ボリビア内政・外交(2024年3月)
令和6年4月1日
1 内政
(1)MAS党内における内紛
3月4日、ゴメス(Vidal Gomez)東部入植農民連合リーダー(アルセ派)は、「MAS党全国大会」を、5月3~5日にエルアルト市にて開催予定である旨明らかにした。同決定は、アルセ支持の統一盟約(Pacto de Unidad)幹部及び9県の他の社会組織の代表によって合意された。
3月28日、最高選挙裁判所(TSE)は、アルセ派のMAS党員が請願した5月の党大会への同行・監視要請について、要件を満たしていないとして拒否し、2日以内に要件を満たすよう勧告した。なお、未履行とされた要件の一つは、今回の党大会を開催する中心メンバー達が、2017年にTSEによって認められたMAS党全国指導部幹部として登録されていないことである(当館注:政党法により、党全国大会は党全国指導部が主催することが義務付けられている。)。
併せ、TSEはMAS党指導部(モラレス派)に対し、25日以内に党全国大会を開催し、党内人事を刷新するよう勧告を発出した。
(2)司法選挙
3月10日、国会は、司法選挙への立候補受付を終了し、合計715名が候補者として登録された。翌3月11日、国会は各候補者が募集要件を満たしているか否かの審査プロセスに入った。(3)5人の閣僚交代
3月5日、アルセ大統領は、農村開発・土地相、環境・水資源相、鉱業冶金相、教育相及び文化・脱植民地化・脱家父長化相を交代させ、それぞれ新大臣を任命して宣誓式を挙行した。ア コンドリ(Santos Condori Nina)農村開発・土地相
2022年までラパス県ラハ市議会議長。チョケワンカ副大統領に近く、トゥパック・カタリ農民連盟に関係がある。
イ リスペルゲール(Humberto Alan Lisperguer Rosales)環境・水資源相
生物学士。2012年コチャバンバ市環境保護局長、かつて環境・水資源省水資源局長、2017年コチャバンバ県(モラレスに近いカネラス知事時)水資源・環境部長、2020年コチャバンバ県(ゴンサレス知事時)母なる大地の権利局長等を務めた。
ウ サントス(Alejandro Santos Laura)鉱業冶金相
ラパス県カラコレス鉱山共同組合長、2013年(モラレス政権時)から全国ボリビア鉱業協同組合連合会(FENCOMIN)会長を務めた。
エ ベリス(Omar Veliz Ramos)教育相
教員。ポトシ県議会議員であったが、2019年10月~11月、ポトシ県知事代行を一時的に務めた。
オ ゲバラ(Esperanza Guevara)文化・脱植民地・脱家父長化相
下院議員(2010年~2015年)、チュキサカ県庁機会平等部長(2016年~2019年)、チュキサカ県女性農民組合連合(バルトリーナ・シサ)の幹部(2021年~2023年)を務めた。
(4)米州人権委員会(IACHR)によるボリビアの人権状況報告書の提出
3月14日、米州人権委員会(IACHR)はボリビアの人権状況を分析した報告書を発表した。IACHRが指摘した懸案事項の中には、先住民の農民管轄権を含む先住民族の自己決定権及びアフリカ系ボリビア人の権利を保障するための効果的な措置導入の必要性、さらに、暴力のない生活を送る女性の権利や、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランス、ノンバイナリー、性的多様性、インターセックスの人々の権利の完全な行使を保障する上での課題も指摘されている。また、採掘活動から派生する環境への影響に対する国家の配慮の必要性及び水、健康、労働、教育などへのアクセスの保証の必要性も指摘されている。(5)アルセ大統領の支持率低下
3月14日、Diagnosisの実施した最新の世論調査によると1月から3月にかけてアルセ大統領は自身の支持率を4ポイント落とし、38パーセントに低下した。Diagnosisによると、支持率低下の原因は、ボリビア国内の内政不安、ドル及び燃料不足に起因している。(6)カマチョ・サンタクルス県知事の裁判関連等
3月8日、カマチョ県知事に対して、36日間にわたるストライキ(2022年10月から11月にかけて、国政調査実施を求めておこなったもの)にかかる予防拘禁が120日間更に延長された。3月11日、国家刑罰監督局(la Dirección Nacional de Régimen Penitenciario)はデクレタソ事件にかかる公判開始のためのカマチョ知事の移送をしないことを決定したため、サンタクルス県第8裁判所は、デクレタソ事件にかかるカマチョ県知事への公判について、同被告人が欠席したことを理由に公判開始を4月11日まで延期することを決定した。2022年3月9日に発令された省令373号に基づき、現在知事代理を務めるマリオ・アギレラ副知事ではなく、秘書官に代理権限を委任したことについて審議される予定であった。
