ボリビア内政・外交(2015年1月)
1 概況
(1)内政
- 13~14日,各県の地方選挙裁判所は,2015年3月の地方選挙の立候補者が提出した書類の精査を完了し,15,819名の立候補者のうち6,842名(43.2%)が立候補資格を有していないと発表した。
- 18日,国会の準備議会において22日から開始する国会の上下院両議長が選出された。下院議長には与党社会主義運動(MAS)党のモンターニョ新下院議員(サンタクルス県選出)が,上院議長には同党のゴンサレス新上院議員(ラパス県選出)が選出された。
- 21~22日,大統領就任式に関連する一連の行事がボリビアティワナク遺跡及びラパス市において実施された。
- 23日,モラレス大統領は,2015~2020年までの任期となる第三期政権の開始にあたり新内閣の閣僚(8名が留任,13名新任)を任命した。
(2)外交
- 8日,ニューヨークの国連本部において,モラレス大統領は,「G77+中国」会合の議長国を南アフリカに引き継いだ。
- 19日,モラレス大統領は,法王フランシスコが2015年7月にボリビアを訪問予定である旨発表した。
- 21~23日,西村康稔特派大使がボリビアに滞在し,モラレス大統領就任式の各種行事に出席したボリビア政府関係者との会談を行った。
- 28~29日,モラレス大統領は,コスタリカにおいて開催された第3回ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会合に出席し演説を行った他,バチェレ・チリ大統領,ソリス・コスタリカ大統領と首脳会談を行った。
2 内政
(1)政府の動き:
ア 大統領就任式実施
(ア)16日,アルラルデ政務担当外務次官は,21~22日に実施予定の大統領就任式に既に少なくとも40カ国以上の代表団が参加登録している旨発表した。
(イ)21日,ティワナク遺跡において,ソリス・コスタリカ大統領,カルモナ・トリニダード・トバゴ大統領,ガインゴブ・ナミビア首相,ブドゥー亜副大統領,ロペス・キューバ国家評議会副議長,シェイマン・ベラルーシ副大統領,モイセス・ハレスレーベンス・ニカラグア副大統領,エスピノサ・ペルー副大統領等の出席の下,大統領就任式の式典の1つである先祖伝来の式典が実施された。同式典において,モラレス大統領は,抑圧,虐待を受けてきた先住民族の歴史・文化を振り返り,貧困は植民地主義及び資本主義国家によって作られた経済社会発展モデルの産物であり,現政権は,過去の科学を取り戻して近代化と融合させること,母なる大地を害することなく産業を発展させ,バランスを保ちつつ近代化を勧めることを求めている旨述べた。加えて,人民は世界に対する責任を負っており,また,生命を守る義務があり,生命を守ることは地球を守ることであり,また,資本主義及び帝国主義を終結させることである旨の演説を行った。
(ウ)22日,ボリビア多民族国議会において,コレア・エクアドル大統領,ルセーフ伯大統領,マドゥーロ・ベネズエラ大統領,カルテス・パラグアイ大統領,ソリス・コスタリカ大統領,アキナス・カルモナ・トリニダード・トバゴ大統領,ガインゴブ・ナミビア首相,シェイマン・ベラルーシ副大統領,ハレスレーベンス・ニカラグア副大統領,エスピノサ・ペルー副大統領,ブドゥー亜副大統領,モハメド・ラルビ・オウルド・ケリファ・アルジェリア副大統領,ロペス・キューバ国家評議会副議長等出席の下,大統領就任式が実施された。同式典において,モラレス大統領は,現政権前後の比較を示す経済・社会データを示しながら,政治的・経済的安定の達成,コカ葉の咀嚼への国際的承認(注:留保を付しての1961年麻薬単一条約再加盟の達成)や米国の支援無しでの麻薬対策の成果の向上等の現政権の成果及び「海への出口」問題や司法改革,更なる貧困削減への取り組み,天然資源の産業化への取り組み及びインフラ整備等の継続的課題を発表した。同演説において発表された主要な経済・社会データは以下の通り。
- 実質GDP成長率:3.2%(97~05年平均)→5.1%(05~14年平均)
- 名目GDP:95億2100万ドル→340億ドル
- 一人当たりGDP:1,000ドル→3,000ドル
- 財政収支:-5.2%→1.2%
- 公共投資:6億2900万ドル→56億2800万ドル
- 外貨準備高:17億1400万ドル→151億2300万ドル(GDPの45%に相当)
- 貧困率:37.2%→18.8%
- 電気普及率:64.4%(01年)→82.3%(12年)→83.5%(14年)
- 飲料水普及率:71.8%(01年)→79.9%(12年)→85.2%(14年)
- ガス普及率:58%(01年)→71.7%(12年)→74.9%(14年)
- 下水普及率:30%(01年)→40%(12年)→44.7%(14年)
- 都市部失業率:8.1%→3.2%
- 最低賃金:440Bs.→1,440Bs.
