2025年2月 ボリビア経済情勢

令和7年3月3日

1 経済指標など

      当月 前月(最終更新値)  累計  前年同月 (24年2月) 前年累計 
(1)   インフレ率  1.26% 1.95% 3.24% -0.2% -0.28%
(2)   都市部失業率  - 3.37%
(2024年11月)
- 4.35% -
(3)  外貨準備高  -
19億7,600万
(2024年12月)
- 15億8,200万 -
(4)  対外債務 
132億9,800万
(2024年7月)
- 134億2,300万 -
(5)  対内債務 
199億7,300万
(2023年11月)
- - -
(6)  天然ガス輸出額  -
7,400万
(2025年1月)
- 1億3,300万 2億8,500万
(7)  鉱物資源全体の輸出額  -
2億7,500万
(2025年1月)
- 1億8,300万 -
(8)  燃料輸入額  -
2億2,400万
(2025年1月)
- 1億9,000万 3億9,900万
(9)  貿易収支  -
▲1億8,300万
(2025年1月)
- ▲1億3,500万 ▲3億5,200万
(10)  金輸出額  -
2,300万
(2025年1月)
- 7,300万 1億1,100万
             
    ※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計          
 
※前年累計:前年1月~前年同月の累計
※金額通貨:USD(米ドル)
 

2 経済関連動向等

(1)2024年ボリビア貿易収支データ

 ボリビア統計局(INE)のデータによると、ボリビアは2024年に8億4,530万ドルの貿易赤字と17%の輸出減少を記録し、インフレ圧力の高まりと外貨流入の減少を招いている。経済アナリストのフェルナンド・ロメロ(Fernando Romero)氏によれば、2024年の貿易収支においてマイナス数値を示した月は全体の75%に上り、2024年の累積貿易収支(8億4,530万米ドルの赤字)は、2023年(5億7,000万米ドルの赤字)よりも48%高かった。また、2024年の輸出総額は90億5,920万米ドルとなり、2023年よりも17%減少、輸入総額も2023年と比較して14%減少しており、対外貿易の業績はいずれも低迷が見られた。

(2)トランプ政権によるボリビアへの影響

 モンテネグロ経済財務相によると、トランプ大統領の関税政策は、「地政学的な貿易の再編」につながり、ボリビアに有利に働く可能性があるとの見解を示した。仮に、中国、メキシコ、カナダといった国々が、新たに課された関税を理由に米国への生産移転を望まない場合、「貿易は再編成され、投入コストの削減さえも可能となり、我が国に多大な利益をもたらすだろう」と述べた。
他方、複数の国際関係専門家は、共和党の政権獲得は両国間の関係に大きな変化をもたらすことはないだろうと主張する。外交官であり政治アナリストのハビエル・ビスカラ(Javier Viscarra)氏は、「少なくともアルセ政権の間は、冷たく距離を置いた関係が続くだろう。しかし、米国政府が麻薬密売防止においてより抜本的な対策を講じる場合、ボリビアが間接的に影響を受け、状況が多少変化する可能性はある」との見解を示している。
 ボリビア対外貿易協会(IBCE)の発表によれば、ボリビアの米国との貿易収支は、少なくとも2017年以降は赤字が続いており、2024年(1月から11月まで)の対米輸出額は2億5,070万ドル、対米輸入額は7億6,730万ドルであり、5億1,660万米ドルの赤字となっている。なお、ボリビアが米国に輸出している主な製品は錫、ブラジリアンナッツ、キヌアであり、米国からは主に燃料を輸入している。

(3)ムトゥン製鉄所の開所

 2月24日、国営企業ムトゥン鉄鋼社(ESM)は、サンタクルス県プエルト・スアレス市に位置するムトゥン製鉄所の開所式を行った。同製鉄所は、濃縮、ペレット化、直接還元鉄(DRI)、製鋼、圧延、発電所、補助設備の7つのプラントで構成される。
ア 経済効果
 ムトゥン製鉄所の稼働により、鉄鋼輸入への依存度を低減可能となる。サントス冶金鉱業相は、このプロジェクトにより、年間80万トンの鉄鉱石を処理可能となるほか、直接・間接的な雇用が創出され、鉱業および冶金部門の活性化および地域開発の促進につながる。また、ボリビアの鉄鋼輸入量の50%をカバーすることが可能となるため、年間2億6000万ドルの節約が見込まれ、国内経済の強化および外貨流出の防止につながると説明した。
イ 鉄鋼産業の拡大計画
 ボリビア政府は、この成果に満足することなく、ムトゥン製鉄所での生産能力を2倍に拡大するために新たな工場を建設し、いずれは国内需要の100%をカバー、余剰分を輸出できるようにする計画を立てている。
ウ 各界からの批判・コメント
 同製鉄所の開所式については、工場の一部が未完成であること、環境破壊の可能性やその他地域住民にもたらす被害可能性等についての考慮も十分になされていないことから、アルセ大統領による政治的利用の側面が強いのではないかなど、市民や政治家の懐疑的な見方や批判にさらされている。

(4)牛肉輸出禁止措置

 2月5日、政府は、国内市場での価格上昇(1kgあたり24Bsが45Bs~56Bsまで高騰)を考慮し、国内供給と価格安定を保証するため、一時的な食肉輸出措置を発表。同17日、政府は食肉の市場価格の低下を確認するも、その程度がわずかであったことを受け、市場価格の25%引き下げが確認できるまで、本措置を無期限延長すると発表した。
 なお、本措置に対しては、ドル不足、国内競争力、国際市場の損失などの観点から経済界より多くの批判が出ている。牛肉の輸出禁止によって年間2億2,000万米ドルの損失が見込まれ、外貨獲得の主な手段である生産・輸出部門に影響を与えるほか、物価上昇の問題はドルや燃料不足など構造的な要因に根ざしており、その他の必需品の輸入にも影響を及ぼすものであると指摘されている。

(5)大豆の輸出停止措置

 ボリビアにおける大豆の輸出にあたっては、最高法令3920号によって、国内市場への供給が保証された時点で大豆の国外輸出(前年生産量の60%の輸出)を許可する旨規定されており、それに準拠し国内供給証明書および適正価格証明書の発行がなされている。通常であれば、同証明書は毎年1月10日までに発行されることとなっているが、現在に至るまで未発行(実質上、輸出ができない状況)となっている。
 なお、ボリビア政府としては、現在まで、大豆輸出の停止措置に関する公式声明は発表していない。

(6)インフレ加速への圧力

 ボリビア中央銀行(BCB)の財務諸表によると、2024年の通貨発行量(803億1,000万Bs)は前年(669億7,700万Bs)と比較して20%増加した。公共政策研究センター(Populi)によれば、これは過剰な公共支出による財政赤字を埋める必要性が増加したことによるものである。一部の経済アナリストは、経済成長を伴わない通貨発行量の増加は、通貨のさらなる切り下げとインフレリスクの上昇につながるため、政府は公共支出を削減するなど適切な金融政策をとる必要があると指摘した。