ボリビア内政・外交(2015年11月)
1 概況
(1) 内政
(2)外交
2 内政
(1) 政府の動き
ア 3日,パストール・ママニ判事が最高司法裁判所(TSJ)長官に選出された。先住民出身者が同役職に就くのはボリビア史上初めて。
イ 19日,上院は法律第044号(大統領及び副大統領に対する裁判)改正法案を承認した。改正によりTSJの判事が構成する2つの裁判所(Tribunal de Sentencia, Tribunal de Apelación)が設置され、大統領及び副大統領が任期中に罪を犯した場合,同裁判所に訴えることができるようになる。
(2)憲法改正に向けた動き
ア 5日早朝,15時間以上にわたる議論の末に,憲法改正の是非を問う国民投票召集法が国会にて承認された。同法は明年2月21日に国民投票を行うことを決定し,社会・政治団体が最高選挙裁判所(TSE)に登録することなくキャンペーンを行うことができるように法律第026号を改正することを定めている。
イ 5日,ゴンサレス上院議長が大統領代理として国民投票召集法を公布した。右式典の際,投票はモラレス大統領・ガルシア・リネラ副大統領への支持を問うためではなく,愛国の将来を問うためであると述べた。
ウ 5日,モラレス大統領は外遊先のハンブルグ(ドイツ)で,憲法改正を認めたのは,政権交代すると2025年までの長期的発展のためのアジェンダ(Agenda Patriotica 2025)及び現在政府が行っている大きな投資が滞ってしまうので、これらを完遂するためであると述べた。
エ 6日、TSEは明年2月21日に実施する国民投票に関する一連の日程を承認した。同日から明年2月17日まで公共スペースにおける選挙キャンペーンが行われる。また、同日程によると、3月7日にTSEは所見なしとされた投票所における投票結果を公表し、3月20日までに全ての投票所の結果を踏まえて,国民投票の最終結果を提出しなければならない。議会総会は3月29日にTSEから右結果に関する報告書を受領することとなる。選挙人登録は国内では11月11日、国外では11月14日に開始され、いずれも11月30日に終了する。メディアにおける選挙キャンペーンは11月9日から明年1月7日に行うことができる。過去の選挙ではキャンペーンを行う政党や市民団体は登録を行わなければならなかったが、今回は政府メディアで無料で広報したい者のみ登録が義務付けられている。選挙キャンペーンに関する規則については,投票前30日間,政府レベルでの全ての事業の引き渡し式等の模様の放送を行ってはならず,ニュースとして報じる場合も最大限15分間に限定すると定められたことが特筆される。MAS党は右制限は厳しすぎると反発している。
オ 12日,エクセニTSE判事は在外の選挙人登録はボリビア大使館が所在する全ての国において,11月15日から30日まで,33カ国の69都市で行われると発表した。
カ 17日,ウリオナTSE長官は米州機構(OAS),UNASUR, 欧州連合及び世界選挙機関協会を選挙監視に招待したと述べた。
(3)野党の動き
ア 11日,記者会見にてレビージャ・ラパス市長(主権と自由(SOL.bo)党首),アマリア・パンド記者,グアルベルト・クシ司法官(停職中),アルマラス元農村開発・土地大臣,チャコン元国防大臣(ラパス市議会議員)等が,憲法改正反対キャンペーンの開始を発表した。
イ 17日,レビージャ・ラパス市長はコチャバンバ及びトリニダ市民と憲法改正に反対する組織的市民運動を進める目的で,レジェス・コチャバンバ市長,スアレス・トリニダ市長,イシボロ・セクレ国立公園(TIPNIS)の先住民指導者バルガス氏等と会合した。
(4)チュキサカ県選挙裁判所における不祥事
ア 6日,TSEが3月に行われた知事選挙における不正常な状態を理由に進められていた懲戒裁判の判決を下す前に,チュキサカ県選挙裁判所の5人の判事のうち2名が辞任した。
イ
9日、チュキサカ県選挙裁判所の2名の判事が知事選挙における管理過失を理由にさらに辞任した。
ウ
