ボリビア内政・外交(2025年7月)

令和7年8月1日

1 内政

(1)2025年大統領選挙・総選挙関連

ア 世論調査結果(UNITELテレビ局)
   13日、IPSOS CIESMORIが実施しUNITELテレビ局が発表した世論調査結果は以下のとおり。同調査は7月5日~7日の期間、全9県の都市部及び地方の2,500人を対象に実施された。ドリア・メディーナUNIDAD候補(18.7%)、キロガLIBRE候補(18.1%)、ロドリゲスAP候補(11.8%)、レイエスAPB-SÚMATE候補(8.2%)、パスPDC候補(3.2%)、フェルナンデスFP候補(2.5%)、デル・カスティージョMAS候補(2.3%)、コパMORENA候補(0.6%)、パベルADN候補(0.2%)、無効票(12.5%)、投票態度未定(11.3%)、白票(8.2%)。
イ 世論調査結果(El Deber紙)
   16日、SPIE CONSULTINGが実施しエル・デベール紙が発表した世論調査結果は以下のとおり。同調査は7月5日~7日の期間、全9県の都市部及び地方の2,500人を対象に実施された。ドリア・メディーナUNIDAD候補(21.76%)、キロガLIBRE候補(20.7%)、レイエスAPB-SÚMATE候補(10.01%)、ロドリゲスAP候補(8.26%)、NGP(未定)候補(4.81%)、パスPDC候補(4.04%)、フェルナンデスFP候補(2.45%)、デル・カスティージョMAS候補(1.92%)、コパMORENA候補(1.14%)、パベルADN候補(0.36%)、無効票(4.48%)、投票態度未定(5.31%)、白票(14.76%)。
ウ ハイメ・ダンNGP候補の状況
   3日、最高選挙裁判所(TSE)の全体会議は、財政的健全性の要件を満たしていないとして、新世代愛国党(NGP)の大統領候補ハイメ・ダン氏を次期選挙から失格とする決定を下した。ダン氏はすべての要件を満たしていると主張し、TSEの決定に対して上訴する意向を明らかにした。
 7日、ダン氏は、17件の執行命令書を支払った後、会計監査院が発行した納税証明書を提出した。ダン側の弁護団は、納税証明書を取得するための支払いの登録を妨げたのは官僚的な手続きであったと主張し、TSEに審査手続きを申し立てた。これに対して、エル・アルト市当局は、市当局には納税情報が届いていないことと、その納税は一部であり、全額ではないことを主張した。
 8日、TSEはダン氏の立候補資格を剥奪する決定を再確認した。これにより、NGPは8月の総選挙への不参加を表明し、ダン氏は選挙への影響を避けるため、上訴しないことを決定した。
エ エボ・モラレス元大統領動向
   1日、エボ・モラレス派の指導者マルセリーノ・フローレス氏は、エボ・モラレス元大統領が選挙用紙に記載されない場合、デモ行進、選挙管理委員会の占拠、投票箱の移動妨害を行うと述べた。一方、レオナルド・ロサ上院議員は、エボ派組織が非常事態宣言を行い、動員態勢に入ることを決定し、エボ・モラレス元大統領が大統領候補として立候補するため準備していると発表した。
 4日、エボ・プエブロのスポークスマンは、エボ・モラレス元大統領の立候補が認められない場合、総選挙の実施は容認できないと警告した。
 6日、エボ・モラレス元大統領は、タウイチ選挙委員が、同元大統領とPAN-BOLの立候補資格を剥奪するために合計20万米ドルを受け取ったと告発した。告発によれば、ルルデス・デュラン・アルセ大統領夫人が20万ドルを預金し、タウイチ選挙委員はパナマの口座でこの金を受け取ったとされている。この情報は、セサル・シレス元法務大臣のWhatsAppのメッセージにアクセスできたと主張するアルゼンチンのメディアが報じたものとされる。一方、ロベルト・リオス内務大臣は、該当するアルゼンチンメディアは架空のものであると述べた。
 12日、エボ派とPAN-BOLの指導者たちは、8月17日の選挙の実施を阻止するよう支持者に呼びかけた。これらの指導者の一部は市民の反乱を煽り、投票ではなく死者が数えられることになるだろうと述べた。
 22日、エボ・プエブロの代表者は、支持者たちが抗議の意思表示として、投票用紙全体に「X」印を付けるか、「エボ」と記入して無効票を投じることを発表した。
 25日、エボ派は、エボ・モラレス元大統領への支持の意思表示のため、無効票を投じるよう促す戦略の一環として、2つの選挙事務所を開設した。この戦略の目的は、選挙事務所を増やし、エボ・モラレス元大統領が先住民や農民を代表しているという正当性を主張することである。
オ 与党MAS党動向
   17日、アルセ大統領は、左派政党が8月の選挙において、右派に対抗するために、単一の国民的・大衆的ブロックとして結束するよう、政府が仲介役を務めることを発表した。MTS党の党首であるフェリックス・パッツィ氏はこれに対して、ロドリゲスAP候補が最も有利な立場にあるため、同候補を中心に結束すべきだと述べ、また、ドリア・メディーナUNIDAD候補ではなく、ロドリゲスAP候補とキロガLIBRE候補との決選投票が行われる可能性が高いと述べた。
 24日、アルセ大統領は、元マサリストと左派の結束を求める要求を繰り返し主張し、左派グループとの会合を招集した。これに対して、左派であるコパMORENA候補は、大統領の招集に応じるかどうかを決定するために内部会合を開いた。AP同盟は、アンドロニコ・ロドリゲスAP候補の立候補を条件とした招待を受け入れるか、あるいは独自の左派結束会議を招集するかについて議論した。他方、フェルナンデスFP候補は、アルセ大統領から正式な招待は受けなかった。
カ ロドリゴ・パスPDC候補とハイメ・ダン元NGP候補
   23日、パスPDC候補はハイメ・ダン元NGP候補と会談し、ダン元候補の公約を受け取り、それを基に「すべての人に資本主義を」という新たな標語を採用することを約束した。
キ コパMORENA候補、大統領選挙からの撤退
   29日、エル・アルト市長であり、MORENA党代表であるエバ・コパMORENA候補は、政治的嫌がらせ、脅迫、内部抗争、党への侵入者による行動などを理由に、大統領選挙戦からの撤退を発表した。コパMORENA候補は、党を再構築し、新しい人材とともに、地方選挙および次の総選挙に臨むことを決定したと述べた。

