ボリビア内政・外交(2024年8月)
令和6年9月2日
1 内政
(1)MAS党内における内紛
8月19日、最高選挙裁判所(TSE)は、MAS党モラレス派が発表していた、9月3日コチャバンバ県Villa TunariにおけるMAS党大会の開催を、MAS党の社会組織が広範に参加する余地を残していないとして無効とする旨の判断を下した。(2)司法選挙
8月5日、国会憲法および司法両合同委員会が本会議に提出した全ての最終候補者リストは、スクレで開催された国会本会議で可決された。8月13日、最高選挙裁判所(TSE)は、決議第264号を可決し、12月1日に司法選挙を実施することを通知した。
なお、同司法選挙の候補者は合計139名で、女性67名、男性72名となっている。
・最高裁判所(TSJ):69名(女性34名、男性35名)
・憲法裁判所(TCP):36名(女性16名、男性20名)
・農業環境裁判所:14名(女性7名、男性7名)
・司法評議会:20名(女性10名、男性10名)
(3)2025年大統領選に向けた動向
ア 予備選挙の取り止め8月1日、下院、8月14日、上院は、それぞれ、小選挙区の例外的・一時的制度に関する法案第482/2023-2024号を、3分の2以上の支持を得て可決した。
8月19日、アルセ大統領は、小選挙区の例外的・一時的制度に関する法律第1578号を公布した。これにより、2025年の大統領選プロセスにおいては予備選挙(各党の大統領及び副大統領候補選出のための選挙)は実施されないこととなった。それゆえ、各党は、それぞれ党大会を開催して自党の大統領及び副大統領候補を選出することとなる。
イ 選挙日程
8月21日、最高選挙裁判所(TSE)は、2025年の選挙に向けて政党間連合の形成を希望する政党団体は、来年の2月までに登録しなければならないことを明らかにした。なお、新政権の樹立は2025年の11月8日にまでに終わらせる必要があることから逆算して、総選挙・大統領選の公示は4月19日に、選挙の実施は8月17日になる見込みとなるとしている。
(4)ボリビア独立199周年記念式典におけるアルセ大統領演説(概要)
8月6日、アルセ大統領は、スクレ市において挙行された「ボリビア独立記念日199周年記念式典」において、約一時間に渡り演説したところ、概要は以下のとおり。ア 2020年政権発足時の状況と取組
イ 最新の経済状況
(ア)外的・国際的要因による影響
(イ)国内の社会的対立による影響
(ウ)ボリビア経済最新データ
エ ビジネス界との会合及び社会内閣の招集
(ア)ビジネス界との会合
(イ)社会内閣(gabinete social)の招集
「民主的・文化的革命の臨時社会内閣を招集し、社会団体、労働者団体、農民団体、先住民団体とともに、為替レート、輸出入などを優先的に分析し、経済的な提案を行う。」
オ 即時実施する措置の発表
(ア)デジタル決済プラットフォームとゲートウェイの利用、暗号資産の普及促進
(イ)若手起業家のための雇用・生産計画
カ バイオディーゼル生産増加のための税制優遇プログラム
キ バイオディーゼル部門への投資義務付け、ディーゼル、石油、ガソリン、原油の輸入付加価値税ゼロ、海外への利益還流税率引き下げ
ク 5年間の国内供給計画の提示による輸出の自由化
ケ 新規ハイオク・ガソリンの国内市場への導入
コ 国民投票の実施提案
(ア)炭化水素燃料(ディーゼル及びガソリン)への補助金継続
(イ)国勢調査の結果を見据えた下院議席数の再分配
(ウ)大統領再選規定
(5)3閣僚の交代
8月13日、アルセ大統領は、大統領府において、新たに任命したガジャルド炭化水素・エネルギー大臣、ロドリゲス労働・雇用・社会保障大臣、フローレス農村開発・土地大臣の3閣僚の就任宣誓を行った。(6)2024年国政調査における暫定人口データの発表
8月29日、国立統計庁(INE)は、3月23日に実施した2024年人口・住宅国勢調査にかかる暫定人口データを発表したところ、ボリビア人総人口は1,131万2,620人を記録し、サンタクルス県が最も人口が増え、最も人口が多い県になったことが明らかになった。法律第1492号(通称:国勢調査法)に即して、国立統計庁(INE)が発表した暫定人口データに基づき、行政府は本年9月から地方交付税の新たな配分を実施するほか、最高選挙裁判所(TSE)は次期総選挙の下院130議席の県別配分及び選挙区区割りにかかる法案策定を行うことになる。2 外交
(1)ベネズエラとの関係
8月1日、ボリビア外務省は、7月28日の大統領選で再選したマドゥーロ大統領が公正に選出されたことを強調しつつ、いかなる干渉を非難する旨の声明を発出した。8月13日、アルセ駐OASボリビア常駐代表(大使)は、OAS常設理事会議長宛てに送付したメモにおいて、ボリビアは、最近のベネズエラ・ボリバル共和国の大統領選挙を取り上げるために招集されたいかなるOAS会合にも出席しないと表明するとともに、ベネズエラは5年以上前にOAS加盟国でなくなったことから、OASはもはやベネズエラに関連する問題について声明を発表する権限を持たないことを指摘して、「国際法に則り、過去及びこれからのOAS常設理事会、そしてこの組織全体が、OASメンバーではなくなった国の問題を扱ったり、宣言をしたりする理由は、存在しない。」と発言した。
8月22日、ベネズエラ最高裁が7月末に行われた大統領選挙で現職のマドゥーロ大統領が当選したとの同国選管の判断を認める判決を下したことに対し、アルセ大統領、ソサ外相及びモラレスMAS党首が右判決を支持する旨投稿した。なお、野党指導者は反発のコメントを投稿している。