ボリビア内政・外交(2019年11月)
令和2年3月7日
1 概況
(1) 10月20日に実施された大統領選挙における不正疑惑に対する反MAS派の抗議が激化するなか,8~9日,警察の造反が各県に広がった。10日午前,OASにより選挙不正を指摘する中間報告書が公表され,アルマグロOAS事務総長等は選挙のやり直しをモラレス大統領に進言した。
(2) 同日早朝,モラレス大統領は選挙のやり直しを決定したが,メサ元大統領ほかの反MAS派は右決定を拒否し,モラレス大統領の辞任を求めた。同日午後,国軍総司令官,国家警察長官及び労働総連(COB)は,モラレス大統領に対して辞任を助言し,同日 17時頃,モラレス大統領は辞任を表明した。12日,モラレス大統領はメキシコに亡命した。
(3) 12日,アニェス上院第二副議長が上院議長,そして暫定大統領に就任し,13日にアニェス政権が発足した。
(4) 24日,新たな総選挙実施のための法律が公布された。
(5) 15日,ロンガリク外務大臣はALBAからの脱退を決定した,UASURの脱退を検討する,ベネズエラとの外交関係を断絶する,米及びチリとの関係を強化すると述べた。
(2) 同日早朝,モラレス大統領は選挙のやり直しを決定したが,メサ元大統領ほかの反MAS派は右決定を拒否し,モラレス大統領の辞任を求めた。同日午後,国軍総司令官,国家警察長官及び労働総連(COB)は,モラレス大統領に対して辞任を助言し,同日 17時頃,モラレス大統領は辞任を表明した。12日,モラレス大統領はメキシコに亡命した。
(3) 12日,アニェス上院第二副議長が上院議長,そして暫定大統領に就任し,13日にアニェス政権が発足した。
(4) 24日,新たな総選挙実施のための法律が公布された。
(5) 15日,ロンガリク外務大臣はALBAからの脱退を決定した,UASURの脱退を検討する,ベネズエラとの外交関係を断絶する,米及びチリとの関係を強化すると述べた。
2 内政
(1)世論調査
26~27日,Mercados y Muestras社が9県の県都及びエルアルト市において約800名を対象に実施した世論調査の結果は以下のとおり。
ア どの大統領候補に投票するか。
カマチョ前サンタクルス市民委員会委員長:16%
プマリ・ポトシ市民委員会委員長:16%
ロドリゲス・チャパレ地方コカ栽培6団体連盟副議長:16%
メサ元大統領:15%
不明・無回答:14%
チ候補:10%
誰でもない,白紙,無効:8%
その他:8%
イ MAS大統領候補のうちどの候補に投票するか。
誰でもない:42%
ロドリゲス・チャパレ地方コカ栽培6団体連盟副議長:17%
不明・無回答:16%
サルバティエラ前上院議長:9%
アルセ前財務大臣:7%
チョケワンカ元外務大臣:5%
アルセ前法務大臣:3%
その他:1%
ウ アニェス暫定大統領の政権運営の評価
良い:43%
普通:31%
悪い:23%
未回答:3%
エ アニェス暫定大統領の大統領就任は合法と考えるか。
合法:67%
違法:26%
未回答:7%
(2)モラレス大統領辞任までの経緯
ア 1日,最高選挙裁判所(TSE)全判事は,10月20日に実施された大統領選挙・国会議員選挙の公式な最終集計結果を採択・署名し,選挙結果に係る宣言を行い,モラレス大統領の勝利が確定した。
同日,エスピノッサOAS監査チーム調整官(メキシコ国籍)は,中立性を約束できないことを理由に同チームを辞任した。
同日,ボリビア外務省はプレスリリースにおいて,蘭は,OAS監査チームに対する支持を表明するとともに,同監査作業のために8万米ドルの支援を実施したことを公表した。
同日,ポトシ県,チュキサカ県,オルロ県,タリハ県及びコチャバンバ県の市民団体代表は,ラパスで会合し,モラレス大統領の辞任を要求する全国規模の抗議活動を調整するための「全国紛争執行部」を設置した。
イ 2日,モラレス大統領は,OAS監査チームの報告書の結論を尊重するが,同報告書が政治的ではなく,技術的・法的な内容となることを期待すると述べた。
同日,メサ元大統領は,全国の「市民共同体(CC)」関係者と会合を行った後,現在の危機の最善の解決策は,中立的で新たな選挙府により,国際社会の厳格な監視の下,新たな選挙を実施すべきと述べ,TSE及び県選挙裁判所の判事の辞任を要求する声明を発出した。
