2025年6月 ボリビア経済情勢

令和7年7月1日

1 経済指標など

      当月  前月(最終更新値)  累計  前年同月 (24年6月) 前年累計 
(1)  インフレ率  5.21% 3.65% 15.53% 0.54% 2.49%
(2)  都市部失業率  3.15% 3.02% - 3.42% -
(3)  外貨準備高  28億700万 25億1,000万 - 18億3,900万 -
(4)  対外債務  138億600万 137億7,300万 - 133億6,500万 -
(5)  対内債務  187億9,000万
(2024年12月)
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(6)  天然ガス輸出額  9,700万 9,000万 - 1億4,100万 -
(7)  鉱物資源全体の輸出額  2億6,700万 2億4,700万 - 2億8,100 -
(8)  燃料輸入額  2億2,500万 2億2,400万 - 1億5,200万 -
(9)  貿易収支  7,500万 900万 ▲5億600万 1億5,500万 ▲4億3,200万
(10)  金輸出額  1億600万 1億900万 - 7,300万 -
             
   ※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計   
  ※前年累計:前年1月~前年の当月の累計  
  ※金額通貨:USD(米ドル)  

 

2 経済関連動向等

(1)牛肉輸出禁止措置の解除

 6月4日、フローレス農村開発・土地相は、サンタクルスでボリビア畜産業者連盟(Congabol)及び産業関係者との合同記者会見を開き、100日以上続いた牛肉輸出禁止措置の解除を発表した。この措置は、今年2月5日に政府が国内市場での牛肉価格上昇を抑制するために実施されたものである。なお、今回の輸出解禁にあたっては、国内市場での供給量を確保することを条件に、生産部門へ44,000トンの輸出枠を設定した。
 政府のデータによれば、ボリビアは年間生産量35万1,231トンのうち、29万5,293トンを消費しており、5万5,000トンを超える余剰が生まれている。ママニ生産開発・複合経済相は、「牛肉の輸出解禁によって1億米ドルを超える収益を生み出し、ボリビア経済全体に利益をもたらすだろう」と述べた。なお、ボリビアの牛肉輸出は85%以上が中国向けとなっている。

(2)ロシアと中国の企業とのリチウム契約

 6月5日、ポトシ県コルチャK(Colcha K)の裁判所は、ノル・リペス市先住民コミュニティ統一中央委員会(Cupconl)がボリビアリチウム公社(YLB)とロシア・中国企業との間で締結されたリチウム契約に対し提起した集団訴訟を却下した。これにより、ウユニ塩湖で計画されているプロジェクトの事前可行性調査が、地域コミュニティへの適切な協議なしに進められることになる。
 CC党のクラロス(Lissa Claros)議員は、「ポトシの議員として、司法がリチウム契約の仮処分措置を撤回した決定に対し、緊急事態を宣言する。これは、先住民族の権利が侵害されることを意味している」と述べた。
 他方、ガジャルド炭化水素・エネルギー相は、立法議会にこれらのリチウム契約の承認を要請し、「我々は世界最大のリチウム埋蔵量を保有しており、このチャンスを後回しにすべきではない。我々のパートナーは、エネルギー生産に豊富な経験を持つ国際企業であり、ボリビア人として我々に課せられた使命は、自然資源を活用して発展と進歩を築くことである」と述べた。同相はまた、ボリビアが直面する複雑な経済状況を、ロシアのウラニウム・ワン・グループと中国の香港CBCコンソーシアムが建設するリチウム採掘・生産プラントの稼働により逆転できると強調した。

