2025年 1月定期報告

令和7年2月3日

1 内政

(1)モラレス元大統領に対する告訴モラレス元大統領に対する告訴

 1月14日、モラレス元大統領は肺炎を理由に、タリハ県裁判所が要請していた公聴会に出頭しなかった。また、同元大統領の弁護団が提出した医療証明書は裁判所に受理され、 1月17日に公聴会は延期された。なお、この裁判所の決定は、野党政治家が告訴された時は体調不良を訴えたとしても受理されなかったとして、野党から強く批判された。
 1月17日、モラレス元大統領は、延期された公聴会にも健康上の理由により出席しなかった。

(2)環境・水資源大臣の交代

 1月14日、検察庁は、透明性・汚職撲滅次官室の捜査要請を受理し、リスペルゲール環境・水資源大臣(当時)の汚職及び不正蓄財の疑いについて捜査を開始した。透明性・汚職撲滅次官室によると、リスペルゲール大臣の資産は公職にある身では考えられない推移で増加していたとされる。
 1月15日、アルセ大統領は、リスペルゲール大臣を罷免、プラダ大統領府大臣に環境大臣の職務代行を命じた。同大臣の罷免により、汚職で退任した大臣は現政権において五人目となった。
 1月21日、アルセ大統領は、大統領府にて、アルバロ・ルイス・ガルシア大統領府自治次官を新たな環境・水資源大臣に任命し、国家資源を損なういかなる行為も容認しない旨述べた。

(3)MAS党内部の内紛

 1月10日、モラレス元大統領支持団体は、アルセ政権に対して可及的速やかにボリビア経済回復に向けた施策を実施するよう要求すべく、デモ行進を開始。
 1月13日、モラレス元大統領支持団体によるデモ行進参加者約1,500名がラパス市のエミリオ・ビジャヌエバ広場に集結し、警官隊との間で小競り合いが発生した。

(4)大統領選の動き

 1月5日、レイェス・コチャバンバ市長は、コチャバンバ市内で大規模集会を開催し、自身の政党であるスマテ(Súmate)党から大統領候補として立候補することを正式に宣言した。
 1月14日、新たにヴィンセント・クエジャール・ガブリエル・モレーノ自治大学学長及び経済学者のアンパロ・バジビアン氏(当館注:キロガ政権時、税関局長を担当)が野党連合に新たに加わることが明らかとなった。韓国系ボリビア人で大統領選候補であるチュン神父は、クエジャール学長の野党連合への参加について、「クエジャール学長は、MAS党の後ろ盾の下、今の学長の座に就いたのだから、真の野党候補とは言えない」と疑問を呈した。
 1月16日、上院は、議席数にかかる法案を可決した。この法案によるとサンタクルス県の議席数は、ラパス県の議席数と並び、他県と比べて最も多い29議席となり、これはボリビア史上初のこととなる。同日、選挙管理裁判所は国政政党の人事刷新の期限を3月20日まで延期することを決定した。
 1月23日、選挙管理裁判所は、8月17日に総選挙・大統領選(第一回投票)を実施する予定である旨明らかにした。
 1月24日、カルロス・メサCC党首(元大統領)は、2025年大統領選に出馬しない旨公表した。
 1月29日、同日、サミュエル・ドリア・メディナUN(国民統一戦線)党首は、自身が推進する野党連合における候補者統一化に向けた動きについて、三月末にアンケートを実施して選考する計画であるとメディアに明かした。
 1月30日、レイェス・コチャバンバ市長は、改めてキロガ元大統領やメディナUN党首が推進する野党連合への参加の可能性を否定した。

(5)ボリビア多民族国建国記念日

 1月22日、アルセ大統領は、ボリビア多民族国建国記念日を祝し演説を行い、司法選挙未実施部分の完遂、産業化の促進、議会運営の改善、民主主義に基づいた総選挙の実施、自然災害に対する対応を強化していく旨、国民に訴えた。
 

(6)世論調査

ア Ciesmori社による結果
 1月20日、Ciesmori社が実施した世論調査の結果(1月10日から13日にかけてラパス、コチャバンバ、サンタクルスで800人を対象に実施)が明らかになったところ、各候補者の支持率以下のとおり(括弧内は2024年11月調査時、以下同様)
レイェス・コチャバンバ市長 :16%(14%)
チュン神父 :15%(11%)
ロドリゲス上院議長 :13%(11%)
キロガ元大統領 :10%(6%)
メディナ国民統一戦線党首 :9%(12%)
カマチョサンタクルス県知事 :6%(10%)
アルセ大統領 :2%(3%)

イ Diagnosis社による結果
 1月21日、Diagnosis社は大統領選候補にかかる世論調査(1月11日から12日にかけて全国都市・農村部の18歳から65歳まで1800人を対象に実施)の結果を発表したところ、各候補者の支持率以下のとおり(括弧内は2024年9月調査時、以下同様)
レイェス・コチャバンバ市長 :15%(10%) 
ロドリゲス上院議員議長 :10%(10%)
メサCC党首(元大統領) :10%( 8%)
モラレス元大統領 :9%(10%)
メディナ国民統一戦線党首 :9%( 4%)
アルセ大統領 :7%(16%)
チュン神父 :5%( 0%)
クエジャールSC国立大学長 :3%( 9%)
チョケワンカ副大統領(MAS) :2%( 3%)
マリンコビッチ実業家 :2%( - )
その他の野党候補 :7%( 8%)
その他の与党MAS候補 :6%( 9%)
無回答・未定 :15%(13%)

