ボリビア内政・外交(2016年6月)

平成28年3月31日

1 概況

(1) 内政

 10~11日,スクレ市で司法サミットが開催された。六つの課題について議論され,解決策が示された。


 26日,全国労働総連(COB)は,国営アパレル会社(ENATEX)の閉鎖及び800人の従業員解雇の取消しを求めて政府と協議したものの合意に至らず,6月29日~7月1日に全国規模のストライキが行われた。


(2)外交

 9日,ボリビア政府はロンドンで貿易投資フォーラムを開催。


 28日,ボリビアは国連安保理の非常任理事国に選出された(任期は2017~18年)。


2 内政

(1)政府の動き

 10~11日,スクレ市で司法サミットが開催された(3~4日の開催予定が延期)。司法府高官の選出,司法へのアクセス,司法の遅延,司法府における汚職,刑法犯に対する政策及び処罰,弁護士及び裁判官の養成の六つの課題について議論され,解決策が示された。児童に対する死に至る暴行の場合に終身刑を導入することが提案されたが,終身刑の導入のためには憲法改正が必要である。

 

 14日,モラレス大統領はロドリゲス駐蘭大使(前大統領)を「海への出口」問題に加え,シララ問題に関する国際司法裁判所における訴訟の代理人に任命した。

 

(2)麻薬関係

 6月に国防省が発表した報告書によると,今年1月1日から6月7日までにボリビア麻薬特別取締局(FELCN)は95,79トンの麻薬を押収した。内訳はコカ・ペースト6.02トン,コカイン塩酸塩8.68トン,大麻81.09トンであった。また,同期間中に違法なコカ葉栽培地2.054haが根絶された。

 

 23日,国連薬物犯罪事務所(UNODC)は「麻薬に関する報告書2016」を公表した。同報告書は,コカインの消費において南米が世界一であり,コカ葉の栽培においては,コロンビア60,000ha,ペルー42,800ha,ボリビア20,400haと述べている。

 

(3)政府による報道の自由の制限に対する報道関係者の動き

 18日付け「パヒナ・シエテ」紙によると,ニューヨークに本部を置くNGOジャーナリスト保護委員会は,ボリビア政府に対してメディアに対する脅迫をやめ,報道の自由を尊重するよう要請した。

 

 20日,ジャーナリストのアマリア・パンド女史は,政府によるメディアへの圧力が強められているとして米州人権委員会に対し保護を要請した。

 

 21日,「パヒナ・シエテ」紙,ANF通信社,ラウル・ペニャランダ元「パヒナ・シエテ」紙編集長及びアンドレス・ゴメス元「ラジオ・エルボル」編集総局長は国連人権高等弁務官に対し,ボリビアへの報告者の派遣を要請した。

 

 22日,国内プレス協会(ANP)はデニス・ラシコット国連人権高等弁務官事務所代表に,当国の状況を説明する書簡を送付した。

 

(4)

 7日,サンタクルス県裁判所は,公金横領の疑いで告発されているコスタス・サンタクルス県知事に対し,予防措置として8万ボリビアーノス(約11,500米ドル)の保釈金と20日ごとの検察庁への出頭を命じた。

 

(5)

 26日,全国労働総連(COB)は,国営アパレル会社(ENATEX)の閉鎖及び800人の従業員解雇の取消しを求めてキンタナ大統領府大臣,アギラル教育大臣,オレジャーナ開発企画大臣と協議したものの合意に至らず,6月29日~7月1日に全国規模のストライキが行われた。

 

(6)世論調査結果

 CAPTURA CONSULTING社が5月27~30日にラパス,エルアルト,コチャバンバ及びサンタクルスの都市部で行った世論調査によると,モラレス大統領の2019年大統領選挙への再出馬を可能とするための憲法改正の是非を問う国民投票が行われた場合の投票行動について,58.1%が反対票を投じる,36.8%が賛成票を投じる,5.1%が未回答であった

 

 23日付けRTPの報道によると,IPSOS社がラパス,エルアルト,コチャバンバ及びサンタクルス市で行った世論調査によると,モラレス大統領の取組について,52%が評価する,41%が評価しない,5%が分からない,2%が未回答であった。ガルシア・リネラ副大統領の取組については,43%が評価する,50%が評価しない,6%が分からない,1%が未回答であった。経済政策については,44%が評価する,45%が評価しない,10%が分からない,1%が未回答であった。野党の取組については,58%が評価しない,30%が評価する,11%が分からない,1%が未回答であった。

 