イ 新内閣発足
(ア)22日,モラレス大統領の第二期政権の終了及び第三期政権開始にあたり,第二期政権における全閣僚21名は総辞職した。
(イ)23日,モラレス大統領は,2015~2020年までの任期となる第三期政権の開始にあたり新内閣の閣僚を任命した。新内閣においては,前内閣から8名の閣僚が留任し13名が新任の閣僚となった。モラレス大統領は,新任閣僚に対して選挙運動期間中に発表された政権公約に関して再確認すること及び「2025年までの長期的発展のためのアジェンダ」達成のためのプロジェクトの執行の開始を要請した。
ウ 新国会開始
(ア)18日,スクレ市において開催されていた国会の準備議会において,22日から開始する国会の上院・下院両議長が選出された。下院議長には,与党MAS党のモンターニョ新下院議員(サンタクルス県選出)が,上院議長には,MAS党のゴンサレス新上院議員(ラパス県選出)が選出された。
(イ)新国会において,野党陣営(UD)及びキリスト教民主党(PDC))は,野党に割り当てられていた上院外交委員会委員長の人事に関して合意に至ることが出来ず,最終的には,MAS党も加わって決定を行った。
エ 議会による民営化・資本化プロセスへの告訴決議
13日,議会は,1989年から2000年にかけてボリビアにおいて実施された国営企業の民営化・資本化プロセスを推進した当時の政府高官達に対しての告訴決議を,国会の両院特別調査委員会が提出した報告書に基づいて採択し,サンチェス・デ・ロサーダ元大統領やドリア・メディーナ元企画大臣(現国民統一(UN)党党首)を含む13名の元政府高官に対しての裁判を開始するための第一歩を踏み出した。ガルシア・リネラ副大統領(多民族国議会議長)は,本件告訴は今後も継続するプロセスの第一歩であり,1月22日に開始する新国会(任期2015~20年)において継続される必要があると述べ,他にも今後調査されるべき事項が多く残っていると発言した。
オ 2014年総選挙結果に基づく動き
26日,ガルシア・リネラ副大統領は,2014年10月に選出された国際機関等における国際議会議員の就任式を実施し,新任議員に対して,「海への出口」問題に関するボリビアの国際司法裁判所(ICJ)への提訴に関しての広報の取り組みを行うよう要請した。
カ ビジェガス・ボリビア石油公社(YPFB)総裁の逝去
24日,ビジェガスYPFB総裁が治療を受けていたチリの病院で亡くなり,25日,遺体がラパスに到着した。政府は同総裁の功績をたたえ,通常の活動を停止しない形で72時間喪に服すことを決定した。モラレス大統領は,同総裁を,炭化水素資源の国有化と天然ガスの産業化を実行した代わりの利かない人物と評し,逝去に対して涙を流した。
キ ラパス市ロープウェー「Mi Teleférico」新規6路線建設のための法律公布
26日,モラレス大統領は,既に3路線が建設されているラパス市のロープウェー「Mi Teleférico」に更に新規6路線を建設するために4億5千万米ドルの予算を確保しその建設を保障する内容の法律を公布した。ドックウェイラー同ロープウェー管理・運営会社社長は,第一次計画においては3路線(9.9km,11駅)が敷設されたが,第二次計画においては更に6路線(計20.3km,23駅)が敷設される予定であると述べ,規模の大きさを強調した。なお,同法律においては,建設予定地の引渡等を所有者が拒否する場合には,その接収のために警察等が介入することを認めている。
(2)2015年地方選挙
ア 13~14日,各県の地方選挙裁判所は,2015年3月29日の地方選挙の立候補者が提出した書類の精査を完了し,15,819名の立候補者のうち6,842名(43.2%)が立候補資格を有していないと発表した。なお,6,842名のうち1,147名は与党MAS党の候補であり,571名は社会民主運動(MDS)党の候補であった。ロハス上院議長は,43%以上の候補者が立候補資格を承認されない事態は,最高選挙裁判所(TSE)が正確に必要書類等を伝達したのか等の疑いも生じさせる旨発言しているが,チュキミアTSE判事は,本件発表は決定事項であり立候補資格を有していない候補者の所属政党は,代理候補をたてることのみ可能である旨述べた。
