ボリビア内政・外交(2014年11月)

平成26年12月31日

1 概況

(1)内政

  • 6日,最高選挙裁判所(TSE)は2015年3月29日に地方選挙第1回投票(県知事9名,県議会議員272名,市長339名,市議会議員1,861名等が改選)を実施する旨決定した。
  • 10日,アルセ経済・財政大臣は,国会に提出された2015年度国家予算案につき説明し,社会主義運動(MAS)党の政権公約及び「2025年までの長期的発展のためのアジェンダ」の段階的実現,収入再分配等を伴うマクロ経済の安定及び持続性の保証,利益の創出及び再分配を可能とする経済・社会・共同体・生産モデルの確立,補助金等の社会政策の継続の保証の4点を方針として挙げた。
  • 12日,TSEは,2014年総選挙において有効得票の3%を獲得できなかった恐れなき運動(MSM)党及びボリビア緑の党(PVB)の法人格喪失を正式に決定した。

(2)外交

  • 3日,モラレス大統領は,第2回国連内陸開発途上国会議に出席し,ボリビアはチリによる不当な軍事侵攻によって一時的に海への出口を剥奪された状態にあると強調した。
  • 7日,ロドリゲス代理人(駐蘭大使・前大統領)は,「海への出口」問題に関する国際司法裁判所(ICJ)提訴において,チリ政府が提出したICJの管轄権に関する先決的抗弁に対しての陳述書を,提出期限よりも7日間早く提出した。
  • 18日,グティエレス・ペルー外相は,「海への出口」問題に関するICJ訴訟におけるボリビア政府の主張は,チリ・ボリビア両国間の国境を画定する1904年の平和友好条約に関係するものではなく,チリ政府がボリビア政府に対して「海への出口」を提供するための交渉実施を約束する内容の1950年代の両国間の覚書きに関するものである旨発言した。
  • 28~29日,タリハ県において,G77+中国炭化水素担当閣僚級会合を開催され,30ヶ国以上の参加のもと,天然資源の産業化や貧困削減を志向する経済・社会発展のための天然資源の活用等を含む24項目からなる宣言を発表した。

2 内政

(1)政府の動き

 2015年予算

 (ア)10日,アルセ経済・財政大臣は,国会に提出された2015年度国家予算案につき説明し, MAS党の政権公約及び「2025年までの長期的発展のためのアジェンダ」の段階的実現,収入再分配等を伴うマクロ経済の安定及び持続性の保証,利益の創出及び再分配を可能とする経済・社会・共同体・生産モデル(Modelo Economico Social Comunitario Productivo)の確立,補助金等の社会政策の継続の保証の4点を方針として挙げた。

 (イ)同大臣は,ボリビアの経済・社会・共同体・生産モデルが,資源価格が変動する間も力をつけてきた結果として,昨今の天然資源の国際価格の下落の影響を受けずボリビア経済は成長し続ける旨説明し,また,液体燃料生産へのインセンティブの拡大,天然ガス車の増加,天然ガス分離プラントへの投資等により,燃料の輸入が減少するため,2015年の燃料補助金(658百万米ドル)は,本年の金額(860百万米ドル)を下回る旨説明した。

 (ウ)加えて,同予算案に計上されている公共投資額のうち,外国からの調達分は21%のみである点,税務当局(SIN)及び税関のより効率的な徴税を実施し,次年度は15%の税収増の見込みである点を強調した。

 (エ)同予算案におけるマクロ経済予測等の数値は以下の通り。

  • 経済成長率:5.9%
  • 名目GDP:36,196百万ドル
  • インフレ率:5.0%
  • 国家予算:221,181百万ボリビアノス(約31,778.9百万ドル,本年度比13%増,GDP比89%)
  • 公共投資額:6,179百万ドル(本年度比37%増)
  • (内訳)

    • インフラ整備案件(通信,エネルギー,水資源,交通):2,498百万ドル
    • 生産分野(農業,炭化水素資源,工業,観光業,鉱業):1,768百万ドル
    • 社会分野(教育・文化,医療・社会保障,基礎衛生サービス,都市化・住宅):1,687百万ドル
    • その他のプロジェクト:226百万ドル

