ボリビア内政・外交(2015年7月)
1 概況
(1) 内政
(2)外交
2 内政
(1) 政府の動き
ア 地方自治関連
(ア)1日,シレス地方自治大臣は,パチ・ラパス県知事が求めているラパス県自治憲章の草案を修正する可能性を否定し,修正を加えることができるのは,9月20日に住民投票で承認されてからとなる旨発言した。
(イ)1日,各県の県庁所在地9都市及びエル・アルト市の計10都市を代表する,ボリビア都市協会(AMB)は新幹部陣を選出したが,他方で,10都市中7都市の市長等がその正当性を認めないとして,不正常な幹部選出の告発を行い,加えて,3日,タリハ県において,ラパス,コチャバンバ,サンタクルス,コビハ,スクレ及びタリハ市の代表が会合を行い,AMBが党利・党略のために恣意的に使用されることを拒絶した。
(ウ)17日,サンタクルス県議会は,同県の地方自治憲章草案を承認し,22日同草案は憲法裁判所に提出された。モンターニョ下院議長(社会主義運動(MAS)党。サンタクルス県選出)は,右草案には憲法違反の条文が含まれており,憲法裁判所は承認しないであろうと発言した。
(エ)19日,最高選挙裁判所(TSE)は,延期されていた地方自治憲章承認のための住民投票の実施日を9月20日に確定し,右投票までのプロセス等を発表した。 (オ)26日,エクセニTSE判事は,地方自治憲章承認のための住民投票に係る宣伝や広報に関する細則に修正を加え,表現の自由を侵害するとの理由から,メディアに対する監視・監督を廃止する予定である旨発表した。
イ 先住民基金(Fondo Indígena)における汚職・横領問題
(ア)1日,タリハ県ベルメホ市の先住民団体が,生産性向上プロジェクト実施のために2014年10月に受け取った資金のうち,未使用の857,000ボリビアーノス(Bs)を先住民基金に返却した。これによって,1日までに計2百万Bsが返済された。
(イ)7日,本件を調査する検察委員会ミッションのサラビア代表は,現在関係者や証人等に対して通報を行っている段階であり,今後,地方検察との間で,調査の日付及び対象となるプロジェクト等を決定する予定である旨発言したが,農村地帯に住む関係者もおり本件通報は想定以上に時間が掛かると説明した。
ウ レンス前ベニ県知事の逮捕
(ア)16日,ベニ県地方検察は,レンス前ベニ県知事に対する汚職の疑いから逮捕命令を要請し,同前知事は逮捕された。レンス前知事は,右告訴は,政治的かつ仕組まれたものであると述べて疑義を否定したが,ロメロ内務大臣は,本件告訴は司法的なものであり,同大臣自身も本件を報道で知った旨発言した。
(イ)17日,レンス前知事の拘禁が決定され,翌18日にベニ県内のモコビ刑務所に移送された。18日に同刑務所を訪問したスアレス元ベニ県知事(民主統一(UD))は,検察等の召還は受けていないが,自宅が警察の訪問を受けたと承知している旨述べた。
エ パタナ前エル・アルト市長の逮捕
24日,パタナ前エル・アルト市長は,任期中に年金基金に対する支払いを行っていなかったことによる義務の不履行を理由に逮捕されたが,25日,本件担当判事は,同市長に対して,出国禁止と15日毎の出頭を命じてパタナ前市長の解放を認めた。 オ カルドナ当国陸軍大佐のスペインへの亡命申請
1日,スペインに渡航して政治亡命申請を行っていたカルドナ当国陸軍大佐が,突然当国に帰国したが,健康状態が悪化していたために,空港から直接,当国軍人向けの病院に搬送された。サパタ第八師団長は,カルドナ将軍は軍事法廷にかけられている旨説明した。
(2)モラレス大統領再立候補の問題
ア 2日,ボリビア農民労働者組合連合(CSUTCB)は,モラレス大統領に対して2019年の大統領選挙に再立候補することに関するCSUTCBの要請を受けるよう要求したが,MAS党は本件に関する公式決定は行われていない旨説明した。
