ボリビア内政・外交(2016年1月)

平成28年1月31日

1 概況

(1) 内政

  • 22日,多民族国創立及びモラレス政権発足10周年を記念する特別議会にてモラレス大統領は約6時間にわたる演説を行った。
  •  26日,憲法裁判所は,最高選挙裁判所(TSE)によって承認された国民投票に関する選挙活動の規則第24条(メディアを通じた政府の供与式の放映を15分に限定)は違憲である旨判決を下した。

  • (2)外交

  •  27日,モラレス大統領はチョケワンカ外務大臣とともにエクアドルのキトで行われたラテンアメリカ・カリブ諸国連合(CELAC)首脳会合に出席した。

  • 2 内政

    (1)政府の動き

     14日,モラレス大統領は記者会見にて,オレジャーナ開発企画大臣に,国民投票実施後,ボリビアがどのように石油の国際価格下落に対応すべきか検討するため,CEPAL,米州開発銀行(BID),アンデス開発銀行(CAF)等国際機関関係者と会合するように伝達した旨述べた。


     22日,多民族国創立及びモラレス政権発足10周年を記念する特別議会にてモラレス大統領は約6時間にわたる演説を行い,経済の指数を引用しつつ政権の10年間の成果を訴えた。


     23日,チョケワンカ外務大臣は,記者会見にて,モラレス大統領は就任後10年で初めて,閣僚全員の残留を承認した旨述べた。


    (2)憲法改正に向けた動き

     5日,ウリオナ最高選挙裁判所(TSE)長官はモラレス大統領に対し,国民投票に関する選挙活動の規則を守るように要請した。これは,1日にヤクイバにて行われた事業の引き渡し式にて,モラレス大統領がメディアでの広報が15分に限定されていることについて「表現の自由を侵害している。(同規則を守らずに)TSEに処罰されても構わない」と述べたことを受けたもの。


     20日,ウリオナTSE長官は,国民投票のための選挙人登録は6,502,102人で,国内で6,243,112人,国外で258,991人であると発表した。また,全国4,785の投票所に29,244の投票箱が設置され,国外には138カ所に1,143の投票箱が設置される。選挙管理者(立会人)は同日スクレで行われるくじ引きによって決定された。


     26日,憲法裁判所は,TSEによって承認された国民投票に関する選挙活動の規則第24条(メディアを通じた政府の供与式の放映を15分に限定)は違憲である旨の判決を下した。本件を提訴した政府は,同規制は表現の自由を脅かすと述べた。一方,野党議員は同判決に遺憾の意を表明した。


    (3)国会の動き

     15日,国会はサンチェス・デ・ロサダ元大統領(民族革命運動党)に対し,鉄道会社の民営化等に関する義務の不履行及び国家へ損害を与えたことを理由に,裁判を開始することを承認。同時に元関係閣僚やドリア・メディナ民主統一(UN)党党首等も告発されている。


     18日,フローレス下院議員(MAS党)は上下院議長に,ゴンサレス上院議長とモンターニョ下院議長が再選された旨発表した。


     21日,2016年の上下両院の執行部が任命された。上院では第1副議長エステル・トリコ(MAS党),第2副議長イェルコ・ヌニェス(民主統一(UD)),エリアナ・メルシル(MAS党)第1書記官,ビクトル・サモラ(キリスト教民主党(PDC))第2書記官,ノエミ・ナティヴィダッド・ディアス(MAS党)第3書記官が任命された。下院ではビクトル・ボルバ(MAS党)第1副議長,ミゲル・アンヘル・フェネイ(UD)第2副議長,マリオ・ミタ(MAS党)第1書記官,アナ・ビダル(MAS)第2書記官,アリック・モロン(UD)第3書記官,ジョバナ・ナルガレット・ホルダン(PDC)第4書記官が任命された。


    (4)野党の動き

     19日,憲法改正反対の知識人等から構成される市民団体「NO ES N.O.」は,国民投票で使用される選挙人登録の信頼性について疑問を呈した。同団体は,米州機構(OAS)が2014年の大統領選挙後,選挙人登録の監査及びハッカー攻撃を避けるために情報システムを向上させることを提言していたにもかかわらず, TSEが適切な対応をとっていないと非難している。


     19日,コスタス社会民主運動(MDS)党首兼サンタクルス県知事は,ラパスにおける記者会見にて,国民投票の際,スアレス元ベニ県知事,レジェス・コチャバンバ市長及びMDS党員とともに,投票所の監視のために4万人の党員を動員する旨述べた。


    (5)世論調査

     11日,Equipos Mori社が国民投票に関し12月15日から1月6日全国で行った調査の結果を発表したところ,41%が憲法改正賛成,37%が憲法改正反対,19%が分からない・未回答であった。


