ボリビア内政・外交(2015年6月)
1 概況
(1) 内政
(2)外交
2 内政
(1) 政府の動き
ア 地方自治関連
1日,コスタス・サンタクルス県知事は,新たな任期の目標として,県庁が地方税を創出することを可能とする税制政策の変化の実施,中央政府と地方政府の間での予算の分配等に関する合意(Pacto Fiscal)等を掲げた。
イ 先住民基金(Fondo Indígena)における汚職・横領問題
(ア)11日,ラパス県検察は,プロジェクトの実施のために受け取った先払い金額のうち,少なくとも406,000ボリビアーノス(約58,000米ドル)の使用に関する報告書を提出しなかったことを理由に,フォロンダ同基金透明性担当局長を逮捕した。
(イ)23日,女性農民団体「バルトリーナ・シサ」のアンシエタ代表は,同団体が受け取った先住民基金の資金のうち使用されなかった5百万ボリビアーノス(約71万米ドル)を国庫に返済する旨の決定を発表した。
(ウ)25日,バルディビア制度的透明性・汚職撲滅大臣は,2月23日に開始された先住民基金への調査において,これまで少なくとも18件の刑事訴訟が開始されており,先住民基金の調査は8月2日に終了する予定である旨発表した。
ウ イシボロ・セクレ国立公園(TIPNIS)縦断道路
27日,モラレス大統領は,イシボロ・セクレ国立公園(TIPNIS)内のサントドミンゴ市を終点とする道路建設のための基礎工事を開始する旨発表し,右発表と並行して,ガルシア・リネラ副大統領が工事現場の視察を行った。
エ 警察幹部の交代
12日,警察幹部の交代が発表され,新たに就任することになった警察副長官以下の就任式が実施され,ロメロ内務大臣等が出席した。しかし,解任されたチャベス前副長官(注:唯一の女性警察幹部)は,本件解任は違法であり,今後司法手続を開始する旨発言した。
(2)モラレス大統領再立候補の問題
ア 7日,モラレス大統領は,憲法を遵守する旨述べる一方で,チョケワンカ外務大臣が「(再選の)可能性はある。手順も規定されており,必要とされる変更に対し憲法はオープンである」と発言した際に,憲法が民意を問うための国民投票の実施を認めていることを理解したと述べ,「多くの人から大統領継続の要請を受けている」と述べた。
イ 9日,モラレス大統領は訪問中のベルギーにおいてドイツのラジオ局「DEUTSCHE WELLE」のインタビューを受け,「国民が憲法改正を要求するのであればそれに従う」旨発言し,これまでの政権の成果に満足しており,これは個人的な野心等では無い旨強調した。
ウ 11日付け「エル・デベール」紙は,モラレス大統領の2019年大統領選挙立候補を認めるための憲法改正に関してCaptura Consulting社が実施した世論調査(質問事項:「モラレス大統領がもう一度立候補できるようにするための憲法改正に賛成か反対か」)を発表し,52.6%が反対,38.7%が賛成しているとの結果を公表した。
エ 15日付け当地「パヒナ・シエテ」紙は,Mercados y Muestras SRL社が,全国40市において18歳以上の800名を対象に6月2~5日に実施した世論調査(質問事項:「モラレス大統領がもう一回大統領に立候補することに賛成か反対か」)の結果を発表し,52%が反対,39%が賛成であるとの結果を示し,また,「モラレス大統領が再度立候補できるようにするために憲法改正の国民投票が行われた時には賛成するか反対するか」との質問には,51%が反対,36%が賛成との回答した旨報じた。
オ 26日,ボリビア農民労働者組合連合(CSUTCB)の新代表にベガモンテ氏(元下院議員(MAS党))が選出され,同代表は,最初の演説において,モラレス大統領の2019年の再立候補を可能とするための憲法改正の実施を提案した。
(3)エル・アルト市住民組織連合(FEJUVE)によるデモ
