海外安全対策情報(2020年1月~3月)

令和2年4月9日

1 社会・治安情勢

(1) 

2019年10月20日に実施された大統領選挙・国会議員選挙において,開票手続の不正の疑いを契機として,全国各地で反政府派と政府支持派が抗議活動及び道路封鎖等を行い,一部で両派間又は警察・国軍との衝突や暴力行為に発展した。11月10日のモラレス大統領の辞任後には,モラレス前政権支持派団体による抗議活動が一時的に激化し,特にエルアルト市,ラパス市,コチャバンバ県,サンタクルス県北部及び北西部などにおいて,一部の暴徒による暴行,略奪,放火等が発生した。

11月12日のアニェス暫定大統領の就任,同月24日の新たな選挙を実施するための法律公布,同月25日のアニェス暫定政権と全国規模の抗議団体との「和解のための合意文書」の署名等を受けて,全国における抗議活動及び道路封鎖は停止された。

国民保護庁ホームページの発表によれば,今回の一連の抗議活動に関し,10月20日から11月末までの間に,全国で死者35名,負傷者832名が発生した。

    

(2) 

これまでも,ボリビア国内各地では,政治的要求等に基づく各職業団体,労働組合,市民団体,学生行進,集会,道路封鎖等の抗議活動が頻繁に行われている。

2018年5月,ラパス県エルアルト市で,エルアルト公立大学学生ら関係者が予算増大を求める抗議デモ中,警察官の発砲により学生1名が死亡した。

2018年8~9月,ラパス県ユンガス地方のコカ栽培者らが,政府のコカ伐採政策に反対し,武装住民がコカ伐採共同作業部隊及び治安部隊を待ち伏せて攻撃し,警察官1名が死亡,8名が負傷した。これを受け治安部隊と住民らが再び衝突し,コカ栽培者2名が死亡した。

2018年12月,最高選挙裁判所による現大統領・副大統領の再立候補認定に抗議する反政府派が,全国規模でのストライキ,道路封鎖などの抗議活動を実施した。サンタクルス市では,県選挙裁判所の放火や,国営企業の出入口を破壊した。

2019年6月,ラパス県ユンガス地方のコカ栽培者が,反政府抗議活動を活発化し,ラパス市とコロイコ市間の道路封鎖を実施し,石やダイナマイトを使用するなど一部過激化した。

2019年8月,ラパス市による市バスの新ルート開通に伴い,ミニバス運転手らの運輸労働組合が,新ルート周辺地区において道路封鎖を伴う抗議活動を行った。住民と抗議集団が衝突し,投石などにより市民が多数負傷し,市バスが破損する暴力的事態となった。

2019年9月,ポトシ県ウユニ市で,市役所に抗議するストライキが複数回実施され,市内の交通が麻痺し,邦人観光客を含む外国人観光客が同市内で数日間足止めされる事態となった。

サンタクルス市では,路上販売の禁止及びミニバスの入域規制を行う市当局に反対する商人や運転手等の抗議デモが,市内で頻発している。また,2019年3月に開始された国民皆保険制度をめぐり,サンタクルス県庁が適用を拒否して政府と対立し,市民や医療関係者を巻き込んだ抗議デモも発生している。8月下旬からは職務の制度化や法の遵守と整備等を求め,医療関係者によるストライキが40日以上続いたが,政府との調整は難航し解決には至っていない。

また,サンタクルス市内第一環状線沿いで高速バス運行のための大規模な工事が進められているが,右工事による通行止めで慢性的な交通渋滞が発生しており,工事現場付近を通行する際には注意が必要である。2019年9月には,市内において高速バス運行を推進するサンタクルス市支持派と反対派が衝突する暴力的事案となり,負傷者及び逮捕者が出た。

(3) 

新型コロナウイルス(COVID-19)対策として,3月22日から全国における終日外出禁止令,同月26日には緊急衛生厳戒令が発令された(4月15日まで。延長される可能性あり)。全国で警察及び国軍が動員され,外出禁止令に従わず,身柄を拘束され,罰金等を科される者が多数発生している。

また,2020年5月3日に予定されていた新たな大統領選挙・国会議員選挙については,COVID-19の影響により,日程を延期する法案が国会に提出された。今後も引き続き,政治・社会・治安情勢に十分注意する必要がある。

 

2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向

(1)犯罪の傾向

首都ラパス市及び隣接するエルアルト市においては,首締め強盗,置き引き,スリ,ひったくり及び偽警察官による詐欺の被害が邦人旅行者を含め頻発しており,十分な警戒が必要。特に,ラパス市のサンフランシスコ教会及びバスターミナル近辺では,邦人旅行者に対する偽警察官による詐欺事件が発生しており,十分注意する必要がある。エルアルト市では,強盗,殺人などの凶悪犯罪も頻発している。中長距離バスの車内での置き引き,すり被害も頻繁に発生している。また,市中心部の深夜飲食店では,飲み物に睡眠薬を入れて金品を奪う睡眠薬強盗も発生している。ラパス市ソナスル地区では,弁護士のふりをして民家に電話を掛け,家族が逮捕されたので弁護士費用を支払うように申し向け現金をだまし取る,「振り込め詐欺」が発生している。また,3月にはラパス市内で,医者を偽り,コロナウイルスの検査をするとだまして民家に侵入する強盗事件が発生したので注意が必要である。