     13日,Ipsos社が国民投票に関し都市部で行った調査の結果を発表したところ,36%が憲法改正賛成,44%が憲法改正反対と回答した。


     17日, MERCADOS Y MUESTRAS SRL社が1月6~13日に全国の都市部と農村で行った世論調査の結果を発表したところ,41%が憲法改正賛成,38%が憲法改正反対であった。また,憲法が改正され,モラレス大統領が2019年の大統領選挙に出馬する場合には46%が同大統領に投票すると答えた。2019年の野党候補としては17%がカルロス・メサ元大統領(国際社会に「海への出口」問題に関する歴史的・法律的説明を行うための特別担当),16%がコスタス・サンタクルス県知事(社会民主運動党首MDS),15%がメディーナ民主統一UD党首を支持する旨回答した。


     22日,テレビATB局の報道によると,Ipsos社が1月に行った世論調査によると,57%が政権の取り組みを評価する,29%が評価しない,13%が分からない,1%が未回答と答えた。また,52%がガルシア・リネラ大統領の取り組みを評価する,35%が評価しない,12%が分からない,1%が未回答と答えた。


    (6)麻薬問題

     19日,ロメロ内務大臣は,ボリビア政府がフランスのTHALES AIR SYSTEMS社と215百万ドルで契約し,麻薬密売と戦うことを主目的としているレーダーシステムは今年末までに稼働する予定であると述べた。


     20日,ロメロ内務大臣は麻薬対策特別部隊(FELCON)がサンタクルス及びヤクイバの居住地域にて,コートジボワール向け貨物である80トンの鉱物に紛れていた6~8トンのコカイン塩酸塩(時価640百万ドル)を押収したと発表した。


    (7)

     12日,コカリコ農村開発・土地大臣が,地券交付に関し,約72%(7,600万ヘクタール)に既に交付したと発表した。残り28%(3,100万ヘクタール)については来年末までに交付する予定。


    (8)

     12日,内務省身分証総合管理局(Segip)が新しい身分証明書を配布すると発表した。2020年までにすべての国民に配布される予定。


    (9)

     15日,「ラ・プレンサ」紙が17年の歴史を閉じ廃刊。


    (10)

     18日付「ラ・ラソン」紙は,就任から10年となるモラレス政権の成果を報じた。右によると,最大の成果は資源の国有化である。右により政府の収入が増え,以前は対象外のセクターに補助金交付やインフラ公共事業が実施できるようになった。外交における最大の成果は「海への出口」問題に関し,国際司法裁判所の管轄権が認められたこと。一方,モラレス政権の課題としては,汚職及び司法の管理であるとしている。


    (11)

     23日,ポトシ県トゥピサ市にて,ワヌニ鉱山会社の鉱山労働者代表であり,ボリビア鉱山労働者連合の元指導者であるギド・ミトマがボリビア労働総連(COB)の新しい会長に選出された。


    (12)

     27日,NGOトランスペアレンシー・インターナショナルが2015年の公的セクターの汚職について発表した数値によると,168カ国中,ボリビアは99位であった(ベネズエラ158位,アルゼンチン107位,メキシコ95位,ブラジル76位,キューバ56位,コスタリカ40位,チリ23位,ウルグアイ21位)。


    3 外交

    (1)多国間関係

     12日付「ラ・ラソン」紙は,セグローラ当国外務省国境局長が,チリとの国境で恒常的に観察される不正常な状況及びペルーとの国境における不正常な状況に関し,当国外務省は近隣諸国(アルゼンチン,ブラジル,チリ,ペルー)との国境管理の総合的な計画を実施していると述べた。


     26~27日,モラレス大統領はチョケワンカ外務大臣とともにエクアドルのキトを訪問し,CELAC首脳会合に出席した。モラレス大統領は,中南米のさらなる統合を訴え,帝国からの解放及び地域の平和維持を訴えた。また,2017年の議長国選挙につきチリがホンジュラス支持を表明したため,ボリビアの2017年の議長国就任に係るコンセンサスがブロックされた。また,この機会にモラレス大統領は,ウマラ・ペルー大統領と会合した。


     29日付けEFE通信の報道によると,EUは,ボリビア及びパラグアイに人権分野の改善を求めた。EUはボリビアに対し,児童の労働,麻薬の生産・取引及び汚職問題の改善及び国際約束の遵守を条件に関税面での優遇策を提案した。


     


    (2)二国間関係

     対チリ関係

    (ア) 5日,サンタクルスにガスパル・チリ特派大使が来訪。6日,ラパスにてチリ領事館で会合を行い,その後地元のプレスインタビューに答え,チリはボリビアとの国交回復を無条件で申し入れる旨述べた。