イ 上述の立候補資格の承認に関しては,TSEが12月18日に発表していた回章71号の効力が議論を呼んでいたが,上記(2)アの決定を受けて同回章の効力が確認され,実際に2010~15年に国会議員を務めていたデルガド前議員(コチャバンバ市長選立候補)やトゥパ前議員(モンテロ市長選立候補),マルドナード前議員(ポトシ市長選立候補)等のMAS党から離反した前議員が立候補資格を認められなかった。回章71号に関しては,TSEが本来その権能を与えられていない憲法解釈を行っている等の理由から憲法学者等も強く批判しており,デルガド前議員等は本件を地方裁判所に憲法判断を要請するための手続きを開始したが,16日,コチャバンバ県地方裁判所はデルガド前議員の要請を退けた。
ウ 20日,TSEは,地方選挙裁判所の決定を承認し,上述の前議員の立候補資格不承認を確認した。オバンドTSE副長官は,これら前議員達による抗議行動を非難すると同時に,TSEの決定は憲法に基づくものである点を再度強調した。
エ 31日,モラレス大統領は,ラパス県において与党MAS党の地方選挙のための選挙運動を開始し,良い県政・市政のためには,信頼のおける県知事・市長が必要であると発言して,MAS党候補への投票をよびかけた。
(3)憲法裁判所(TCP)判事の弾劾裁判及び司法改革
ア 5日,モラレス大統領は,司法革命のためには国民投票を通してボリビア国民が決定する必要があり,憲法改正が必要であればそのための国民投票を実施する必要がある旨発言した。加えて,2011年の司法官選挙が良い結果をもたらさなかったことを嘆き,1月22日の大統領就任式後に国民に司法改革の方策に関して問う旨発言し,国民投票における質問の作成にあたっては専門家の意見も考慮に入れる旨発言した。
イ 7日付「パヒナ・シエテ」紙は,グティエレス法務大臣のインタビューを掲載し,モラレス大統領が提案した国民投票においては,司法改革のための国民への質問に加えて,現職の最高裁判所,TCP等の裁判官の罷免も内容に含まれる可能性がある旨発言した。他方で,モラレス大統領が発言した憲法改正は,あくまでも司法改革のための憲法改正であり,大統領の連続三選を禁止する条文等の改正は含まれない旨発言した。
ウ 7日,ガルシア・リネラ副大統領(大統領代行)は,国民投票の実施を肯定する一方で,2011年の司法官選挙においては候補者選出の段階で,能力よりも社会運動団体の支持が優先される等の誤りがあったこと及び司法府の職員の多くを交代する必要があることを認め,今後は,業績及び能力に基づいての選出を行う必要があると述べた。
エ 8日,TCP判事3名に対して実施されていた弾劾裁判において,ボリビア上院議員からなる弾劾裁判所は,ソライダ・チャネスTCP判事(資格停止中)を同判事の職から罷免することを決定したが, MAS党所属の議員2名は不当な判決であり基本的人権を侵害するとの理由から反対した。本件弾劾裁判においては,1月5日にクシTCP判事が病気を理由に本件裁判から分離され,6日,ベラスケスTCP判事は判事の職を辞職することを公表し弾劾裁判から外れ,通常の刑事法廷に移されていた。
オ 19日,モラレス大統領は,記者会見において,司法改革のために憲法を改正するという判断は国民の決定であると述べる一方で,自らが恒久的に選挙に出馬できるようにするための憲法改正は行わないと発言した。
(4)コカ葉栽培・麻薬・人身売買関連
ア 16日,戦略的・機動的コマンド(CEO)は,2015年は,ボリビア国内の自然公園等におけるコカ葉の違法栽培の対策に焦点を当てる旨発表し,11千ヘクタール分の違法栽培を根絶する旨発表した。また,EUは,CEOに対して機材整備や保健衛生,輸送や人的資源育成のために692千米ドルの資金協力を行った旨発表した。
