2025年5月 ボリビア経済情勢
令和7年6月2日
1 経済指標など
当月 | 前月(最終更新値) | 累計 | 前年同月 (24年5月) | 前年累計 | ||
(1) | インフレ率 | 3.65% | 0.9% | 9.81% | 0.63% | 1.95% |
(2) | 都市部失業率 | ‐ | 3.67% (2025 年3月) |
- | 4.11% | - |
(3) | 外貨準備高 | - | 26億1,800万 (2025年4月) |
- | 19億3,800万 | - |
(4) | 対外債務 | ‐ | 134億5,000万 (2025年2月) |
- | 134億300万 | - |
(5) | 対内債務 | ‐ | 187億9,000万 (2024年12月) |
- | - | - |
(6) | 天然ガス輸出額 | ‐ | 8,000万 (2025年4月) |
- | 1億4,400万 | - |
(7) | 鉱物資源全体の輸出額 | ‐ | 2億8,200万 (2025年3月) |
- | 2億8,500万 | - |
(8) | 燃料輸入額 | ‐ | 3億5,800万 (2025年4月) |
- | 2億8,100万 | - |
(9) | 貿易収支 | ‐ | ▲1億3,700万 (2025年4月) |
▲5億7,100万 | ▲1,500万 | ▲5億7,200万 |
(10) | 金輸出額 | ‐ | 1億1,100万 (2025年4月) |
- | 7,000万 | - |
※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計 | ||||||
※前年累計:前年1月~前年の当月の累計 | ||||||
※金額通貨:USD(米ドル) |
2 経済関連動向等
(1)世界銀行の経済見通し
世界銀行の推計によると、ボリビアの2024年の経済成長率は1.4%であり、地域内諸国で最も低い結果となった。また、2025年の成長見通しは1.2%を維持しており、この数年間は1.1%に低下すると予測している。経済学者のフェルナンド・ロメロ(Fernando Romero)氏によれば、ボリビアの2025年の経済見通しは、燃料不足、ドル不足、政治的不安定、社会紛争などの問題から、回復が非常に限定的であることを示しており、ボリビアは経済安定に向けて、構造改革を緊急に実施する必要があると指摘している。
(2)大豆輸出禁止措置の一部解除
5月7日、政府は2024~2025年夏の農業シーズンにおける生産性の向上を確認し、収穫量が300万トンを超えると推定されたことを受け、大豆の輸出禁止措置を一部解除し、最大25万トンまでの輸出を認めると発表した。ボリビアの大豆の主な輸出先は、ペルー、アルゼンチン、チリである。ママニ生産開発・多元経済相は、「大豆の生産性は1ヘクタールあたり平均2.2トンに達し、干ばつに襲われた以前の作期と比べて増加した。これにより、夏期には全国で約300万トンの生産量が見込まれ、その80%以上がすでに収穫されている。現行の規制では、国内市場の供給が確保された場合に限り、余剰分の大豆輸出が許可されているため、一時的に制限していたものである」と述べ、輸出の再開が「国の外貨収入の増加につながり、国内産業、特に製造業への供給を確保することになるだろう」と強調した。
政府は、ボリビアの市場で植物性食用油の価格上昇と、家畜飼料として使用される大豆粕などの派生品の値上がりを受けて、2月中旬に大豆の輸出を一時停止した。政府は、この価格上昇を穀物の生産量不足と関連付けたが、生産者はディーゼル燃料の不足、資材の値上がり、ドル不足を理由に反論していた。
(3)クリーン水素認証システムへの正式加盟
5月16日、ボリビアは、地域基準を統合し、低炭素水素市場の促進を目指すイニシアティブである「ラ米・カリブ海地域向けクリーン水素認証システム(CERTHILAC)」への正式加盟を発表した。CERTHILACへの加盟により、ボリビアは、グリーン水素のトレーサビリティを保証し、排出強度、電力の起源、電解プロセスで使用される水に関する情報など重要なデータを提供する国際的な認証システムに参加することとなり、国際市場における国家プロジェクトの信頼性が強化され、新たな販売市場の開拓が促進される。ボリビアは米州開発銀行(IDB)の支援を受け、2024年末に「グリーン水素ロードマップ」と「グリーン水素国家戦略」を策定・発表した。これらの文書は2050年に向けたビジョンを示し、ボリビアを、新エネルギーの生産と輸出における重要なプレーヤーとして位置づけている。
(4)「エネルギーサミット・ボリビア2025」開催