     原子力の平和利用

     (ア)4日,ソサ炭化水素・エネルギー大臣は,国立サン・アンドレス大学(UMSA)との間で,原子力の平和利用プロジェクトの推進のための協力に関する協定を結び,2015年にボリビア原子力機関を創設予定である旨発表した。

     (イ)16日,ボリビア訪問中のアデルファン国際原子力機関(IAEA)原子力専門家は,IAEAの仲介の下,ボリビアが,キューバ及びエクアドルと共に2015年下半期に原子炉管理のヴァーチャル実験を開始すると述べた。同実験は,IRL(原子炉をインターネットで接続し,リアルタイムで炉の様子を観察できる人材養成用システム)プロジェクトの一環であり,同専門家は,IAEAが機材送付のための合意文書に署名するところである旨,3ヶ国に向けた情報の発信源は亜のバリローチェ原子力センターの原子炉「RA-6」となる予定である旨説明し,加えて,今後UMSAの教室にヴァーチャル炉が設けられ,IAEAは,評価,実験,オペレーションの全プロセスに対する支援を行うと述べた。加えて,2015年8月に関係4ヶ国間の会合で実験開始の具体的な日程が決定予定である旨発言し,原子力関連政策における,適切な判断材料に基づいた専門家の決定及び人材育成の重要性を強調した。


     軍備増強

     (ア)3日,サアベドラ国防大臣は,空域に関する防衛に関しての法律の施行を受けて,ボリビアにおいてもレーダーを設置する予定であり,カナダ,アルゼンチン,中国及びスペインから既に提案を受けている旨発言した。

     (イ)5日,モラレス大統領は,空軍に対して8台の新車を供与し,また,空軍の軍備補強及び気候変動等による災害等に対応するため更に航空機を購入する計画であり,スペイン製航空機ヘラクレスの購入を検討している旨発言した。ボリビア政府は,2011年,麻薬対策のために空軍に対して中国製航空機K-8を6機供与した他,14年には,ヘリコプターEC145を5機,航空機ユーロコプターを2機購入し,同年8月には,エアバス・ヘリコプター社製のヘリコプター,スーパーピューマ6機がボリビアに到着した。

     (ウ)14日,サリーナス国軍司令官は,ウユニ塩湖周辺地区を管轄する第11師団の創設を計画していることを発表した。


     憲法裁判所判事の弾劾裁判

     (ア)4日,上院は,憲法裁判所判事2名に対する弾劾裁判に,クシ憲法裁判所判事も被告として含める旨決定し,4日に予定されていた裁判の再開を遅らせる旨発表した。本件裁判においては,上記3名の判事に対して刑事罰が科される可能性もあり,被告のベラスケス判事は,司法府の独立を阻害する倒錯的な裁判と批判している。

     (イ)26日,下院は,本件弾劾裁判の根拠法である法令第44号を改正し,弾劾裁判にかけられている裁判所判事等は,判決が出される前までにその職務を辞することが可能である旨の条文を追加した。判決が出る前に辞職した場合には,議会における弾劾裁判はその時点で終了することになる。


     地熱発電計画

     9日,モラレス大統領は,ポトシ県において,同県は数年のうちに地熱発電の中心地となることが計画されており,その資金も確保されているが,問題の1つは地熱発電に関しての専門的知識を有する専門家がボリビアにいない点であると発言した。


     2014年総選挙結果に基づく動き

     (ア)12日,TSEは,2014年総選挙において,有効得票の3%を獲得できなかったMSM党及びPVB党の法人格喪失を正式に決定した。

     (イ)17日,チュキミアTSE判事は,総選挙における集計作業等の遅れ等に対処するために情報技術分野の人員交代を行っている旨発表した。

     (ウ)18日,オバンドTSE副長官は,米州機構(OAS)が総選挙における有権者リストの外部監査の要請を受諾した旨及び同監査が2015年3月の地方選挙前に実施予定である旨発表した。しかし,19日,パレデスTSE判事は右発表を否定し,OASが実施するのは有権者リストの監査ではなく,2015年に実施する有権者登録の監視である旨発表した。


