ボリビア内政・外交(2023年12月)

令和6年1月1日

1 内政

(1)モラレスMAS党首の2025年大統領選出馬の可能性

 12月28日、憲法裁判所(TCP)第4特別法廷は、無限再選について人権として認められない旨間接的に指摘する旨の判決を下した。同判決によれば、連続二期の1回、または非連続的に2回しか大統領になることはできないと解釈される。そのため、2025年大統領選への出馬を目論むモラレス元大統領・MAS党首及びその支持者が強く反発した。
 なお、本判決の主題はあくまで司法選挙実施にかかる諸規則に関する訴えに対する判決文であり、大統領選の再選規定について審理したものでないこと、モラレスを名指ししていない点及び再選を人権としたTCP判決第084/2017を覆したわけでもない点に留意する必要がある。

(2)司法選挙をめぐる動向

 12月12日、本2023年中に実施されるべきであった司法選挙について、憲法裁判所(TCP)が、上院で可決され下院に送付されていた司法選挙実施規定を定めた法案について違憲と判断し、新たに司法選挙が実施されるまで、現職の判事の任期は延長されなければならないとする判断(TCP049/2023)を下した。
 しかし、憲法は憲法裁判所(TCP)に対して判事の任期を延長させる権限を付与していないこと、また、憲法183条において判事の任期は6年であり再任は認められないと明示していることもあり、国会議員、法曹、歴代の大統領(メサ及びモラレス元大統領含む)等から、TCPによる民主主義への攻撃としてTCPに対する非難が集まっており、TCP判事を弾劾裁判に処すべきとの動きも国会内外で見られる。
 なお、同TCP判断を受けて、チョケワンカ副大統領兼国会議長は、上下両院議長及び主要3党議員団長を再度招集し、速やかに司法選挙を実施すべく、国会にて実施期間を短縮した法律を新たに成立させることで各党間の合意を得た。
 12月14日、アルセ大統領は、記者会見において、司法選挙の失敗(司法選挙を実施できないこと)の責任が政府にあることを否定し、司法選挙実施に至らなかったのは、国会の問題であると述べた。
 

(3)米州人権委員会(IACHR)ミッションのボリビア訪問

 12月12日から14日、IACHRミッションは独立専門家学際グループ(GIEI)勧告の実施に関するフォローアップ特別テーブル(MESEG)の最初の報告書を提出する目的でボリビアを訪問した。
 12月13日、国別報告者であるカバジェロ(Jose Luis Caballero)委員(IACHRミッション団長)は、外務省における報告書の発表会にて、「本報告書は、2019年の重大な人権侵害に対する責任の所在を決定する上で、ほとんど進展がないと報告する調査が多いことに特別な懸念を示している」と述べた。
 また、カバジェロ委員は、記者団との懇談の中で、2021年にGIEIが行った36の勧告のうち、現在までに4つ((1)GIEI勧告実施のためのフォローアップ委員会の設立、(2)人権侵害の被害者に対する賠償計画の提示、(3)人種差別とジェンダーの視点に関するフォーラムの開催及び(4)重大な人権侵害に対する時効または恩赦に関する規範の廃止に向けた進展)が履行されたていることを明らかにした。

(4)メルコスール加盟に向けた国内批准手続き開始

 12月13日、ボリビアの南米共同市場(メルコスール)加盟議定書の批准にかかる法案が行政府から国会に提出された。
 ソサ外相は「今回のメルコスール加盟関連法案の国会への提出は、ボリビアのメルコスールへの正式加盟に向けた第一歩であり、国会にて可決され、国会が承認する法規範に変換されなければならない。」旨述べるとともに、メルコスール加盟を通じて、ボリビアの官民の企業が生産性を向上させ、将来的には地域貿易や世界貿易においてより優れた競争力を獲得するための条件が整うとして、「アルセ大統領のリーダーシップの下、政府が進めている産業化プロセスを推進し、ボリビア国民に利益をもたらす。」として、ボリビアが南米大陸において戦略的に重要な地理的位置にあり、地域統合メカニズムの調整役として行動できることを改めて強調し、「新しい世界秩序が構築されるとき、我々は歴史的な役割を果たす機会を有する。メルコスール加盟はアルセ大統領と現政府の重要な功績になる。」と述べた。

(5)新たな外務次官及び領事・官房担当次官の任命

 12月20日、ソサ外相は、カタリーナ・ママニ(Esteban Elmer Catarina Mamani)を外務次官(筆頭)、ペレス・カルデナス(Fernando Raul Perez Cardenas)を領事・官房担当次官にそれぞれ任命した。