 24日付けRTPの報道によると,IPSOS社がラパス,エルアルト,コチャバンバ及びサンタクルスの都市部及び農村部で行った世論調査によると,県知事の取組についての調査結果は以下のとおり。
 

  評価する 評価しない
ルベン・コスタス・サンタクルス県 67% 26%
イバン・カネラス・コチャバンバ県知事 37% 41%
フェリックス・パチ・ラパス県知事 42% 41%
ルイス・レビージャ・ラパス市長 58% 38%
ホセ・マリア・レジェス・コチャバンバ市長 58% 26%
ペルシ・フェルナンデス・サンタクルス市長 68% 26%
ソレダ・チャペトン・エルアルト市長 35% 59%
 

 MERCADO Y MUESTRA社が17~21に行った世論調査によると,65%がモラレス大統領は2月に実施された国民投票の結果を尊重すべきであると回答。また,国民投票の再度実施に関し,31%が再度実施されることを期待すると回答。モラレス大統領の取組については,29%が評価する,44%が普通,25%が評価しない,2%が未回答であった。

3 外交

(1)多国間関係

 5月31日に米州機構(OAS)がベネズエラの民主主義侵害につき民主憲章を発動し,臨時常設理事会の開催を要請した件につき,6月1日,当国外務省は非難する旨のプレスリリースを発出。


 2日,国連人権高等弁務官ボリビア事務所は,先住民基金汚職問題を追及していたエドゥアルド・レオン弁護士が不当に拘留されている件につき,ボリビア政府に対して適正手続の保障を要請する旨のプレスリリースを発出。


 6日,モラレス大統領はボリビアが国連内陸開発途上国会議副議長に就任した旨述べた。


 13~15 日,ドミニカ共和国のサント・ドミンゴで行われたOAS常設理事会にチョケワンカ外務大臣が出席し,「海への出口」問題及びシララ水源問題についてボリビアの立場を主張する演説を行った。


 28日,ボリビアは国連安保理の非常任理事国に選出された(任期は2017~18年)。モラレス大統領は,その間の当国の優先課題としてコロンビア和平,パレスチナ問題,米国・プエルトリコ関係を挙げた。


(2)対チリ関係

 5日,アルラルデ外務次官は,チリのアントファガスタ港における一方的な使用料の値上げに関し,ラテンアメリカ統合連合(ALADI)に対し告発したと述べた。


 16日,当国外務省は,アントファガスタ港での違法状態についてチリに抗議するプレスリリースを発出。


 チリが国際司法裁判所(ICJ)に提訴したシララ問題に関し,19日,ロドリゲス代理人は,23日にボリビアとチリの代理人が会合し,今後の日程を決定する旨発表した。日程は,先ずチリが申述書を提出し,ボリビアが答弁書を提出,チリが抗弁書を提出,ボリビアが再抗弁書を提出した後,口頭手続となる見込み。


(3) その他二国間関係

 2~4日,ムヒカ前ウルグアイ大統領が当国を訪問。コチャバンバでコカ葉生産者に対して講演したほか,サンタクルスのガブリエル・レネ・モレノ大学でラテンアメリカの統合と民主主義に関する講演を行った。


 9日,ボリビア政府はロンドンで貿易投資フォーラムを開催。オレジャーナ開発企画大臣,アルセ経済・財政大臣,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣,ラモス生産開発・複合経済大臣,ナバロ鉱業・冶金大臣,マチカオ文化・観光大臣が出席し,報道によると,欧州の企業300社が参加した。


 16~17日,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣はサンクトペテルブルク国際経済フォーラムに出席し,ロシア国営原子力企業ロスアトムのキリエンコ社長と人材育成等に関する三つの覚書に署名した。


 24日,ボリビア外務省は23日に中国江蘇省で起こった竜巻に関して追悼の意を表するプレスリリースを発出した。


 29日,麻薬及び犯罪に関するボリビア・ブラジル合同委員会第4回会合がサンタクルスで開催され,カセレス社会防衛・規制物質担当次官とマグノ・ブラジル大使との間で,両国間の麻薬密売,自動車の不正取引,人身売買を根絶するために国家警察内にインテリジェンスセンターを創設する合意文書に署名した。


4 社会

 22日の各紙の報道によると,国連開発計画(UNDP)は,「ボリビアの新たな顔」と題する開発に関する報告書にて,この10年でボリビアの貧困率は56%から39%に削減され,すなわち,人口の17%,約170万人が貧困層から脆弱中間層になったと述べている。UNDPは,右原因は,84%は労働市場の向上,15%は政府の政策によるものと言及。

(了)