2025年4月 ボリビア経済情勢

令和7年5月1日

1 経済指標など

      当月  前月(最終更新値)  累計  前年同月 (24年4月) 前年累計 
(1)  インフレ率  0.9% 1.71% 5.95% 0.57% 1.31%
(2)  都市部失業率  3.67%
(2025 年3月)
- 3.38% -
(3)  外貨準備高  26億1,800万 23億200万
(2025年3月)
- 17億9,600万 -
(4)  対外債務  134億5,000万
(2025年2月)
- 133億9,700万 -
(5)  対内債務  187億9,000万
(2024年12月)
- - -
(6)  天然ガス輸出額  1億
(2025年3月)
- 1億4,900万  
(7)  鉱物資源全体の輸出額  2億6,000万
(2025年3月)
- 2億3,600万 -
(8)  燃料輸入額  9,000万
(2025年3月)
- 2億4,300万 -
(9)  貿易収支  ▲2,900万
(2025年3月)
▲4億3,400万 ▲800万 ▲5億6,400万
(10)  金輸出額  2,800万
(2025年3月)
- 9,700万 -
             
   ※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計   
  ※前年累計:前年1月~前年の当月の累計  
  ※金額通貨:USD(米ドル)  

 

2 経済関連動向等

(1)2025年第一四半期のボリビア貿易収支データ

 ボリビア国家統計局(INE)が発表した貿易統計速報(3月)によれば、3月単月でボリビアは2,900万米ドルの貿易赤字、昨年10月から6ヶ月連続で貿易収支はマイナスを記録している。2025年第一四半期(1月~3月)の輸出額は5億8,680万米ドル、輸入額6億1,600万米ドル、累積赤字は4億3,390万米ドルという結果であり、輸出入額はいずれも昨年同時期比でそれぞれ8%、12%減少した。 

ア 輸出 
 2025年第一四半期の輸出は、総額の44%を鉱物資源、34.2%を製造業、16.1%を炭化水素が占めている。2024年同時期比では、鉱物資源は34.8%、電気エネルギーは232%の増加となったが、それ以外の部門はすべて減少(製造業-23.3%、炭化水素-36.5%、農業-8.6%)を記録した。 
 輸出品目別では、亜鉛鉱石(3億3,150万米ドル)、銀鉱石(3億2,060万米ドル)、天然ガス(2億8,430万米ドル)が最も多く輸出されたものの、天然ガス輸出は、2024年第1四半期の累計額(4億4,690万米ドル)と比較して36%減少しており、生産量の減少が続いていることを反映している。 
 なお、第一四半期の主要輸出国は、中国、ブラジル、日本、ベルギーであり、INEは輸出減少の原因を気候変動や国内の社会紛争など不利な状況に起因すると報告している。 

イ 輸入 
 2025年第一四半期の輸入は、総額の30.6%を工業用製品、24.8%を燃料・潤滑油、16.1%を輸送機器・その部品および付属品が占めている。2024年同時期比では、工業用製品が4,6%の増加となったが、輸送機器、その部品および付属品は30%の減少、次いで資本財が13.5%の減少を記録している。同様の傾向は、燃料および潤滑油(-22.6%)、食品・飲料(-2.3%)および消費財(-2.9%)でも見られている。 
 輸入品目別では、工業用製品($6億4,900万米ドル)、燃料・潤滑油($5億4,620万米ドル)、資本財(2億6,950万米ドル)が最も多く輸入された。一方、2025年3月単月のディーゼルとガソリンの輸入量は、2024年同月(2億9,180万米ドル)と比較し69.3%減少(8,950米ドル)しており、これは、ドル不足に伴う燃料不足問題を反映していると考えられる。 
 なお、第一四半期の主要輸入国は、中国、ブラジル、アルゼンチン、ペルーであり、INEは「これらの輸入減少は、主に国際輸送費、取引コスト、供給国経済のインフレ率上昇による物流コストの増加が原因である」と説明している。
 

(2)IMFと世銀によるボリビア経済見通し

ア 4月22日、IMFは「世界経済見通し」を発表し、ボリビアの経済成長は限定的で、2025年のGDP成長率はわずか1.1%、2026年は0.9%、今後数年間の経済成長の鈍化を予想した。なお、昨年1月の2025年成長率(2.2%)から大幅な下方修正をなった。インフレ率は2025年には15.1%、2026年には15.8%に達する予測であり、インフレ圧力の深刻化が指摘されている。ボリビア国家統計局(INE)のデータを見ても、2025年1月~3月までの累積インフレ率はすでに5%に達し、ボリビア経済の短期・中期的な方向性に対する懸念が強まっている。 