    (2)野党の動き

     11日,総選挙で当選した民主統一(UD)の次期議員(31下院議員及び9上院議員)は,UDの指導者であるコスタス・サンタクルス県知事,ドリア・メディーナ前大統領候補及びスアレス前副大統領候補と会合し,2015年~20年までの任期におけるUDへの忠誠や,モラレス政権の更なる延長防止のために全力を尽くすこと等を内容とする協定に署名した。


     11日,MSM党は,総選挙の投票結果に基づいて,同党に割り当てられるはずであった下院の議席1議席を求めて,TSEに対して違憲動議を提出した。


     12日,キリスト教民主党(PDC)は回党大会を開催し,同党の大統領候補であったキロガ元大統領を同党党首に,ヤルウィ前副大統領候補を副党首に指名することを決定した。


    (3)2015年地方選挙

     1日付け「エル・デベール」紙は,サンタクルス県サンフアン移住地出身で農業関連企業を経営するミチアキ・ナガタニ氏が,2015年3月の同県知事選挙に革命的民族運動(MNR)党から立候補する可能性を報じたが,4日,リヒターMNR党幹部が,ナガタニ氏の県知事選出馬に関する党の決定はまだなされていない旨発言していると報じた。


     6日,TSEは2015年3月29日に地方選挙第1回投票(県知事9名,県議会議員272名,市長339名,市議会議員1,861名等が改選)を実施する旨決定し,ベラスコ長官は,投票日の90日前までに立候補する公職者は辞職する必要がある旨説明した。


     8日,TSEは,地方選挙において総選挙と同じ問題が発生することを避けるために,組織や技術システムの改善及び人員交代等に着手する旨発表し,また,指紋認証に基づく選挙人登録の推進,選挙システム等に関する一般市民への広報,選挙プロセス透明化のための技術向上,予算の早期策定という4課題に取り組むと発表した。


     12日,レビージャ・ラパス市長は,再選を目指すにあたって他政党との連立を組む予定はない旨発表した。また,18日,同市長の市民団体SOLと同じ略称を有している市民団体がサンタクルス県に存在するため名前をSOL.boに変更する旨発表した。


     13日,TSEは2015年地方選挙に向けての今後の日程を以下の通り発表した。


    2014年

    • 11月19日 選挙人登録開始(12月3日登録期間終了)
    • 12月13日 政治連立等の登録期限
    • 12月16日 各政党の政権公約の提出期限
    • 12月23日 各政党候補者登録開始(29日登録締切)
    • 12月29日 公的な場での選挙運動開始,世論調査発表開始

    2015年

    • 1月18日 候補者名簿発表
    • 2月12日 辞退に基づく候補者変更受付締切
    • 2月27日 メディア上での選挙運動開始
    • 3月25日 全選挙運動終了,世論調査発表終了
    • 3月29日 第一回投票,(20時から)出口調査結果公表開始
    • 4月5日 地方選挙裁判所による第一回投票の集計完了及び結果発表
    • 4月29日 決選投票向け選挙運動終了
    • 5月3日 決選投票
    • 5月10日 地方選挙裁判所による決選投票集計完了及び結果発表
    • 5月25日 最終結果発表

     17日,レンス・ベニ県知事は,一時的にとはいえMAS党がベニ県を支配することを防ぐために再選を目指さない旨発表し,スアレス前ベニ県知事(UD副大統領候補)の同県知事選出馬の可能性が高まった。


     22~23日付け当地主要紙は,モロンMNR党党首等が出席して実施された同党の特別地方集会において,ナガタニ氏がサンタクルス県知事の予備候補に指名された旨報じ,同党の規則に則って同党サンタクルス県地方委員会において候補承認を受ける必要がある旨報じた。ナガタニ氏は,保健,教育,科学技術,治安及び市民参加の5分野を施政方針として発表し,同県をラテンアメリカにおける経済の中心とすることを目指す旨発表した。


     26日,モラレス大統領は,MAS党のチュキサカ県知事候補としてウルキス現知事が立候補する旨発表し,ラパス市長候補としてメンドーサ・ラパス市議会議員を,サンタクルス県知事候補としてボルダ同県労働総連事務局長を指名した。また,27日,カネラス前通信大臣がコチャバンバ県知事候補となる旨発表した。


    (4)コカ葉栽培・麻薬・人身売買関連

     5日,内務省社会安全防衛担当次官室は,2013年における麻薬の押収量が118.3トンであったのに対して,2014年は1~10月期で既に175.1トンの麻薬が押収されている旨発表した。