イ 19日, カセレス内務省社会防衛・規制物質担当次官は,2015年においては,違法コカ葉栽培面積を1万ヘクタール分減少させるとの目標値を発表し,同目標値が2014年の目標値に比べて少ないことの理由として,現在は違法コカ葉栽培が減少したことを挙げた。
(5)降雨状況
ア 全国で集中豪雨,雹(雹については,オルロ県,コチャバンバ県及びチュキサカ県で被害が報告されている)及び干魃により,10,400世帯の被害が出ている。なお,集中豪雨の被害を受けている地域は,ラパス県北部,コチャバンバ県熱帯地区,ポトシ県,チュキサカ県及びオルロ県である。
イ カブレラ国防省市民安全対策次官は,集中豪雨による被害は2014年11月から今日まで6県(ラパス県,チュキサカ県,ポトシ県,コチャバンバ県,ベニ県及びサンタクルス県)44市10,400世帯に及んでいると述べ,18日までに河川の増水あるいは落雷等が原因での死亡者数は15名に上る旨発表した。各県の内訳は以下のとおり。
(ア)コチャバンバ県:7名
(イ)チュキサカ県:2名
(ウ)ポトシ県:5名
(エ)サンタクルス県:1名
ウ ポトシ県,チュキサカ県及びラパス県では既に非常事態が宣言されており,ボリビア道路管理局(ABC)によると,ラパス北部からベニ県の7道路で崖崩れが報告されており,交通渋滞を引き起こしている。
3 外交
(1)多国間関係
ア G77+中国議長国
8日,ニューヨークの国連本部において,モラレス大統領は,「G77+中国」会合の議長国を南アフリカに引き継いだ。モラレス大統領は,演説において,客年6月にボリビアで開催された「G77+中国」首脳会合において採択されたサンタクルス宣言を想起し,2030年までの貧困撲滅が今後の開発アジェンダの中心となるべきである旨発言した。加えて,世界の不平等の是正,新世界秩序の構築及びより正当かつ民主的なシステム構築のために途上国にとっても適正なアジェンダの作成が必要であると述べ,加えて,途上国の政治的独立が重要であると発言した。
イ CELAC首脳会合
28~29日,モラレス大統領は,コスタリカにおいて開催された第3回CELAC首脳会合に出席し,演説において,米国とキューバの関係正常化の取り組みはラテンアメリカ諸国の結束及びキューバの戦いの成果であると述べ,域内諸国の結束の重要性を強調すると同時に,4月にパナマで開催予定の米州サミットにオバマ米大統領が出席すること,グアンタナモ基地の返還及び対キューバ経済封鎖を解除することを期待する旨発表した。
ウ メルコスール関係
27日付け当地「ラ・ラソン」紙は,ボリビアのメルコスール加盟に関して,新規加盟のための議定書に署名がなされた際にパラグアイが資格停止処分を受けていたために,同議定書にパラグアイが正式加盟国と記載されていないことを同国政府が問題視しており,パラグアイが正式加盟国として記載されている新たな議定書への署名を以てボリビアの加盟手続きを再度開始することを提案している旨報道した。現在まで,アルゼンチン,ウルグアイ,ベネズエラの3ヶ国がボリビアの新規加盟に関する議定書を国会で批准している。
(2)二国間関係
ア 対日外交
(ア)21~23日,西村康稔特派大使がボリビアに滞在し,モラレス大統領就任式の各種行事に出席した政府関係者との会談を行った。
(イ)21日,西村特派大使は,ガルシア・リネラ副大統領を表敬訪問し,二国間のテーマや日本の今後の対ボリビア経済協力等に関して協議した。
イ 対欧州諸国・EU関係:
(ア)フランスで発生した新聞社襲撃テロ事件に関して,8日,モラレス大統領はオランド仏大統領宛に死亡した12名の被害者及び負傷者等に対して連帯を表明し,いかなる信仰,イデオロギー,政治信条も無実の人々の死を正当化するものではない旨表明する書簡を送付した。
(イ)7日,チョケワンカ外務大臣はスペインを訪問し,ガルシア・マルガジョ西外交・国際協力大臣と外相会談を行い,両国外相は二国間の議題に関して協議した。