5月17日、ボリビア工学会(SIB)がサンタクルス市で開催した「2025年エネルギーサミット」において、ボリビアリチウム公社(YLB)は、技術調査、現在の生産状況、契約、リチウムの将来見通しに関する情報を公表した。YLBのプロジェクト・契約部長であるペレス(Alfonso Perez)氏は、ウユニ塩湖のリチウム資源量2,100万トンが国際認証を受けており、今後オペレーションプロジェクトを通じて埋蔵量に変換されることを確認した。同イベントには、アルネス代替エネルギー次官も参加し、ボリビアが本年から2050年までに電力の75%を再生可能で環境に優しい資源で発電するという目標を設定したと述べた。加えて、エネルギー転換促進に向けたインセンティブの実施を開始したと説明し、ハイブリッド車やフレックス燃料車の輸入に対する税制優遇措置や、再生可能エネルギー発電支援パッケージへの太陽光パネル組み込みなどを例に挙げた。「エネルギーマトリックスを、再生可能エネルギーを基としたものへと転換する必要がある。電気自動車やグリーン水素だけでなく、太陽光パネルの普及を進め、ガソリンやディーゼルを燃料とする自動車から、新技術を採用した車両への移行を実現していく」と述べた。
(5)経済危機に対する11の措置
5月23日、ボリビア政府は、価格投機、密輸、燃料不足などの経済問題に対処するため、11の即時実施措置と7つの最高政令の承認を発表した。アルセ大統領は、これらの措置は「購買力を維持し、必需品の供給を確保し、価格に及ぶ投機的な影響を抑制することを目的としている。この危機は、悪政によるものではなく、立法議会が18億ドルを超える融資を承認せず、財政を締め付けるためだ」と述べた。ア 密輸対策の強化:
最高政令第5402号を発令。国境地帯の全地域に1,880人の部隊を配置、及び、国境地域で押収された製品の管理、没収、国内再配分を規定。
イ トウモロコシと米の生産支援:
国家一般会計から5年間で3億5,000万Bsを予算として拠出する「トウモロコシと米の生産支援国家プログラム」を発表。
ウ 家禽信託基金と関税ゼロ措置:
最高政令第5398号により、小規模家禽生産者向けに2,200万Bsの信託基金の設立を承認。また、最高法令第5401号により、2025年12月31日まで、ヒナ鶏の輸入、及び、獣医用医薬品、大豆油産業の輸入に対する関税をゼロに設定.
エ 燃料の供給:
最高法令第5400号を承認。投機的な備蓄を防止するため、国家炭化水素庁(ANH)が定めるパラメーターに基づき、天然ガス自動車(NGV)に改造された車両の燃料消費量に制限を定め、超過する場合は、国際価格での支払いを義務づけ。ガソリンとディーゼルのドラム缶販売も制限しており、生産目的または緊急時のみの使用を証明できる者だけが購入可能、それ以外の者は国際価格を支払わなければならないと規定。
オ YPFBによる暗号資産の使用禁止:
最高法令第5399号を承認し、ボリビア石油公社(YPFB)が仮想資産または暗号資産による取引を行うことを禁止。
カ UFVに連動した貯蓄促進:
政府はボリビア中央銀行(BCB)を通じて、金融システム規制監督庁(ASFI)と協調し、金融システムにおいてUFV(住宅開発単位)に連動した金融商品の促進・奨励措置を実施。
※UFVは、価格の日次変動を示す基準指数であり、ボリビア国家統計局(INE)が発表する消費者物価指数(CPI)を元に算出される。
キ 外貨:
最高政令第5404号の承認により、外貨の持ち込み・持ち出しに関する制度を改正。外国為替の持ち込み限度額は税関への書類提出により10,000米ドルから50,000米ドルへの引き上げを可能とした。
ク ボリビアーノスでの貯蓄促進:
最高法令第5403号により、顧客1人あたりおよび金融機関1行あたりの貯蓄口座の預金に対する2%の利息適用上限額を月平均残高70,000Bsから100,000Bsに引き上げ。
ケ 生産性向上のための優遇金利:
同法令はまた、生産部門への貸付の年間最大金利を、経済単位の規模に応じて、零細企業は11.5%、小規模企業は7%、中規模企業は8%、大規模企業は10%と規定。
コ 市場での投機対策:
政府は、自治体政府に対し、市場の価格と重量における適正な管理・監視を強化するよう指示。司法機関と検察庁にも価格操作・投機に対する迅速な対応を求めた。
サ 適正価格と適正重量の市場:
製品の供給を確保するための戦略の一環として、5月24日からラパスで「適正価格と適正重量の市場」を、Emapaが生産者と連携して実施すると発表。
(6)グローバルビジネス複雑性指数(GBCI)の発表
5月28日、オランダのTMFグループは「グローバルビジネス複雑性指数(GBCI)」を発表した。これは、世界のGDPの94%を占める79の国・地域におけるビジネス環境の複雑性に関して、規制・税制や給与システムなど含む250項目以上の指標に基づき順位付けしたものであり、順位が高いほどビジネス展開のリスクが高いことを示している。この指数において、ラテンアメリカ地域では4か国がトップ10に入っており、ボリビア(8位)は、メキシコ(3位)、コロンビア(5位)、ブラジル(6位)に次いで域内4位にランクインした。なお、この調査ではキューバとベネズエラは対象外である。ボリビアについて、同報告書は税制システムと規制の複雑さを指摘しており、これにより潜在的な投資家を遠ざけ、外国企業によるボリビア市場進出を困難にする可能性があると警告している。