    (5)モラレス大統領等の支持率調査

     11日付け当地「カンビオ」紙が発表した,Ipsos Apoyo Opinion y Mercado社が実施したモラレス大統領及びガルシア・リネラ副大統領の支持率調査(大統領及び副大統領の「施策を認めるか」という質問)の結果は以下のとおり。


    • モラレス大統領
      支持:76% 不支持:16% 分からない/未回答:7%

    • ガルシア・リネラ副大統領
      支持:65% 不支持:26% 分からない/未回答:8%

    (6)海外援助に関する法律案

     30日付け当地「カンビオ」紙は,海外援助に関する法律案が国会に提出された旨,本法案は,同法の枠内で実施される有償協力及び無償協力は国内市場における直接税が免除となる旨,一方,公的部門から第三者もしくは民間部門に援助物資が委譲される場合には納税義務が発生する旨規定していると報じた。

3 外交

(1)多国間関係

 南米諸国連合(UNASUR)次官級会合の開催

 (ア)20日,UNASUR次官級会合出席のため当地を訪問したサンペールUNASUR事務総長は,ガルシア・リネラ副大統領及びチョケワンカ外相と会合し,ボリビアは社会包摂を含めた経済発展が可能であることを証明したと述べてその発展を強調し,また,地域統合及び麻薬対策をUNASURの重要課題として挙げ,身分証明書の統一等を目標とした。ボリビアとチリとの間の「海への出口」問題に関しては,UNASURは地域に利するような解決策を模索することを支持する旨述べた。

 (イ)21日,サンタクルス県においてUNASUR次官級会合が開催され,12月3,4日にキトにおいて開催予定のUNASUR首脳会合における議題に関して協議した。


 第二回内陸開発途上国会議への出席

 3日,モラレス大統領は,第2回国連内陸開発途上国会議に出席し,ボリビアはチリによる不当な軍事侵攻によって一時的に海への出口を剥奪された状態にあると強調した。加えて,同大統領は,内陸国は海岸線を有する国と比較して開発・経済発展に困難を伴っており,経済発展等の指数も約20%低い点を強調し,2015年に本会議のフォローアップ及び更なる協力の推進を目的とする会議をボリビアにおいて実施する旨発表した。加えて,5日,同会議に参加した数カ国よりボリビアが次期議長国となることを提案されている旨発言した。


 普遍的人権レビュー

 1日,国連人権理事会の普遍的人権レビューにおいて,米国及びイスラエルがボリビアにおいてメディアが恐怖を感じずに活動できるように保障すること等を要請したことに対して,モラレス大統領は,ボリビアの人権状況に関して批判をする権利は両国にはない旨発言した。


 気候変動対策

 サモラ環境・水資源大臣は,ベネズエラにおいて開催されたPreCOPに出席し,先進国に対して,気候変動問題に対応するための活動を行っている組織の活動資金を確保することを要請し,2017年以降は700億米ドル,2020年以降は,1000億米ドルの資金確保が必要になると発言した。加えて,「共通だが差異のある責任」の考えに基づき,排出量に関する世界的予算に関する各国の参加に関する複合的指数の創設を提唱し,先進国が提案するREDD+を拒絶し,排出量削減における前進の必要性を提唱した。


 G77+中国閣僚級会合の開催

 28~29日,タリハ県において,G77+中国炭化水素担当閣僚級会合を開催され,モラレス大統領は,開会式において,ボリビアの炭化水素資源国有化モデルは企業が資源の所有者になることは許されないとの信念に基づいて決定された旨述べ,国有化等の政策実施を恐れてはいけない旨発言した。同会合は,30ヶ国以上の国の参加のもと,天然資源の産業化や貧困削減を志向する経済・社会発展のための天然資源の活用等を含む24項目からなる宣言を発表して終了した。


(2)二国間関係

 対欧州諸国・EU関係

 (ア)17日,156年前にスイスのベルン博物館に売却された,エケコ像“Illa del Ekeko”がボリビアに対して返還され,右祝賀のためのアンデス地方の儀式に基づく式典が開催され,モラレス大統領は,全てのアンデス地方の文化財を先住民に返還すること要請した。