(ウ)27日,パコ通信大臣は,モラレス大統領がギリシャ総選挙で勝利したSYRIZAのツィプラス候補に対して電話で祝意を表明した旨発表した。両首脳は,二国間関係の強化のために相互訪問を実施することに合意した旨発表した。
ウ 対米関係:
(ア)4日,モラレス大統領は,米国のCIAが既にMAS党内部まで入り込んでおり,内部分裂及びMAS党党員間での勢力争いを引き起こしていると述べた,3月の地方選はMAS党対MAS党の戦いになると述べた。
(イ)19日,モラレス大統領は対米関係に関して発言し,両国大使の交換を強く望んでおり,ボリビア政府が唯一要請するのは相互の尊重である旨発言した。
(ウ)22日,大統領就任式出席のため当地を訪問したマリノウスキ米国務次官補(民主主義・人権・労働担当)は,チョケワンカ外務大臣と約30分間会談を行い,関係正常化のための両国の意思を確認した。同国務次官補は,「米国は,ボリビアが大きな成長と社会包摂を達成したことに関して強い敬意を抱いていることを伝えた」旨発言し,両国首脳間の会談に関しては,日程等は全く決まっていないものの今後実施の可能性を探ることになる旨発言し,両国間の友好的な雰囲気が維持されればその可能性も高くなる旨述べた。
(エ)25日,モルディス内務大臣は,米国との間で,DEAが当地に戻ることのない形での二国間関係正常化のための取り組みが開始している旨発言し,ボリビアの麻薬対策においてDEAは不要である旨強調する一方でDEAとの協力は可能であると発言した。加えて,29日,同大臣は麻薬対策強化のためにDEAとの情報交換が必要であると述べた。
エ 対チリ関係:
(ア)4日,モラレス大統領は,ICJに提訴している「海への出口」問題に関して,法王フランシスコがボリビア政府に対して資料等を要求した旨発言した。
(イ)11日,ボリビア政府は,チリの「ラ・テルセラ」紙による「12月18,19日に,ボリビア外務省がチリ政府に対して,チリ北部に主権を伴う飛び地領土を獲得することと引き替えに,ICJへの提訴を取り下げるという提案を非公式に行った」との報道を否定した。アラウコ外務省官房・領事担当次官は,「公式にも非公式にも提案等は行っていない旨発言し,13日,モラレス大統領は本件報道に触れて,ICJへの提訴を取り消すほどボリビア国民は馬鹿ではないと述べ,本件報道を完全に否定した。
(ウ)29日,第3回CELAC首脳会合に出席するために訪問したコスタリカにおいて,チリ政府の要請に基づいて,モラレス大統領はバチェレ・チリ大統領と30分弱,完全に部外者を除外した形で会談を行った。チョケワンカ外務大臣は,2006年に両国間で合意された13のアジェンダに基づく二国間対話を,現在ICJに提訴されている「海への出口」問題も含めて再開する可能性に関して同会合で協議した旨発表したが,ヘラルド・チリ外務大臣は,「海への出口」問題は含めない形で,12のアジェンダに関して再開することに関して協議した旨説明している。
(エ)30日,モラレス大統領は,バチェレ大統領との会談において,全てのテーマに関して協議をする二国間会談の形式等に関してチリ政府側から提案するということで合意した旨発言した。
オ 対ウルグアイ関係:
18日,ボリビア政府は,米州機構(OAS)の次期事務局長選挙において,ウルグアイのアルマグロ外相を支持する旨ウルグアイ政府に伝達したことが公表された。
カ 対ペルー関係:
(ア)2日,チョケワンカ外務大臣は,ボリビア政府は汚職に関与した人間を保護することはない旨発表し,翌3日,モラレス大統領はベラウンデ氏が不法にボリビアに入国したのであれば逮捕する必要がある旨発言した。
(イ)13日,ベラウンデ氏はボリビア国家亡命者理事会(Conare)において自らの政治亡命申請に関しての説明を行ったが,20日には,ボリビアの最高裁判所(TSJ)が同氏の引渡しを目的とする予防拘留の決定を行い,ベラウンデ氏は警察に対して投降した。これに対して,ボリビア外務省はペルーから犯罪人引渡し申請は接到していない旨発表し,また,ConareはTSJに対して決定の修正を要請した結果,21日,TSJは決定を修正し同氏の自宅拘禁を命じた。