イ 5日付け「ロス・ティエンポス」紙は,6月27から9日に18歳以上の2,250名を対象に,モラレス大統領の2019年大統領選挙立候補を認めるための憲法改正に関してTal Cual, Comunicacion Estrategica社が実施した世論調査(質問事項:「現在,憲法はモラレス大統領が再度大統領職に立候補することを認めていないが,モラレス大統領がもう一度立候補できるようにするための憲法改正に賛成か反対か」)を発表し,49.1%が反対,33.7%が賛成しているとの結果を公表した。他方で,「モラレス大統領の再立候補が許可された場合には,同大統領に投票するか」との質問に対しては,46.1%が投票する旨,43.4%が投票しない旨回答したと発表した。
(3)地方選関連
3日,国連人権理事会は,デルガド元下院議員がボリビア政府を相手取って行った憲法上の権利に対する侵害の訴えが,国連人権委員会において扱われることになった旨当国政府に対して通知し,デルガド元議員が行った提訴の写しを要請すると同時に,本件の法律的側面に関しての意見を求める内容の書簡を送付した。デルガド上院議員は,TSEが発出した回章第71号によって,本年3月の地方選への出馬資格を取り消された旨訴えている。
(4)最高選挙裁判所(TSE)関連
ア 3日,TSE判事選出のための口頭試験が終了し,合同委員会は成績優秀者98名のリストを当国議会に対して提出したが,合同委員会に所属していた野党議員は98名のリストを含む最終報告書には署名しなかった。
イ 7日,与野党間の合意が無いまま,国会の両院総会において,TSE新判事選出のための投票が実施され,出席した154名の議員による秘密投票の結果,ホセ・ルイス・エクセニ(114票。男性。全国選挙裁判所(CNE。TSEの前身)元長官(2008~09年)),カティア・ウリオナ(114票。女性。ジェンダー問題の専門家),アントニオ・コスタス(113票。男性。CNE元長官(2009~10年)及び身分証総合管理局(SEGIP)前局長),イデルフォンソ・ママニ(113票。先住民枠で当選。男性。SEGIPポトシ県支部長,TSE前顧問)。ドゥニア・サンドバル(113票。女性。経済学者兼社会コミュニケーション学者),マリア・エウヘニア・チョケ(112票。先住民枠で当選。女性。先住民,女性の社会進出等が専門)の6名がTSE新判事として指名された。
ウ 7日の両院総会において,ガルシア・リネラ副大統領(兼国会議長)は,意見を変える野党とは仕事を出来ない旨批判し,全会一致での指名を拒否した野党を批判した。これに対して,ゴンサレス議員(UD)は,モラレス大統領の2019年選挙への再立候補を可能とするため,政府に近い判事を選出させようとしていると述べ,与党MAS党を批判した。
エ 10日,両院総会において指名されたTSE判事6名に,モラレス大統領の直接指名を受けたルーシー・クルス(女性)前オルロ県地方選挙裁判所長官を加えたTSE判事7名の就任式が副大統領府において実施された。ガルシア・リネラ副大統領は,TSEの最初の職務として地方自治憲章承認のための住民投票の実施を挙げ,前TSE判事達の失策のために国会が判事に辞任要求したことを想起し,「国会は職務を遂行しない公務員を提訴する法律的手段を有しているが,使わなくて良いよう願っている」旨述べた。
オ 13日,TSE判事7名は大法廷を開催し,カティア・ウリオナ判事がTSE長官に就任し,アントニオ・コスタス判事がTSE副長官に就任することを決定した。ウリオナ新長官は,TSEの機構改編の実施を最初の職務としてあげ,右改編の実施のために地方選挙裁判所との会合を実施する予定である旨述べた。加えて,2011年司法官選挙,2014年総選挙及び2015年地方選挙等におけるTSE及び地方選挙裁判所の失策を分析する旨発表した。
(5)コカ葉栽培・麻薬・人身売買関連
ア 7日,当国警察は,コチャバンバ県チャパレ地方において,コロンビアの技術を使用してコカインペーストを製造する工場4件を摘発した。
