2025年10月 ボリビア経済情勢

令和7年11月4日

1 経済指標など

      当月  前月(最終更新値)  累計 前年同月 (24年10月) 前年累計 
(1)  インフレ率  0.75% 0.2% 19.22% 1.64% 7.26%
(2)  都市部失業率  - 3.15%
(2025年6月)
- 3.02% -
(3)  外貨準備高  32億2,700万 32億7,500万 - 20億6,500万 -
(4)  対外債務  - 138億600万
(2025年6月)
- 133億2,300万 -
(5)  対内債務  - 187億9,000万
(2024年12月)
- - -
(6)  天然ガス輸出額  - 6,000万 - 1億700万 -
(7)  鉱物資源全体の輸出額  - 3億3,800万 - 3億1,400万 -
(8)  燃料輸入額  - 1億8,600万 - 2億5,400万 -
(9)  貿易収支  - 7,000万 ▲5億5,400万
(2025年1月~9月) 
▲6,900万 ▲6億6,700万
(2024年1月~10月)
(10)  金輸出額  - 7,500万 - 6,000万 -
             
   ※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計   
  ※前年累計:前年1月~前年の当月の累計  
  ※金額通貨:USD(米ドル)  

 

2 経済関連動向等

(1)9月までの対外貿易データ

 ボリビア国家統計局(INE)の報告によれば、2025年第三四半期までの貿易収支は、5億5,110万米ドルの赤字を記録。前年同時期比較で輸入額は2.2%減(66億6,860万米ドル)、輸入額は2.6%減(72億1,980万米ドル)。分野別では、生産部門(2.4%減)およびエネルギー部門(34.8%減)は減少傾向を示したが、鉱業部門(3.4%増)および鉱物資源(12.8%増)は昨年を上回る結果となった。
 なお、ロドリゴ・パス新大統領率いるキリスト教民主党(PDC)は、政権公約として輸入関税の引き下げなどを含む対外貿易の自由化を掲げている。

(2)炭化水素分野への投資額

 10月1日、炭化水素エネルギー省によれば、2020年~2024年、政府はボリビア国営石油会社(YPFB)を通じて、炭化水素部門に22億1100万ドル以上を投資し、ここ数年の生産減少を好転させるべく探査を優先的に進めてきたと発表した。
 同省の報告書によれば、炭化水素の国有化後(2006-2019年)、投資額は約148億9,800万米ドルに達したが、その内訳は、炭化水素の開発44%、探査18%、天然ガスの工業化14%であった。開発に重点を置いた結果、増加する国内需要と輸出契約は満たされたものの、探査が後回しにされ、その結果として将来的な生産量の減少を招いた。
 アルセ政権発足後は、埋蔵量の補充と国のエネルギーの持続可能性確保に焦点を当てた戦略的転換を行い、YPFBが「炭化水素上流再活性化計画(PRU)2021-2025」を実施。2020年から2024年にかけての投資は、61%が探査に集中、生産は39%を占めた。なお、同省は探査の結果が中長期的(5~10年後)に現れるとして、「将来の政権は、国内供給の確保と、この地域におけるボリビアのガス・石油生産国としての役割強化を目指したこの政策の成果を享受することになるだろう」との見解を示している。
 

(3)燃料補助金にかかる支出

 10月6日、モンテネグロ経済財務相は、今年に入ってからの燃料補助金が140億ボリビアーノスに達し、これは2025年国家一般予算(TGN)の92.3%を占め、国内債務は国内総生産(GDP)の19%に達していると発表した。「これは国家にとって非常に大きな支出であるが、隣国エクアドルのように補助金を突然廃止して抗議運動を引き起こすような事態(※)を回避するためである」と強調した。また、「2025年度国家一般予算(TGN)は、販売を担当するボリビア石油公社(YPFB)に2025年12月までの予算を割り当てている」と述べた。その上で、アルセ政権の大きな貢献は、炭化水素問題を国民に押し付けず、国民経済に「打撃」を与えないようにしたことであるとし、「我々の選挙公約は、補助金を維持することであり、それを達成し、この政策を維持するために努力してきた」と強調した。
 ※約1か月前、エクアドルのダニエル・ノボア政権が財政赤字削減のための緊縮策の一環として燃料補助金の廃止を決定したことにより、ディーゼル価格の上昇に対する先住民の抗議活動が「深刻な国内騒乱」を引き起こし、国内24州のうち10州に非常事態宣言が発令された。