同日,サンタクルス市内で開催された大規模な反政府集会において,カマチョ(Mr. Luis Fernando Camacho)プロサンタクルス市民委員会委員長は,48時間以内のモラレス大統領辞任を求める最後通牒を突きつけ,また,国軍に対して市民の側に立つよう求める書簡を発出すると述べた。
ウ 4日,国軍はコミュニケを発出し,「憲法上の秩序,国家の安定性及び平穏が脅かされる状況において,国軍は民主主義及び国民の団結が維持されることを監視する。暴力的行為を止め,相違を対話で解決することが最優先されることを呼びかける」と述べた。政府は,(政府に対する)「忠誠のためのボーナス」として,国軍幹部に5000米ドル,全ての警察官に3000ボリビアーノスの特別ボーナスを支給した。
同日,サンタクルス市内で開催された大規模な反政府集会において,カマチョ委員長は,48時間経過してもモラレス大統領が辞任要求に応じないので,無期限の全国ストライキを激化させ,5日0時から全ての政府関係機関の機能を停止させ(国際空港,基礎サービス施設及び緊急医療施設を除く),国境地帯を封鎖すると述べた。また,カマチョ委員長は,代筆したモラレス大統領の辞表を持参して,5日に自らがラパス市に赴き,大統領の署名を得るまで帰らないと述べた。
同日,モラレス大統領は,オルロ県コロキリ地域とカラコジョ村をつなぐ道路の開通式に出席した後,オルロ市まで空軍のヘリコプターで移動する予定であったが,同ヘリコプターは離陸直後に機材トラブルにより緊急着陸した。
同日,西は西外務省FBにおいて,OAS監査チームに3万5千米ドルの支援を実施するとともに,アングロ大使(1990-93年の元駐ボリビア西大使)を監査手続きに同席させることを発表した。
エ 7日,大統領選挙における「TREP(暫定開票結果送信システム)」の監査業務を実施したEthical Hacking社(本社パナマ)が最高選挙裁判所(TSE)に提出した,投票結果の改ざんの可能性に言及する最終監査報告書が公表された。
同日,ボリビア大統領選挙を契機とする全国各地における抗議活動に関し,国連は,暴力を拒否し,対話を呼びかける声明を発出した。
同日,ボリビア政府は国際社会に対し,カマチョ委員長率いる市民運動及びメサ元大統領率いる市民共同体により,大統領府占拠によるクーデターの計画が推進されていることを訴える声明を発出した。
オ 8日夕刻,ボリビア国家警察のコチャバンバ県本部機動隊(UTOP)が造反したことを契機として,9日までに全9県の県本部において造反が発生した。
カ 9日午後,モラレス大統領は,カトリック司教会議の助言に基づき,野党3党との緊急会合を呼びかけたが,即時に拒否された。
キ 10日早朝,選挙不正の根拠を示すOAS監査チームの暫定報告書が公表され,アルマグロOAS事務総長は,選挙の無効及び新たなTSE判事による新たな選挙の実施を勧告した。また,カトリック司教会議も,モラレス大統領に対して選挙のやり直しを助言した。
同日7時過ぎ,モラレス大統領は,TSEの全判事を入替え,全ての政治勢力の同意を得て,国会において選挙やり直しのための手続きを開始することを決定した。これに対し,メサ元大統領ほかの反MAS派は右決定を拒否し,モラレス大統領の辞任を求めた。
同日午後,カリマン国軍総司令官及びカルデロン国家警察長官は,モラレス大統領に対して辞任を助言した。モラレス大統領の最大の支持母体の一つである労働総連(COB)も同様に辞任を助言した。
同日17時頃,モラレス大統領は,ラパス市からコチャバンバ県チャパレ地方に大統領専用機で移動し,記者会見において,辞任を表明した。続いて,ガルシアリネラ副大統領も辞任を表明した。
ク 12日,モラレス大統領及びガルシアリネラ副大統領はメキシコ政府専用機でメキシコに亡命した。
(3)アニェス暫定政権成立の経緯
ア 10~11日,モラレス大統領が辞任したことにより,一時的に権力の空白が生じ,治安が悪化した。また,政府高官等が相次いで辞任した。
イ 11日,憲法上の大統領職承継順位に基づき,反MAS派のMDS(社会民主運動党)のアニェス上院第二副議長は,大統領に就任する用意がある旨発言した。
ウ 12日,アニェス上院第二副議長は,定足数(出席議員の過半数)が満たされていない中,上院規則第41条に基づき,上院議長に就任し,直後に,上院・下院両院本会議を招集し,憲法第169条第1項及び第170条に基づき,暫定大統領に就任した。
同日,憲法裁判所は,2001年7月31日付憲法宣言第0003/01号の「考慮3」第111.3項を踏まえ,大統領継承においては,憲法第169条第1項の内容が適用されるべきとの声明を発出した。