イ 27日,モラレス大統領は,麻薬対策に関する情報漏洩及び情報取引が行われている可能性があり,当国の麻薬対策が成果を上げていないと疑ったことがある旨述べ,警察内部での自主的統制を要請した。同日,カセレス内務省社会防衛・規制物質担当次官は,情報漏洩を認める一方で,一部の誤りが取締り全体の成果を無効化することは無いと述べた。
(6)司法改革関連
9日,サナブリア司法審議会議長は,ベラスコ司法大臣の要請にも関わらず,地方選挙裁判所判事118名の選出プロセスを継続する旨発表し,ベラスコ大臣の要請はメディア上で行われたが,公的な要請としては受領しておらず,そのため,憲法裁判所の本件判事刷新のプロセスを認める判断に基づいて,選出プロセスを継続している旨述べた。
(7)ポトシ市民委員会(Comcipo)によるデモ行進
ア 昨年11月にComcipoが政府に提出したポトシ県発展のための26条項の要求が全く達成されていないことを受けて,7日,Comcipo構成員はポトシ県から11日間のデモ行進を経てラパス市に到着し,モラレス大統領との直接会談を要請した。これに対して,クラロス公共事業・サービス・住宅大臣は,上記26条項に対して中央政府は取り組んでいる旨発言した。
イ 8日,Comcipo幹部は,中央政府がポトシ県発展のための取り組みを開始しない以上,示威行動を継続すると述べ,大統領が直接対応しない場合には,マンキリ,サンクリストバル及びシンチワイラ(現イリャパ)の3鉱山会社を平和的に占拠する旨発表し,9日,ラパス市内にて道路封鎖等を行った他,10日,キンタナ大統領府大臣及びロメロ内務大臣による対話への招請を受けず,ポトシ市内に所在するマンキリ社を平和的に占拠した。
ウ 12日,モラレス大統領が,Comcipoに対して13日10時からウユニ市において予定されている塩化カリウム商業生産プラント建設の契約署名式の後に対話をすると招待したものの,Comcipo幹部陣は大統領がラパスに戻るのを待つ旨発表した。13日,大統領は,公共投資等がポトシで行われていないというComcipo側の発言は嘘である旨反論し,14日,ロメロ大臣は大統領とComcipoとの直接対話の可能性を否定した。
エ 22日,当国主要閣僚とComcipo間の対話が内務省において実施されたが,Comcipoが要求する大統領の最終合意文書への署名を認めるか否かで合意できず,交渉が決裂。内務省周辺において待機していたポトシ県の鉱山協同組合構成員等は,内務省の建物等に対してダイナマイトや火焔瓶を投げ,交渉に参加していた当国閣僚8名,次官4名が,同省屋上から避難する事態に発展した。加えて,同省に隣接する駐ボリビア独大使館の敷地にも火炎瓶が投げ込まれ,同大使館の樹木が燃える等の被害が発生したが,事態は警察の介入によって鎮静され52名が警察によって逮捕された。ガルシア・リネラ副大統領は,本件は閣僚,公務員等に対するテロ行為に相当し,事態は非常に重大であると述べた。
オ 23日,検察は逮捕された52名(うち1名は未成年)のデモ隊のうち47名を釈放し,4名を予防措置として拘禁する旨発表した。Comcipoは対話の条件として全員の釈放を要請したが,25日,中央政府とComcipoはワーキンググループを形成して対話を再開し,27日,未釈放であった4名が釈放されたことを受けて対話を完全に再開した。
カ 28日,ロメロ大臣とキンタナ大臣は,ワーキンググループでの合意をとりまとめた最終合意文書署名のため,政府とComcipoとの間の全体会合を招請したが,Comcipo幹部陣は本件会合への出席を見送った。同幹部陣の欠席を受けて,両大臣は本件対話の終了を宣言し,ロメロ大臣は,政府が対話に応じないわけではないと述べ,各ワーキンググループにおける合意に担当大臣等が署名し,Comcipoによる署名を妨げない旨発言した。各グループの報告書によれば,26条項の要求のうち,13項目に関しては解決方法等が示される一方で,要求の目玉であった国際空港開設等4項目はその実施が不可能と判断され,残りの項目は地方政府が実施すべきものであると結論付けられた。
