ボリビア内政・外交(2023年8月)

令和5年9月1日

1 内政

(1)司法選挙

 8月1日、レオナルド・アヤラ下院議員(クレエモス党所属)が4月27日に起こした違憲訴訟に対して、憲法裁判所(TCP)は、上院によって可決された司法選挙実施にかかる法案は違憲と判断した。この判決に対し、ロドリゲス上院議長は、MAS党、CC党、クレエモス党の主要3政党が司法選挙実施に向けて協力することの重要性を強調しつつ、両院議長、3政党の幹部、憲法合同委員会のメンバーとの会合を行うことを明らかにした。
 8月7日、チョケワンカ副大統領は、副大統領府にロドリゲス上院議長、メルカド下院議長、そして主要3政党の幹部を召還し、司法選挙実施に向けたコンセンサスを求めた。その結果、司法選挙実施に向けた法案を作成する特別委員会を主要3政党で編成することで合意した。
 最高選挙裁判所(TSE)は、9月4日までに司法ポストの候補者リストを送付するよう要請した。

(2)カマチョ・サンタクルス県知事に対する裁判動向

 8月3日、米州人権委員会(IACHR)は、カマチョ・サンタクルス県知事に対する予防措置を認めず、クレエモス党議員から提出された要請を棄却したことを明らかにした。2022年12月に、クレエモス党の一部議員が「ラパスのチョンチョコロ刑務所に予防拘禁されているカマチョ県知事の生命、安全、完全性に対する権利を保護するために、IACHRの手続規則第25条の規定に従い、必要な予防措置が採られるべきである」と請願書を提出していた経緯がある。 

(3)ボリビア独立198周年記念式典におけるアルセ大統領演説

 8月6日、スクレ市自由の家(Casa de Libertad)において、ボリビア独立198周年記念式典が挙行され、アルセ大統領が演説したところ、概要は次のとおり。
ア 民主主義の回復
 2020年、ボリビア国民の団結、闘争、道義心により、民主主義を回復し、将来への不透明性を乗り越えた。この闘争により、安定への道筋が開けただけでなく、希望の火をも灯した。
イ 天然資源に対する主権
 今日再び、ボリビアは、我々の豊富な天然資源を狙う外国の野心によって脅威にさらされている。我々ボリビア国民同士が分裂し、衝突し合っていては、再び容易に餌食とされるであろう。
 世界最大規模の埋蔵量を誇るリチウムや鉱物、レアメタルといった天然資源の所有者はボリビア国民であるが、今日益々、西洋がその覇権を維持するために喉から手が出るほど欲しているのである。過去、銀、ゴム、錫といった資源採掘の際に起こったように、我々が達しようとしている尊厳を持って生きられる貧困のない社会の実現を妨げようとしている。
ウ 経済実績
 独立200年を前にして、消費、輸入国から生産、産業国へと質的に大きな飛躍を遂げようとしている。ボリビアは、輸入代替工業化へ確かな歩を進めている。
 燃料等を差し引いた、総輸入に占める、一次資源、中間財の輸入は、2020年5月の75%から、2023年同時期の71.2%へと低減した。
 非耐久消費財の輸入量は、2020年5月の13.5%から2023年5月には12.9%に減少、特に食糧品は、6.8%から5.4%に減少した。
 2021年から2022年の平均経済成長率は4.8%で、2019年の2.2%を大きく上回った。
 2022年の名目GDPは443億1500万米ドルで、2019年の411億9300万米ドルを大きく上回った。一人あたりGDPは、2019年の3578米ドルから2022年には3691米ドルへと増加した。
 2021年から2022年にかけての貿易収支は、10億4400万米ドルの黒字で、2015年から2019年にかけて記録した平均10億ドルの赤字を逆転している。
 2022年の失業率は4.3%で、2019年の4.8%から改善した。
 2023年におけるインフレ率は0.8%で、南米で最も低く、世界で4番目に低い値で抑えられている。
エ 産業化政策
 農産物、天然ガス、鉛、錫、金、銀、尿素といった製品の輸出が10~15%伸びた。
 ボリビアリチウム公社(YLB)は、本年1月、リチウムの採掘、産業化、商業化のため、ロシアと中国の大企業と提携を結んだ。天然資源に対する我が国の主権及び国民の所有物であるという点を尊重している。
 ディーゼルとガソリン輸入を代替するために、サンタクルス市とエルアルト市にバイオディーゼルの工場を建設中である。設計最終段階にあるHVO工場の生産と合わせると、国内消費の70%をカバーすることができる。
 輸入代替化政策の推進により、2025年に向けて、ボリビアは年間約30億ドルの輸入を削減することができる。
オ その他の課題
 汚職は、我々の主義や価値観と相容れない。そのため、汚職撲滅は社会が一致して取り組まなければならない課題である。
 我々の社会、ひいては米州大陸全体に共通する問題が、麻薬の密輸問題である。一国家だけで対応できる問題ではなく、国境を越えて対処しなければならない。麻薬密輸撲滅に当たっては、主権を尊重しつつも、問題の地域化に向けて進まなければならない。
 司法改革も大きな課題の一つである。見かけだけでなく、問題の根本から変革しなければならない。この課題は、すべての関係者の政治的意思なしには対処し得ない。これまでにも増してその必要性が叫ばれている。
カ 国際関係
 ボリビアが世界的に得た地位によってBRICSは一帯一路といった構想への参加を要請されているという事実は偶然ではない。多極化世界に向けた不可逆的な風を受け、経済、貿易統合の新たなイニシアティブの影響が日増しに強まっていることは否定できない事実である。BRICSのような貿易圏の興隆は、国家の尊厳をかけることなく、国家が国際市場にアクセスすることを可能にしている。我々が求めているのは、従属的な統合ではなく、解放のための統合である。

 

2 外交

(1)ロシアとの関係

 8月9日、ボリビアとロシアは外交関係樹立125周年を迎え、マイタ外相とラブロフ露外相はメッセージを交換し、両国間関係の強化を訴えた。

(2)パラグアイとの関係

 8月15日、アルセ大統領はパラグアイにて行われた、ペーニャ新大統領の就任式に参加した。

(3)イランとの関係

 8月14日、バフラム・シャハベッディーン(Bahram Shahabeddin)氏が新たな在ボリビア・イラン大使として着任した。同氏は、テヘランのアザド中央大学で国際関係学の修士号を取得し、ポーランド、スペインで勤務した経験の他、在ベネズエラ大使としてのキャリアを持つ。

(4)グアテマラとの関係

 8月14日、カルロス・ホセ・エスコベド・メンデス(Carlos José Escobedo Méndez)氏が新たな在ボリビア・グアテマラ大使として着任した。同氏は政治学者で、社会・政治科学の博士号を持つ。2010年には、在ベルギー・グアテマラ大使館参事官を担当した。

(5)BRICS第15回首脳会合へのアルセ大統領の参加

 8月22日から24日にかけて南アフリカのヨハネスブルクにて開催されたBRICS第15回首脳会合に招待され出席したアルセ大統領は、演説の中で、ボリビア政府が推進する社会的、地域的、生産的な経済モデルを強調した。また、ボリビアがBRICSに加盟する意向も表明するとともに、「ボリビアは独自の経済モデルを持っている」と大統領は述べ、これによって黒字の再分配、「貧困の削減」、経済の多様化、輸入代替による資源の工業化が可能になったと説明した。また、ボリビア政府が推進している食料品や工業製品の生産と輸出についても演説の中で言及している。