ボリビア内政・外交(2019年12月)

令和2年1月6日

1 概要

(1) 4日,OAS事務局は,10月20日に実施された大統領選挙に関するOAS監査チームによる監査報告書を公表し,集計票及び集計データの処理において意図的な不正操作があった,選挙結果を有効とすることは不可能であると結論付けた。

(2) 7日,モラレス前大統領はMASの選挙キャンペーン長に選出された。12日,同前大統領は墨からブエノスアイレスに移動し,亡命申請した。

(3) 18日,ボリビア検察庁は,反逆,テロ行為及びテロ資金供与の罪状により,モラレス前大統領に対する拘禁令状を発出した。

(4) 31日,カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長及びプマリ・ポトシ市民委員会委員長は,前者が大統領候補,後者が副大統領候補となることで合意した。

2 内政

(1)世論調査

 12月13~16日,Mercados y Muestras社が9県の県都,エルアルト市及び30の中規模都市において約800名を対象に実施した世論調査の結果は以下のとおり(括弧は前回11月の結果)。

(ア)どの大統領候補に投票するか。
ロドリゲス・チャパレ地方コカ栽培6団体連盟副議長:23%(16%)
メサ元大統領:21%(14%)
誰でもない,白紙,無効:14%(8%)
カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長:13%(16%)
プマリ・ポトシ市民委員会委員長:10%(16%)
チ候補:9%(10%)
不明・無回答:8%(12%)
キロガ元大統領:2%
その他:0%(8%)
 
(イ)MAS大統領候補
誰でもない:46%(42%)
不明・無回答:12%(16%)
アルセ前財務大臣:11%(7%)
ロドリゲス・チャパレ地方コカ栽培6団体連盟副議長:9%(17%)
チョケワンカ元外務大臣:8%(5%)
コパ上院議長:7%(0%)
サルバティエラ前上院議長:4%(9%)
パリ前外務大臣:2%(0%)
アルセ前法務大臣:1%(3%)
 
(ウ)アニェス暫定大統領の出馬
賛成:28%
反対:67%
不明・無回答:5%
 
(エ)2019年10月の大統領選挙で不正はあったと考えるか
大規模な不正があった:62%
不規則行為はあったが,不正はなかった:27%
透明で公正な選挙であった:6%
不明・無回答:5%
 
(オ)モラレス前大統領は選挙不正の罪で収監されるべきか
収監されるべき:55%
モラレス前大統領は選挙キャンペーン長として帰国する権利がある:24%
モラレス前大統領は海外において選挙キャンペーン長となる権利がある:13%
不明・無回答:8%
 
(カ)モラレス前大統領が政治亡命した原因
選挙不正等を契機とする社会騒擾:70%
クーデター:25%
不明・無回答:5%
 
(キ)反MAS統一候補を立てるべきか
統一候補を立てるべき:42%
全ての候補が立候補すべき:26%
中道1名及び右派1名の候補が立候補すべき:16%
不明・無回答:16%
 
 12月21~30日,Cies Mori社が全国都市部及び農村部における1518名を対象に実施した世論調査の結果は以下のとおり。

(ア)次回大統領選挙においてどの政治家に投票したいか。
MAS候補:20.7%
アニェス暫定大統領:15.6%
メサ元大統領:13.8%
プマリ・ポトシ市民委員会委員長:8.2%
チ候補:8.1%
カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長:6.9%
メディーナ国民統一党(UN)党首:1.8%
キロガ元大統領:1.6%
その他候補:0.9%
白紙・いずれの候補でもない:9.3%
分からない:8.9%
秘密:3.3%
無効:0.9%
 
(イ)誰に投票するか決定済みか。
決定済み:31%
未決定:66%
未回答・無回答:3%
 

(2)アニェス暫定政権の動向

 3日,アニェス暫定大統領は,フスティニアーノ大統領府大臣を解任し,イェルコ・ヌニェス大統領府大臣を任命した。
イ 5日,10月23日に上院においてモラレス前大統領ほかの免責を目的とした法案は,一般的な内容に変更され,また,名称が「憲法上の権利の完全な行使を保証する法案」に変更された上で,下院において採択されたが,アニェス暫定大統領は,同法案は公布しない,憲法裁判所に対して違憲性審査の申立てを行うと発言した。
 18日,ボリビア検察庁は,反逆,テロ行為及びテロ資金供与の罪状により,モラレス前大統領に対する拘禁令状を発出した。国会による弾劾裁判はなく,通常の刑事裁判手続きが適用される。
 

(3)選挙を巡る動向

 4日,OAS事務局は,10月20日に実施された大統領選挙に関するOAS監査チームによる監査報告書を公表し,集計票及び集計データの処理において意図的な不正操作があった,選挙結果を有効とすることは不可能であると結論付けた。
 5日,ヌニェス大統領大臣は,アニェス暫定大統領は次回の大統領選挙に立候補しないと表明した。
 7日のMAS全国党大会において,2020年総選挙のキャンペーン長としてモラレス前大統領が選出された。
同日,カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長とプマリ・ポトシ市民委員会委員長の選挙協力に関する協議が決裂した。
エ 10日,米州人権委員会は,11月22~25日にボリビアに派遣したミッションの報告書を踏まえ,2019年10月の選挙以降に発生した重大な人権侵害に関する報告書を公表した。
 11日,OASボリビア選挙監視団は,新たな大統領選挙に関する約90の勧告事項を含む勧告書を提出した。
 18日,上院・下院両院本会議において,最高選挙裁判所(TSE)の新たな判事6名が選出された。
 20日,10月の大統領選挙に参加したEUボリビア選挙監視団(長期専門家2名)による,25の勧告を含む報告書が公表された。
 31日,カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長及びプマリ・ポトシ市民委員会委員長は,前者が大統領候補,後者が副大統領候補となることで合意した。
同日,TSEは,反MAS系市民団体によるMASの法人格を剥奪する訴えに対し,剥奪の条件を満たさないとの理由により,右訴えを却下した。

3 外交

(1) 4日,当地を訪問したカーステンス(Mr. Roger Carstens)米国務省民主主義・人権担当次官補はロンガリク外務大臣と会合し,対ボリビア支援の意向を表明した。
 
(2) 5日,ロンガリク外務大臣は,伯で開催された第55回メルコースール首脳会合に出席し,メルコスールの統合に貢献する意思を改めて確認した。
 
(3) 11日,米国とイスラエル国籍者の短期査証を免除する最高政令が発出された。
 
(4) 22日,ボリビア外務省はリマ・グループに参加する旨のプレス・リリースを発出した。
 
(5) 23日,ボリビア外務省は,墨により開催されるCELAC会合に参加せず,CELAC脱退を検討する旨の声明を発出した。
 
(6) 26日,ボリビア外務省は,墨政府がモラレス前大統領の政治的声明の発出を許容したことを踏まえ,墨政府のモラレス前大統領ほかに対する対応を非難する声明を発出した。
 
(7) 27日,西大使館臨代及び領事が墨大使公邸で墨大使と会合した際,覆面マスクを被り武器を携行した4名の西大使館警備担当官が乗車する西大使館ナンバーの車両二台が同公邸に進入しようと試み,ボリビア警察官等により阻止された。同事案を受け,ボリビア外務省,西外務省,墨外務省及び当地EU代表部が各種声明を発出し,外交的緊張が高まった。
 
(8) 30日,ボリビア政府は,墨大使,西臨代,同領事及び4名の西大使館警備担当官に対してペルソナ・ノングラータを宣告した。同日西政府は,対抗措置として,在西ボリビア大使館員3名に対してペルソナ・ノングラータを宣告した。
 
 
(了)