活発化し、ラパス市とコロイコ市間の道路封鎖を実施し、石やダイナマイトを使用するなど一部過激化した。
　2019年8月、ラパス市による市バスの新ルート開通に伴い、ミニバス運転手らの運輸労働組合が、新ルート周辺地区において道路封鎖を伴う抗議活動を行った。住民と抗議集団が衝突し、投石などにより市民が多数負傷し、市バスが破損した。
　2019年9月、ポトシ県ウユニ市で、市役所に抗議するストライキが複数回実施され、市内の交通が麻痺し、邦人観光客を含む外国人観光客が同市内で数日間足止めされる事態となった。
　サンタクルス市では、都市整備を進める市の政策に反対し、路上販売を続ける自営業者とそれを取り締まる市側との間で路上でのトラブルが頻発している。
　また、医療従事者らは慢性的な人手不足を解消するため、保健省へ人員確保を要求するハンガーストライキを繰り返し路上等で実施しているため、路上を歩行する際に見かけた場合は、近づかないよう注意する必要がある。
　サンタクルス県ヤパカニ市では2020年4月、COVID-19感染防止対策の外出禁止令に反対する多くの市民が警察駐在所に詰めかけ、破壊行為を行った。
　また同年5月、大統領選挙の実施予定時期や政府高官に不満をもった市民が、道路封鎖を行った。
 
（3）　新型コロナウイルス（COVID-19）対策として、3月22日から全国における終日外出禁止令、同月26日には緊急衛生厳戒令が発令され、全国で5月末まで実施された。全国で警察及び国軍が動員され、外出禁止令に従わずに身柄を拘束され、罰金等を科される者が多数発生した。6月以降は、感染者数などにより各地方自治体が規制の具体的内容を決定することとなり、ラパス県など一部の地域では6月から規制が緩和された。
　また、2020年5月3日に予定されていた新たな総選挙は、国内のCOVID-19感染拡大の影響により，9月6日に延期され、更に10月18日に再延期された。この決定を受けて、8月3日から12日間にわたり前政権派の複数の団体により、国内全国の幹線道路において道路封鎖が行われ、ダイナマイトを使用して幹線道路付近の岩山を爆破した事案や、道路封鎖を解除しようとする市民と前政権派の市民が衝突して負傷者が発生するなどした。また、幹線道路が封鎖され県間の移動路が寸断され、国内の物流が途絶え、特にCOVID－19患者の治療に必要な酸素や薬剤が病院に届かない深刻な事態となった。
　現在、様々な団体が政治的要求などに基づく抗議活動を頻繁に実施している状況に加え、選挙運動に関連し、コチャバンバ市内でMASのテントが燃やされるなどの暴力的事案も散発している。特に10月18日の総選挙実施後の情勢は不透明であることから、政治・社会・治安情勢に十分注意する必要がある。

（1）犯罪の傾向

ア　現在、感染防止対策による外出禁止などの影響を受け、一時的に街頭における犯罪は減少している。しかし、今後、経済情勢の悪化の影響を受け犯罪が増加し治安が悪化する可能性も考えられることから、十分注意が必要である。

イ　COVID-19に関連する犯罪が発生しており、3月にはラパス市内で、医者と偽り、COVID-19の検査をするとだまして民家に侵入する強盗事件が発生した。
外出禁止期間に公共交通機関が運休し、多くの市民が自転車を移動手段としたことから、転売目的での自転車の盗難が相次いだ。COVID-19感染防止対策による経済活動の制限から多くの商店が休業し、留守の店内を狙った空き巣被害が増加した。その他、政府発行の車両通行証、身分証明書を偽造販売する事件も発生した。
また、国家警察の9月の発表によれば、COVID-19による外出禁止期間以降、市民のインターネットの使用時間の増加に伴い、国内のサイバー犯罪は4倍に急増した。インターネット上やSNSを使用し、COVID-19の治療薬の販売を装い代金を銀行口座に振り込ませる、偽造の抗体検査やPCR検査用品を販売する、知り合いを装ってSNSで連絡し現金を振り込ませるなどの手口の詐欺事件が多発しているので注意が必要である。

ウ　ラパス市及びエルアルト市では、COVID-19の影響により観光客が減少したため、主に観光客を対象とした偽警察官による詐欺事件などの発生は減少している。ラパス市ソナスル地区では、弁護士のふりをして民家に電話を掛け、家族が逮捕されたので弁護士費用を支払うように申し向け現金をだまし取る「振り込め詐欺」が発生している。

エ　サンタクルス市では、犯罪件数は減少傾向にあるものの、依然として、強盗、傷害、盗難等が多発しており、他に脅迫事件、武装強盗及び振り込み詐欺も発生している。オートバイを使った犯罪も頻発しており、特にヘルメット着用の男性二人組のオートバイは強奪を犯す可能性が高いとされている。

オ　一般的な対策としては、繁華街・市場等に行く際には多額の現金を持たない、貴重品はリュックサックなど目の届かないところには入れず、自分の目の届く場所に携帯する等の注意が必要である。
　万が一、犯罪に遭遇した場合は、犯人が拳銃を所持している場合もあるので、無理に抵抗せず、可能な限り速やかに警察へ被害の届け出を行う。
　自宅等から外出する際は、施錠確認を徹底し、夜間であれば屋内照明をつけたまま外出することが望ましい。
　偽札が市中に出回っており、知らずに偽札を使用すると犯罪になるので注意する必要がある。
 

（2） 邦人被害事案

なし

（3）邦人以外の被害事案等

ア　7月2日、ラパス市ビジャビクトリア地区の民家に六人組の犯罪グループが強盗に入り、20万米ドルを奪い車両で逃走した。

イ　7月14日、サンタクルス市内でガソリンスタンド強盗をした犯罪グループ6 名を逮捕したと発表した。逮捕後の捜査の結果，同グループはサンタクルス市内に居住する企業家の誘拐を計画していたことが判明した。

ウ　7月16日、サンタクルス市内の第二環状線において、現金3万米ドルを所持していた男性が路上駐車中の車両に待機していたところ、バイクで近づいてきた男2人組に、車両の窓ガラスを割られ現金入りのバッグを奪われた。犯人は追跡する人に銃を発砲、威嚇し逃走した。

エ　9月2日、警察は、ラパス市内で警察官の幹部を装い、警察の手続に便宜を図ると偽り、市民から1500米ドルをだまし取ろうとした犯人を逮捕したと発表した。

オ　9月21日、警察は、サンタクルス市内において、警察官を装い、バスターミナル付近で通行人に言いがかりをつけ、逮捕すると脅迫し現金を要求していた男女3名を逮捕した。

（1）8月4日、オルロ県とコチャバンバ県をつなぐ幹線道路付近で、前政権支持派が道路を封鎖するためダイナマイトで岩山の一部を爆破した。

（2）8月13日深夜、ラパス市内のCOB（ボリビア労働総連）本部施設の出入口付近がダイナマイト及び火炎瓶で爆破され、出入口の一部が損傷した。同爆発事件で6名が逮捕された。

（3）8月14日夜9時頃、オルロ県のパイルマニ変電所において、何らかの爆発物により高圧変圧器が爆破された。

9月8日、ラパス市ビジャファティマ地区で、生後1か月の乳児が40歳代の女性に誘拐された。犯人は、乳児連れの母親に広場で声を掛け、体調不良を装い、母親に対し乳児を一時的に預かるから自分のために薬を買いに行くよう頼み、母親が乳児から目を離した隙に誘拐した。

　なし