ボリビア内政・外交(2024年12月)

令和7年1月1日

1 内政

(1)2025年大統領選に向けた動き

 12月13日、マンフレッド・レイェス・コチャバンバ市長は自身の政党であるスマテ(Súmate)党が正式に全国政党として選挙管理裁判所(TSE)に承認されたことを報告した。なお、共に出馬する副大統領候補には女性候補の擁立を検討しており、ボリビア西部に数名の候補者が存在するとメディアに述べた。
 12月16日、左派革命戦線党(FRI)とホルヘ・キロガ元大統領との間で政治同盟が締結され、FRI党の下、政治グループ「リブレ(LIBRE)党」を形成し大統領選に出馬することを明らかにした。なお、この同盟締結に対し、下院において市民共同体党(CC)の領袖を務めるエンリケ・ウルキディ議員は、「事前の対話もなく突然 」この決定を伝えられ、同党はこの決定を予期していなかったと発言。最高選挙裁判所(TSE)に登録された正式な文書によれば、2025年までCC党とFRI党の有効な同盟関係が確立されていると指摘した上で、「国に対する最低限の責任感をもって、FRI党がそれを遵守することを期待したい」と述べた。
 12月18日、ラパス市にて、カルロス・メサ元大統領(CC党党首)、ホルヘ・キロガ元大統領、実業家のサミュエル・ドリーナ・メディナ氏及びフェルナンド・カマチョ・サンタクルス県知事は、2025年の大統領選・総選挙にて連携することを明らかにした。具体的には、野党統一候補を擁立し、与党MAS党政権からの脱却と自由な経済システムへの移行を目指すことで合意した。連携発表に対し、アルセ大統領は、「この野党同盟は、ボリビアの資源管理を民営化し搾取したいのだ。MAS党こそ唯一の左派政党である」と強調し、MAS党の団結を呼びかけた。また、フランコ・マルコビッチ氏(アニェス政権時の経済・財政担当大臣であり、既に大統領選への立候補を表明している)は、「失敗者たちの集まり」と辛らつなコメントをSNSに投稿している。
 12月28日、ロドリゲス上院議長は、MAS党内外で同議長を支持する動きが広がりつつあるなか、自身の支持基盤であるコチャバンバ県にて演説を実施。同議長自身はコチャバンバ県の支持団体の決定に従うと述べるとともに、コチャバンバ県の代表はモラレス元大統領であると言及。同議長とモラレス元大統領に距離が出来つつあるとの噂を否定するとともに、同議長とアルセ大統領との連携、MTS党からの大統領選出馬などを巡る一連の憶測を一蹴した。
12月30日、レイェス・コチャバンバ市長は、同市長とMAS党政権が近しい関係にあるとする流言に対して、「(同市長自身は)MAS党政権の被害者であり、同政権に今後も組みすることはないだろう」と反論した。

(2)司法選挙

 12月15日、司法選挙が部分的に実施された。同日早朝に投票を済ませたアルセ大統領は、三回目となる今回の司法選挙を実施できたことは、ボリビアの憲法に則り重要な成果であると強調した上で、ボリビア国民に対し投票を呼び掛けた。なお、選挙管理裁判所によると、今回の司法選挙の投票率は82パーセントと過去の司法選挙において最高の投票率を記録した他、有効票は64.29パーセントで前回選挙から約30%増加する結果となった。新任判事の任期は2025年1月2日から開始。
 12月30日、選挙管理裁判所は新たに選出された19名の新判事に対して任命書交付式を実施した。なお、ハッセンテウフル選挙管理裁判所長官は、今回の司法選挙が部分的に実施されたことに伴い、任期が延長されている判事と新判事が入り乱れる状態になることについて不満を露わにしつつ、立法府における対応を求めた。

(3)モラレス元大統領に対する告訴

 12月16日、タリハ県検察庁はモラレス元大統領を人身売買と密輸の罪で正式に告訴したが、同元大統領が証言に出頭しなかった為、逮捕状を発出済みであること、逮捕状は既に10月に出されていたが、モラレス元大統領の所在地への警察の介入が治安上困難であったため、逮捕の執行に至っていないことを明らかにした。なお、ロヘル・マリアカ検事総長は、11月2日にアルゼンチンのパトリシア・ブルリッチ治安大臣が明らかにした、モラレス元大統領による人身売買と未成年に対する性的虐待の告訴に関しても、現在アルゼンチン当局に情報共有を要請しているとメディアに説明した。
 12月23日、カスティージョ内相は、国家警察は検察庁の指示に従い任務を遂行する旨述べたが、警察官の命に関わる任務の実施については、慎重を期さなければならないと述べた。
 12月27日、タリハ県刑事指導、腐敗防止、女性に対する暴力対策第五裁判所は、モラレス元大統領に司法命令をもって、人身売買と密輸の事件の対面審理(公聴会)を1月14日に実施する旨通告するとともに、同審査への出頭を命じた。なお、この通告に対してモラレス派の主要立法府議員は、同元大統領を警護すべく結集を呼び掛けつつ、同元大統領の逮捕を目的とした一連の動きについて、「どのような結末になっても責任を負えない」旨発言し司法当局をけん制した。
 12月30日、マリアカ検事総長は、タリハ県検察庁が出したモラレス元大統領に対する逮捕状は既に国家警察に送付済みであることを明らかにした。また、同県検察庁が1月14日に実施予定の公聴会にモラレス元大統領が何らの事前訴えをせず、出頭しなかった場合、刑事訴訟法に基づいて検察庁の命令不履行にかかる新たな逮捕状を出す必要があると述べた。