エ 14日, MASとアニェス暫定政権派政党(政党連合「民主統一(UD)(社会民主運動党(MDS)及び国民統一党(UN党)で構成)」及びキリスト教民主党(PDC))との合意を受け,上院の会合において全会一致で,MASのコパ議員(エルアルト市出身)が上院議長に選出され,就任した。
同日,アニェス暫定大統領は,炭化水素大臣,生産開発・複合大臣,文化・観光大臣,保健大臣及びスポーツ大臣,国家警察長官を任命し,15日,開発企画大臣を任命した。
オ 15日,ソサ(Mrs. Cristina Diaz Soza)タリハ県裁判所判事が新たな最高裁判所長官(女性初)に任命された。
カ 18日,メサ元大統領は,「市民共同体(CC)」はアニェス暫定大統領を承認及び支持すると発言した。
(4)新たな選挙の実施及び国内の治安回復に関する経緯
ア 20日,アニェス暫定大統領は,10月20日の選挙を無効と宣言し,新たな選挙を実施する旨,また,最高選挙裁判所(TSE)及び県選挙裁判所判事を選出する旨の暫定政権作成の法案を国会に提出した。
同日,メキシコ亡命中のモラレス前大統領が,都市部を包囲して食料供給網を遮断するよう指示する音声が入った映像がメディアで報道された。
イ 21日,ムリージョ内務大臣は,上記映像を踏まえ,扇動及びテロ行為の罪状により,モラレス前大統領及びキンタナ前大統領府大臣を検察庁に告訴した。
同日,モラレス前大統領及びガルシアリネラ前副大統領は次回選挙に立候補しない旨表明した。
同日,文化省施設でモロトフ爆弾の製造に関与した疑いで,アラノカ前文化・観光大臣に対する拘禁令が発出された。
ウ 22日深夜,上院憲法委員会において新たな選挙の実施に関する法案(法案名「総選挙を実施するための例外的及び過渡的制度の法案」について与野党間合意が成立した。23日,上院及び下院において同法案が各々全会一致で採択され,24日に公布された。
エ 23日,アニェス暫定政府,MAS,ボリビア・カトリック司教会議及び国連により,「ボリビアにおける対話のための合意」に関する文書が署名(国連は立会人署名)された。
同日,上院においてMAS議員がモラレス前大統領ほかの免責のための法案(法案名「ボリビア国民の権利及び保証を再確認するための特別法案」)を提出したが,一部MAS議員の造反により採択されず,審議が中断された。
オ 25日,アニェス暫定政権と全国規模の前政権支持派抗議団体との間で「和解のための合意文書」が署名された。
同日,アニェス暫定大統領は,大統領指名枠により,ロメロTSE判事を任命した。
カ 26日,反MAS派の5つの政党は次回選挙に向けて統一候補の擁立及び政党連合の実現を追求することを表明した。
同日,メサ元大統領は次回選挙への立候補を表明。カマチョ・サンタクルス市民委員会委員長及びプマリ・ポトシ市民委員会委員長は,統一候補が擁立される条件で,大統領・副大統領候補になる用意があると発言した。
キ 28日,EU議会は,可能な限り早期に,民主的,自由で内包的,公正かつ透明性のある新たな選挙が実施されなければならない旨の決議を採択した。
ク 29日,カマチョ・サンタクルス市民委員会委員長は,同委員長職を辞任し,反MAS統一候補の擁立を条件として,大統領候補に立候補する書簡を公表した。
ケ 30日,キリスト教民主党(PDC)は,次回の選挙においてチ候補を擁立せず,別の候補を擁立することを決定した。
3 外交
(1)15日,ロンガリク外務大臣は,ALBAからの脱退を決定した,UNASURの脱退を検討する,ベネズエラとの外交関係を断絶する,米とチリとの関係を強化すると述べた。
(2)21日,ボリビア外務省は,メキシコ亡命中のモラレス前大統領による内政干渉に関し,メキシコに抗議するプレスリリースを発出した。
(3)26日,セラテ駐米ボリビア臨時代理大使が任命された。
(4)28日,ロンガリク外務大臣は,イスラエルとの外交関係を再開し,また,イスラエル人に対する査証免除処置を採ったと述べた。
(2)21日,ボリビア外務省は,メキシコ亡命中のモラレス前大統領による内政干渉に関し,メキシコに抗議するプレスリリースを発出した。
(3)26日,セラテ駐米ボリビア臨時代理大使が任命された。
(4)28日,ロンガリク外務大臣は,イスラエルとの外交関係を再開し,また,イスラエル人に対する査証免除処置を採ったと述べた。
(了)