ボリビア内政・外交(2016年3月)
1 概況
(1) 内政
ア 7日,最高選挙裁判所が2月21日に行われた国民投票の最終結果を発表したところ,賛成48.70%,反対51.30%であった。
イ 9日,閣議にて,原子力研究開発センターの実施機関となる原子力庁の設立を定める最高政令が承認された。
ウ 23日,モラレス大統領等が出席してラパス市アバロア広場にて「海の日」記念式典が行われた。
(2)外交
ア 7日,マルコーラ亜外務大臣が当地を来訪し,両国間の協力強化に係る共同宣言に署名した。
イ 31日,オレジャーナ開発企画大臣はインドを訪問し,技術協力及びプロジェクトへの資金供与等に関し協議した。
2 内政
(1)国民投票
ア 4日,ウリオナ最高選挙裁判所(TSE)長官が,国民投票実施後の今後の課題として,選挙人登録制度の監査を行い国際基準に合わせることであると述べた。
イ 7日,TSEが2月21日に行われた国民投票の最終結果を発表したところ,賛成48.70%(2,46,135票),反対51.30%(2,682,517票)であった。
(2)政府の動き
ア 1日,オルテンシア・ヒメネス電力・代替エネルギー次官が辞任し,後任としてホアキン・ロドリゲス・グティエレス電力監督庁価格・投資担当局長が任命された。
イ 2日,エスピノサ通信副大臣が辞任し,3日,パオラ・ゴンサレス氏が後任に任命された。
ウ 9日,モラレス大統領は中央銀行で行われた式典にて,2016-2020年経済社会開発計画(PDES)法を公布した。右では,同期間の目標として,平均5%の経済成長率を維持すること,485,74億ドルの公共投資を行うこと,2020年にはGDPが570億ドルを達成すること等を掲げている。
エ 15日,モラレス大統領及びガルシア・リネラ副大統領は,先日の国民投票の結果に関し,MAS党国会議員と6時間以上協議した結果,今後,政府は広報強化のためソーシャルネットワークを活用する旨発表した。
オ 23日,ラパス市アバロア広場にて「海の日」記念式典が行われ,モラレス大統領はチリに対して,「海への出口」問題に関し真摯な対話を行うよう求める旨,また,海洋問題戦略局(DIREMAR)に対し,チリによるシララ水源の一方的かつ不法な利用に関し,ICJに提訴する可能性を検討するよう求める旨述べた。
(3)原子力研究センターの設置
ア 6日,エルアルト市において,モラレス大統領,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣とキリエンコ・ロシア国営企業ロスアトム社社長(元首相)が原子力に関する二つの協定に署名した。一つ目は原子力の平和的利用に関する協力に関する協定,二つ目はボリビアにおける原子炉の建設に係る協力に関する協定。ロスアトム社が原子炉の設計,建設,維持,廃炉,研究センター閉鎖まで協力することとなっている。本プロジェクトは3億ドルで,建設には4年かかる見込み。
イ 9日,閣議にて,原子力庁の設立を定める最高政令が承認された。同庁は,炭化水素・エネルギー省所管の独立した行政機関である。
ウ 20日付け「パヒナ・シエテ」紙によると,原子力研究開発センター設立に関し,放射能性廃棄物が出ることが想定されるが,右は,国内で放射性廃棄物の取得,通過,保管を禁じる憲法第344条に抵触する可能性がある。
(4)
1日,モラレス大統領の元恋人で,中国企業CAMC Engineering社の元営業部長であるガブリエラ・サパタ女史の汚職問題を調査している両院委員会のリベロ委員長は,ボリビア政府とCAMC Engineeringの契約の違法性を調査するが,本件への関与が疑われているキンタナ大統領府大臣にまでは調査は及ばないだろうと述べた。
(5)
2日付け「ラ・ラソン」紙によると,内務省は,本年1~2月に69.4トンの麻薬を押収したと発表した。内訳は,大麻58.63トン,コカイン8.2トン,コカインペースト2.65トンであり,昨年1~7月に押収した量に匹敵する。
(6)
8日,サンタクルス県検察庁は2010年の案件に関し,コスタス・サンタクルス県知事及び同県庁の元関係者を,40台のワゴン車を不正に購入したとして告発した。サンタクルス県のアニェス顧問は,本件は国民投票の結果を受けた政治的決定であると批判した。
(7)
