2025年7月 ボリビア経済情勢
令和7年8月1日
1 経済指標など
当月 | 前月(最終更新値) | 累計 | 前年同月 (24年7月) | 前年累計 | ||
(1) | インフレ率 | 1.2% | 5.21% | 16.92% | 0.47% | 2.98% |
(2) | 都市部失業率 | - | 3.15% | - | 3.81% | - |
(3) | 外貨準備高 | - | 28億700万 | - | 18億2,000万 | - |
(4) | 対外債務 | - | 138億600万 | - | 132億9,800万 | - |
(5) | 対内債務 | - | 187億9,000万 (2024年12月) |
- | - | - |
(6) | 天然ガス輸出額 | - | 9,700万 | - | 1億4,500万 | - |
(7) | 鉱物資源全体の輸出額 | - | 2億6,700万 | - | 2億9,700 | - |
(8) | 燃料輸入額 | - | 2億2,500万 | - | 3億8,500万 | - |
(9) | 貿易収支 | - | 7,500万 | ▲5億600万 (2025年1月~6月) |
▲2億3,000万 | ▲6億6,300万 |
(10) | 金輸出額 | - | 1億600万 | - | 5,400万 | - |
※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計 | ||||||
※前年累計:前年1月~前年の当月の累計 | ||||||
※金額通貨:USD(米ドル) |
2 経済関連動向等
(1)2025年上半期の対外貿易データ
ボリビア国家統計局(INE)のデータによれば、2025年上半期のボリビア対外貿易は、輸出額は41億3,600万米ドル(前年同時期比7%減)、輸入額は46億4,200万米ドル(前年同時期比4%減)となり、5億580万米ドルの赤字となった。主要輸出先国は中国、ブラジル、日本、主要輸入先国は中国、ブラジル、アルゼンチンであり、最も赤字を記録したのが対中貿易(3億9,700万米ドル)、最も黒字を記録したのが対日貿易(2億3,300万米ドル)となった。貿易収支の赤字は、外貨不足の継続、外貨準備高の減少といった経済状況の中で発生しており、これらの要因により生産コストが上昇し、ボリビア国内の産業・農業部門の両方に影響を及ぼしている。
(2)2025年上半期の外貨準備高
7月2日、ボリビア中央銀行(BCB)は、ボリビアの外貨準備高(RIN)が2025年上半期で28億700万米ドルに達し、国内の経済危機、道路封鎖、その他経済に与えた要因(立法議会での融資承認阻止など)にもかかわらず、昨年12月末時点(19億7,700万ドル)から半年間で8億3,000万ドル増加したと発表した。また、当該期間に予定されていた対外債務である7億6,400万米ドルを100%返済したほか、国内の燃料供給確保に向けて10億1,900万ドル分を支出したと報告している。ボリビアの経済が好景気であった2014年には、外貨準備高は150億米ドルを超えたが、その後に減少傾向となり、昨年12月には17億9,000万米ドルまで低下していた。エドウィン・ロハス(Edwin Rojas)BCB総裁は、この回復はBCBが予測していた前向きな傾向を裏付けるものだと強調し、「外貨準備の持続的な増加は、BCBによるマクロ経済の安定を維持するための努力を反映している。我々は、国の経済的・社会的安定と発展へのコミットメントを再確認し、外貨準備の強化と債務返済の履行に向け、引き続き努力していく。6月以降もこの好調な傾向は続き、外貨準備高は増加し続ける」と断言した。
なお、今回の増加要因については言及されていないが、4月末時点で外貨準備高が26億1,800万米ドルに達した際、同総裁は、金の国際的な価値上昇が外貨準備高増加の主な要因であると強調していた(4月に金1オンス=$us 3,500という歴史的最高値を記録した)。
(3)2025年上半期の対外債務残高