(3)チュルマス油田でのガス生産開始

 6月10日、アルセ大統領は、タリハ県アルセ郡にあるガス油田、チュルマスX2井戸(CHU-X2)でガス生産が開始されたと報告した。同ガス田はタリキア国立動植物保護区の中程度利用地域に位置するガス油田であり、230兆立方フィートの埋蔵量を有し、20年以上の開発ポテンシャル、日量2000万立方フィートを超える生産量が見込まれている。アルセ大統領は、本プロジェクトがガス埋蔵量の補充と増加に貢献し、エネルギー安全保障の確保が進んでいることを示すものであると政府が推進する探査政策の成果を強調した(当館注:本プロジェクトは、アルセ政権が2021年に新規油田・ガス田の探索において探鉱プロジェクトを優先することを目的として立ち上げた「炭化水素上流再活性化計画(PRU)」の一環であり、YPFBの子会社であるYPFB Chaco S.A.は、1億米ドルを超える投資を行っている。)。

(4)FATFのグレーリスト再指定

 6月13日、金融活動作業部会(FATF)は、ボリビアを「グレーリスト」に再指定(2011年~2013年まで同リストに指定)することを決定した。FATFの「グレーリスト」は、資金洗浄やテロ資金供与、その他の対策において法的または制度的枠組みに戦略的な欠陥があると判断した国の公開リストである。今回、ボリビアが同リストの再指定となった主な理由として、国際基準で推奨される特別捜査手法(潜入捜査員や通信の合法的な傍受など)を可能にする法律が制定されていないことから、複雑な金融犯罪の捜査・起訴の有効性が制限されているためとしている。このカテゴリーへの分類により、ボリビアはFATFによる「監視強化対象管轄区域」となり、是正措置の実施状況について定期的に報告する必要がある。FATFはボリビアに対し、不動産業者、弁護士、会計士等分野の監督と監視を強化し、資産や財産の最終受益者に関する透明性を確保すること、また、違反が判明した場合には制裁を課すよう推奨した。
 これに対し、経済・財政省はコミュニケで、行政機関は権限の範囲内で、資金洗浄とテロ資金供与対策の強化に向けた具体的な措置を講じており、FATFが2024年1月に公表した相互評価報告書にて提示した60の推奨措置のうち90%以上を履行したと主張した。他方で、特別調査手法に関する法律の欠如が依然として主要な未解決課題であり、新たな立法案の提出に向けた行動計画を提示する旨表明した。

(5)S&Pによる信用格付け引き下げ

 6月25日、米国の信用格付け会社であるStandard and Poor's Global Ratings社(以下、S&P)は、ボリビアの信用格付けを「CCC+」から「CCC-」に引き下げ、見通しは「ネガティブ」を維持した。今回の引き下げは、債務返済負担の増加に加え、政治的停滞と国際市場へのアクセス制限が、同国の外貨流動性の悪化と脆弱な財政状況をさらに悪化させ、「経済的・金融的安定性に具体的なリスク」を提起しているためとしている。また、ネガティブな見通しは、債務返済リスクがさらに高まる場合、今後6~12ヶ月以内にボリビアの信用格付けを再び引き下げる可能性があるとの見解を示している。
 これに対し、モンテネグロ経済・財政相は、同国がデフォルトに陥るリスクはないと断言し、S&Pによる信用格付けの引き下げは、政治的混乱によるものであると強調した。「債務の返済を期日通りに適切に行っているため、デフォルトに陥ることはない。ただ、アルセ大統領が指摘したように、立法議会で承認待ちの融資問題が解決されない場合、(債務不履行に陥る)可能性はある。政治的な対立が経済に負の要素をもたらしている」と説明した。

(6)ボリビアのインバウンド観光データ

 ボリビア国家統計局(INE)のデータによると、2024年にボリビアを訪れた外国人観光客数は991,184人であり、2023年(1,009,247人)と比較して1.8%減少した。政府はこれを、エボ・モラレス前大統領の支持者による社会紛争に起因すると指摘している。ボリビア観光協会(Cabotur)のルイス・アンプエロ(Luis Ampuero)会長は、国内紛争による道路封鎖がボリビアの国際的なイメージを損ない、同国への訪問意欲を低下させ、終局的には外貨収入の減少にもつながっていると述べた