ウ Panterra Research社による結果
 1月28日から30日にかけて、ボリビアの実業家マルセロ・クラウレ氏は、Panterra Research社に依頼した世論調査の結果をXで公開したところ、各候補者の支持率以下のとおり(1月5日から21日にかけて、18歳から65歳の2000人を対象にボリビアの100の自治体にある280の地域で実施。なお、モラレス元大統領については、2024年11月に憲法裁判所が同元大統領の再選を認めない裁定を下していることに鑑み、候補者から除外されている。)。
ロドリゲス上院議長 :16%           
レイェス・コチャバンバ市長 :16%
チュン神父 :13%
キロガ元大統領 :9%
メディナ国民統一戦線党首 :8%
カマチョサンタクルス県知事 :7%
アルセ大統領 :2%
 

(7)ボリビア建国200周年記念行事

 1月6日、スクレ市にてアルセ大統領は、ボリビア建国200周年の開始を宣言した。
 

2 外交

(1)BRICSとの関係

 1月1日、ボリビアは「パートナー国」として、正式にBRICSへ加盟した。加盟にあたり、アルセ大統領は、「BRICSへの加盟は、エネルギー、貿易、技術、製造、持続可能な金融などの主要分野を成長させる機会となる」と述べた。
 

(2)米州機構(OAS)との関係

 1月1日、ボリビア外務省は、1月1日から3月31日までの間、ボリビアが米州機構(OAS)の常任理事会議長国を務める旨、声明にて発表した。

(3)ベネズエラとの関係

 1月10日、ソサ外相は、アルセ大統領の代理としてマドゥロ・ベネズエラ大統領の3期目就任式に出席し、自身のSNSにてマドゥロ大統領を祝福するコメントをXに投稿した。なお、当地報道によれば、アルセ大統領が国内での重要な用務を理由に今般の大統領就任式を欠席したとして、モラレス元大統領が同大統領に対する批判を展開した。

(4)イスラエル・パレスチナとの関係

 1月15日、アルセ大統領及びソサ外相は、イスラエルとイスラム組織ハマスによるガザ地区における停戦合意発表を歓迎するコメントをXに投稿した。
 1月28日、ボリビア外務省は、「パレスチナ人民への連帯・支持の表明、並びに強制移住の試みに対する非難」と題する声明を発出し、パレスチナ人民の自決権への連帯と支持を再確認し、強制移住の試みを非難する旨を発表した。(当館注:本声明は25日のトランプ米大統領による「ガザ地区のパレスチナ人の受け入れをヨルダン及びエジプトに要請した」との発言に反応したものと思われるが、本声明ではトランプ大統領及び米国政府に関する言及は行われていない。)

(5)米国との関係

 1月14日、アルセ大統領及びソサ外相は、バイデン米政権による対キューバ「テロ支援国家」指定解除を歓迎するコメントをXに投稿した(当館注:1月20日、トランプ大統領は、同措置を撤回する大統領令に署名した。)。
 1月21日、アルセ大統領は、トランプ第二次政権発足に際し、祝意と共に、アメリカ大陸の平和、民族自決、不干渉原則、民主主義の尊重、差別撤廃に向けたボリビアのコミットメントを表明した。
 1月30日、在米国ボリビア領事のセルソ・ヘルバス領事によれば、200人以上のボリビア国民がドナルド・トランプ政権によって米国から強制送還される危険にさらされているとメディアに明らかにした。

(6)中国との関係

 1月30日、アルセ大統領は、中国の旧正月に際し、習近平国家主席並びに中国国民に対し、祝意と両国関係が更に発展することを祝う旨Xに投稿した。

(7)ドイツとの関係

 1月23日、ソサ外相とホセ・シュルツ駐ボリビア独大使は、エネルギー転換とアマゾンの保護を強化することを目的とした3つの協力協定に関する署名式を行った。今回署名された協力は、「再生可能エネルギー発電」プロジェクト(総額3400万ユーロの融資)、「アマゾンの保護と持続可能な管理」(総額1500万ユーロの補助金)、「ボリビアにおけるエネルギー転換強化プロジェクト」(技術協力等)で構成される。

(8)EUとの関係

 1月30日、ボリビアと欧州連合(EU)は第9回ハイレベル会合を開催した(当館注:対面とオンラインのハイブリッド形式で実施)。この会合では、外交関係の強化、再生可能エネルギー、貿易投資、森林管理、アマゾンにおける生物多様性の保護、気候変動対策、麻薬および組織犯罪対策、 文化遺産の保護と保全、イノベーションのためのコネクティビティ、査証簡素化協定の締結によりシェンゲン域における査証免除への道が開かれたことなど、重要な分野における外交関係の強化と協力の深化に向けた取り組みについて協議された。