10日、TSEは知事選挙における管理過失を理由に残りの1名の判事の罷免を決定し、また罷免を逃れるためにすでに辞任した4名に対する懲罰に関する訴訟を終了した。一方、エクセニTSE判事は、これをもってチュキサカ県の知事選挙にかかる訴訟は終わり、明年実施予定の国民投票は同県選挙裁判所ではなくTSEが行うと発表した。
(5)原子力研究センターの設置
ア 19日,モラレス大統領はエル・アルトの原子力研究センター建設予定地を視察した。
イ 30日,ガルシア・リネラ副大統領は,中央銀行の土地を原子力技術の研究及び発展のためのセンターに無償で譲渡する法律を公布する式典にて,第1段階として2016年には300百万ドルを投資し,その後第2,3段階の投資が続くと述べた。
(6)
10日、ボリビア・カトリック司教会議(CEB:Consejo Episcopal Boliviano)はコチャバンバ市で開催された第100回総会を終了するに際し発表した報告書の中で,ボリビアでは多くの人が「押し付けられようとしている大多数の意見とは違う考えを表現するのを恐れている」と述べた。また、CEBは政府当局が保健衛生及び教育分野を疎かにして,不必要な分野に多くの財政支出を行っていると批判し,麻薬密輸及び汚職が増加していることに懸念を表明した。
(7)
13日,全国労働総連(COB)は政府が当国経団連(CEPB)と調整し提案した「第2のクリスマスボーナス」の明年4月までの支払期限の延長を拒否し,本年12月31日までの支払いを要求した。
(8)
14日,モラレス大統領はオルロ市で開催されたボリビア軍創設205年記念式典にて,「フアン・ホセ・トーレス幕僚学校」を創設することを発表した。同校は2016年に開校し,陸・海・空軍の新しい士官は昇進するためには全員が本校で受講することが義務づけられる。
(9)
18日付「パヒナ・シエテ」紙は以前に政府機関及び政府要人の汚職を告発した野党のムリージョ上院議員,モナステリオス下院議員,キスペ下院議員,ピエロラ下院議員が現在MAS党に近い要人によって訴えられ、現在刑事裁判に直面しているのは政治的迫害であると報道した。
(10)
27日,カラチパンパの製錬所で爆発があり,操業の継続が危ぶまれる。
(11)世論調査の結果
10日付「カンビオ」紙によると、IPSOS、APOYO, OPINION Y MERCADO社がモラレス政権について全国の都市部及び農村部で行った世論調査によると、66%がモラレス大統領の政策に賛成、25%が反対、2%がわからない・未回答であった。
3 外交
(1)多国間関係
ア 16日,第5回ボリビア・EUハイレベル会合が開催された。シェーファーEU米州局長及びオレジャーナ開発企画大臣が出席し,ボリビア国民がEU諸国に入国するための査証免除の手続きを開始したと発表した。また,オレジャーナ大臣は,同会合にて経済協力,貿易及びヨーロッパのボリビアにおける投資等について協議し,国際司法裁判所にて係争中の「海への出口」問題につき説明した。
イ 16日,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣及びアルセ国家利益擁護官はIberdrola西企業及びPaz Holding英企業代表と,2012年12月29日の大統領令によって送電関連事業会社4社(Electropaz社,ELFEO S.A.社,Edeser社,CADEB社)が国有化された件に関し,それぞれ34.1百万ドル及び19.5百万ドルの賠償金を支払うことで合意した。
ウ 23日,モラレス大統領はイランで開催された第3回ガス輸出国フォーラム(GECF)首脳会合に出席した。
エ 30日,モラレス大統領はフランスを訪問し,COP21に出席し「母なる大地」が危機的な状況に陥っているのは資本主義のせいである等演説した。また、気候変動に関する裁判所の創設あるいは国際司法裁判所にて環境に関するテーマを扱うようにすることを要求した。
(2)二国間関係
ア モラレス大統領の欧州外遊
3~9日、モラレス大統領は欧州を外遊。
