2025年9月 ボリビア経済情勢
令和7年10月1日
1 経済指標など
| 当月 | 前月(最終更新値) | 累計 | 前年同月 (24年9月) | 前年累計 | ||
| (1) | インフレ率 | 0.2% | 1.01% | 18.33% | 0.88% | 5.53% |
| (2) | 都市部失業率 | - | 3.15% (2025年6月) |
- | 3.67% | - |
| (3) | 外貨準備高 | 32億7,500万 | 28億8,100万 | - | 19億6,600万 | - |
| (4) | 対外債務 | - | 138億600万 (2025年6月) |
- | 133億4,500万 | - |
| (5) | 対内債務 | - | 187億9,000万 (2024年12月) |
- | - | - |
| (6) | 天然ガス輸出額 | - | 9,300万 | - | 1億1,300万 | - |
| (7) | 鉱物資源全体の輸出額 | - | 2億9,600万 | - | 2億7,500万 | - |
| (8) | 燃料輸入額 | - | 3億7,200万 | - | 1億5,600万 | - |
| (9) | 貿易収支 | - | ▲8,050万 | ▲5億8,300万 (2025年1月~8月) |
6,000万 | ▲5億9,800万 (2024年1月~9月) |
| (10) | 金輸出額 | - | 7,800万 | - | 6,000万 | - |
| ※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計 | ||||||
| ※前年累計:前年1月~前年の当月の累計 | ||||||
| ※金額通貨:USD(米ドル) | ||||||
2 経済関連動向等
(1)マヤヤ油田開発にかかるMOU締結
9月8日、ボリビア石油公社(YPFB)の子会社であるYPFBアンディーナ社は、マヤヤ油田における炭化水素事業への出資を目的としてYPFBと合弁企業(SAM)の設立を検討していると発表した。ヒラウド(Raul Giraudo)同社社長によれば、すでに覚書に署名しているほか、「(マヤヤ油田の)地震探査の結果は非常に良好であり、発見されるガス量は合計で最大6兆立方フィート(TCF)に達する可能性があるとみている。探査範囲をもう少し拡大して、さらに多くの地下構造を特定したいと考えている」と述べた。YPFBはLliquimuni(※)の開発に約4億300万ドルの初期投資を計画しており、探査範囲の拡大も目指しているが、そのためには多額の投資が必要となる。なお、マヤヤ油田は、S&Pグローバル・コモディティ・インサイト社のランキングにて、世界の石油・ガス発見トップ10に入っている。
※Lliquimuniは、YPFBによって開発されたラパス州北部の非在来型地域で、主にガスと石油の探査・開発が行われている。
(2)ボリビアのメルコスール加盟手続き
9月16日、ソサ外相は、ボリビアのメルコスール(南米共同市場)への完全加盟は、定められたスケジュールに従い、2028年までに手続きをすべて完了する見込みであるとの意思を表明した。同相は、この経済圏の一員となることは、貿易の統合・強化だけでなく、教育、保健など他の分野でもボリビアに大きな機会をもたらす。この地域統合は単なる外交手続きではなく、ボリビアを「南米の中心」と位置づける歴史的、地理的、文化的なプロセスの集大成であると述べた。また、暫定議長国であるブラジルの支援に感謝を表しつつ「政治的意志があれば、この地域の各国は官僚的・技術的な障害を乗り越えることができる」と強調した。さらに、米国が課した関税措置については、ブラジルに連帯の意を表明し、本措置は不公正であり、多国間主義に反すると述べた。
ボリビアは2024年7月、世界第5位の経済圏とされるメルコスールへ加盟。現在、2028年8月までに国内法規をメルコスールの規制・枠組みに適用するための手続きを進めている。
(3)リチウム関連イベント
9月17日、「ボリビアにおけるリチウムの未来(El Futuro del Litio en Bolivia)」と題されたイベント(当地新聞社La Razon紙とUrgente Boが主催)が開催され、リチウムの国際的な展望や投資誘致に必要な法的安定性、工業化に関するポトシ県の要求、付加価値のある生産、国際市場での機会などのテーマに焦点を当てた討論が行われた。ボリビアリチウム公社(YLB)のペレス(Alfonso Perez)プロジェクト・契約担当部長は、ウユニ塩湖(ポトシ)における2,300万トン以上のリチウムの認証や、他の塩湖での探査結果など、国営企業の主な成果について発表したうえで、ロシア企業のウランウム・ワン・グループおよび中国企業の香港CBC有限公司(Hong Kong CBC Investment Limited)と締結した炭酸リチウム生産に関する契約が、ボリビアの経済的、技術的、社会的発展の機会となる旨強調した。
このイベントには、Estrategias Corporativas Globalesのロッセル(Ernesto Rossel)ディレクター、国際コンサルタントのカルドナ(Ricardo Cardona)UMSA教授、石油・ガス部門の国際コンサルタントであるブロックマン(Andres Brockmann)氏といった専門家のほか、ポトシ市民委員会(Comcipo)代表やジャーナリスト、オピニオンリーダーも参加した。
(4)グリーンボンド発行に向けた動き