キ 30日,Comcipo幹部は,各グループの合意に署名することなくポトシ市に戻り,数千人ものポトシ市民による熱烈な歓迎を受けた。その後,31日に,ストライキを12時間中断して食料等の補給期間を設けた後,ストライキを継続することを決定し,加えて,セハス・ポトシ県知事(MAS党)及びセルバンテス・ポトシ市長(MAS党)の辞任要求,独立記念日である8月6日におけるデモ行進の実施及び9月に投票に付される地方自治憲章への反対票の呼びかけを決定した。これに対し,モラレス大統領は,Comcipoの要求のうち数項目は,対応できないどころか,実施すべきでない項目が含まれている旨発言した。
ク 31日,Comcipoは,ストライキを12時間中断して食料等の補給期間を設けた。同日,セハス・ポトシ県知事は,同知事の罷免投票を実施することを提案しComcipoの要請に対抗する意思を表明した一方で,ロメロ大臣は,対話の扉は閉ざされたわけではないと述べながらも,県知事・市長の辞任要求は,Comcipoによるデモが政治的意図を有していると証明していると述べた。また,キンタナ大臣も同種の発言を行い,加えて,要求の目玉であった国際空港の開設等の代わりに,創造的かつ実施可能な提案を要請した。
(8)サンタクルス県における降雨被害
ア 23日,アルピレ・サンタクルス県庁生産性開発局長は,緊急事態宣言が発出されていたイチロ,ヤパカニ,サン・カルロス,ブエナビスタ,フェルナンデス・アロンソ,オキナワ及びサアベドラの計7市において発生した集中豪雨によって,4,552世帯が被害を受け,住宅374棟が水没し,4棟は倒壊したと発表した。加えて,同県庁が医者を派遣し,食料や被災者向けの仮設住宅を提供している旨述べた。アルピレ局長は,農産品の被害状況の調査を行い,種子の提供や技術協力を今後実施する旨付言した。
イ 25日,ガルシア・リネラ副大統領は,本件降雨被害の被害者約4,500世帯は,公的・民間双方の銀行との間で融資の返済日程の再調整を可能とすることを通して,被災者の支援を行うことが閣議で決定された旨発表した。
3 外交
(1)多国間関係
モラレス大統領の第48回メルコスール首脳会合出席
(ア)16~17日,モラレス大統領は,ブラジリアにおいて開催された第48回メルコスール首脳会合に出席し,ルセーフ伯大統領による,「紛争の平和的解決を優先すべきである」との発言を歓迎した。加えて,同首脳会合において,メルコスール加盟国は新たなボリビアの加入議定書に署名したことで,正式加盟にはパラグアイ議会と伯議会の承認を得るのみとなったことに関して,大統領は,右署名を喜びを持って受け止めている旨発言し,メルコスール諸国に対して手続の迅速化を要請した。
(イ)ボリビアの正式加盟に関しては,2012年12月の首脳会合で合意されベネズエラ,ウルグアイ,亜議会の承認を受けていたが,パラグアイが加盟資格停止中に準備された議定書を承認することを拒否していたためプロセスが止まっていた。既に3ヶ国で発効していた以前の議定書を破棄せず,新たな議定書の変更点は日付のみとなっている。
(2)二国間関係
ア 対欧州諸国・EU関係
5日,モラレス大統領が財政緊縮策を巡るギリシャでの国民投票において反対派が勝利したことを歓迎する旨発言し,本件国民投票結果は,帝国主義的資本主義によって推進されている政策からの欧州人民の解放であると述べた。
イ 対チリ関係
(ア)1日,カルロス・メサ元大統領(国際社会に「海への出口」問題に関する歴史的・法律的説明を行うための特別担当)は,キューバを訪問し,同国外務省員及びハバナ大学教授等に対して,「海への出口」問題に係る国際司法裁判所(ICJ)訴訟における当国の要請に関して説明を行った。2日,同元大統領は,ディアスカネル・キューバ国家評議会第一副議長に対しても説明を行い,同副議長は,当国の正当な要請及び平和的な交渉に基づく解決に対してのキューバ政府の歴史的な支持を再度表明した。
(イ)2日,ガルシア・リネラ副大統領は,チリ大学の招待を受けて私的にチリを訪問し,「海への出口」問題に関するICJ訴訟においては「不正義」の是正を模索しており,目的は両国の統合の促進であると述べた。また,法王フランシスコの訪問に関しては,当国政府は,司教・宗教的テーマと政治的テーマを混同することはない旨発言した。
