ボリビア内政・外交(2024年9月)

令和6年10月1日

1 内政

(1)MAS党内の内紛

 9月2日、モラレス派は、コチャバンバ県のヴィジャ・トゥナリ(Villa Tunari)で集会を開催。アルセ政権に対して、ドル・燃料不足の解決、インフレへの対処、国民投票実施への反対を訴えるとともに、2023年10月3日及び4日に実施されたモラレス派主導のMAS党大会を承認するよう、選挙管理裁判所(TSE)に要求した。また要求を受け入れない場合の対抗策として、9月17日からデモ行進を実施することを公表した。
 9月16日、ラパス農民労働者連盟「トゥパック・カタリ(Tupac Katari)」はボリビア経済悪化に対して政府が有効な対応をしていないとして、アルセ大統領及びチョケウァンカ副大統領の辞任を求め、ラパス市からチチカカ湖へ向かう国道2号線及びアチャカチ市へ向かう国道16号線の各所で無期限の道路封鎖を開始した。
 9月17日、モラレスMAS党首は、モラレス支持派とともにオルロ県カラコヨ(Caracollo)からラパスを目指して抗議の行進を開始。なお、今回のデモ行進の決起集会には、モラレス派のロドリゲス上院議長も駆けつけたところ、モラレス党首は「この国の第一と第二の男たち(アルセ大統領とチョケワンカ副大統領)が国民を見捨てても、第三の男(ロドリゲス上院議長)は国民と共にあるだろう。」とアルセ大統領とチョケワンカ副大統領の辞任を示唆しつつ、ロドリゲス上院議長への支持を表明した。なお、アルセ大統領は、モラレス派によるデモ行進開始について、「破壊し、脅し、妨害し、憎悪をまき散らすことは、民主主義を信じない者にとっては常に簡単なことだ。」と批判した。
 9月23日、モラレスMAS党首及びモラレス派によるデモ行進はラパスに到着した。なお、モラレスMAS党首は、アルセ政権に対して、24時間以内に燃料問題を解決し、閣僚を交代させ、1億7600万ドルの融資を承認しなければ、また動員をかけると警告した。
 9月24日、プラダ大統領府大臣兼臨時外務大臣は、各国外交団を招集した会合を教育省にて開催。モラレスMAS党首が率いたデモ行進が、アルセ政権に最後通牒を突きつけ、「民主的秩序の継続」を脅かしていると糾弾したほか、ボリビア外務省は右内容についてプレスリリースを発出し、国際社会へアルセ政権への支持を訴えた(なお、モラレス派による抗議運動は、その後、新たな要求をせず、また、示威行為に訴えることなく解散した。)。

(2)森林火災

 9月7日、保健・スポーツ省は、火災による高レベルの環境汚染のため、全国健康警報を発令した。
 9月8日、大統領令第5219号により、アルセ大統領は森林火災が環境、人々の健康、生物多様性、住民活動に影響を及ぼしているとして国家非常事態を宣言した。
 9月30日、大統領令第5235号により、政府は国家火災災害と宣言した。なお、アルセ大統領は、大規模な森林火災に対処するため3億2,500万米ドルの2つの融資を承認するよう立法府に促した(一つはアンデス開発公社(CAF)からの7500万ドル、もうひとつは米州開発銀行(IDB)からの2億5000万ドルの融資である。)

(3)国民投票実施の行方

 9月10日、アルセ大統領が、再び国民投票実施に向けて修正案を選挙管理裁判所(TSE)に提出したことが明らかになった。なお当初、アルセ大統領は12月1日の司法選挙と合わせて国民投票を実施することを望んでいたが、選挙管理裁判所から、質問票の修正を要請され12月1日の実施を断念していた。
 9月13日、選挙管理裁判所は、アルセ大統領が提出した第3の質問(大統領経験者の再選に向けた立候補を認めるか否か)について、質問の性質及び憲法的見地に基づいて、民衆発議もしくは立法府を通じた国民投票を実施することが適切であるとの見解を示した。 

