ボリビア内政・外交(2014年4月)

平成26年5月30日

1 概況

(1)内政

  • ガルシア・リネラ副大統領の国営航空会社BOAに対する影響力の不当な行使に関する嫌疑について,コチャバンバ地方検察庁は,証拠の不足を理由に野党国民統一(UN)党による調査の開始申請を却下した。
  • 8日,新鉱業法を巡る一連の問題を理由に,ビレイラ大臣に代わってナバロ前「2025年までの長期的発展のためのアジェンダ」特別担当が鉱業・冶金大臣に就任した。
  • 28日,拡大戦線(FA)は,大統領候補選出のためのアンケートにおいて,ドリア・メディーナUN党党首が大統領候補に選出された旨発表した。
  • 24日,約2,000名の国軍兵士参加の下,軍内部の差別待遇の撤廃等を求めてデモ行進が実施され,バルディビエソ国軍総司令官は,デモ行進に参加した下士官702名の強制退役を確認した。
  • 30日,最高選挙裁判所(TSE)は本年の大統領・国会議員選挙の日程を発表した。

(2)外交

  • 23~24日,G77+中国首脳会合の準備会合であるラテンアメリカ青少年フォーラムが,中南米諸国の代表等を含む3,000名の参加を得て開催された。
  • 15日,モラレス大統領は,チョケワンカ外務大臣及びロドリゲス代理人(駐オランダ大使・前大統領)等とともに国際司法裁判所(ICJ)を訪問して,「海への出口」問題に関する提訴における申述書を提出した。

2 内政

(1)政府の動き

 ガルシア・リネラ副大統領の汚職疑惑

 (ア)ガルシア・リネラ副大統領は,国営航空会社BOAとAir Catering社との間の契約において,同社の株式を保有する義理の妹(実の弟の夫人)の利益となるように,自らの影響力を不当に行使したとの嫌疑をかけられているが,1日,ロハス上院議長(与党社会主義運動(MAS)党)は,本件に関してガルシア・リネラ副大統領の責任等は発生しない旨発言した。

 (イ)UN党は,副大統領に対しての公的な告訴を行っていたが,7日,ムリージョUN党広報官は,証拠の不足を理由に検察が調査の開始を拒否した旨発表すると同時に,マリアナ・プラド氏(現副大統領首席秘書官)が,BoA社の理事会長を2010年から12年までの間務めていたことは不正常であると告発したのに対して,7日,モラレス大統領は副大統領を擁護し,違法ではないものの,本件契約は我々の道徳に反するものであった旨発言した。また,8日,同副大統領の義妹は,Air Catering社の株式を全て売却する旨発表した。

 (ウ)22日,スクソ制度的透明性・汚職撲滅大臣は,UN党の告発は根拠に欠けていると発言する一方で,検察庁が調査すべき事項であると発言し,23日には,コチャバンバ地検が,本件告発に関連する調査の開始の申請を却下した。


 鉱業・冶金大臣の交代

 8日,モラレス大統領は,新鉱業法を巡る一連の鉱業協同組合との間で発生した種々の問題を理由に,ビレイラ大臣に代わってナバロ前「2025年までの長期的発展のためのアジェンダ」特別担当が鉱業・冶金大臣に就任することを発表した。


 領空防衛に関する法律

 22日,モラレス大統領は,領空防衛に関する法律を公布した。同法律においては,麻薬密売に関与している航空機及び国家安全を侵害する航空機を撃墜することを認めている。


(2)2014年大統領選挙に向けた動き

 2日,サウル・ララFA事務局長は,大統領選挙に向けて,デル・グラナド党首率いる恐れなき運動(MSM)党及びコスタス・サンタクルス県知事率いる社会主義運動(MDS)党との連立の可能性を否定せず,野党有力候補統一の希望を表明する一方で,今後実施される全国規模のアンケートで選出されるFAの大統領候補の正当性がその他候補の正当性に勝るであろうと発言した。


 3日,MSM党は,7月上旬に実施予定の全国党大会において副大統領候補を決定する旨発表し,5日,デル・グラナド党首はMDSとの協議が進んでおり,合意に向けて出来るだけ多くの共通点を探していると述べた。


 9日,ベラスコTSE長官は,本年の大統領選挙・国会議員選挙の公示及び選挙日程の計画はほぼ完了しており,4月末には公表できるであろうと述べ,第一回投票の実施日は,10月から11月の間で,3,4の候補日があると述べた。


 16日,TSEはインターネット上での電子投票をボリビア在留邦人数が200名以下の国で実施可能とする法案を国会から撤回した。右法案には,UN党が投票の秘密性が侵害される可能性から反対していた。