ア 1日,チャペトン・エル・アルト市長は,市役所幹部職員及び同市内の12地区の区長の就任式を実施し,自らの施政においては,前政権までの政治的つながりに基づく区長の指名は認めない旨発言した。FEJUVEのアビラ代表は,前区長は住民の信任を受け,「伝統と習慣」に基づいて任命されており,市長による新区長任命を認めない旨発表したが,チャペトン市長は,新区長の任命権限は市長にある旨法律で定められており,決定は変更しない旨発言した。
イ 2日,FEJUVEは数地区の区役所事務所を占拠し,新区長任命の取り消しを求めて,デモを実施することを決定した。FEJUVEは,16年間,区長の任命は,地区の指導者達の指名によって行われてきた旨説明したが,チャペトン市長は,自らの決定は市の発展のためであり取り消すことは無い旨発表した。シレス地方自治大臣は,「種々の調整があるが,区長の任命は市長の権限である」旨発言した。
ウ 3日,FEJUVEによるデモが暴力的にエル・アルト市役所を占拠しようとする試みに発展し,警察部隊との衝突に発展した。加えて,8日,FEJUVEは無期限ストライキを実施したが,十分な住民の参加を得ることが出来ずに失敗し,逆に,住民が自発的に実施した市民集会において,FEJUVEの幹部陣の30日以内の刷新が要請された。
エ 12日,FEJUVEはチャペトン市長による新区長任命を受け入れることを決定し,10日間以上続いたエル・アルト市のゴミ処理場入り口の封鎖を解除した。
オ 16日,チャペトン市長は,既に13地区の区長が職務に就いた旨発表し,加えて,パタナ元市長(MAS党)時代の目玉プロジェクトである市営バス運営のために購入したバス60台中21台がメンテナンスのために使用されていない状況は遺憾であると述べた。
カ 22日,FEJUVEの集会が開催され,エル・アルト市の北部5地区の代表が,アビラ代表の解任及び追放を決定すると同時に,ウアンカ氏をFEJUVEの代表代行に任命した。
(4)TSE関連
ア 1日,モラレス大統領は,今次TSE判事の選出の際には,最も優秀な候補者を選出する必要があり社会運動団体に対する割り当ては無い旨述べ,TSE前判事7名のうち,少なくとも2名(パレデス判事及びスナ判事)が社会運動団体による推薦であったと認めた。
イ 3日,上院はTSEの組織改革のための法案を可決し,4日,右法律が公布され,TSEの新判事7名中6名(注:残りの1名はモラレス大統領が指名)の選出プロセスが開始された。
ウ 6日,議会は,与野党が全会一致の上でTSE判事選出のための細則を承認し,新判事の公募を開始した。同細則においては,能力主義が採用され,市民社会団体への所属経験は不問とされた。17日,立候補者403名の応募を以てTSE新判事候補の受付期間が終了し,18日,MAS党議員団は,法王フランシスコのボリビア訪問と本件選抜プロセスが重複するのを避けるために,7月4日までに判事候補を選抜する旨発表した。
エ 19日,TSEの選抜に関する議会の合同委員会は,403名の立候補者のうち97名に候補資格無しとの判断を下し,残った306名の立候補者に関しても24日までに抗議を受け付ける旨発表した。
オ 24日,候補資格等に関する抗議の受付期間が終了し,26日,受理した抗議に基づき36名の候補に対して候補資格無しとの判断を行い,翌27日,合同委員会は,残る269名のこれまでの業績の評価等の段階に入る旨発表した。
カ 28日,野党の一部から,与党MAS党と強い関係を有している候補が残っているとの批判が出始めたことに関して,モンターニョ下院議長は,これまで同様,合同委員会において全会一致を目指して議論を進めるが,野党議員が合同委員会に参加しない場合,与党は議会を3分の2の多数で押し切ることも辞さない旨発言した。
キ 29日,合同委員会は,業績評価の段階で51名の立候補者を候補者リストから除外し,218名が面接に進んだ。同日,ゴンサレス上院議長は,7月7日にTSE新判事6名を指名するための国会の両院総会を招集することを発表した。
