ボリビア内政・外交(2016年2月)

平成28年2月29日

1 概況

(1) 内政

  • 17日,エルアルト市において,同市内の学校の改修を求めるデモ隊の一部が暴徒化し,市役所を襲撃・放火,6名が死亡した。
  •  21日,憲法改正の是非を問う国民投票が実施され,賛成約49%,反対約51%で反対が多数となった。

  • (2)外交

  •  2日,モラレス大統領は伯訪し,ルセーフ伯大統領と初めての公式首脳会談を実施した。
  •  10日,ラングレン・アルゼンチン・エネルギー鉱業大臣が来訪した。

  • 2 内政

    (1)憲法改正の是非を問う国民投票

     15日,ウリオナ最高選挙裁判所(TSE)長官は記者会見にて,票の不正操作を避けるため,国民投票当日,投票箱毎の開票結果用紙の写真を撮って投票所から本部に送信することとする旨発表。

     

     21日,憲法改正の是非を問う国民投票が実施され,24日時点で,賛成48.71%,反対51.29%で反対が多数となり,同日,モラレス大統領は事実上の敗北宣言を行った。これにより,モラレス大統領及びガルシア・リネラ副大統領は2019年の大統領・副大統領選挙に再立候補することはできず,2020年1月22日に任期を終えることとなった。投票率は84.45%,投票全体のうち,白票1.25%,無効票3.52%であった。投票又は開票の際に問題のあったラパス県,サンタクルス県,ベニ県の一部の投票所においては3月6日に再投票が行われるが,対象となる有権者は15,800人(全体の0.18%)であり,最終結果に影響は与えない。

     

     26日,拡大閣議が行われ,国民投票の結果の分析が行われた。モラレス大統領は,全ての大臣の留任を決定し,党内の分裂を避けるため,次期大統領候補については2018年まで党内で議論しない旨述べた。

     

    (2)モラレス大統領の隠し子問題及び元恋人の汚職問題

     3日,サンタクルス在住ジャーナリストのカルロス・バルベルデ氏が2007年に生まれたモラレス大統領の隠し子の出生証明書を暴露した。子供の母親であるガブリエラ・サパタ女史が営業部長を務める中国企業CAMC Engineering社は,ボリビア政府と566百万米ドルの契約を取り付けている。

     

     5日,モラレス大統領は,息子は1歳にもならず亡くなった旨述べ,サパタ女史に対する利益誘導を否定した。また,2007年以降,サパタ女史とは会っていないと述べたが,翌日,2015年にモラレス大統領とサパタ女史が一緒に写っている写真が暴露された。

     

     10日,クラロス公共事業・サービス・住宅大臣は,昨年11月,ラパス県裁判所がCAMC Engineering社に対し,契約不履行による158.8百万米ドルの保証金の支払いを免除する判決を下していた旨発表した。同日,モラレス大統領は,エルバス会計検査院長官に,同社との契約について調査するよう命じた。

     

     26日,サパタ女史が汚職の疑いで逮捕された。検察はサパタ女史を,不正収益の洗浄(マネーロンダリング),モラレス大統領との縁故関係を利用した業務上横領の疑いで告発。サパタ女史は,大統領府より巨額の金銭を受け取っていたこと,私用で大統領府に繰り返し出入りしていたことが明らかになっており,右により29日,チョケ元大統領府社会行政課長が贈賄の疑いで逮捕された。

     

    (3)国民投票前の世論調査結果

     

    (4)

     1~5日,輸送用大型車両運転手等が,同セクターが支払う税金や検査,罰則の柔軟化(軽減)を求めて,近隣諸国に至る道路,国内の主要道路で,道路封鎖を行った。

     

    (5)

     17日,エルアルト市において,同市内の学校の改修を求めるデモ隊の一部が暴徒化し,市役所を襲撃・放火,6名が死亡した。暴徒の中にはMAS党の過激派が加わっており,市役所を放火した際,前市長(MAS党)の任期中の汚職問題に関する資料も燃やされた。市役所は早朝より数次にわたり警察に対応を要請したが,警察隊員の現場到着が遅すぎたため惨事を防ぐことはできなかった。