 25日,コスタス・サンタクルス県知事は,2014年大統領・国会議員選挙のみならず,15年の地方選挙においても,MSM党及びFAとの間で連立を組むことを目標としていると述べ,レビージャ・ラパス市長が野党統一候補となり得る旨発言したが,同市長は大統領選出馬を否定した。


 28日, FAの実施していた大統領候補選出のためのアンケートにおいて,FAの提唱者でもあるドリア・メディーナUN党党首が,69%の支持を得てFAの大統領候補に選出された。


 30日,TSEは本年の大統領・国会議員選挙の日程を以下の通り発表した。


  • 5月30日 ボリビア国内選挙人登録終了
  • 6月9日 在外選挙人登録終了
  • 7月14日 候補者リスト提出,政治連立等の登録,公的な場での選挙活動開始
  • 9月12日 メディア上での選挙活動開始
  • 10月11日 最終的な候補者リストの確定
  • 10月12日 大統領選第一回投票,国会議員選投票
  • 11月9日 小選挙区及び先住民枠議席で同得票の場合の決選投票
  • 11月23日 第一回投票の正式結果発表
  • 12月7日 大統領選決選投票

(3)大雨に伴う被害

 2日,モラレス大統領は,洪水被害からの復興のために4億7660万米ドルを確保する「パトゥフ計画」を開始する旨発表すると同時に,伯側のヒラウとサン・アントニオの水力発電ダムとベニ県の洪水の関係につき綿密な調査が必要であると発言した。


 7日,キンタナ大統領府大臣は,上述の両ダムの環境面での影響に関しては,二国間の技術会合で取り扱う旨発表し,本件を政治化しないことが重要である旨発言した。


(4)国軍下士官によるデモの実施

 3日,ボリビア国軍下士官は,国軍の脱植民地化と軍内部での差別撤廃を内容とする法案を提出したものの,何らの回答がなかったため,21日,一部下士官等がデモ行進,無期限のストライキを開始し,22日に4名,23日に9名の下士官の強制退役が発表され,国軍下士官によるデモが急速に拡大した。


 22日,サアベドラ国防大臣は,モラレス大統領との対話の前提としてデモ行進の中止を求めたものの,下士官達は同大統領との会合実施まではデモ行進を中止しない旨発表し,公正と社会的正義を求めているだけであると述べた。


 24日,約2,000名の兵士参加の下,ラパス市においてデモ行進が実施され,多くの市民・社会運動団体がデモに対する支援・支持が表明したが,同日,バルディビエソ国軍総司令官は,反乱,政治的行動,集団で国軍の尊厳と名誉に反する行為を行い,職務を中断したことを理由に,デモ行進に参加した下士官702名の強制退役を確認した。


 27日,ボリビア国軍は,強制退役を決定された715名の下士官達に対して,15日間本件強制退役に関して異議・再検討の申請を申請することが出来ると発表した。


 29日,国軍下士官はデモ行進を実施した後,国軍高官との対話に応じることを発表した。同時に,国軍は,提出された事情の説明・再検討の申請等の分析を経て,強制退役処分を受けた715名のうち,187名の処分を無効とする決定を発表した。


(5)司法府改革

 9日,グアラチ農業裁判所長官の辞任を同裁判所の判事が要求していた問題に関して,判事7名中4名がルシオ・フエンテス同裁判所判事を新長官に選出したが,グアラチ前長官は4名の判事の行動を反乱であると非難し,法的行動も辞さないと述べた。


(6)サンタクルス県ヤパカニ市への麻薬取締部隊兵営建設

 14日,サンタクルス県ヤパカニ市関係者及び社会運動団体は,同氏における麻薬取締部隊兵営の建設に関する中央政府との対話が合意に至らなかったため緊急事態宣言を発表した。同市関係者等は,経済活動への影響を恐れて同兵営建設に反対していた。


 17日,ヤパカニ市からの反対を受け頓挫しかけていた麻薬取締部隊の兵営を,サン・フアン市が受け入れる旨,伴井勝美サン・フアン市長が発表した。20日,ロメロ内務大臣も上記提案を受け入れる旨発表したが,21日,ロメロ内務大臣は,伴井市長が麻薬密売関係者から脅迫を受けていると発言した。


(7)各県の自治拡大

 9日,憲法裁判所のクシ判事は,パンド県の自治憲章(100の条文及び5の移行条項で構成)の合憲性及び効力が憲法裁判所によって確認されたと発表し,法的に認められた自治憲章を有する最初の県となった。


(8)大統領支持率の推移

 27日付け当地主要紙が大統領支持率等に関して以下の通り報じた。


 投票動向(Intencion de Voto)