(5)コカ葉栽培・麻薬・人身売買関連
ア 14日,アルセ経済・財政大臣は,コカ葉の販売等に関してコカ葉栽培業者等に対して課す税金等を含む法律を起案している旨発言し,翌15日,コチャバンバ県熱帯地方のコカ葉栽培業者組合幹部は,現在もコカ葉の販売市場等に販売用のコカ葉を持ち込む際には,50ポンド毎に5ボリビアーノス(約7米ドル)を支払っているが,税金の支払いに関しては,これまで議論されてきたテーマではないと述べた。
イ 16日,モラレス大統領は,コカ葉の販売に対する課税に関しては,ラパス県ユンガス地方とコチャバンバ県熱帯地方のコカ葉栽培業者が,経済・財政省との間で協議する予定である旨発言した。
(6)司法改革関連
ア 11日,憲法裁判所は,司法審議会による地方裁判所の判事職の公募は憲法違反ではなく,地方裁判所の判事全員を交代させることを承認するとの憲法判断を行い,現在の判事は後任の指名までは現在の職務に残る旨の指示を行った。
イ 20日,司法官組合及び各県の司法官協会は,憲法裁判所の憲法判断を拒絶し,ボリビアの司法官の職を守るために新たな対策を講じる旨発表した。
3 外交
(1)多国間関係
ア モラレス大統領の第2回CELAC-EU首脳会合出席
10日,モラレス大統領は,ベルギーで開催された第2回CELAC-EU首脳会合出席に出席し,欧州諸国がラテンアメリカからの移民に対して設けている制限を疑問視し,現在では,ラテンアメリカに在住する欧州諸国の国民が,欧州に在住するラテンアメリカ諸国の国民よりも多いにもかかわらず,ラテンアメリカ諸国の政府は決して欧州諸国の国民を追放するための法律等は作らなかった点等を強調し,全世界の市民権を構築することを提案した。加えて,米国や国際通貨基金(IMF)による強制から解放されたことで,ボリビアは経済発展の道を作ったと述べ,欧州とラテンアメリカの諸国が国民の福祉のために新たな経済モデルを構築することを提案した。
イ チョケワンカ外務大臣の第45回米州機構(OAS)総会出席
15日,チョケワンカ外務大臣は,米国ワシントンD.C.で開催された第45回OAS総会に出席し,国際司法裁判所(ICJ)において審議されている「海への出口」問題に関するボリビアの提訴は,チリ政府に対して交渉を義務づけることを要請するものであって,国境の変更等を意図するものではない点を説明すると同時に,OAS改革の必要性を強調した。チョケワンカ外務大臣の発言に対して,チリ政府代表は,ICJの訴訟は2国間の問題であり,OASにおいて協議するべきではない旨反論した。
ウ ボリビア国軍のハイチ国連平和維持活動(PKO)終了
22日,ガルシア・リネラ副大統領は,ボリビア国軍のハイチPKO任務終了の式典に出席し,かつて,国連から「平和構築」のための作戦に参加することの要請を受けたが,「平和構築」は,植民地支配の新たな形式ともいえる占領の意図を隠すものであるため,拒否したことがある旨発言し,他方でハイチPKOはハイチの国家統一の保護のために合意して実施されたものであり,上述の「平和構築」とは異なるものである旨発言した。
(2)二国間関係
ア 対日外交
(ア)4日付け当地「カンビオ」紙は,3日,サンチェス・ユネスコ・キト事務所所長,ボリビア文科・観光省,日本政府の代表等が会合を実施し,日本政府が,「ティワナク遺跡及びアカパナ・ピラミッドの保全と保護」のために69万米ドルを支出する旨報じた。
(イ)9日,モラレス大統領は訪問中のベルギーにおいてドイツのラジオ局「DEUTSCHE WELLE」のインタビューを受け,ボリビアにおけるリチウム開発に関心を有していた企業から恐喝を受けた旨発言し,「日本,韓国,フランス企業数社による恐喝があった」旨述べた。加えて,ボリビア政府は今後もリチウム開発計画を継続することを確認し,技術的な制約も乗り越え,現在は海外で訓練を受けたボリビア人専門家が開発に携わっていると述べた。