    (イ) 6日,チョケワンカ外務大臣は記者会見にて,ガスパル・チリ特派大使に対し,「外交関係回復はすべての課題について対応するためでなければならない」と述べ,課題としては,ラウカ川に関する条約の1962年のチリの一方的な不履行,チリが管理しており,ボリビアに水源があるシララ水源のチリによる不当な利用,及び「海への出口」問題があると述べた。

    (ウ) 24日,チョケワンカ外務大臣はラジオ・エルボルのインタビューに対し,チリ政府は再度1904年条約に違反し,1998年以来アントファガスタ港にてボリビアの貨物に対して規制を課している,具体的には,チリは汚染を理由に鉱物の荷積み・荷下ろしを港から35キロ離れたところで行わせ,課税していると述べた。同外務大臣はアントファガスタ港におけるボリビアの貨物の自由で規制のない通行を取り戻すために然るべき対策をとると述べた。


     対ブラジル関係

     27日,サンタクルスにて当国炭化水素・エネルギー省とブラジルエネルギー・炭化水素省の事務レベル及びElectrobras,Petrobras関係者が会合し,水力発電に関するプロジェクト及び2019年以降の天然ガス売買の拡大に関する協議を行った。


     対アルゼンチン関係

     5日,ブエノスアイレスにてアチャ・ボリビア石油公社(YPFB)総裁がファグシャス・アルゼンチン・エネルギー社(ENARSA)社長と,アルゼンチンのボリビアの天然ガス購入にかかる負債等について協議した。


     対ドイツ関係

     12日,ボンバ・ドイツ交通・建設・都市開発副大臣がドイツ及びスイスの企業関係者と共に来訪し,13日,サンタクルスにて,モラレス大統領等と会合しサンタクルスの都市電車,ボリビア国内を通過する南米横断鉄道建設計画,風力発電及びリチウムの研究等について協議した。15日,ボリビアとドイツは3つの基本合意書に署名した。1つ目はクラロス公共事業大臣とMOLINARI RAIL社長の間で署名された,ボリビアの統合鉄道輸送システムを具体化させるために手続きを進める目的の合意書。2つ目はサンチェス石油天然ガス・エネルギー大臣とENERCOM社代表の間で署名された,技術協力および知見の共有を通じてボリビアの風力発電プロジェクトを発展させる目的の合意書。3つ目はクラロス公共大臣とボンバ交通・建設・都市開発大臣との間で署名された,両国の利益となる交通インフラの開発プロジェクトに関する協力に関する合意書。


     対欧州関係

    (ア) 13日,チョケワンカ外務大臣はマドリードにて,「多民族国家と人生の哲学としての『良く生きる』」と題した講演を行った。その後,イタリアを訪問した。

    (イ) 13日,駐ボリビアEU代表部が,EU大使が国民投票のキャンペーンに利用されたとして当国外務省に書簡で不満を伝達した。


     対中国関係

    (ア) 13日,中国のCAMCエンジニアリング社は,モンテローブロブロ間の鉄道の最初の区間を建設する契約であったが,先般,同社への相談も無しに契約を取り消されたため,クラロス公共事業大臣に対し訴訟手続きを開始すると述べた。14日,公共事業大臣は同企業の契約不履行を理由に契約を破棄したものであり,20百万ドルの保証金が支払われることになると述べた。

    (イ) 19日,ムトゥン製鉄小工場建設が中国国営企業SINOSTEEL EQUIPMENT&ENGINEERINGに388百万ドルで受注することを決定し,2月11~12日に契約書が交わされる予定である旨発表された。


    (3)

     6日,フェレイラ国防大臣は,先般トルコでボリビア船籍の船から13トンの麻薬が発見されたことを受け,今後,ボリビア船籍を与える条件を厳しくすると述べた。なお,2015年9月にはボリビア船籍の船がギリシャ海軍によって武器と弾薬をリビアに輸送していたとして拿捕されている。


    (4)

     11日,ガルシア・リネラ副大統領は記者会見で,米国のNational Democratic Instituteが憲法改正反対派であるキロガPDC党首,コスタスMDS党首等に資金援助しているとして非難したが,当地米国大使館はそのような事実はない旨否定した。


    (5)

     25日,モラレス大統領は,3月16~17日,政府機関の透明性促進のための公的機関設立に関する国際会議をコチャバンバで開催すると発表した。ボリビアが国連会議のホスト国となるのは初めて。


    (6)

     25日,ラモス国連機関常駐代表は,4月に開催される司法サミットに関し,技術的支援を行うと述べた。右会合は当国の司法制度の危機に関して話し合われるもの。


    (了)