(6)カマチョ・サンタクルス県知事の裁判関連等

ア クーデタI事案
 12月12日、ラパス県裁判所第一反腐敗法廷は、クーデタI容疑にかかるカマチョの予防拘禁を12月29日まで17日間延長する旨発表した。
12月26日、メヒジョネス(Omar Mejillones)ラパス県検察検察官は、クーデタI事案にかかる容疑について、カマチョ知事をアニェス他7名の容疑者とともに起訴し、テロ行為を理由として、カマチョらには最長20年の禁固を求刑することを決定した旨発表した。
イ 消防車の不適切な購入事案
 12月8日、サンタクルス県検察庁は、カマチョの消防車不適切購入事案について正式に訴追することを決定し、マリアカ(Roger Mariaca)同検察検察官は、「司法手続きに則り審理され、裁判所が罪状を決定するだろう」と述べた。
ウ デクレタソ事案(2022年3月、県政令373号(知事の職務権限を副知事ではなく不適切な別の者(ナバロ(Miguel Angel Navarro)県官房長官に委任)を県報に掲載したことによる、義務の怠慢、憲法・法律違反、違法な任命の容疑)
 12月11日、司法当局は、デクレタソ事案にかかる容疑について、予防拘禁をさらに60日間延長することを決定した。
 12月28日、サンタクルス県地方裁判所第八刑事法廷は、デクレタソ事案にかかる容疑について、カマチョを釈放(予防拘禁措置の解除)すると決定した。
 ただし、依然として他の訴追事案((1)クーデタI、(2)消防車、(3)国勢調査を巡るサンタクルス県36日間ストライキ、(4)ロマス・デ・アレナ公園の水源、(5)武器不正売買)を抱えている(うち、(1)及び(2)の事案は、デクレタソ事案と同様に、既に起訴されている)こともあり、本決定によってカマチョがチョンチョコロ刑務所から出所することを意味しない。
エ カマチョの逮捕・拘禁から1周年
 12月28日、カマチョの逮捕・拘留から1年が経過し、カマチョ家族の呼びかけに応えて、釈放を求めるデモ行進及び集会がサンタクルス市内で大規模に行われ、マトコビッチ(Zvonko Matkovic)サンタクルス県議会議長らCreemos所属議員、県庁幹部、サンタクルス市民委員会、ガブリエル・レネ・モレノ自治大学(UAGRM)等も参加した。

 

2 外交

(1)COP28へのボリビアの参加

 11月30日から12月13日の間で開催されたアラブ首長国連邦・ドバイにて国連気候変動枠組条約第28回締約国会合(COP28)の首脳級会合「世界気候行動サミット」(12月1日及び2日)に出席したチョケワンカ副大統領は、「北の悪しき発展が地球の不均衡を引き起こした」とし、「先住民は、新植民地主義、資本主義、帝国主義、家父長制の西側文明によって引き起こされた複数の危機から母なる地球を救う希望である。」と演説した。

(2)2024年国際ラクダ科年立ち上げへの参加

 12月4日、国連食糧農業機関(FAO)は、2024年の国際ラクダ科年を正式に発足させた。
 当該イベントは第174回FAO理事会の枠組みの中で行われ、参加したチョケワンカ副大統領は、ボリビアが何度もラクダ科動物の生息地の脆弱性を修復する必要性を警告してきたことを想起して、「ラクダ科動物は揺るぎないエネルギーを持ち、4,500万年もの間、文明の建設に主導的な役割を果たしてきた。今日、我々は国際ラクダ科年を迎えるにあたり、4500万年以上前の遺伝的記憶を持つ生命の姿を世界に知らしめるとともに、我々民族の日常生活に対するラクダ科動物の貢献を広める役割を担っている。ラクダ科動物の生息地が脅かされ、放牧地の水不足や繊維の価格変動に直面している状況の中、国際社会と世界の人々に対し、人工知能がもたらす脅威もあり、生命文化の柱を促進するための地球集会を開催し、この被害を修復するよう呼びかける。」旨述べた。

(3)アルゼンチンとの関係

 12月10日、ソサ外相がミレイ新アルゼンチン大統領の就任式へ参列した。アルセ大統領が欠席したことが野党から非難された。

(4)パレスチナとの関係

 12月23日、ノビージョ国防相は、アミール・アブドラヒアン・イラン外相の招待を受け、パレスチナに関するハイレベル国際協議会合に参加する公式代表団の一員として、イラン・イスラム共和国を訪問し、ボリビア代表として会合に出席し、「ボリビアはパレスチナの人々との連帯を表明する。民間人、ジャーナリスト、人道支援従事者、病院のインフラ、モスクへの意図的な攻撃、人道支援物資の進入に対する犯罪的な封鎖など、国際人道法の重大な違反を強く非難する。」旨述べるとともに、アルセ大統領の声明にも言及し、「我々は、パレスチナの人々、特に平和に暮らす権利を持つ子供たちの苦しみを黙認し続けることはできない。我々は、ガザ地区で行われている戦争犯罪を拒否し、国連がこの侵略を停止し、パレスチナ人の自決権が尊重されることを要求する。」旨述べた。
 

(5)プーチン露大統領によるアルセ大統領宛て新年の祝辞

 12月31日、プーチン・ロシア大統領は、ボリビア、ブラジル、ベネズエラ、キューバ、ニカラグアの拡大頭領に対して、新年の祝辞を送った模様で、アルセ大統領に対しては、ロシアとボリビアの関係が友好的であることを強調し、今後も友好関係が実りあるものになると自信を示した。