(4)法務・透明性大臣の交代

 9月26日、アルセ大統領は、同日に辞任したイバン・リマ法務・透明性大臣の後任として、セサル・シレス国家弁護担当官を新たな司法・透明性大臣に任命し宣誓式を行った。

(5)2025年大統領選及び総選挙

 9月5日、選挙管理裁判所は、各政党内の人事刷新にかかる期限を12月20日までに延長した。今回の措置で5回目の延長となる。
 9月12日、政治団体であるMovimiento Sin Miedo(MSM)とCambio 25は来年の大統領選および総選挙において連携することを発表した。両政治団体は2025年の総選挙に向けて準備を進めており、両団体の指導者であるラパス元市長フアン・デル・グラナド氏とビセンテ・クエジャールガブリエル・モレ-ノ大学学長の間で連携に向けて同意された。なお、両団体は未だに政党登録を済ませていない。
 9月20日、選挙管理裁判所は、マンフレッド・レジェスコチャバンバ市長が率いる政治グループ「ボリビアのための自治-結集せよ-(Autonomía para Bolivia – Súmate)」に対し、国政政党として認証されるための署名活動を開始することを許可した。同政治グループは、第13番目の国政政党になることを目指す。また、国政政党として認証されるためには、120日以内に10万以上の署名を集める必要がある。なお、主要な野党候補と評価されているレジェス市長は未だに大統領選への立候補について明確な態度を表明していない。
 9月23日、マンフレッド・レジェス コチャバンバ市長は、サンタクルスで開催された大型商業展示会「エクスポ・クルス」及びサンタクルス県の創立記念式典に出席した際、「誰かが、この国の経済問題を解決することが重要だ。私は、ボリビアを豊かな国にし、ボリビア国民を豊かにするつもりだ。ボリビアの天然資源を念頭におけば、ドイツやカタールのように豊かな国になれる。」とメディアに語った。

 

2 外交

(1)国連ハイレベルウィークへの出席

 9月22日から27日にかけて、ソサ外相は、国連ハイレベルウィークに出席し、25日に開催された第79回国連総会において一般討論演説を行った。なお、モラレス派の国内大規模デモによる内政不安によりアルセ大統領の出席は見送れた。
 また、国連ハイレベルウィークにおいて、ソサ外相がこなした用務は以下のとおり。
ア ギリシャとの「政策協議実施のためのメカニズム設立に関する覚書」に署名(9月23日)
イ 未来サミットへの出席(9月23日) 
ウ 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)ロバート・フロイド事務局長との懇談(9月24日)
エ サウジアラビアとの「政策協議実施に向けたメカニズムに関する覚書」に署名(9月24日)
オ 第79回国連総会の枠組みで開催されたG20外相会議への出席(9月25日)
カ 米州ボリバル同盟会議(ALBA-TCP)第24回政治理事会議への出席(9月26日)
キ ラブロフ露外相との会談(9月26日)
ク アンゴラとの「政策協議実施のためのメカニズム設立に関する覚書」に署名(9月27日)

(2)米国との関係

 9月17日、15日に米国のバイデン大統領が「ボリビア、ベネズエラ、その他のラテンアメリカとカリブ海諸国が、過去12ヶ月間、麻薬密売に対する国際協定を遵守していなかった」と述べたことに対して、ハイメ・ママニ社会防衛・規制物質担当次官(内務省)は「我々は、技術的、科学的根拠もなく、国家の主権を侵害し、ボリビアを否定する米国の一方的な覚書を拒否する」と述べるとともに、米国を強く非難した。

(3)メキシコとの関係

 9月12日、メキシコとボリビアは、第9回技術・科学協力合同委員会をボリビア外務省で開催し、多分野における協力にむけて合計8つのプロジェクトに合意した。

(4)欧州連合との関係

 9月20日、アルセ大統領は、大統領府にて、欧州連合(EU)のジャウメ・セグラ新大使の信任状を受け取った。

(5)日本との関係

 9月27日、日本政府は、ボリビアにおける森林火災に対し同国政府からの要請を受け、国際協力機構(JICA)を通じ、緊急援助物資(消火活動用個人防護具、消火用資機材一式等)を供与することを決定した。