ボリビア内政・外交(2025年5月)

令和7年6月2日

1 内政

(1)2025年大統領選挙・総選挙関連

ア 社会主義運動党(MAS-IPSP)
(ア)  3日、アンドロニコ・ロドリゲス上院議長は、オルロで開催された鉱山労働者主催の集会で大統領選挙への出馬を宣言。
(イ)
 
 6日、ガルシアMAS-IPSP党首は、5月11日の党会議でアルセ現大統領とアンドロニコ・ロドリゲス上院議会議長の2名が予備候補者に選出される見通しと発表。
(ウ)
 
 14日、アルセ大統領は8月の大統領選挙への再選出馬の辞退を表明した。同大統領は、アンドロニコ・ロドリゲス候補を名指しし、野党に勝利する可能性が最も高い候補を中心に左派の結束を呼びかけ、モラレス元大統領はこれに倣うよう警告した。
(エ)
 
 16日、MAS-IPSP党はエドゥアルド・デル・カスティージョ内務大臣とミラン・ベルナ全国農民労働者組合連合事務局長を大統領・副大統領候補に選出したと発表した。

イ 人民同盟(AP)
(ア)
 
 8日、フェリックス・パッツィ第三制度運動党(MTS)代表は、同党が選挙同盟を結成する「人民同盟(AP)」からAP大統領候補として、アンドロニコ・ロドリゲス上院議会議長が出馬に同意したと発表した。
(イ)

 
 21日、タウイチ・タウイチ最高選挙裁判所(TSE)判事は、アンドロニコ・ロドリゲス上院議長によるMAS-IPSP党以外の政党・政治団体からの立候補届け出は、政治的転向とみなされ、政党規約に違反する可能性があると指摘。立候補が確認された場合、上院議員の議席が剥奪される可能性があると示唆。
(ウ)


 
 28日、アンドロニコ・ロドリゲス候補とともにMTS党から副大統領候補として大統領選挙に参加予定のマリアナ・プラド元開発企画大臣は、司法上の問題から同党から立候補できない可能性を危惧し、出馬政党の変更を検討していると発言。UCS党と交渉中であるが、MORENA党からの出馬の可能性はゼロではないと発言。なお、MTS党は現在4件の憲法違反訴訟を起こされている。

ウ エボ・モラレス元大統領
(ア)
 
 2日、ラパス県地方裁判所は、モラレス元大統領に対する逮捕状を無効としたサンタクルス県地方裁判所の決定を保留するとの判決を下した。これにより、同元大統領に対する逮捕状の法的有効性が復活。
(イ)





 
 14日、2024年12月13日にアヤラ議員とグティエレス議員により提出された、1回限りの連続再選を規定する法律381号「憲法規定解釈法」と法律026号「選挙制度法」の特定の条項の違憲審査を求める審査請求に対し、最高憲法裁判所(TCP)は、米州人権裁判所(Corte IDH)の意見書28/21、2016年2月21日の憲法改正国民投票結果、国家政治憲法(CPE)、及び国家裁判における2つの先例判例(判決第1010/2023-S4及び判決0083/2024-ECA)に基づき、大統領を含む行政、立法、司法における選出者の任期を連続・不連続に関わらず2期までとし、3期目を禁止する判決(007/2025)を改めて下した。これに対してモラレス元大統領は、北米帝国によって画策された自分に対する黒い計画があると非難し、16日、大統領選挙に立候補すべく支持者にデモ行進を呼びかけた。
(ウ)

 
 16日、コカ栽培者組合員ら約1.2万人が、モラレス元大統領の大統領選挙立候補承認及経済危機の解決を求めてラパスでデモ行進を行うと発表。警察はムリージョ広場とアバロア広場周辺を封鎖。同日14時30分過ぎ、デモ隊はソポカチ地区に到着し、抗議を開始。機動隊との衝突が発生した。

エ ハイメ・ダン金融専門家 選挙動向
 7日、ハイメ・ダン金融専門家は、愛国的新世代党(NGP)の大統領候補となることを発表するも、20日、20年前の税務登録問題を理由にダン金融専門家の候補者登録ができないとして、一時的にフィデル・タピアを大統領候補として登録した。ダン氏は問題が修正され次第、大統領候補となると述べた。
 