(ウ)25日,Conareは,第1審での決定を発表し,ベラウンデ氏がペルーにおいて政治的迫害に受けていることの証拠がないことを理由に同氏の政治亡命申請を却下し,今後15日間,上告を行うことが可能となる旨発表した。
(エ)28日,モラレス大統領は,「ボリビアは汚職者のゴミ箱にはならない」旨発言し,汚職の罪で告訴されている被疑者達に庇護を与えることはない旨発言した。
キ 対韓国関係:
10~12日,チョケワンカ外務大臣は韓国を訪問し,12日,尹炳世(Yun Byung-se)外交部長官と外相会談を行った。同外相の韓国訪問は,両国の外交関係樹立50周年を記念しての訪問であり,外相会談において,両国外相は,技術協力に加えて,人材育成・人物交流の分野での経済協力の拡大に合意し,中でも,天然資源の産業化,食料安全保障及びインフラ整備の分野における韓国の協力に対する期待を表明した。尹炳世長官は,科学技術都市や国際空港の建設,電子政府の創設等のボリビアにとって戦略的重要性を有する分野での2国間協力拡大を提案し,石油化学,エネルギー効率,度量衡学及び規格化等の分野における協力の可能性を探ることを示唆した。加えて,両大臣は,北東アジアと朝鮮半島情勢及びラテンアメリカ情勢に関して意見交換を実施した。
ク 対ベネズエラ関係:
(ア)9日,モラレス生産開発・複合経済大臣は,ベネズエラ企業から国営繊維企業ENATEXへの16百万米ドルの支払いが滞っていることを理由にベネズエラ市場に対する信頼を失っている旨発言し,ベネズエラ以外の市場を探す必要性を強調した。
(イ)9日,ボリビア駐在ベネズエラ大使館は,同大使館の外交官がボリビア警察から恣意的な取り調べを受け,逮捕され,暴行されたとの告発を行った。同外交官は7日朝,車を運転しているところを警察官に止められ,アルコール検査を拒否したところ暴行を受けたと主張しているが,他方で同外交官が右警察官の鼻の一部をかみちぎったとも報道されている
(ウ)22日,大統領就任式出席のため当地を訪問したマドゥーロ・ベネズエラ大統領は,両国間の協力事業に関する合同委員会を本年2月より再開することをモラレス大統領と合意した旨発表し,同委員会は,3ヶ月毎に開催され,エネルギー,産業開発,農業,社会,ケ 対バチカン関係:
19日,モラレス大統領は,法王フランシスコが2015年7月にボリビアを訪問予定である旨発表した。同様に法王フランシスコもフィリピン訪問の帰りの飛行機の中で2015年にボリビア,パラグアイ及びエクアドルを訪問予定であると発表した。
コ 対コスタリカ関係:
29日,モラレス大統領はソリス・コスタリカ大統領と会談を行った。モラレス大統領は,会談前に,ボリビア国内で調査等を開始している地熱発電プロジェクトに関して,既に経験を有するコスタリカ政府との技術協力の可能性等について協議する旨説明し,地熱発電分野のボリビア人専門家が不足していることから,コスタリカの国営電力公社に対して技術的側面からの支援を要請する予定であると述べた。本件に関しては,30日,モラレス大統領は,2,3週間以内に同国の技術チームがボリビアを訪問する旨発表した。
サ 対ベラルーシ関係:
(ア)20日,キンタナ大統領府大臣は大統領就任式出席のため当地を訪問したシェイマン(Victor Sheiman)ベラルーシ副大統領と会談を行い,主に鉱業部門における多くのプロジェクトに関する意見交換を行い,2013年にモラレス大統領がルカシェンコ同国大統領との間で締結した二国間協力協定の実施を確認した。
(イ)シェイマン副大統領は,4社の地質探査向け合弁会社の設立が予定されており,ボリビアにおける多鉱質性のサンタクルス県ポルベニール鉱区における探査だけで,1千~1千2百万米ドルの初期投資が予定されている旨発言し,その後本件事業の進捗次第で更なる追加投資が必要になると述べた。加えて,鉱業関係以外でも,農業分野における専門家育成や機材提供,道路整備等の分野における協力が予定されている旨発言した。
(了)