ボリビア内政・外交(2024年4月)
令和6年5月1日
1 内政
(1)MAS党内における内紛
4月2日、モラレスMAS党首は、MAS党全国指導部(モラレス派)とともに記者会見し、「我々は、最高選挙裁判所(TSE)の決定に即して、党全国大会を今後25日以内に招集することを全会一致で決定した。」と述べた。4月2日、ベルナ(Milan Berna)ボリビア農民労働者単一連盟(CSUTCB)リーダー(アルセ派)は、5月3日から5日までエルアルト市にてMAS党大会を開催するため、最高選挙裁判所事務局(TSE)が送付越した修正見解への回答を記した申請書を再提出したとして、「今般新たに提出された申請書がTSE本会議で審議・認可されエルアルト市で開催される党大会にSIFDE(注:TSEの審査・監査部門)が同行することを期待する。」旨述べた。
4月7日、モラレスMAS党首は、モラレス派が主導するMAS党全国大会を6月10日にコチャバンバ県ビジャ・トゥナリ(Villa Tunari)で開催予定であると明らかにした。
4月10日、最高選挙裁判所(TSE)はモラレス派が提出したMAS党全国大会開催にかかる申請に対し、右見直しを再度要求した。TSEの見解は、(1)今回も一部社会組織との事前のコンセンサスを遵守していない、(2)党大会招集の書面に署名したのは、MAS党全国指導部の14人のメンバーのうち8人のみという点であった。なお、TSEは、2日以内に指摘事項を訂正しなければならないと説明している。
4月17日、最高選挙裁判所(TSE)は、アルセ支持の統一盟約から提出されたMAS党大会(5月3日~5日)への同行・監視申請及びモラレス派のMAS党全国指導部が提出していた党大会(6月10日)への同行・監督申請をそれぞれ却下した。
4月18日、統一盟約が提出していたMAS党大会へのTSEによる同行・監査申請が却下されたことについて、クノ(Gullermina Kuno)ボリビア先住民農民女性全国連盟バルトリーナ・シサ事務局長は、TSEの決定にかかわらず、5月3日から5日までエルアルト市で党大会を開催するとした。
4月22日、TSEがMAS党に対して求めていた党大会開催に向けた招集告示の期限に際し、アルセ派及びモラレス派ともに、TSEが再度修正を求めた点について再度検討と修正を行い、党大会開催に向けて調整をすすめる旨明らかにした。
なお、統一盟約は、エルアルト市にて5月に開催予定の大会にモラレスMAS党首を招待したが、モラレスとその派閥から出席を拒否されたことを明らかにした。また、モラレス派のMAS党全国指導部とモラレスMAS党首は6月10日に予定していたMAS党大会を7月10日に延期することを決定した旨発表した。
4月27日、アルセ大統領は、統一盟約が5月にエルアルト市に招集するMAS党大会を開催することで、各社会団体は政治的手段を回復できる旨述べた。
(2)司法選挙
4月7日、能力審査のプロセスに進む候補者のリストが発表された。国会憲法合同委員会が提供したデータによると、最高司法裁判所(TSJ)及び憲法裁判所(TCP)の候補者は281人。そのうち188人がTSJ、93人がTCPの候補者として残っている。次の能力審査プロセスは4月8日から始まり、4月21日に終了する予定である。同審査は、職務経験、学歴、知的生産性の評価(100点満点)と、筆記試験および口述試験(100点満点)の2段階からなり、司法選挙実施にかかる法律1549号によると、次の選考プロセスに進むためには、候補者は130点以上の得点を得なければならない。4月8日、予備選考プロセスにより不適格とされたチャールズ・メヒア氏が、憲法上の権利が侵害されたとして、国会合同憲法委員会に対して憲法上の不服を申し立てた。ママニ下院司法委員会委員長(MAS党)は、この訴えに対する憲法裁判所の裁定を待つ旨述べた。なお、4月10日、右訴えは取り下げられた。