(ア)4~5日,モラレス大統領はドイツを訪問。4日,メルケル首相と会談した他,メルケル独首相とチョケワンカ外務大臣は以下の2つの協定に署名した。1つ目は農村支援プログラム(PAR)に対する23.7百万ドルの借款及び再生可能エネルギー分野(風力発電,太陽光発電等),飲料水管理及び保健衛生分野における技術協力のための23百万ドルの供与に関する協定で,2つ目はリチウムの利用に関する技術協力に関する協定である。5日,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣は,シーメンス社より1,200百万ドル強相当の複数のタービンを購入することを決定した他,ナバロ鉱業・冶金大臣は,ティッセンクルップ社が2016~2017年に,3,600トンの錫(ビント精錬所の錫生産量の約25%)を106百万ドルで購入する旨の協定を同社と締結した。
(イ)6日,モラレス大統領はイタリアを訪問。グラッソ上院議長と会合した後,ローマ・ラ・サピエンツァ大学の名誉博士号を授与された。
(ウ)7日,モラレス大統領はアイルランドを訪問。ヒギンス大統領及びフラナガン外務大臣と会談した。また,高等教育のための協力協定を締結し,乳製品産業における技術移転のための技術委員会の設置に合意した。
(エ)8日,モラレス大統領はフランスを訪問。オランド仏大統領と会合し,貧困,気候変動及び麻薬対策等について協議した。また,フランス開発庁(AFD)事務所をボリビアに開設するための二国間協定を締結し,その中で,AFDは2016~2017年に435百万ドルのボリビアへの融資を保証した加えて,ボリビア人学生のためのフランスにおける奨学制度の拡大に関する二国間協定を締結した他,観光に関する宣言に署名した。同日,フェレイラ国防大臣とダラヴァック・タレス・エア・システムズ社長は215百万ドルで13基のレーダーを売買する契約を締結した。本レーダーシステムは民軍共用としているが,主に麻薬対策であることが強調された。
イ 対チリ関係
(ア)12日,モラレス大統領はボリビア海軍の189周年記念式典にて,「海への出口」問題に関して誠実な提案と共に対話をする意思を書面で正式に伝えてほしいと呼びかけた。
(イ)26日、ボリビア外務省はコミュニケにてチリに対し25日からチリの税関職員のストライキにより立ち往生しているボリビア・チリ国境の1600台以上のトラックを直ちに通すように要求した。
(ウ)18日,フェレイラ国防大臣は,チリは2012年までに国境地域の対物地雷を除去するという約束を守っておらず,何の説明もなしに地雷除去の期限を2020年まで延長したのはオタワ条約に違反しているとしてチリを非難した。2014年にチリ政府が国連事務総長に送った報告書によると,2013年12月時点でまだ64,402個の地雷があり,全体の25%しか除去されていないことを示している。
(3)
10日、アラマヨ国防省国防・統合的発展協力担当次官はラパスにて第3回ボリビア・ロシア合同委員会会合を開会した。目的は、武力抑止力を高めるために機材の購入を最善のものにするためと述べた。
(4)
13日,ボリビア外務省は,パリにおけるテロ事件を非難し,仏国民・政府に連帯の意を表明するプレスリリースを発出した。
(5)
17日,ロメロ内務大臣は,主にコロンビア人及びペルー人等外国人によって引き起こされる強盗事件を踏まえ,ボリビア政府はコロンビア及びペルーに対しボリビアへの入国者の犯罪歴提出を要請することを決定したと述べた。
(6)
19日,ユアンシャン中国大使は,農業及び保険分野の強化の為に危機を購入するために86.2百万ボリビアーノスの寄付をする旨の合意文書をオレジャーナ開発・企画大臣と署名した。また,同大使はモンターニョ・スポーツ大臣と21.5百万ボリビアーノスの寄付を行う協定を締結。右により次回オリンピックに向けてボリビアの9チーム計117名が中国で練習を実施する予定。また,明年2月から5月の間にスポーツ機材を供与する。
(7)
24日,モラレス大統領はイランにて,プーチン・ロシア大統領と会談し,エネルギー関連,ガスプロム社によるボリビアにおける炭化水素資源の探査活動及び原子力エネルギーについて協議した。
(了)