28日,ベラスコ法務大臣は記者会見にて,4月16,17日に予定されていた司法サミットは,司法関係当局の要請により6月3,4日に延期される旨述べた。
(8)世論調査
ア 7日,ATBは,IPS0S社が2月3~16日にラパス,エルアルト,コチャバンバ及びサンタクルスで行った世論調査によると,58%がモラレス大統領の仕事振りを評価,32%が評価しない,10%が未回答・分からないと回答したと報道した。一方,50%がガルシア・リネラ副大統領の仕事振りを評価すると答えた。
イ 8日付け「エル・コメルシアル」紙は,政治コミュニケーション協会(Asociación de Comunicación Política,本部:マドリッド)が行った世論調査によると,モラレス大統領の支持率は69%で,右は中南米で2番目に高かったと報道した。最も支持率の高かったのはメディーナ・ドミニカ共和国大統領で,79%であった。
ウ 21日,Equipos Mori社がモラレス政権の取り組みに関し3月16~18日,ラパス市,エルアルト市,コチャバンバ市,サンタクルス市,タリハ市で行った調査の結果を発表したところ,55%がモラレス大統領を評価する,40%が評価しないと答えた。同社が昨年11月に行った調査では,76%が評価する,22%が評価しないと答えており,モラレス大統領の支持率が低下した。
3 外交
(1)多国間関係
2日,ボリビア政府は世界銀行,IDB等と今後の同国経済の見通し等について協議した。
(2)二国間関係
ア 対アルゼンチン関係
(ア) 2日,ブエノスアイレスにて,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣がアラングレン・エネルギー鉱業大臣に売電に関する提案書を提出した。
(イ) 7日,マルコーラ亜外務大臣が当地を来訪し,コンドル・デ・ロス・アンデス勲章(大十字位)を授与された。また「マ」外相は,ガルシア亜移民局長と共に,ロメロ内務大臣と「両国間の国境の統合管理方式実施のための協定」に署名したほか,「マ」外相とチョケワンカ外務大臣は両国間の協力強化に係る共同宣言に署名した。
イ 対チリ関係 29日,モラレス大統領はシララ水源を訪問し,政府はチリによる同水源の不当で違法な利用につき告訴するため,専門家チームを結成する旨述べた。
ウ 対ペルー関係
(ア) 13日,モラレス大統領は,2月のCELACの会合でウマラ・ペルー大統領より,ボリビアが「海への出口」問題でチリと合意に至った場合,ペルーの港を放棄するのではないかとの懸念が表明されたと述べた。モラレス大統領は,大陸横断鉄道はペルーの港とつながると述べ,モラレス大統領及びウマラ大統領の任期が終わる前に同プロジェクトの道筋を付けたいと述べた。
(イ) 18日,クラロス公共事業大臣は,ボリビアとペルーは,大陸横断鉄道プロジェクトを実現するために,常設の作業部会の設置を決定したと述べた。両国は5月23日にスクレにて会合予定。
エ 対中国関係
(ア) 1日,ムトゥン製鉄所の建設契約に関し,ボリビア政府と中国企業Sinosteel Equipmentは,同社が必要な書類を提出していないため再び延期することとした。
(イ) 10日,当地中国大使館にて,呉元山(Wo Yuanshan)大使とフェレイラ国防大臣が協定に署名し,767万5千米ドル程度の軍事機器を贈与する。
(ウ) 27日,馬培華(Ma Peihua)中国民主建国会副首席ほか17人のミッションが来訪し,モラレス大統領と会合した。
オ 対英国関係
(ア) 8日,英国の議員団が来訪し,チョケワンカ外務大臣,オレジャーナ開発企画大臣及びゴンサレス上院議長と会合し,気候変動,貿易,投資,エネルギー,麻薬対策等について協議した。
(イ) 29日,当国のソートン英国大使は,EUはボリビアと通商協定の交渉を再開する用意があると述べた。
カ 31日,オレジャーナ開発企画大臣はインドを訪問。同大臣は技術協力及びプロジェクトへの資金供与を含む幅広い課題について前進した旨述べた。
4 社会
22日の各紙の報道によると,国連開発計画(UNDP)は,「ボリビアの新たな顔」と題する開発に関する報告書にて,この10年でボリビアの貧困率は56%から39%に削減され,すなわち,人口の17%,約170万人が貧困層から脆弱中間層になったと述べている。UNDPは,右原因は,84%は労働市場の向上,15%は政府の政策によるものと言及。
(了)