(2)新閣僚の任命

ア 新労働大臣の就任
   23日、アルセ大統領は、エルランド・ロドリゲス前労働大臣の死から1カ月以上を経て、ビクトル・キスペ・ティコナ氏を新労働大臣に任命した。キスペ氏は製造業労働組合連合(Confederación de Fabriles)の指導者であり、ボリビア労働者中央連合(Central Obrera Boliviana)の紛争担当書記を務め、2020年に労働副大臣に就任した。

2 外交

(1)米国およびキューバとの関係

 1日、アルセ大統領とソサ外相は、キューバに対する政策を強化する米国の大統領覚書を批判する投稿をXに投稿した。アルセ大統領は、この行為はキューバ国民と政府に対する「侵略的」なもので、民族自決と不干渉の原則を無視したものであり、60年以上にわたる経済・金融・商業封鎖に抵抗してきた国民に対する人権侵害であると述べた。

(2)BRICSサミットへのボリビアの参加

 3日、アルセ大統領は、7月6日と7日にリオデジャネイロで開催される第17回BRICSサミットに出席することを確認した。ボリビアが取り上げたい課題の一つは、より多くの市場へのアクセスである。この点について、大統領は、BRICSとの協定により、ボリビアはより多くの製品を輸出できる可能性があると述べた。
 6日と7日、アルセ大統領は第17回BRICSサミットに参加し、ボリビアの提案を発表した。同大統領は、自然災害やパンデミックの影響に対処するための支援センターの設立(先進国からの拠出金による)や、加盟国の有利な立場を活用した持続可能なエネルギー転換を実現するためのエネルギー同盟の設立などを提案した。