(ウ)7日,メサ元大統領は英国を訪問し,ウィリアム・スワイヤ英国外務省印度・中東・ラテンアメリカ担当副大臣及び貴族院議員5名に対して,「海への出口」問題に係るICJ訴訟における当国の要請に関して説明を行った。
(エ)ムニョス・チリ外務大臣が「政治的意思が伴うのであれば,チリ政府は直ぐにでも外交関係を再開する準備がある」旨発言したのに対して,10日,チョケワンカ当国外務大臣は,「チリとの外交関係の再開が,海への出口を有していない状態が変えられるのであれば,外交関係再開に関して,我々(ボリビア政府)は何も問題を有していない」旨発言した。
(オ)27日付け当地「ラ・ラソン」紙は,1月にコスタリカにおいて開催されたラテンアメリカ・カリブ諸国連合(CELAC)首脳会合の際に,バチェレ・チリ大統領との間で,同年4月にパナマで開催された米州首脳会合において二国間対話を再開することで合意していたものの,バチェレ大統領は米州首脳会談に出席しなかった旨発表した。
(カ)28日,モラレス大統領は,ロドリゲス前大統領(駐蘭大使,ICJにおける本件訴訟の当国代理人),メサ元大統領に加えて,キロガ元大統領,パス・サモラ元大統領及びビルドソ元大統領と,「海への出口」問題に関する政策等の評価等を実施することを目的とする会合を実施し,本件に関する協議のための大統領経験者によるチームに,新たに3名の元大統領が参加することとなったが,その役割は今後時宜を見て発表される。
(キ)29日,モラレス大統領は,記者会見において,法王フランシスコの発言は,主権を伴う「海への出口」を回復するという大きな要請の中で,当国国民に対する世界中の支持を引き起こし,チリ政府も,恐らく熟慮の末に,公式の場において両国間の関係再開の提案を行うに至った旨述べ,法王を保証人(garante)として据えながら,本件を5年以内に解決するために外交関係を再開することに同意しており,バチカン政府を通して本件を法王フランシスコに要請する準備がある旨発表した。
(ク)30日,モラレス大統領は,前日に行った外交関係再開のための対話の提案に関して発言し,同大統領は対話を条件付けているわけでも脅迫しているわけでもないと述べた上で,両国間の外交関係断絶の原因は「海への出口」問題であり,現在も未解決の問題が存在している点を強調し,また,当国政府は法王フランシスコの仲介(mediacion)を要請しているわけではなく,あくまでも両国間の関係再開の保証人(garante)となることを望むという趣旨であると述べ,チリ政府は幾度も自らの提案を守らなかった旨強調した。
ウ 対中国関係
2日,パチ・ラパス県知事,アルバラシン国立サンアンドレス大学(UMSA)学長及びWu Yuanshan当国駐在中国大使の間で,中国語教育を推進することを目的に同大学の生徒達向けに中国語の授業を行うための組織間協力の覚書が署名された。パチ県知事は,本件合意によって,2015年9月~12月までの間,中国語教師2名に対して生活のための便宜を図り,住居と医療保険を提供される旨説明した。
エ 対亜関係
15~16日,モラレス大統領はアルゼンチンを訪問し,フェルナンデス亜大統領との首脳会談を実施し,2016年中の第1回ボリビア・アルゼンチン合同閣議の開催や両国間のエネルギー統合等を謳った共同宣言を発出した他,100km以上にわたる両国間をつなぐ送電線建設合意文書署名の立ち会い,ネストル・キルチネル原子力発電所を訪問し,亜が当国における原子力の平和的利用の発展のために協力している旨発言した。
オ 対バチカン関係
(ア)1日,トゥリゴソ労働・雇用・社会保障大臣は,法王フランシスコの訪問に合わせ,8日をラパス県の祝日,9日をサンタクルス県の祝日とする内容の最高政令を発表した。
