ボリビア内政・外交(2015年10月)
1 概況
(1) 内政
(2)外交
2 内政
(1) 政府の動き
ア 19日,最高選挙裁判所(TSE)がチュキサカ県選挙裁判所の5人の判事に対して県知事選挙における不正常な状態を理由に懲戒裁判を開始し、関係者の停職が決定された。
イ 21日,モラレス大統領が大統領に就任してから9年8ヶ月26日を数え,ボリビア史上で最も長く任期をつとめた大統領となり,右を祝福する行事がティワナク遺跡のカラササヤ寺院で行われた。
ウ 20~22日,当国政府は,本年の経済成長率が対前年度比で4.5%を超えることが確実になったため,一昨年及び昨年度に引き続き,「第2のクリスマスボーナス」の支給を義務付けると発表した。
(2)憲法改正に向けた動き
ア 1日、バレンシア憲法裁判所(TCP)審査委員会委員長は,憲法一部改正法案は形式上の過失のために承認されなかったと発表し、修正するために5日間の期間を与えた。
イ 1日、ウリオナ最高選挙裁判所(TSE)長は、国民投票の質問が承認されるための要件は、明確、詳細、公平であることであると述べた。
ウ 2日、議会の3分の2以上の承認を受けて国民投票の質問はTSEに送付された。
エ 6日、MAS党議員等は修正された憲法一部改正法案をTCPに提出した。TCPは30日以内にその合憲性を発表することになる。
オ 9日,TSEは議会に承認されていた国民投票の質問を修正し、現在の大統領・副大統領及び第1回目の再選期日についての言及を削除した。TSEにより提案された質問は「大統領及び副大統領の2回連続再選を可能とするために憲法の168条を改正することに賛成ですか。憲法一部改正法によると,第1回の再選が2015~2020年,第2回目の再選が2020~2025年と見なされる」。
カ 12日、議会総会は3分の2以上の賛成を受けて、TSEが修正した国民投票の質問を承認した。修正しなかったのはTSEの独立性が脅かされているとの疑いを避けるためであるという。
キ 21日,TCPは憲法一部改正法案は合憲であると発表した。
ク 22日,TCPは国民投票の質問を受理した。TCPは15労働日以内に合憲性を判断しなければならない。
ケ 29日,TCPは国民投票の質問は合憲であると発表した。
(3)野党の動き
ア 27日,野党の議員及び政治リーダー等がモラレス大統領及びガルシア・リネラ副大統領の再々選に反対するキャンペーンを強化するための野党結集会を召集した。その際,ルベン・コスタス・サンタクルス県知事は本キャンペーンは政治家ではなく市民が指導的位置にあるべきだが,自身の政党・社会民主主義運動(MDS)は本キャンペーンを支持すると述べた。
イ 29日付「ラ・ラソン」紙によると,MDSのブラディミル・ペニャは,サムエル・ドリア・メディナが率いる民主主義同盟(UN)内部の危機が民主主義連合(UD)と呼ばれる2つの政党の同盟を妨げていると述べた。なお,MDSとUNは2014年の大統領選挙の際にドリア・メディナ候補を推すために同盟していた。
(4)原子力技術
29日,モラレス大統領は原子力技術に関する開発研究センター(CIDETEN)を4年後にエル・アルト市に建設すると発表した。ロシア及びアルゼンチンの技術を利用する。モラレス大統領は、CIDETEN建設計画は2016年1月には策定されると述べた。
(5)世論調査の結果
ア 27日付「カンビオ」紙によると,モラレス大統領の再々選についてIPSOS社が全国レベルで実施した世論調査では,「もしモラレス大統領が再々選することが可能であったなら,あなたは同大統領に投票しますか」との問いに対し,49%がはい,39%がいいえ,11%が分からない,と答えた。
イ 憲法改正についてMERCADOS Y MUESTRAS SRL社が10月27~30日に県庁所在地,エル・アルト市及び中規模の都市で実施した世論調査によると,47%がモラレス大統領の再選を可能にするための憲法改正の是非を問う国民投票において賛成票を投じる,45%が反対票を投じる,9%がわからない・未回答であった。また,ガルシア・リネラ副大統領の再々選については47%が賛成,47%が反対,6%がわからない・未回答との結果であった。一方,同社が実施した他の世論調査では,52%が大統領・副大統領の再々選を可能とするために憲法を改正することに反対,42%が賛成,5%がわからない・未回答という結果もあった。
3 外交
(1)多国間関係
ア 10~12日、「気候変動及び生命防衛に関する世界人民会議」がコチャバンバ県ティキパヤ市で開催された。10日の開会式にはモラレス大統領,チョケワンカ外務大臣,トゥルヒージョ全国労働総連(COB)代表,ファビウス仏外務・国際開発大臣,ペトロ・ボゴタ市長等,42か国からの参加者の出席の下,ティキパヤ市バジェ大学にて開会式が開催された。また,潘基文国連事務総長が同会議の一部に出席し,ボリビア政府は「母なる大地」を救うための10の提案を同事務総長に提出した。12日の閉会式にはマドゥーロ・ベネズエラ大統領,コレア・エクアドル大統領,ロドリゲス・キューバ外務大臣,バデニエル・チリ環境大臣,ペトロ・ボゴタ市長等が出席し成果文書が発表された。
イ 上記世界人民会議の際にティキパヤ市で開催された実際された第35回アンデス地域保健大臣定期会合(REMSAA)において,カンペロ保健大臣が保健に関するアンデス共同体の議長に就任した。
(2)二国間関係
ア 対中南米諸国関係
(ア)5日、ガルシア・リネラ大統領はルーラ・ダ・シルバ・インスティテュートの招待でブラジルのサンパウロを訪問し、「ボリビア、民族・社会政策の10年」と題した講演を行い、ルーラ元大統領と会談を行った。