(3)メルコスール(南米南部共同市場)について

 2日、米州開発銀行(CAF)は、ボリビアのメルコスール加盟を支援するため、20万米ドル相当の技術協力を提供すると発表した。この協力には、ボリビアの規制をメルコスールの枠組みに適合させるために必要な支援に加え、加盟による経済的・社会的影響に関するシナリオ分析が含まれる。
 3日、アルセ大統領はブエノスアイレスで開催された第66回メルコスール首脳会議に出席した。アルセ大統領は、演説の中で「地域生産統合」の提案を行い、商品やサービスの流通を超えて、全加盟国間のバリューチェーンを強化し、各国の潜在力を効果的に開花・補完させ、資本主義的依存を排除し、対称的な発展を実現するよう促した。また、メルコスールと、アンデス共同体(CAN)などの他の統合ブロックの地域的な収斂を目指すことを提案した。また、同大統領はブラジルとウルグアイの首脳と二国間会談を行った。

(4)メルコスールとBRICSにおけるボリビア

 10日、ボリビア外務省は、BRICS およびメルコスールへの加盟によるボリビアの戦略的立場を強調する声明を発表した。声明において、これらの枠組みへの加盟は、グローバル・サウス諸国の声を拡大する多極的な世界秩序の構築というビジョンに沿ったものであることを強調した。BRICSサミット期間中、アルセ大統領はインド、キューバ、ロシア、イランと二国間会談を行い、米国によるキューバ封鎖の不当性を非難するとともに、パレスチナ人民への支持と、ガザにおけるイスラエルの行動に対する非難を改めて表明した。

(5)中国との関係

 9日、ボリビア外務省は、ボリビア中国外交関係樹立40周年を記念して、習近平国家主席と王毅外相がアルセ大統領とソサ外相に送った書簡を強調する声明を発表した。 
 10日、ボリビア外務省は、ボリビアと中国の外交関係40周年を祝う式典を開催した。ソサ外相は、二国間関係の進展を強調し、中国との友好関係は、不干渉、国家間の平等、平和的共存という共通の原則に基づいており、ボリビアのBRICS加盟により、両国関係がさらに進展することを強調した。一方、王亮駐ボリビア中国大使は、ボリビアが「一つの中国」の原則に対して絶えず支持を示していることに対し、感謝の意を表した。

(6)ロシアとの関係

 25日、ボリビア外務省はロシアのアムール州で発生した航空事故に対する追悼のメッセージをXに投稿した。

(7)ベネズエラとの関係

 25日、ベネズエラのカベジョ内務大臣は、ラパスにある同国大使館が、ボリビアからのフライトを利用してチリとペルーにいるベネズエラ人を本国に送還するための調整を行っていると発表した。

(8)ペルーとの関係

 28日、ペルーのボルアルテ大統領は、国会演説にて、「自国がキューバ、ベネズエラ、ボリビアのような失敗国家になるのを防いだ」と述べた。
 29日、カタリーナ外務副大臣は、ペルー大統領がボリビアを「失敗国家」と表現した発言に対して、ボリビア政府が強く反発していることを表明した。同外務副大臣は、駐ボリビア・ペルー臨時代理大使を呼び出し、正式な抗議文を手交した。アルセ大統領は、ボルアルテ大統領の発言は、歴史的に兄弟愛、尊敬、協力の関係にあるペルー国民の真の感情を表すものではないと、強い拒否の意を表明した。

(9)パレスチナとの関係

 29日、国連総会のハイレベルフォーラムで、イスラエルとパレスチナの紛争に対する二国家解決案が議論された際、ソサ外相は、ガザにおける犯罪について国際司法裁判所によるイスラエルへの制裁を要求し、国際的な対応メカニズムを発動させるためガザの飢饉を宣言することを提案した。また、二国家解決に対するボリビアの支持を再確認するとともに、自由で独立した主権国家としてのパレスチナの存在を保証する具体的なロードマップの推進に向けたフランスとサウジアラビアの提案を歓迎した。