4月16日、サンタクルス県地方裁判所第三憲法法廷は、審査に失格とされたマルガリータ・メドラノ氏による憲法上の不服請求を受け、予備選考プロセスの停止を命じた。なおミゲル・レハス国会憲法合同委員会委員長(上院議員)は、司法機関からの正式な予備選考一時停止命令が接到するまで審査を継続することを発表した。
4月17日、メサCC党首(元大統領)は、政府と任期を延長された判事たちが結託して、国会における司法選挙実施に向けた取り組みを妨害していると批判した。
4月19日、ママニ下院司法委員会委員長(MAS党)は、4月23日から判事評議会及び農業環境裁判所判事の候補者を対象とした口頭試問を実施すべく、司法合同委員会の作業が再開されると述べた。
4月23日、レハス国会憲法合同委員会委員長は、失格となった申請者が提出した憲法上の不服申し立てが法的に審理され解決されるまでの間、候補者に対する口頭試験の選考プロセスが一時停止されることを明らかにした。なお、憲法合同委員会及び司法合同委員会は司法選挙の予備選考プロセスを麻痺させた裁判官と委員に対して法的措置を取ることを決定した旨も公表している。
4月25日、上院は「司法選挙の実施をいかなる形であれ、中断、麻痺、阻止、遅延、阻害する司法判断を認めない」とする決議を本会議で可決した。
4月30日、パンド県地方裁判所第一憲法法廷は、司法選挙にかかる候補者予備選考プロセスを無効とし、同選挙実施にかかる法律第1549号(司法選挙暫定法)及び予備選考規則の不適用を裁定した。右により、司法選挙実施に向けたプロセスは再び一時中断となった。 なお、同判決の通知後、国会司法合同委員会及び憲法合同委員会は、司法選挙の進捗状況に関する報告書をチョケワンカ国会議長に送付し、司法選挙の行方を定めるために本会議を招集するよう要請した。
(3)2025年大統領選に向けた動向
ア 4月20日、バルガス最高選挙裁判所(TSE)副長官は、全国規模の新政党の登録申請が16件(Nueva Generación Patriótica、Poder Ciudadano Total、Equidad、MOP、Frente Amplio Soberano para Bolivia、Partido del Pueblo Boliviano、Partido del Pueblo para el Pueblo、Comunidad Política、Trabajadores al Poder、La Patria Primero、Patriotas Unidos)があると述べた。同TSE副長官は、全国レベルでは既に11の政党が法的地位を有しており、うち、MAS党、クレエモス党、CC党は一度もTSEから警告を受けていないこと、対照的にPDC党とAND党は2度の警告を、MNR党は1度の警告を受けていることを明らかにした。(3度の警告をTSEから受けると政党資格をはく奪されるおそれがある。)
イ 4月30日、全国規模の政党として、またひとつ政党が加わった。政治経験のない2人の市民が党首を務める新愛国主義世代党(Partido Nueva Generación Paratiótica )が承認された。これにより、法的地位を有する政党の総数は12となった。
(4)カマチョ・サンタクルス県知事の裁判関連等
4月4日、クレエモス(Creemos)は、現在チョンチョコロに収監されているカマチョ・サンタクルス県知事が、2025年総選挙においてMAS党に対抗できる「唯一且つ重大な候補」であるとする旨のコミュニケを発出するとともに、MAS党政府がデクレタソ事件の口頭審理にカマチョ元知事を移送することを妨害していると批判した。4月6日、カスティージョ内相は、ラパスにてクーデタI事案の裁判が始まることを理由に、カマチョをデクレタソ事件の裁判のためにサンタクルスに移送することを拒否した。
4月10日、アギレラ内務省内務次官は、カマチョをサンタクルスに移送し、デクレタソ事件の口頭審理を開始する可能性を再び否定し、カマチョがサンタクルスに到着すれば騒乱が起こるという理由で、カマチョ被告をサンタクルスに連れて行くことはできないと説明し、裁判官をラパスに移送するか、オンライン審理を行うよう求めた。