(イ)5日、モラレス大統領はテロと戦った6人のキューバの「英雄」(内5人は米国で、1人はソマリアで投獄された)に政府宮殿にて叙勲を行った。
(ウ)13日,ガルシア・リネラ副大統領はメキシコで本の出版記念式典に出席した。
(エ)14日,チョケワンカ大臣よりキューバの団結と協力に感謝してロドリゲス・キューバ外務大臣にアンデス・コンドル勲章が授与された。
(オ)20日,モラレス大統領,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣,及びデ・ビド・アルゼンチン企画大臣はタリハ県にて2017年から440MWの電力をアルゼンチンに販売する合意書に署名した。サンチェス大臣は,今後40日の間にボリビア中央銀行の融資で第一段階としてボリビアのヨグアクアからアルゼンチンのタルタガルに,第二段階としてタルタガルからアルゼンチンのサンフアンシートに送電線の建設を始めると述べた。
(カ)29~30日,チョケワンカ外務大臣はアルラルデ外務次官とチリを訪問した。29日,チリのNGOである「カサ・ボリバル」の招待により「良く生きる」原則について講演し,30日,サンティアゴ・デ・チレ大学にて講演会を行った後,アイマラ,マプーチェ,パラ・ヌイの代表と会合した。
(キ)29日,チョケワンカ外務大臣とバステイロ・アルゼンチン大使は二国間の国境サルバドル・マサ及びヤクイバをつなぐ橋の建設に関する交換公文に署名した。
イ 対欧州諸国関係
(ア)1~2日にフィッシャー・オーストリア大統領が来訪した。2013年7月2日に欧州でモラレス大統領が乗った専用機が欧州4か国(仏,伊,西,ポルトガル)により領空通過あるいは着陸を拒否された事案(平成25年7月3日付往電第831号)の際,オーストリアが着陸を許可したことを受けて最高位の叙勲が授与された。また、両国は拡大会合の後、交通、衛生、教育、工業、環境、エネルギー及び行政の7つの分野で協力することを合意した。また、フィッシャー大統領はドッペルマイヤー社(オーストリア企業)によって建設されたロープウェーに乗った。2日、サンタクルスで社会団体と会合した。
(イ)8日、モスクワにてサンチェス炭化水素・エネルギー大臣とキリエンコ・ロシア国営原子力公社社長は原子力の平和利用に関する協力に関する協定に署名した。
(ウ)13日,ロビン・スウェーデン国際開発協力大臣が来訪し,チョケワンカ外務大臣と会談し,2016-2020年の新たな協力戦略の準備につき協議された。現在教育,民主主義,人権,天然資源,気候変動の分野で協力が行われているが,開発,クリーンエネルギーの技術移転の促進,都市部の水の処理及びゴミ処分に関する分野でさらに協力を発展させることが期待される。
ウ 5日、キンタナ大統領府大臣は、ウィキリークスが明らかにした、2006~2008年にボリビアに対する米国の陰謀(市民クーデターを引き起こす、あるいはモラレス大統領暗殺のためのオペレーションセンター設置)についてボリビア政府は徹底的に調査をすることを明らかにした。
エ 12日,エジプトと第3回政策協議がコチャバンバで行われた。アルラルデ外務次官及びモニブ・エジプト外務省米州担当代表が二カ国間関係について協議した。覚書では投資等についての合意が示された他,毎年外務省の高官が会合を行うことを定めており,次回は2016年にカイロで行われる予定である。また,奨学金,投資,農業及び産業について合意文書が署名された。
オ 15日,ガルシア・リネラ副大統領は中国を訪問した。ムトゥンの鉄鉱山産業のプロジェクト等について中国がボリビアに対して7,500百万ドルの融資を行うことを約束した。ガルシア・リネラ副大統領は,今後プロジェクト毎に各担当省・機関が中国輸銀と交渉し,各プロジェクトの借入れ時の利子や借入れの期間の設定を行うこととなると述べた。
(3)
8日、ジョン駐ボリビア韓国大使は「パヒナ・シエテ」紙のインタビューで韓国企業はウユニ塩湖のゴルフ場及び5つ星ホテルの建設に関心を示していると述べた。また、2014年はボリビアに5,000人の韓国人観光客が来訪したところ、自由貿易協定及び両国間の査証免除協定を結ぶことが必要であると述べた。
(4)
26日,モラレス大統領はニューヨーク州ニューヨーク市にて開催された「新しいボリビアにおける投資サミット」に出席し,ボリビアへの投資を呼びかけた。ボリビア政府からは,モラレス大統領,オレジャーナ開発企画大臣,アルセ経済・財政大臣,ナバロ鉱業・冶金大臣,マチカオ文化・観光大臣,エクトル・アルセ国家利益擁護官,アチャ・ボリビア石油公社(YPFB)総裁等が参加した。セミナーでは天然資源部門とサービス部門のパネルディスカッションが用意され,天然資源部門のパネルディスカッションには,YPFB,ミネラ・サンクリストバル社,レプソル・ボリビア社,等が参加した。27日,オレジャーナ開発企画大臣は,外国の150社がセミナーに出席し,多くの企業がボリビアへの石油・天然ガス,電気,工業,鉱業及び観光分野への投資に関心を示したと述べた。
(5)
27日,チリの航空会社スカイ・エアラインズが,サンティアゴとラパス間に週4便運行していたが,需要が低く収益が上がらないためボリビアへの操業を中止すると述べた。
4 社会
世界食料デーである19日,モレイラ駐ボリビア国連食糧農業機関(FAO)代表が,129カ国中ボリビアを含む72カ国が,極貧の削減に成功したが,その結果は十分ではないと述べた。
(了)