サンタクルス市では,犯罪件数は減少傾向にあるものの,依然として,強盗,傷害,盗難が多発しており,他に脅迫事件,武装強盗,振り込み詐欺も発生している。

また,オートバイを使った犯罪も頻発しており,特にヘルメット着用の男性2人組のオートバイは強奪を犯す可能性が高いとされている。

なお,偽札が市中に出回っており,知らずに偽札を使用すると犯罪になるので注意する必要がある。

繁華街・市場に行く際には,多額の現金を持たない,貴重品はリュックサックなど,目の届かないところには入れず,自分の目の届く場所に携帯する等の注意も必要である。

万が一,犯罪に遭遇した場合は,犯人が拳銃を所持している場合もあるので,無理に抵抗せず,可能な限り速やかに警察へ被害の届け出を行う。

自宅等から外出する際は,施錠確認を徹底し,夜間であれば屋内照明をつけたまま外出することが望ましい。

(2)邦人被害事案

  1. 1月18日,サンタクルス県プエルトスアレス市の中央広場にて,邦人が携行していた旅券及びクレジットカード等の入ったバッグが,本人が気づかないうちに盗まれていた。
  2. 1月30日,ラパス市のバスターミナルにおいて,邦人夫婦がコパカバーナ経由ペルー・プーノ行きのバスに乗車したところ,荷物整理係を装う男から,鞄を座席上の棚に置くよう指示された。初めは断ったものの,執拗に指示をされ仕方なく鞄2個(1個は旅券入り)を棚に載せた。その後すぐ,荷物預け料の徴収に担当者が来た際,鞄から現金を出そうとしたところ,鞄2個が盗まれていた。
  3. 2月22日,ラパス市のバスターミナルにおいて,長距離バス到着後,預け入れ荷物を取りに外に出た隙に,車内座席上に置いておいた旅券等の入ったケースが盗まれた。

(3)邦人以外の被害事案等

  1. 1月1日,サンタクルス県モンテロ市において,銃で武装した3人組の強盗が民家に押し入り,抵抗した住人に対して発砲し重傷を負わせた。
  2. 1月5日,コチャバンバ県チャパレ地方チモレ市で,盗みの疑いをかけられた男性が,暴徒化した集団に暴行を受け殺害された。
  3. 1月8日,タリハ市において,深夜,ディスコから帰宅しようとした男性が男6人組に襲われ重傷を負い,後日死亡した。
  4. 1月23日深夜,ラパス市ビジャヌエボ・ポトシ地区において,20歳代の男性が路上で男4人組に刃物で刺されて死亡した。
  5. 2月1日未明,コチャバンバ市で帰宅途中の男性が男4人組に刃物で刺され重傷を負った。
  6. 2月12日,ラパス市において,ベネズエラ人4名,コロンビア人1名及びボリビア人1名からなる犯罪グループが,ATMをハッキングして現金20万ボリビアーノス(約29,000米ドル)を強奪した。
  7. 2月19日,ラパス市で,車上狙いにより金品,特に携帯電話を盗む2人組を逮捕した。逮捕された犯人は盗んだ携帯電話250台,警察官の制服,手錠及び銃を隠し持っていた。
  8. 2月21日午前,サンタクルス市第三環状線付近の民家で,50歳代の男性が,バイクで近づいてきた人物に銃で殺害された。
  9. 2月26日,エルアルト市内で,ミニバス内の強盗グループが逮捕された。
  10. 3月3日,ラパス市内で,タクシーを装い首締め強盗を敢行していた男3人組が逮捕された。犯人は,ほかにもミニバス内でも運転手に対し首締め強盗を行っていた。
  11. 3月7日,ラパス市内のミニバス内で乗客の金品をすり取り窃取する犯罪グループ6名が逮捕された。逃走する際に服や帽子を着替えることから,その犯行手口は「カマレオネス(カメレオン)」と呼ばれている。
  12. 3月10日,ラパス市内の祭りや深夜飲食店で,睡眠薬を飲ませ意識がなくなった被害者から,介抱する振りをして金品を窃取する犯罪グループが逮捕された。
  13. 3月17日,ベニ県トリニダー市において,玩具のピストルで未成年者を脅し,金品を奪い取った男が逮捕された。
  14. 3月23日,サンタクルス市内で2月25日に麻薬特別取締局の警察官を装い,麻薬隠匿の疑いで家宅捜索すると偽り民家に侵入し,緊縛した上で多額の現金を奪い逃走した犯罪グループ6名が逮捕された。
 

3.テロ・爆弾事件発生状況

2月10日,ベニ県トリニダー市のモコビ刑務所内で,手りゅう弾が爆発し2名が死亡,30名以上が負傷した。国家警察によれば,同刑務所内におけるブラジルの犯罪組織のメンバー間の権力争いによるものと見られる。手りゅう弾は,前日に服役者が外部から受け取った荷物の中に隠されていた模様。
 

4 誘拐・脅迫事件発生状況

(1)

1月21日,コチャバンバ市で男女2名が12歳の少女を誘拐した疑いで逮捕された。犯人は1月8日午後5時30分頃,オルロ市内の市場で公衆トイレに行った少女を誘拐していた。

(2)

2月9日,エルアルト市内の病院から生後1か月の乳児を誘拐した女性が逮捕された。犯人は,1月31日,同病院に乳児の定期検診に訪れた母親がトイレに行くため乳児の面倒見を頼まれた際に,乳児を連れ去った。

5 日本企業の安全に係わる諸問題

なし