(4)2025年上半期の経済成長率

ア 10月14日、ボリビア国家統計局(INE)のアランディア(Humberto Arandia)局長は、ボリビアが2025年上半期に-2.40%の経済成長率(GDP)を記録したと発表した。また、この経済の縮小は、3月、5月、6月に発生した「過度な政治的封鎖」が、輸送や生産チェーン全体に影響を与えたことに起因するとして、「確かに2.40%のマイナス成長率となっているが、今後数四半期は、完全ではないものの、段階的な経済回復が見込まれる」と述べた。
イ 上半期にマイナス成長を記録した経済分野は以下のとおり。
 採掘業(鉱業および炭化水素)(12.98%減)、商業(5.18%減)、不動産および専門職(3.56%減)、 電気・水道・廃棄物処理(2.45%減)、運輸・通信(2.24%減)、行政・保健・教育(0.90%減)。
 他方、プラス成長を記録した経済分野は以下のとおり。
 農業、林業、畜産、漁業(3.71%)、金融・保険活動(2.59%)、宿泊・飲食サービス業(2.38%)、 製造業(0.80%)、コミュニティ・社会・個人・家庭向けサービス(0.52%)、建設業(0.46%)。
ウ なお、世界銀行は10月に発表した報告書にて、2025年のボリビア経済は、ドル不足、政治的な不確実性、社会紛争などが影響し、0.5%のマイナス成長になると予測。また、2026年及び2027年の景気後退予測と合わせると、ボリビアはハイチとともに、ラ米・カリブ地域で成長が見込めない数少ない国となるだろうとの見解を示している。
 世界銀行の過去のデータによると、ボリビアは1986年以来(2020年の新型コロナウイルス禍を除き)、経済がマイナス成長を記録したことはなく、今回が39年ぶりの景気後退となった。また、2020年を除く過去10年間の同国の平均成長率は3.9%であった。

(5)アルセ大統領のリチウム工業化に関する発言

 10月21日、アルセ大統領は現地ネットワークのインタビューにて、ロドリゴ・パス次期政権についてコメント。その中で、中国およびロシア企業と締結したリチウム工業化に関する契約は国にとって有益なため、次期政権で再編成される立法議会において審議・承認されることを期待していると発言。「我々は、ボリビアが生産チェーン全体で利益を得られるようなリチウム取引を行うべく注意を払ってきた。単に原材料を供給するだけではなく、商業・戦略的パートナーである中国やロシアと共同で工業化プロセスを進めている」と強調した。
 また、自身の政権運営については、何百万ものボリビア国民の問題解決に全力を尽くしたと説明した一方で、炭化水素危機、インフレの増加、ドル不足など、多くの課題が残されていることを認め、今後5年間を率いるパス氏の健闘を祈ると述べた。

(6)パス次期大統領による燃料供給措置

 パス次期大統領は、燃料供給に関して優先的に取り組む姿勢を見せており、新規供給業者の確保及び支払い延期の緊急措置実施のほか、公募入札を通じて民間セクターへの輸入自由化(新たな価格設定を伴う)を達成するとの公約を掲げている。
ア 新規供給業者の確保については、米国テキサス州の企業と燃料購入の交渉が成立し、輸送はすでに進行中であるとしている。その他、近隣諸国(ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイ)とも、燃料の輸送・配送のロジスティックについて交渉中であり、供給を中断しないようにすると約束している。
イ 支払いの延期は金融スワップを通じた実行を提案しているが、それを保証するためにどのような国営資産を使用するのかは明らかにされていない。また、最初の2ヶ月間の燃料確保は、立法議会で承認済みの37億米ドル以上の融資を活用する見込みである。
ウ 燃料補助金については、公共交通機関に対してのみ当面維持し、その他のセクター及び一般消費者に対しては即時廃止を行う。併せて、同補助金の廃止による社会的影響を緩和するため、低所得者層には給付金を付与する方針を示している。