イ 対欧州諸国・EU関係
(ア)8~11日,モラレス大統領は,ベルギーを訪問し,第2回CELAC-EU首脳会合出席に出席した他,10日,オランド仏大統領及び仏TOTAL社代表との会談を実施し,ボリビア空域のレーダー防衛システムの仏からの購入及び仏TOTAL社がサンタクルス県のインカワシ油田の第二フェーズの実施のために980百万米ドルの投資することに合意した。
加えて,EFE通信のインタビューにおいては,メルコスールがEUとの自由貿易協定を結ぶのであれば,ボリビアはメルコスールから脱退しなければならないだろうと発言し,モラレス大統領が提案する統合とは,競争ではなく連帯に基づく統合であると述べた。
(イ)10日,チョケワンカ外相は,ミミツァ欧州委員との間で,89百万ユーロに及び経済協力に関する3つの協定に署名した。89百万ユーロのうち,60百万ユーロは麻薬対策及びコカ葉の余剰栽培の減少のために使用される予定となっている。
(ウ)10日,トルロット駐ボリビアEU大使は,ボリビア政府は,一ヶ月前に,ボリビア国民に対する「査証取得の義務づけを撤廃すること」をEUに対して公式に要請した旨公表し,本件要請への回答には時間が掛かることを認めた。
(エ)11~12日,モラレス大統領は,イタリアのミラノを訪問し,第7回CELAC-イタリア会合に出席した他,レンジ伊首相との間で首脳会談を実施し,炭化水素の産業化に伴って発生するプラスチックの原料を使って,付加価値の伴う高価値の商品を製造するためにイタリア企業のTecnimont社が実施している調査等に関して協議した。
加えて,12日,モラレス大統領はミラノ万博のボリビア公式スタンドのオープニングに出席し,かつて先住民の食物と蔑まれたキヌアが今ではその栄養素の高さから世界に輸出されていると強調した。また,ボッコーニ大学において講演を行い,スペイン王室関係者がラテンアメリカ諸国の大統領就任式に出席することを拒否し,これからは,ヒエラルキーや寡頭制,王制ではなく,社会的に組織された国民の時代であると述べた。
(オ)16日,モラレス大統領は,自らの欧州歴訪を総括して,EU諸国は,未だに,新自由主義,資本主義及び帝国主義の真実を明らかにすることに恐怖を抱いており,IMF等の国際機関が課す政策から解放されるに至っていないと感じている旨発言した。加えて,ボリビアの経済発展や社会的変革に伴い,欧州諸国は,イデオロギーの違い等は抱えつつも,これまでと異なる視点でボリビアを見ており,敬意も存在していると感じている旨発言した。
(カ)19日,ギリシャを訪問中のガルシア・リネラ副大統領は,ドラガサキス・ギリシャ副首相と会談し,両国間の友好な関係を再確認し,進歩的な欧州の未来がギリシャにおいて決定されると述べ,ギリシャの決定は,経済を悪化させている極めて保守的な欧州の政治を変えることになると述べた。
ウ 対チリ関係
(ア)4日,モラレス大統領は,ラゴス元チリ大統領が,パラグアイにおいて,ボリビアが要請する主権を伴う海への出口を付与する唯一の方法は,ペルー政府の判断に基づく旨発言し,チリのアリカ州北部に幅10Kmの回廊地帯を設けることが唯一の手段であると述べたことに関して発言し,チリ政府がボリビア政府に対して歴史的な借りがあることを認めていることの証左であると述べた。
(イ)8日,カルロス・メサ元大統領(国際社会に「海への出口」問題に関する歴史的・法律的説明を行うための特別担当)は,2003年にボリビアで開催された第13回イベロアメリカ・サミットに出席したラゴス元チリ大統領と会合した際に,同元大統領が,「もし,元ペルー領土内を通過する主権を伴う回廊地域に対する承認をペルーから得られれば,自分(ラゴス元大統領)はすぐにも主権について話す用意がある」と述べた旨発言した。