オ 立候補者登録期間の終了
 19日、最初の立候補者登録期間が締め切られた。6月6日に立候補資格を満たす候補者リストが公表される。各政党が登録申請した大統領・副大統領候補は以下のとおり。
(単独政党)
社会主義運動・諸民族の主権のための政治手段党(Movimiento al Socialismo - Instrumento Político por la Soberanía de los Pueblos: MAS-IPSP)
   *通称:社会主義運動党
 大統領候補:エドゥアルド・デル・カスティージョ(元内務大臣・弁護士)
 副大統領候補:ミラン・ベルナ(全国農民労働者組合連合事務局長・農民指導者)
ボリビア自治同盟・スマテ同盟 (Alianza para Bolivia - Súmate: APB-SUMATE)
  (当館注:「SUMATE」はスペイン語で「参加しよう」の意)
 大統領候補:マンフレッド・レイェス・ビジャ(コチャバンバ市長・退役軍人)
 副大統領候補:フアン・カルロス・メドラノ(サンタクルス市議会議員)
愛国的新世代党 (Nueva Generación Patriótica: NGP)
   大統領候補:フィデル・タピア(市民)(暫定登録)
 (当館注:ハイメ・ダン(金融専門家)を大統領候補として差し替え申請中)
 副大統領候補:エドガル・ウリオナ(企業家、NGP党指導者)
国民刷新運動党 (Movimiento de Renovación Nacional: MORENA)
   大統領候補:エバ・コパ(エルアルト市長)
 副大統領候補:ホルヘ・リヒテル(元大統領報道官)
キリスト教民主党 (Partido Demócrata Cristiano: PDC)
   大統領候補:ロドリゴ・パス・ペレイラ(上院議員、タリハ県代表上院議員)
 副大統領候補:エドマン・ララ(元警察官・大尉)
(複数政党による同盟)
統一党(UNIDAD)
   大統領候補:サムエル・ドリア・メディーナ(企業家・元財務大臣)
 副大統領候補:ホセ・ルイス・ルポ(米州開発銀行元高級職員・元大臣)
自由と民主主義党(Libertad y Democracia: LIBRE)
   大統領候補:ホルヘ・キロガ(元大統領)
 副大統領候補:フアン・パブロ・ベラスコ(起業家・Yangoラ米担当GM)
自由進歩同盟・国民民主行動同盟(Alianza Libertad y Progreso - Acción Democrática Nacionalista: Libertad y Progreso: ALP-ADN)
   大統領候補:パウロ・ロドリゲス・フォルステル(企業家・サッカークラブ会長)
 副大統領候補:アントニオ・サラビア(経済学博士・大学教授)
民衆勢力同盟(Alianza Fuerza del Pueblo: FP)
   大統領候補:ジョニー・フェルナンデス(サンタクルス市長)
 副大統領候補:フェリペ・キスぺ(エルアルト市小売業者組合代表者)
人民同盟(Alianza Popular: AP)
   大統領候補:アンドロニコ・ロドリゲス(上院議会議長)
 副大統領候補:マリアナ・プラド(元開発企画大臣、FONPLATA元高級職員)

(2)新内務大臣の任命

 20日、アルセ大統領は、エドゥアルド・デル・カスティージョが大統領候補として立候補することに伴い辞任したため、ロベルト・リオス市民安全担当内務次官を新内務大臣に任命した。
 

2 外交

(1)中国との関係

 6日、王良駐ボリビア中国大使はソサ外相を訪問し、二国間関係、中国-CELACフォーラム、BRICSにかかる連携について会談した。大使館のコミュニケによると、ソサ外相は一国主義、保護主義、経済的「いじめ」に強く反対し、中国や他の「グローバル・サウス」諸国と協力する用意があると表明した。
 13日、ソサ外相は中国・北京にて開催される「中国・中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)フォーラム」の第4回閣僚級会合に参加した。ソサ外相は、多国間主義と地域統合に対するボリビアのコミットメントを再確認するとともに、持続可能な開発、公正な貿易、技術革新などの戦略分野における中国との協力強化にボリビアが関心を寄せていることを明らかにした。また、王毅外相と二国間会談も行い、二国間及び多国間における両国間の戦略的関係を再確認した。

(2)パレスチナ・イスラエルとの関係

 7日、ボリビア外務省はコミュニケを発表し、イスラエル首相がガザ地区への新たな大規模侵攻を発表したことに対し、強い反感を表明。ボリビアは、敵対行為の即時停止と、パレスチナを主権国家として承認することに基づく、公正かつ永続的な政治的解決の確立を要求し、国際社会に対し、緊急に行動するよう要請した。
 21日、ボリビア外務省は新たなコミュニケを発表し、国連加盟国やエジプト、ヨルダン、中国、ブラジル、日本、メキシコ、チリ、インドなどの代表を含む30カ国以上の外交官に対して、占領地ヨルダン川西岸のジェニンでイスラエルが行った攻撃を強く拒否することを表明した。

(3)戦勝記念日のボリビア

 9日、ソサ外相は、ロシア大使館主催の戦勝記念式典に出席し、アルセ大統領によるロシア国民と政府に対する祝辞を代読した。1945年5月9日のナチス政権の無条件降伏の成立、第二次世界大戦の終結に対して、ファシズムの勝利80周年を記念した式典がモスクワで開催されていることについて同大統領は言及し、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の声明を批判、ロシアによる停戦とプーチン大統領への支持を表明した。

(4)WIPOにおけるボリビア提案の承認

 世界知的所有権機関(WIPO)加盟国は、オルロのカーニバルを中心としたフェスティバル・ツーリズムの開発に関するボリビアの提案を承認した。

(5)エクアドルとの関係

 23日、ボリビアのソサ外相とエクアドルのガブリエラ外相は新たな外交官育成強化プログラムの一環として外交アカデミーの協力に関する覚書に署名した。

(6)5カ国新大使からの信任状受け渡し

 26日、エルサルバドル(Ana Guadalupe Rivas Espinoza)、ドミニカ共和国(Sara Emilia Altagracia Paulino Cárdenas)、スイス(Maja Messmer Mokhtar)、パナマ(Julio Leonardo Luque Ferro)、インド(Rohit Kumar R. Vadhwana)の各大使はアルセ大統領に信任状を渡した。ソサ外相はこの儀礼的行事の重要性を強調し、「信任状の提出は、ボリビアと本日大使を通じて参加している兄弟国との間の友好、相互尊重、協力に基づく二国間関係の強化に向けた重要な一歩である」と述べた。