 Tal Cual Comunicacion Estrategica社が,ボリビアの全主要都市及び中規模都市において18歳以上の2,250名を対象に,4月12,13日に実施した,ボリビア国民の投票動向(質問内容:「今週の日曜日が大統領選挙ならどの候補に投票しますか」)調査の結果は以下の通り。()内は前回調査の数字。


  • モラレス大統領(MAS党):38.3%(45.7%)
  • 無回答:14.5%(19.4%)
  • 誰にも投票しない:13.4%(前回調査時は項目なし)
  • ドリア・メディーナUN党首:14.0%(13.4%)
  • コスタス・サンタクルス県知事(MDS党党首):9.3%(9.1%)
  • デル・グラナドMSM党党首:5.9%(4.4%)

 大統領及び副大統領支持率(Aprobacion)

 上記(8)アと同時に実施された,大統領及び副大統領の支持率調査調査の結果は以下の通り。()内は前回調査の数字。


  • モラレス大統領 支持:68%(73%)  不支持:30%(22%)
  • ガルシア・リネラ副大統領 支持:56%(64%)  不支持:40%(31%)

3 外交

(1)G77+中国首脳会合

 3日,チョケワンカ外相は,エクアドルを訪問し,パティーニョ外相との間で,G77+中国首脳会合における議題に関しての協議を実施した。


 20日,フェレイラG77+中国首脳会合担当大使は,ルーラ前ブラジル大統領が,5月23,24日に実施予定の首脳会合の準備会合に参加予定である旨発表した。


 23,24日,サンタクルス市において,G77+中国首脳会合の準備会合であるラテンアメリカ青少年フォーラムが,中南米諸国の代表等を含む3,000名の参加を得て開催され,開会式に出席したモラレス大統領は,発展及び域内の諸問題への対応の選択肢として,反帝国主義的思想に基づく選択肢を要請した。


(2)二国間関係

 対中関係

 3月に青島の海事裁判所が16隻のはしけ船の競売を決定したことに対して,11日,MAS党は,本件競売による経済的損失を避けるための方策をとることを要求した。野党議員は大統領の責任を追及しているが,サアベドラ国防大臣は,大統領の責任を否定している。


 対チリ関係

 (ア)9日,マグダレナ・カヒアス氏(歴史家,元教育大臣)の新駐チリ・ボリビア総領事の就任式が実施され,カヒアス氏は,シララ水源問題や対チリ輸出の促進等も含め,両国間のアジェンダは極めて広範なものであると述べた。

 (イ)15日,モラレス大統領は,チョケワンカ外務大臣及びロドリゲス代理人等とともにICJを訪問して,「海への出口」問題に関する提訴における申述書を提出した。モラレス大統領は,申述書においては歴史的・法律的な主張がなされていると述べる一方で,チリ北部沖地震及びバルパライソ市での大規模火災に関して,チリへの連帯を表明し,二国間対話再開の意思を維持していると表明した。

 (ウ)23日付け当地主要紙は,ムニョス・チリ外相は,1986年に出版された著作「チリ軍政の対外関係」において,チリ政府自身が,ボリビアの「海への出口」に関しての権利を有していることを認めていたと記述している。

 (エ)24日,モラレス大統領は,ICJへの提訴に関して協議するために5名の元外相と会合を実施した。

 (オ)28日,モラレス大統領は,「海への出口」問題に関するICJへの提訴に関して,国際社会に歴史的・法律的説明を実施するための特別担当として,カルロス・メサ元大統領を任命した。同元大統領は,国際会議等において,ICJへの提訴理由等の説明し,ロドリゲス代理人と協力して法律面での任務を果たすこととなると発表した。


 対欧州関係

 (ア)ガルシア・リネラ副大統領は,7~9日,欧州3カ国(チェコ,仏,西)を訪問し,各国でボリビアの変革に関する講演会を実施すると同時に,仏においては,ジャン=ピエール・ベル(Jean-Pierre Bel)上院議長と会合を行った。

 (イ)10日,チョケワンカ外務大臣はスイスを公式訪問し,156年前にボリビアから運び出された文化財“Illa del Ekeko”の返還を要請した。加えて,文化財の保護のための二国間協定の締結のための作業を今後進めていくことに合意した。

 (ウ)23日,キンタナ大統領府大臣等出席の下,ボリビア・ベラルーシ貿易・経済協力委員会の第二回セッションが開催された。


 対ウルグアイ関係

 (ア)19日,フラナガン当地駐在ウルグアイ大使は,モラレス大統領のウルグアイ訪問を調整中であり,既にムヒカ・ウルグアイ大統領との首脳会合は決定していると発言し,主要な議題は,港湾関連となると発言した。

 (イ)24日,フラナガン大使はボリビアアマソナス航空が,ウルグアイへの直行便を就航予定であると発表し,7月16日に最初のフライトが出発予定であると述べた。