(ウ)同8日,メサ元大統領は,今後の本件説明のための外遊につき発言し,ラテンアメリカ(コスタリカ,パナマ及びキューバ),次いで,欧州(英,伊,ベルギー)を訪問予定であると述べた。その後はアジア(日,露,印及び中)を訪問予定であり,これらの大国の理解が国際的な文脈での鍵となると述べた
(エ)11日,チョケワンカ外相は,チリのイキケ港の職員のストライキによってボリビアの貿易及び経済に大きな損害が出ていることを理由に,チリ政府による自由通行権の侵害に対する抗議を表明した。
(オ)23日に発表されたボリビア・ペルー共同声明においてペルー政府が「海への出口」問題においてボリビアを支持する趣旨の発表がなされたため,バチェレ・チリ大統領が翌週に予定されていたウマラ・ペルー大統領との首脳会談をキャンセルすることを決定した旨の報道を受けて,25日,モンターニョ下院議長は,チリ政府の数名の政治家達が,このようにペルーを脅すことは地域統合に資するものでは無い旨発言した。加えて,27日,モラレス大統領は,チリの数名の政治家がチリをラテンアメリカ地域におけるイスラエルへと変貌させていると述べて,チリ政府の対応を批判した。
(カ)29日,メサ元大統領は,パナマを訪問し,サイン・マロ副大統領兼外務大臣に対して,「海への出口」問題に係るICJ訴訟におけるボリビアの要請に関して説明を行った。
エ 対中国関係
(ア)モラレス大統領は,「ラ・ラソン」紙のインタビューにおいて,ブラジルとペルー政府が発表した南米横断鉄道計画に関して発言し,その代替策としてボリビア領土を通過する鉄道の建設を中国政府に対して提案しており,ブラジルとペルー政府とも今後対話を開始する予定であると述べた。加えて,中国政府は,ボリビアに対してオープンであり連帯感を有していると述べ,恐らく過去に同じような政治的経験を有しているからであろうと述べ,両国は強い同盟国であると発言した。
(イ)30日,アルセ国家利益擁護官及びフェレイラ国防大臣は,中国の青島海洋裁判所において実施された調停審問において,ボリビア政府が30百万米ドルを支払って韓国企業に建造を依頼したものの,中国に留め置かれている16隻のはしけが競売にかけられることを阻止し,8月10日に,同裁判所の仲介の下,交渉が開始する旨発表した。他方で,アルセ国家利益擁護官は,最終的な決着は未だ難しい旨述べた。
オ 対米関係
(ア)16日,チョケワンカ外務大臣は,OAS総会に出席するために訪問中のワシントンにおいて,ボリビア政府は,二国間関係の正常化を目的に,既に米国政府に対して米・ボリビア首脳会談の実施を要請したと述べた。
(イ)26日,ブレナン当地駐在米国臨時代理大使は,米国商務省のマクギー(Michael Mcgee)地域顧問及び農務省のビーン(Casey Bean)地域顧問が当地を訪問して,ボリビア政府関係者と,通商関係及び通商・投資分野における協力の可能性に関して協議した旨発表した。
カ 対亜関係
16日,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣は,アルゼンチンを訪問し,デ・ビード亜公共事業大臣との間で,両国の間の電力及び天然ガスの貿易に関する覚書に署名し,両国間をつなぐ500キロボルトの送電線の建設を推進することで合意した。
キ 対伯関係
1日,カルドーゾ伯法務大臣はボリビアを訪問し,ロメロ内務大臣との会合を行った。会合後,カルドーゾ大臣は「麻薬対策における伯・ペルー・ボリビア間の統合の必要性について協議した」旨発言し,翌2日にペルーにおいても会合を行う予定である旨説明した。
ク 対バチカン関係