     

    (6)

     26日,モラレス大統領はチャパレ市(コチャバンバ県)にて行われた会合で,次回大統領選挙までに,再び憲法改正の是非を問う国民投票を行う可能性を示唆した。

     

    (7)

     29日,フェレイラ国防大臣は,記者会見で,国営航空会社TAM(Transporte Aereo Militar)社が中国企業から購入した2機の飛行機につき,1年前から部品交換ができないために利用できていないとして,本件売買の過程について調査している旨述べた。

    3 外交

    (1)多国間関係

     3~5日,米州機構(OAS)選挙監視団の先遣隊が到着。フェルナンデス元ドミニカ共和国大統領を団長とし,メディアのモニタリング及び選挙人登録制度の専門家等も来訪。フェルナンデス選挙監視団長はモラレス大統領と会談したほか,TSE判事と会合した。


     18~23日,約70名のOAS選挙監視団が来訪した。TSEは,そのほか,南米諸国連合(UNASUR)25名,ラテンアメリカ選挙専門家理事会(CEELA)10名,メルコスール10名,国連人権高等弁務官20名,ラテンアメリカの様々な国から25名,アルゼンチンの選挙監視団が来訪する旨発表している。


     22日,フェルナンデスOAS選挙監視団長は記者会見にて,開票結果の公表が「遅い」と評価すると共に,TSEに対し,選挙人登録の全面的な監査を行うこと及びTSEと各県の選挙裁判所の連携を向上させるよう勧告した。


    (2)二国間関係

     

     2日,モラレス大統領は訪伯し,ルセーフ伯大統領と初めての公式首脳会談を実施した。チョケワンカ外務大臣,オレジャーナ開発企画大臣及びサンチェス炭化水素・エネルギー大臣が同行した。会談後に行われた記者会見において,モラレス大統領は,両国の関心のある複数の分野,具体的には炭化水素,鉄道,農業,保健医療,食料安全,水力発電,麻薬対策といった分野において両国が協力していくとの合意を取り付けた旨述べた。また,サンチェス大臣は,天然ガスの売買の継続が合意された旨述べた。ボリビアのメルコスール加盟につき,現在ブラジルとパラグアイの議会の承認待ちであるが,ルセーフ大統領は,ボリビアの早期加盟を支持する旨述べた。


     対アルゼンチン関係

    (ア) 10日,アラングレン・アルゼンチン・エネルギー鉱業大臣が来訪し,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣と会合,炭化水素及びエネルギーについて協議を行った。

    (イ) 25,26日,ブエノスアイレスで,アラングレン・アルゼンチン・エネルギー鉱業大臣とサンチェス炭化水素・エネルギー大臣が再び会合し,炭化水素及びエネルギーについて協議した。


     「海への出口」問題

    (ア) 11日,モラレス大統領は,「海への出口」問題に関し法律家チームと会合した。また,ICJでのボリビア弁護団5名のうち2名が来訪し,同大統領と会合した。

    (イ) ロドリゲス代理人は,チリは7月25日までにICJに対し再抗弁書を提出しなければならず,その後口頭手続きに入る旨述べ,ICJが再度訴答書面の提出を求める場合は,右は2017年に行われ,その後口頭手続きに入り,2018年初旬には判決が下される旨述べた。


     18日,ロシアのガスプロム副社長が来訪し,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣と会合後,タリハを訪問した。また,2040年までのボリビアにおけるガス分野の発展に関する計画の更新,ディーゼルの補助金の減少,ガスプロムとYPFBの戦略的協力に関する三つの合意文書に署名した。


     15日,サンタクルスで,モラレス大統領は,米国大使館はサパタ女史に関しモラレス大統領の汚職を告発するつもりであり,国民投票に関して陰謀を企てているとして非難すると共に,ブレナン米国臨時代理大使の追放を検討する旨述べた。これに対し,米国大使館は反論する内容のコミュニケを発出した。


    4 社会

     29日までに,国内のジカウイルス感染者が11名発生。内訳は,ブラジルから帰国した4名,ボリビア国内発生7名(うち3名妊婦)。

    (了)