9月25日、アルセ大統領は、ボリビアがサンタクルス県にあるグアラニ・チャラグア・イヤンバエ自治地域における計画に基づき、気候変動対策資金を調達するためのグリーンボンドの発行準備を進めていると発表した。これは、当国における森林破壊および森林劣化による排出削減の初のプログラムであり、7月15日に実施が開始されて以来、ボリビアがすでに5段階のプロセス中3段階を完了したことから、まもなく具体化される見通しである。2017年にボリビア初の先住民・農民自治地域となったチャラグア・イヤンバエは、ボリビアで最大の面積(74,000平方キロメートル以上、国土の5.6%)を占める地域である。
その領土の大部分(約68%)は、オトゥキス国立公園・統合管理自然地域、カー・イヤ国立公園・統合管理自然地域、および3つの先住民保護地域(ニェンビ・グアス、イレンダ、グアフカカ)となっている。
アルセ大統領は、これらの債券の発行は「ボリビアの環境だけではなく、先住民コミュニティや伝統を保護するためのものである」と述べた。
(5)ディーゼル不足による経済的損失
コチャバンバ民間企業連盟(FEPC)が発表した報告書によると、過去12か月間で、燃料、特にディーゼルの供給が平均10%減少した結果、ボリビア全体で393,675社以上の企業・ビジネスに影響を与え、17億2,840万の損失(国内総生産(GDP)の3.68%に相当)を被ったと分析している。また、報告書は、国内のディーゼルおよびガソリンの生産量が国内需要を大きく下回っていることを指摘している。2025年1月から7月にかけて、ガソリン生産量は20%、ディーゼル生産量は30%減少し、当国は消費されるガソリンの66%、ディーゼルの91%を輸入せざるを得なくなった。この依存は財政コストを押し上げ、補助金に持続不可能な負担を生み、国家の対応能力を低下させているほか、燃料供給の減少は輸送時間の増加、流通コストの上昇、競争力の低下を招いていると報告している。
(6)ボリビアの経済自由度ランキング
フレーザー研究所が公共政策POPULI(politicas publicas para la libertad:以下POPULI)研究センターと共同で作成した、年次報告書2025によると、ボリビアは165の経済圏の中で、経済的自由度のランキングが106位から116位に降格した。同指数は、政府の規模(5.94/10、122位)、法制度と財産権(4.13/10、124位)、通貨の安定性(9.29/10、11位)、国際貿易の自由度(6.46/10、120位)、規制(4.42/10。154位)の5つの分野において各項目10点満点で評価されるものであり(括弧内はボリビアの評価点数及び順位)、ボリビアはいずれの分野でも顕著な弱点を露呈している。通貨の安定性については、2023年の状況(固定為替レートと国際準備金の活用によりインフレが抑制されていた時期)を反映したものであると指摘されており、現在の経済状況を反映したものではないとの見方がなされている。
POPULI研究センターは報告書の中で、ボリビアは制度的安定性の欠如と規制の強化が、経済成長と投資を制限していると指摘し、小さな政府と財政赤字の是正、商品・資本・人の流動の自由化を提案している。
(7)大統領候補者の資源関連の公約
ア ホルヘ・キロガLIBRE候補(ア)ボリビアにはエネルギーと技術の開発に向けた3つの構造的ベルト地帯(西部のリチウムベルト、南部と中東部のガスベルト、中北部の水力発電ベルト)がある。第一に、天然ガス資源探査への投資を呼び込み、生産量を以前の水準に戻し、輸出を増加させる。
(イ)鉱業は依然として国の主要な外貨収入源の一つであるため、国内外からの更なる投資を誘致するための政策を通じて、鉱業のポテンシャルを高めるべきである。まずは、法的安定性を確保し、違法採掘を取り締まることで地元の採掘、特に鉱業共同組合の支援をする。
(ウ)リチウムについては、チリやアルゼンチンといった他国と競争性を持たせるために「透明性のある」民間投資を模索すべきである。加えて、ボリビアにおけるリチウム電池生産を促進するため自由貿易地域を創設する。
(エ)エネルギー転換に関しては、風力、水力、太陽光、地熱などのクリーンエネルギーへの移行に向けた規制改革を進め、同国のエネルギー構成のうち再生可能エネルギー源が50%となることを目指す。
イ ロドリゴ・パスPDC候補
(ア)ボリビアが天然ガスの生産国・輸出国としての地位を取り戻すことを目標に、埋蔵量の補充に向けた探査・開発への投資誘致にかかる法的・財政的インセンティブを創設する。その文脈で、ボリビア国営石油会社(YPFB)、ボリビア国営リチウム会社(YLB)、国営電力会社(ENEL)の再編を目指す。
(イ)鉱業に関しては、「先住民やコミュニティの権利、そして環境を保護する」ことを目標に、持続可能でバランスの取れた発展を目指していく。そのために、投資の規制枠組みと法的安定性の強化、責任ある鉱業の促進と協同組合のフォーマル化、先住民族や先住民コミュニティの積極的な参加と事前協議、クリーン技術の導入と包括的な環境管理、鉱業生産チェーンにおけるガバナンスと透明性を強化する。
(ウ)エネルギー転換については、再生可能エネルギーの利用を促進し、国のエネルギー供給を確保する。エネルギーシステムに関する規制改革を進め、家庭、企業、自治体におけるクリーンエネルギーの発電への投資、及びグリーン水素、太陽光、風力発電等の生産を推進する。加えて、「経済の脱炭素化基金(fondo para la descarbonizacion de la economia)」を創設し、国民がこの移行に参加するための融資を保証する。