 (イ)19日,ボリビアの炭化水素・エネルギー省及び鉱業・冶金省は,仏の原子力・代替エネルギー庁との間で,1966年に署名された文化・科学・技術協力協定に基づき,蒸発資源開発(炭酸リチウムから電池システムに至るリチウムの加工における共通関心分野の特定を規定),原子力技術(ボリビアにおける原子力技術を,医療や食品安全といった分野において確立することを目的),代替エネルギー(ボリビアにおける太陽光エネルギー産業普及を目的)及び産業発展(技術的・科学的な能力向上のためのプログラムを見極めるための対話開始を規定)に係る4件の基本合意書(carta de intencion)に署名した。

 (ウ)18日,チョケワンカ外務大臣及びカロ開発企画大臣はブリュッセルを訪問し,ミミツァ欧州委員との間で両国間の複数年協力計画(2014~20年に,上水整備や灌漑,教育,灌漑,司法改革,麻薬対策等分野での,EUによる281百万ユーロの経済協力を規定)に署名した。加えて,チョケワンカ大臣は,レッフラーEUラテンアメリカ担当局長との間で第4回ハイレベル対話を実施し,ボリビア人のEU域内入国のための査免及び通商関係強化に関して協議した他,19日,フェデリカ・モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表との会談を実施し,ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)及びEU間の首脳会合成功に向けて緊密に協力することで合意した。


 対中関係

 (ア)6日,Li Dong(李東)ボリビア駐在中国大使(当時)は,キンタナ大統領府大臣及びサンチェス公共事業・サービス・住宅大臣との間で,ダンプカー150台及びトラック50台の購入のための資金供与(74百万元。1.2百万米ドル相当)に関する合意文書,気候変動への対処を目的とした気象観測システム及びマルチ衛星データ処理システムに係る機材等の購入協定及び本年6月に開催されたG77+中国首脳会合において使用された車両の購入のための百万米ドル相当の資金協力の協定に署名した。

 (イ)14日,カロ開発企画大臣は,ボリビアを経由して伯とペルーを結ぶ両洋間鉄道の敷設に関して,中国政府関係者が強い関心を示しており,同大臣が提示した初期設計に関して更なる情報提供を要請した旨発言し,ボリビアの提示した初期設計は費用及び工事期間の観点から,他国の提案よりも魅力的であると述べる一方で,本件計画は他国も関与する大事業であり,ペルー及び伯も含めて今後も協議を継続する予定である旨述べた。


 対米関係

 (ア)リー(Edward A. Lee)米国国務次官補代理代行はボリビアを訪問し,アルラルデ政務担当外務次官と,両国間の共通の関心分野及び両国間の相互信頼及び協力関係を今後拡大していくための方策に関しての協議を行った。加えて,地球規模の課題への対処等に関しても協議された他,二国間での文化保存及び教育交流に関して議論した。同国務次官補代理代行は,ボリビア市民社会の指導者達との会合を実施した他,エル・アルト市において実施された2名の米国の元サッカー選手によるサッカー教室も視察した。

 (イ)22日付け「カンビオ」紙は,コチャバンバ県に所在していた米国人滞在者向けの手続き等を実施する米国領事事務所が,業務量の低下を理由に閉鎖した旨報じ,ボリビア人向けの査証発給業務は,引き続き米国大使館においてのみ実施されると報じた。


 対チリ関係

 (ア)4日,メサ元大統領は,ワシントンにおいて,インスルサ米州機構(OAS)事務総長と会談を実施し,モラレス大統領書簡及びボリビア作成の「海の本」を手交しながら,ボリビア政府による「海への出口」問題に関するICJ提訴の理由及び提訴内容等に関して説明した。同元大統領は,ワシントン訪問前には,パラグアイ及びコロンビアを訪問し,カルテス・パラグアイ大統領等に本件説明を実施している。

 (イ)7日,ロドリゲス代理人(駐蘭大使・前大統領)は,「海への出口」問題に関するICJ提訴において,チリ政府が提出したICJの管轄権に関する先決的抗弁に対しての陳述書を,提出期限よりも7日間早く提出した。同代理人は,口頭手続き開始までは,陳述書の内容等は機密事項である旨説明し,今後の口頭手続きの実施時期等に関する具体的規則は存在しないが,翌年の上半期に実施される可能性が高いと述べた。