(7)アニェス元暫定大統領の予防拘禁から3年
3月13日、アニェス元暫定大統領の予防拘禁から丁度3年が経った。アニェス氏の支持者は彼女の即時解放を求めるコメントをSNSに投稿した。ボリビア野党要人のコメントは以下のとおり。ア メサ市民共同体(CC)党首・元大統領
「MAS政府の政治犯として3年間服役しているジェニン・アニェス元憲法大統領の違法な投獄は、MASによる司法の支配をあからさまに示すものであり、人権に対する明白な侵害である。」
イ キロガ元大統領
「彼女は、憲法に違反し、詐欺を働き、国民を見捨て、アニェスを犯罪者にすることで自身の面目を立てようとする、臆病者エボの人質なのだ。公正な裁判もされず、3年間も拘束されているアニェス氏の正義と自由のために叫ぼう。」
ウ ドリア・メディーナUN党首
「アニェス氏に対する10年の刑期求刑は真の法の支配とは相容れない。彼女は、この国を変えることが急務であることのもうひとつの象徴である」
(8)国勢調査の実施
3月23日、国家統計局(INE)はボリビア全国の人口動態等を調査するための国勢調査を実施した。なお、INEは暫定結果を8月中にも発表するとしている(右人口統計を受けて、2025年下院議員選挙の県別割当数(130人を人口比率配分)及び下院選挙区割りが決まる。)。
(9)2025年大統領選に向けた動向
3月11日、レイェス・コチャバンバ市長は2025年の大統領選挙への立候補について話すのは「時期尚早」であるとメディアに明かし、コチャバンバ市政が最優先事項である旨述べた。2 外交
(1)第8回ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会合への出席
3月1日、アルセ大統領は、セントビンセント及びグレナディーン諸島において開催された第8回ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会合に出席した。アルセ大統領は、新たな世界秩序として多極化世界を確立するには、中南米及びカリブ諸国がイニシアティブをとっていくことが重要であると述べた。またイスラエル・パレスチナ情勢について言及し、国連や国際社会が無力であるが故に、イスラエル軍はガザの内外で、都市中心部、難民キャンプ、病院、大学、学校、モスク、救急車、人道支援部隊に対して無差別爆撃を続けていると強く非難し、即時停戦を呼びかけた。
(2)イスラエル・パレスチナ情勢関連
ア 3月1日、外務省は、ガザ地区の市民に対するイスラエル軍の攻撃を強く非難し、人道援助を阻止する行為を遺憾とし、パレスチナ市民に対する攻撃を阻止すべく、国連及び安全保障理事会の即時行為を起こすことを呼びかけるとともに、パレスチナ人への連帯を表明する声明を発表した。イ 3月30日、外務省は、「パレスチナの土地の日」の48周年を記念して、当国ベネズエラ大使館において記念式典を開催した。
外務省の声明によると、ソサ外相は「イスラエルのすべての行為は、人道に対する犯罪に分類され、我々はこれを強く拒否する。我々は平和主義の国であり、憲法に定められているように、平和の文化に由来し、生命を尊重し、世界のすべての民族が平和のうちに生きる権利を有する。」と述べるとともに、パレスチナの人々が正義、自由、自決を求めて直面している継続的な課題を強調し、パレスチナの大義に対するボリビアのコミットメントを繰り返し、「我々は、アルセ大統領と同様、パレスチナの人々のための解決策は、パレスチナの人々が自決権を行使し、1967年以前の国境を持ち、東エルサレムを首都とする、自由で独立した主権国家を建設することでなければならないと考えている。」と述べた。
(3)ロシアとの関係
3月22日、モスクワ近郊のコンサートホールにて発生した無差別銃乱射テロに対し、アルセ大統領および外務省は、実行犯を強く批判すると共に、ロシアとの連帯、被害者を見舞うコメントを発出した。(4)チリとの関係(「海の日」記念式典の実施)
3月22日、アルセ大統領は、「海の日」記念式典において6項目(ボリビアの内陸国としての地位に関する交渉、シカ・シカ-アリカ石油パイプライン、キケ港に対する貿易許可、ボリビアの自由な海上輸送条件の改善、共有水資源の保全と持続可能な管理、ラテンアメリカ統合に向けた地政学的貢献)にわたるスピーチを行い、ボリビア・チリ二国間アジェンダを提案した。(本来は3月23日が「海の日」に当たるが、本年23日は国勢調査実施日と重なったため、式典の実施が一日前倒しとなった。)
3 日本との関係
3月14日、外務省と在ボリビア日本大使館は、外務省にて、ソサ外相及び小野村大使他関係者が出席して、「日本・ボリビア外交関係樹立110周年及び日本人のボリビア移住125周年」記念ロゴマークを共同発表した。