 

(4)アルセ政権の支持率低下

 「Latinobarómetro 2024年」報告書によると、アルセ政権に対する支持率は昨年の46%から9%に激減した。なお、この調査は、ラテンアメリカ17カ国の18歳以上の人々を対象に、チリのサンティアゴを拠点とするNGO団体(Corporación Latinobarómetro)が実施したものであり、調査期間を8月23日から10月9日までとし、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、メキシコ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、パナマ、パラグアイ、ドミニカ共和国で実施された。

(5)MAS党の2005年総選挙勝利19周年を祝う集会

 12月18日、アルセ大統領はラパス市のムリージョ広場にてMAS党の2005年総選挙勝利19周年を祝う集会を開催し、2025年の選挙について「右派と左派の闘いになる」旨演説を行い、MAS党他左派勢力の結集を呼びかけた。なお、同日、モラレス元大統領はコチャバンバ県チモレ市にて、自身の支持者と共に同様の集会を開催した。

(6)モラレス派による抗議運動実施の決定

 12月30日、モラレス派は、経済危機を早急に解決することを政府に求めるべく、2025年1月10日からラパス県パタカマヤ市を出発し、ラパス市まで行進することを決定した。
 なお一部報道によれば、モラレス派による今回の決定の背景には、以前の抗議活動を理由に抑留されているモラレス派同胞の開放の他を要求する他、モラレス元大統領の大統領選立候補資格にかかる憲法裁判所の決定を覆したい、という意図があるとされる。


 

2 外交

(1)第65回メルコスール首脳会議への参加

 12月6日、アルセ大統領はウルグアイで開催された第65回メルコスール首脳会議に出席した(ソサ外相同行)。首脳会議において、アルセ大統領は、ラテンアメリカ地域において、政情不安をもたらす国内外の動きがあるとして懸念を抱いていることを明らかにした。なお、合わせて、他のメルコスール加盟国がパナマと締結している経済補完協定(ACE)について、ボリビアも締結に向けて同様の関心を有していると表明した。

(2)ウルグアイとの関係

 12月6日、アルセ大統領はウルグアイ新大統領に就任予定のヤマンドゥ・オルシ氏と会談し、オルシ氏の大統領選勝利を祝福しつつ、「ムヒカ元大統領が築いた偉大な遺産をオルシ氏が引き継いでいくことを確認している」と述べた。
 会談、翌7日、ホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領と非行式の会談を行った。なお、ムヒカ元大統領からボリビア国民に対し、違いを超えた団結が呼びかけられた。

(3)ブラジルとの関係

 12月6日、ウルグアイにて、アルセ大統領はルーラ・伯大統領と首脳会談を行い、対ブラジルアンモニア燃料輸出や太平洋・大西洋に通じる道路建設について協議した。
 12月10日、アルセ大統領とモラレス元大統領は別々に、脳出血の緊急手術を受けたルーラ・伯大統領への連帯を表明するとともに、一日も早い回復を願うとのメッセージを発出した。

(4)ALBA首脳会議への参加

 12月14日、アルセ大統領はベネズエラで開催されたALBA首脳会議に出席し、内政の不安定化を目論む右派の攻撃とハイブリッド戦争による内政への影響について警鐘を鳴らした。

(5)中国との関係

 12月27日、ボリビア文化・脱植民地化・脱家父長化省は中国大使館と共に、ボリビア・中国40周年事業開始を宣言した。なお、同式典には、Wang Liang駐ボリビア中国大使の他、エルメル・カタリーナ・ボリビア外務省事務次官が出席した。

(6)韓国との関係

 12月29日、ボリビア外務省は、韓国で起きたチェジュ航空機事故について、連帯表明のメッセージをSNSに投稿した。

(7)米国との関係

 12月30日、ボリビア外務省は、ジミー・カーター元米大統領の死去を受け、米国政府並びにその国民に対して哀悼の意を表するメッセージをSNSに投稿した。