4月11日、デクレタソ事件に関する口頭審理にカマチョ被告が出廷しなかったことで、同審理は5月27日まで延期された。
2 外交
(1)エクアドルとの関係
4月6日、昨5日にエクアドル当局が在エクアドル・メキシコ大使館に侵入した事案に関して、ボリビア外務省声明を発出し、1961年の外交関係に関するウィーン条約の明白かつ重大な違反であるとし、エクアドル当局を最も強い言葉で非難した。4月7日、アルセ大統領はロペス・オブラドール墨大統領と緊急の電話会談を行い、在エクアドル墨大使館で起きた事件への連帯を表明するとともに、明8日までに駐エクアドル・ボリビア大使を召還したことを伝えた。加えて、詳細についての情報提供を求めるべく、ボリビア外務省からも駐ボリビア・エクアドル大使を招致した。
4月16日、アルセ大統領は、エクアドル当局が在エクアドル・メキシコ大使館に侵入した事案に関するラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)首脳級緊急バーチャル会合に参加・演説し、ロペス・オブラドール墨大統領への支持を改めて表明した。
(2)ロシアとの関係
4月26日から27日にかけて、ソサ外相がロシアを訪問しラブロフ外相との会談やロシア外務省外交アカデミーを訪問した。ア 外相会談(4月26日)
ラブロフ露外相と会談したソサ外相は、ラブロフ外相からボリビアのBRICS加盟に関する支持と、6月5日から8日にかけて行われるサンクトペテルブルク国際経済フォーラムにアルセ大統領が招待されたことを明らかにした。
イ ロシア外務省外交アカデミー訪問(4月27日)
ソサ外相はロシア外務省外交アカデミーを訪問し、同アカデミーの学生や教授を前に、ボリビアの外交政策について講義を行った他、アレクサンドル・ヤコヴェンコ学長と会談し、両外交アカデミーの協力覚書に署名した。
(3)中国との関係
4月28日から30日にかけて、ソサ外相は中国を訪問し、王毅外相との外相会談、外交アカデミーを訪問した。ア ボリビア・中国外相会談
王毅外相は、2025年が中国・ボリビア外交関係樹立40周年にあたることを念頭に、中国はボリビアと協力して「両国の戦略的パートナーシップを新たな段階に促進する」意思があることを明らかにした。
ソサ外相は、「ボリビアと中国は遠く離れているが、常に兄弟のように親しい関係にある。ボリビアの経済・社会発展に対する中国の長期にわたる貴重な支援に感謝する。ボリビア人は中国を重要な戦略的パートナーとみなしている。」と述べつつ、「ボリビアが経済・商業分野における中国との協力の深化を望んでおり、中国企業がボリビアに投資し、同国の工業化プロセスを支援することを歓迎する」と述べるとともに、ボリビアが「中国とラテンアメリカの関係の発展を積極的に促進する」ことを望んでいると述べつつ、ボリビアが「一つの中国」の原則や、北京が提案する世界的なイニシアティブを強く支持していると強調した。
イ 中華人民共和国外交アカデミー訪問
ソサ外相は、中華人民共和国外交アカデミーを訪問し、ボリビア外務省外交アカデミーと中華人民共和国外交アカデミーとの間で教育訓練分野における協力覚書に署名した。
(4)イスラエル・パレスチナ情勢
4月18日、ソサ外相は、国連にて、パレスチナ人の自決と主権行使の正当な権利に関するボリビアの歴史的立場を改めて表明し、パレスチナ人の国連正式加盟を支持した。4月19日、パレスチナの国連正式加盟国承認決議について、米国が安全保障理事会で拒否権を発動したことについて、遺憾である旨の外務省声明を発出した。
3 日本との関係
4月12日、在ボリビア日本大使館とボリビア外務省は、「日本・ボリビア外交関係樹立110周年記念」記念式典をボリビア外務省にて共同開催し、上川外務大臣のビデオメッセージが放映され両国の友好関係を祝福した。なお、同式典には、小野村大使、ソサ外相、ボリビア外務省幹部の他、各国外交団代表も出席した。