イ 4月23日、世界銀行は「ラテンアメリカとカリブ海諸国の現状」報告書を発表。ボリビアは現在、深刻なドル不足およびインフレ率の上昇により、厳しい経済危機に見舞われている。燃料不足と輸出の減少に加え、貿易赤字も顕著であると分析。2025年のボリビア経済成長率は1.2%にとどまり、2026年及び2027年も低成長・緩やかな経済減速が続き、いずれも1.1%の成長予測。この低成長の予測背景には外貨不足などボリビアの重要な構造的課題があると指摘してる。

(3)カントリーリスクの上昇

ア 4月14日、JPモルガンが更新した新興国債券指数(EMBI)によると、ボリビアは2,190ポイントを記録し、引き続きベネズエラ(18,307ポイント)に次いでラテンアメリカ域内で2番目に高いカントリーリスクを有する国となっている。ボリビアのポイントは、先月比20%の増加を示しており、この上昇率は2025年における地域内最高水準に達している。ボリビアの数値は、地域平均(458ポイント)の5倍、世界平均(339ポイント)の6倍に達し、ボリビアの深刻な経済状況を浮き彫りにしている。 

イ 4月17日、信用格付け会社であるMoody's Ratings社は、ボリビアの信用格付けを、昨年4月の「Caa3」(投機的で安全性が低い、信用リスクが極めて高い債務に対する格付け)から「Ca」(非常に投機的であり、デフォルトに陥っているか、あるいはそれに近い状態にあるが、一定の元利の回収が見込める債務に対する格付け)に一段階引き下げた。見通しは「安定的(stable)」を維持しているものの、今回の引き下げ要因として、ボリビアの外貨準備高の継続的かつ大幅な減少が外貨流動性を危機的水準まで低下させ、慢性的な財政赤字と政治的対立が債務不履行のリスクを高めているためだと指摘している。

(4)国際準備金の金使用

 4月3日、ボリビア中央銀行(BCB)はプレスリリースにて、3月6日付の理事会決議第028/2025号が同月25日に発効、「国際準備の管理に関する規則」を改正し、融資を受けるために金を売却可能とする条項を追加したと発表した。 
 BCBのデータによると、2024年末時点での同国の淳国際準備高は19億7,600万米ドル、そのうち金準備高は18億8,900万米ドル、22.52トンを保有している。12%はBCBの金庫に保管され、88%は海外に保管されている。 
 モンテネグロ経済財務相は、「国際準備金として保有する金のうち、18トンを担保としてドルを融資で調達する予定である。対外債務の返済を続けるというのが我々の考えであり、これまでも債務返済を止めたことはない。」と主張した。 
 

(5)リチウム工業化に関する韓国との会合

 4月10日、ボリビアのチョケワンカ副大統領と韓国のチャン・ミョンス(Jang Myung-soo)外務省特使は、大統領府で会合を開き、環境、観光、リチウム工業化など、戦略分野におけるボリビアとの協力関係強化に向けた話し合いを行った。 
 また、同日、韓国企業との鉱業、エネルギー、農業産業での提携模索を目的としたビジネスフォーラムが開催され、ボリビア道路庁(ABC)と韓国輸出入銀行(KEXIM)は、サンタクルス県にあるバネガス橋の改修工事に関する690万Bsの覚書に署名した。 
 なお、2025年はボリビア建国200周年および両国間の外交関係樹立60周年を記念する節目の年である。
 

(6)「大阪・関西万博2025」ボリビアナショナルデーの開催

 4月21日、「大阪・関西万博2025」にてボリビアナショナルデーの記念式典が開催された。本式典には、ボリビア多民族国の代表として、ダビッド・チョケワンカ副大統領が来日し、世界に向けて同国が持つ豊かな文化、芸術、伝統を紹介した。 
 ボリビア外務省はプレスリリースにて「ボリビアの建国200周年という特別な意味を持つ年に、ボリビアの豊かな文化、多様なアイデンティティ、持続可能な開発へのコミットメントを世界に発信する機会となった」とコメントしている。