(ア)28日,マチカオ文化・観光大臣は,法王フランシスコのボリビア訪問に触れて,法王から,エル・アルト空港に到着した際には,コカ葉を咀嚼したい旨の特別の要望があった旨発表した。29日,ガルシア・リネラ副大統領は,法王がコカ葉の医薬的側面を認めたことの意義を強調し,ロンバルディ・バチカン広報官は,法王フランシスコは,自らが適当であると思ったように行動すると述べて,ボリビアに到着した際に高地の影響を軽減するためにコカ葉を咀嚼することは同法王の自由である旨述べた。
(イ)30日,モラレス大統領は,法王フランシスコのボリビア訪問に合わせて,7月9日をサンタクルス県の祝日とすることを決定し,マチカオ文化・観光大臣は,7月8日をラパス県の祝日とするかは次回閣議において協議する予定であると述べた。
ケ 対ペルー関係
(ア)2日,サンチェス炭化水素・エネルギー大臣は,ペルーのクスコにおいてオルティス・ペルー・エネルギー鉱山大臣との会談を実施し,情報交換や二国間統合の推進を目的に,炭化水素に関する二国間委員会及び電力に関する二国間委員会の創設を決定した。
(イ)23日,モラレス大統領はペルー・プーノ市のエステベス島を訪問し,ウマラ・ペルー大統領と共に第1回ボリビア・ペルー合同閣議を開催した。閣議終了後,両国首脳が署名した36項目からなる「エステベス島宣言」の発表及び右に含まれる9つの協定(チチカカ湖の環境回復・保護のための共同委員会の創設,麻薬取引・密輸・人身売買・資金洗浄・違法鉱業等への対処における協力,ボリビアの天然ガスのペルー南部への輸出及びそのためのガスパイプラインの整備等への参加,二国間の送電線の建設,ペルーのイロ港にボリビア税関の事務所設置等)への署名が行われた。
「エステベス島宣言」においては,ペルー政府は,ボリビアが海への出口を有していない状況に関して広範な連帯及び理解の精神を維持することを表明し,両国首脳は,国際法及び国連憲章に示されている原則,特に武力の行使またはそれに基づく威嚇の拒否及び紛争の平和的解決の重要性を再確認した旨発表した。加えて,ボリビアを通過して南米大陸を横断する両洋間鉄道の建設プロジェクト(ボリビア政府は,ボリビアを経由して,伯・ペルー間の約1,500kmをつなぐ両洋間鉄道の建設をかねてより主張している)に関して,ペルー政府は,その実現可能性を評価するための調査を実施する旨発表した。
モラレス大統領は,ボリビアを通過する南米大陸横断鉄道の建設は,他の南米諸国の貿易にも肯定的な影響を与える旨強調し,また,海への出口問題に関して,ペルー政府が「広範な連帯及び理解の精神を維持」と記されたことに関して,ペルー政府への謝意を表明した。
コ 対パラグアイ関係
29日,モラレス大統領はパラグアイを訪問し,カルテス・パラグアイ大統領と首脳会談を行った他,電力・インフラ・エネルギー統合,国境地帯の監視強化,貿易関係の活性化,Urupabol(ウルグアイ,パラグアイ,ボリビアの3ヶ国協力体制)の再活性化,教育・文化・観光・治安分野での協力等を含む14分野における今後の協力に合意した。
モラレス大統領は,共同記者会見において,両国間の関係の良さを強調し,加えて,日時・場所は明確化しなかったものの,二国間の合同閣議を開催する旨発表し,アルラルデ政務担当外務次官は,共同宣言第4項(「国連海洋法条約」において認められている内陸国の権利等の効力を再確認し,通過国,先進国及び国際機関に対して,航行の自由に加えて,公海及び人類の共同の財産に関する権利等を含む海へのアクセスの権利を保障することを要請)の重要性を強調し,会合においては,パラグアイ政府側から,パラグアイ以上にボリビアの状況を理解できる国はなく,パラグアイも自らの体験を通してボリビアと同じように不正義に苦しんでいる旨の発言があったことを紹介した。
サ 対キューバ関係
29日,チョケワンカ外務大臣はキューバを訪問し,「ボリビアにおける変革のプロセスとよく生きる“Vivir Bien”の挑戦と成果」と題された講演会に参加し,先住民が独自のアイデンティティをもって生きる権利保護を訴え,ラテンアメリカ諸国の統一と多様性の保護に取り組むことを求めた。
(了)