ボリビア中央銀行(BCB)のデータによれば、2025年上半期の対外債務残高は138億560万米ドルで2024年12月比3%増となった。経済学者のフェルナンド・ロメロ(Fernando Romero)氏の分析によれば、2024年同月比では4億4,100万米ドル増加しているという。また、2024年の国内総生産(GDP)は473億1,500万ドルに達し、対外債務はGDPの28.2%を占めている。対外債務よりも額が大きい国内債務を加えると、公的債務はGDPの約80%に達する。「2025年6月時点の債務返済能力指標(対外債務残高/GDP)は25%であったのに対し、2024年末には28.4%であった。しかし、この指標が低下したのは、対外債務が減少したためではなく、むしろその逆である。インフレ要因により名目GDPが上昇し、対外債務の比重が小さくなったためである」と説明した。対外債務の構造としては、融資が86.6%(119億5,560万米ドル)、債務証券が13.4%(18億5,000万米ドル)である。融資のうち「多国間」融資は97億7,950万ドルで、主な債権者は米州開発銀行(32%)、CAF(21%)、世界銀行(12%)である。「二国間」融資では、中国(9%)が21億1,190万ドルで、次いでフランス(5%)、ドイツ(0.6%)が続く。2025年6月時点の対外債務総額の92%は国家一般会計(TGN)に、2.8%は国営電力会社(ENDE)に、2.1%はムトゥン製鉄所に支払われており、州政府、自治体、その他の地方自治体への支払いはわずか2.7%となっている。
(4)2024年経済成長率
7月4日、ボリビア国家統計局(INE)は、2024年の経済成長率を0.73%と発表した。政府は当初、2024年の経済成長率を3.71%と予測していたが、これを大きく下回る結果となった。その理由として、INEは、2024年1月~9月までに、経済活動は累積成長率2.0%を記録したものの、第4四半期には政治的混乱の激化を受けて成長率が前年同時期比2.6%減となり、これが成長鈍化の要因であると説明した。2024年にプラス成長を記録したのは、鉱業、金融サービス、及び、その他サービス部門であった。鉱業の中でも特に亜鉛の生産は前年比4.72%増、その他サービス(公共・社会・個人サービス等)は4.50%増、金融サービスは外国為替取引の増加を背景に4.31%増となった。一方、金融サービスの増加は、現地通貨(ボリビアーノ)への信用が低下する中、ドル化の動きが進んでいる兆候とも解釈できる。そのほか、建設業(+2.69%)、通信業(+1.76%)、農業(+1.63%)などもプラス成長を記録したが、製造業(+0.18%)および商業(+1.34%)はわずかな成長にとどまり、国内消費の弱さを反映する結果となった。
他方、深刻なマイナス成長を記録したのは炭化水素部門であり、原油と天然ガスの採掘量は前年比13.41%減となった。これは、生産フィールドの減少だけでなく、公共財政と輸出の要である同分野への投資不足も反映している。加えて、公共行政サービス部門も0.69%減となっている。
(5)7月のインフレ率
ボリビア国家統計局(INE)のデータによれば、今年1月から7月までの累計インフレ率は16.92%に達した。この数値は、国際通貨基金(IMF)の年間予測である15%を上回り、ボリビア政府の予測値(7.5%)の2倍に当たる。INEはインフレ率上昇の原因として、選挙期間中に発生した国内の社会不安を挙げている。特に「雑貨・サービス」カテゴリーは4.29%上昇、これに続き、外食(昼食、特別食など)が1.85%の上昇となった。公共政策研究センター(Populi)のエコノミストであるカルロス・アランダ(Carlos Aranda)氏は、根本的な問題は社会紛争ではなく通貨発行にあると主張している。「インフレの加速は一時的なものではなく、定着し始めている。社会的な対立が一時的に市場に影響を与えたことは事実だが、これをインフレ上昇の原因とみるのは、問題の根本を矮小化することに繋がる。根本的な要因は公共部門の財政赤字を補填するための膨大な通貨発行にある」と指摘した。ボリビア中央銀行(BCB)のデータによると、今年1月から5月の間に通貨発行額は80億ボリビアーノス以上増加し、経済が停滞する中でマネタリーベースが10%増加したと説明した。