 (ウ)10日,モラレス大統領は,チリとの間で,シララ水源問題に関しての対話を再開することへの関心を表明したが,他方で,ICJにおいて「海への出口」問題が審議されている間は,その具体化は難しいであろう旨発言した。

 (エ)13日,メサ元大統領は,エクアドルのコレア大統領に対して,「海の出口」問題に関するICJ訴訟におけるボリビアの主張を説明し,「海の本」を手交した。


 対ウルグアイ関係

 28日,ムヒカ・ウルグアイ大統領は,ボリビアが,場所は問わずとも主権の伴う海への出口を獲得するために,メルコスール諸国首脳が協力することを要請し,また,ウルグアイにおける港湾の建設を提案した。30日,モラレス大統領は,ムヒカ大統領によるメルコスール諸国への協力要請に謝意を表明すると同時に,ムヒカ大統領への敬意を表明した。


 対亜関係

 (ア)6日,デビード亜公共事業大臣がボリビアを訪問し,モラレス大統領,チョケワンカ外務大臣及びカロ開発企画大臣と会談を行い,領空総合管理,気象レーダー,デジタルテレビ放送,宇宙分野及び原子力エネルギーの5分野の相互協力協定を締結した。

 (イ)20日,モラレス大統領は,アルゼンチンのサルタを訪問し,48年前通った学校の教師と再会した他,サルタ国立大学より名誉博士号を授与された。


 対ペルー関係

 (ア)11日,ペルーにおいて,第4回ペルー・ボリビア複合委員会会合が開催され,カセレス内務省社会防衛規制物質担当次官を団長とするボリビア代表団が出席した。主な議題は麻薬他施策のための協力強化であり,インテリジェンス分野での情報交換や共同での違法栽培されるコカ葉の撲滅等への取り組み等に関して合意を目指している。

 (イ)プーノのカンデラリア祭の無形文化遺産登録

12日,グロウクス文化・観光大臣は,ペルー政府が無形文化遺産登録を申請しているプーノのカンデラリア祭のプロモーション・ビデオに,ボリビア発祥の踊りが含められており,ボリビア発祥の踊りがペルーによって無形文化遺産登録されようとしている点に関して,ユネスコの会議において異議を唱える旨発表し,その後,ペルー政府との間で本件に関しての合意を模索する旨発表し,26日,ペルー政府がカンデラリア祭においてボリビア発祥の踊り等が行われている点を認める合意文書を発表した。

 (ウ)18日,グティエレス・ペルー外相は,「海への出口」問題に関するICJ訴訟に関して発言し,ボリビア政府の主張は,チリ・ボリビア両国間の国境を画定する1904年の平和友好条約に関係するものではなく,チリ政府がボリビア政府に対して「海への出口」を提供するための交渉を行うことを約束する内容の1950年代の両国間の覚書きに関するものである旨発言したが,19日,同外相は,本件訴訟において何れかの国への支持を表明したわけではない旨発言し,ウマラ大統領もペルー政府の中立性を再度発表した。

 (エ)19日,ウマラ・ペルー大統領は,APECに出席するために中国を訪問した際に,中国政府との間で両洋間鉄道の建設のための研究を開始する旨の覚書に署名した旨発表し,両洋間鉄道はボリビア領土を通過せず,ブラジル及びペルー北部を通過する旨発表し,加えて,リマを含むペルーの港とラパスを結ぶ鉄道を別に建設する旨発言した。これに対して,22日,モラレス大統領は,2つの計画が議論されており,ボリビア国土を通過する計画の方が時間及び費用の面で効率的である旨発言し,ウマラ大統領の発言に反論した。


 対インド関係

 20日,アルラルデ外務省政務担当次官とスワミナサン(R.Swaminathan)インド外務省特使との間で第1回政策対話が開催され,政治,投資,通商及び技術協力等の二国間の課題に関しての協議を行った。


 対南アフリカ関係

 29日,ジョレンティ・ボリビア国連大使は,ボリビアと南アフリカの間で,炭化水素資源及び工業分野での経験と知識を共有することに合意した旨,そのために両国の代表団が両国を相互訪問する旨発表した。

(了)