ボリビア内政・外交(2016年5月)
1 概況
(1) 内政
ア 11日,閣議で,シララ水源の防衛に関する審議会を設立する旨の最高政令第2760号が承認,16日,レネ・マルティネス元上院議長が同会長に任命された。
イ 23日,MAS党を支持する女性農民団体「バルトリーナ・シサ」は,モラレス大統領の再々選を可能とするための国民投票実施のために署名を集め始めた旨発表。
(2)外交
ア
2日,梶田東大宇宙線研究所所長(2015年ノーベル物理学賞)が当国を来訪,サン・アンドレス大学(UMSA)で名誉博士号授与式及び記念講演が行われた。イ 19~21日,モラレス大統領はキューバを訪問し,ラウル・カストロ国家評議会議長と地域情勢等につき会談した。
2 内政
(1)政府の動き
ア 1日,モラレス大統領は7件の最高政令を公布。右には,本年,6%の給与引き上げ最低賃金を9%引き上げて,1.805ボリビアーノスと定めるものが含まれる。
イ 1日,モラレス大統領は,現時点では民間企業の更なる国有化を行う考えはなく,外国の投資を尊重する旨,企業に利益を上げてもらうことが国益にもかなう旨述べた。
ウ 13日,議会の投票により,ダビッド・テサノス・ピント氏が人権擁護官に選出された。同氏は内務省で勤務後,会計検査院で勤務していた。
エ 21日,性転換者が身分証の名前,性別,写真を変更する手続きを簡素化する法律が公布。
オ 23日,MAS党を支持する女性農民団体「バルトリーナ・シサ」はモラレス大統領の再々選を可能とするための国民投票実施のために署名を集め始めた旨発表。
カ 31日,スクレにて,新憲法裁判所長にオスワルド・バレンシア氏が任命。同氏は,憲法裁判所が6月3,4日(注:実際は10,11日に開催)の司法サミットで発表される改革案の合憲性を判断する可能性があり,中立的な立場維持のため,同サミットに参加しない旨述べた。
(2)シララ水源問題
ア 11日,閣議後チョケワンカ外務大臣は,シララ水源の防衛に関する審議会を設立する最高政令第2760号が承認されたと述べた。同審議会は,大統領,副大統領,外務大臣,国防大臣,内務大臣,制度的透明性・汚職撲滅大臣,環境・水資源大臣,国家利益擁護官から構成され,本件に戦略的に対応することとなる。
イ 16日,レネ・マルティネス元上院議長(元先住民の司法制度担当副大臣)が,シララ水源及びチリとの国境の水資源の防衛に関する審議会の会長に任命された。
(3)
1日,コスタス最高選挙裁判所(TSE)副長官は,10,11日に米州機構(OAS)と会合し,本年中に選挙人登録の監査整備のための計画を策定する旨を発表。
(4)
4日,モラレス大統領の元恋人で,中国企業CAMC Engineering社の元営業部長ガブリエラ・サパタ女史の汚職問題を調査している両院委員会は,利益誘導(汚職)はなかったが,CAMC社がボリビア政府と契約を締結したブロブロ-モンテロ間の鉄道建設につき異常があったと公表した。
(5)
17日,サパタ女史はラジオ番組「Cabildeo(裏工作)」の電話インタビューに答え,コチャバンバ市電建設,ビルビル空港ハブ化建設,プロピレン工場建設に関する政府との契約につき,贈収賄があった旨述べた。これに対し,関係閣僚は反発した。
(6)世論調査
11日,ヌニェス上院議員(民主統一(UD))は,検察にガルシア・リネラ副大統領を経歴詐称で告発した。
3 外交
(1)多国間関係
ア 18,19日,パラグアイのアスンシオンで第42回パラグアイ・パラナ水路協定に関する委員会が開催され,フェレイラ国防大臣が出席した。
イ 25日,アギラル教育大臣は,パリで行われたユネスコ教育2030行動枠組に関する委員会に出席し,ボリビアが日本と共に副議長国に就任したと述べた。
ウ 19日,スクレで中南米市長会議が開催された。
(2)対日関係
2日,梶田東大宇宙線研究所所長が当国を来訪し,サン・アンドレス大学(UMSA)で名誉博士号授与式及び記念講演が行われた。また,東大宇宙線研究所は,宇宙線観測に関するUMSAとの共同プロジェクトALPACAの始動を発表した。
(3)対チリ関係
ア 8日,モラレス大統領は,4月にチリがボリビア国境から15キロに軍事基地を建設したことにつき非難した。
イ 16日付け「パヒナ・シエテ」紙によると,スコクニック当地チリ総領事は,2020年までに,オタワ条約締約国として国境の対人地雷を撤去すると述べた。本来2012年までに終了すべきものであったが,2020年まで期限が延長されたもの。
ウ 16日,モラレス大統領はチリの国境付近の軍事基地設置について,報道では軍事基地ではないことが確認されており,チリの後退を歓迎する旨述べた。
(4)対ブラジル関係
ア 12日,ボリビア外務省は,ルセフ大統領の職務停止を拒絶する旨のプレスリリースを発出した。
イ 22日付け「ラ・ラソン」紙によると,ブラジルはテメル大統領代行政権において,ボリビアへの態度を硬化させることが予想され,短期的には,ガス販売契約の更新及び麻薬密輸問題が二国間にとって問題となる。
(5)対ペルー関係
ア 4日,クラロス公共事業・サービス・住宅大臣は,22日,スクレ市にて大陸横断鉄道建設実現のため,ペルーと実務レベルの交渉を始めると述べた。
イ 12日,ボリビア外務省は23,24日にスクレで予定されていたペルーとの閣議が延期された旨発表した(ペルー大統領選挙直前であることが理由との由。)。
(6)その他二国間関係
ア 19~21日,モラレス大統領はキューバを訪問し,ラウル・カストロ国家評議会議長と地域情勢等につき会談した。また,ホセ・マルティ勲章を授与された。同大統領はその後ベネズエラに立ち寄り,マドゥロ大統領を表敬訪問した。
イ 19日,ボリビア外務省はエジプト・エアの事故につき追悼の意を表明するプレスリリースを発出した。
ウ 22日付け「ラ・ラソン」紙によると,トルロット当地EU大使は,EUがボリビアとの査証免除交渉を凍結した旨述べた。
エ 22日付け「ラ・ラソン」紙によると,ソートン当地英国大使は,6月にロンドンで対ボリビア投資・貿易促進フォーラムが開催されるが,現在ボリビアが多額の投資を誘致するために望ましい状況にあるかは分からない旨述べた。
オ 23日,ドイツの下院議員団7名が来訪,モラレス大統領と会合し,当国への投資及び技術移転につき協議した。同議員団は,ゴンサレス上院議長及びモンターニョ下院議長との会合,サンタクルス,コチャバンバ訪問を行った。
カ 31日,ロドリゲス電力・代替エネルギー次官及びチャベス原子力庁長官は,ロシア国営原子力企業ロスアトムがモスクワで主催した国際フォーラム「第8回ATOMEXPO2016」に講演者として出席した。主要テーマは,炭素を排出しない原子力エネルギーの見通しの分析。
(了)