(イ)8~10日,法王フランシスコが当国ラパス県及びサンタクルス県を訪問し,モラレス大統領との私的会談,ラパス市大聖堂における講話,サンタクルス市における公式ミサ,社会・人民運動団体第二回世界会議の閉会式における講話,サンタクルス県パルマソラ刑務所訪問等を実施した。
8日,エル・アルト空港(ラパス)到着後,法王は,相互尊重,対話,統一及び社会的包摂の実践を要請し,ラパスの大聖堂において実施した講話においては,個人個人の福祉ではなく共有材の概念や連帯に基づく社会の建設に関して発言した後,誠実でオープンな対話に基づく外交に関して触れ,「対話は不可欠である。私はここで海を考えている(Estoy pensando aca en el mar.)。どれだけ困難な問題であっても,共有可能で,理性的かつ長期的な解決策が存在する」旨発言した。
9日,社会・人民運動団体第二回世界会議の閉会式においては,恐れることなく変革を進める必要性を説き,人民に奉仕するための経済システムを構築し,排他的で母なる大地を傷つける経済システムを否定することを要請した。加えて,法王は,カトリック教会がアメリカ大陸の征服の際に先住民に対して行った攻撃に関して慎ましく謝罪を求める旨発言し,フアン・パブロ2世も同様に行ったと説明した。
(ウ)モラレス大統領は,法王による「海への出口」問題への自発的な言及への驚きを隠さず,右言及が最も重要な出来事であったと評価する一方で,本件における当国への支持を表明したのは,現法王が初めてではなく,フアン・パブロ2世も仲裁を行う意思を有していた旨と述べた。また,法王フランシスコとの3回の会談において,毎回,当国の要求を説明してきたと述べ,当初は法王に仲介を依頼することも検討したが,本件がICJにおいて審議されているため右可能性を排除した旨説明した。これに関して,ロンバルディ・バチカン広報官は,法王の言及は,とるべき道は対話であると示していると述べ,関係国双方からの要請がない限り,法王が仲裁に関心を有することはない旨発言した。なお,ムニョス・チリ外務大臣は,法王の仲裁に反対の意を表明している。
(エ)ボリビア・カトリック中央評議会(CEB)のフエンテス幹事補佐は,法王フランシスコの当地訪問の準備のために中央政府と協力したことで,両者の相互理解が深まり,これまでの緊張関係が和らいだ旨発言し,現在のような対話が今後も続くことへの希望を表明した。
(オ)13日,南米訪問を終えた法王フランシスコは,ローマに戻る機上において,「国境線の変更がある時,常に法律的基礎がある。常に国境線の見直しは行われている。自分としては,そのような切望を提案することは不当なことではないと思う」旨発言して,当国政府による「海への出口」問題に係る立場を擁護する趣旨の発言を行った。モラレス大統領は,法王による対話を支持する内容の発言に謝意を表明した。
(カ)31日,モラレス大統領は,30日に法王フランシスコから2通の書簡が届き,右書簡において,「ボリビア国民への親近感を表明し,いつでも有用性があると考えられる場合には,自ら(法王)の奉仕を考慮に入れて欲しい」旨の記述があることを公表し,右発言は,「海への出口」問題に言及しているものであると理解する旨,法王は本件に関するボリビアの立場を理解している旨発言した。加えて,法王が7月10日に3日間の当国訪問を終えて飛行機に乗り込む直前に,個人的に,「我々は,あなたたちが言うことに対応する準備がある」旨発言したと述べ,法王が本件を支援する準備がある旨表明したと述べた。
カ 対コロンビア関係
14日,カセレス内務省社会防衛・規制物質担当次官は,麻薬取引及び関連犯罪への対処において協力することを目的とする第1回二国間合同委員会会合に出席し,情報交換等を含む二国間協力関係の構築に関して発言した
キ 対キューバ関係
24日付け当地「カンビオ」紙は,当地において活動するキューバの医療ミッションのカブレラ団長の説明として,2006年2月から開始した同ミッションによって,これまでに62百万名の診察が実施され,83千人の命が救われた旨,現在730名のキューバ人医師が国内の44の市において活動している旨報じた。
(了)