2024年9月 ボリビア経済情勢

令和6年10月1日

1 経済指標など

      当月  前月(最終更新値)  累計  前年同月 (23年9月) 前年累計 
(1)   インフレ率  0.88% 1.58% 5.53% ▲0.06% 1.49%
(2)   都市部失業率  - 3.84%
(2024年4月)
- 3.29% -
(3)  外貨準備高  19億500万
(2024年8月)
- - -
(4)  対外債務  134億300万
(2024年5月)
- 134億900万 -
(5)  対内債務  199億7,300万
(2023年11月)
- 186億7,600万 -
(6)  天然ガス輸出額  1億3,800万
(2024年8月)
- 1億5,200万 15億6,400万
(7)  鉱物資源全体の輸出額  2億8,000万
(2024年8月)
- 2億3,400万 -
(8)  燃料輸入額  1億9,800万
(2024年8月)
- 3億3,700万 21億8,500万
(9)  貿易収支  5,100万
(2024年8月)
- ▲1億1,900万 ▲6,400万
(10)  金輸出額  3,900万
(2024年8月)
- 1億8,100万 20億1,300万
             
    ※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計          
  ※前年累計:前年1月~前年の当月の累計

注:上記情報は2024年9月時点データ


 

2 経済関連動向等

(1)政府による輸入コスト削減策

 経済省は、8月に政府と民間企業との間で交わされた17の合意に基づき、今年12月31日まで医薬品、農薬、農業機械、トウモロコシ、小麦など、少なくとも6品目の輸入に対するゼロ関税を導入した。この対外貿易の自由化は、国内のインフレ圧力を抑制し、市場で供給不足を引き起こさないことを目的としている。近頃、市場では、大規模に消費される輸入製品の値上がりがメディアでも注目されている。
 

(2)暗号通貨の利用

 ボリビア中央銀行(BCB)は、過去2ヶ月の間に、少なくとも国内の金融システムに属する6つ機関が仮想資産・暗号資産による取引を開始したと発表した。BCBによれば、暗号通貨は輸入品やサービスの購入、価値の蓄積、国内市場取引としての利用が増加しており、7月時点における取引件数は昨年比で40%増となっている。BCBは、ボリビア政府としても、暗号通貨を決済手段として受け入れる取引先が出てくる可能性を踏まえ、利用を評価中であると述べている。
 なお、ボリビアには25万以上の暗号資産口座があると推定されており、クレディコープが作成した最新の金融包摂指数(FII)によると、地域別ランキングでメキシコを抜いて8位から7位に上昇し、本分野における大きな進歩を示している。これは、ボリビアにおけるデジタルウォレットの利用増加に特に反映されており、このサービスの利用者の割合は、2023年の20%から2024年には45%に増加した。
 

(3)アルセ大統領による経済危機打開策

 アルセ大統領は、現在の経済状況を「一時的な外貨不足」と定義しており、天然ガス輸出の減少を補うための新たな投資が開始されれば緩和されるだろうと述べている。また、YPFBによる埋蔵量補充に向けたガス部門への投資、今月完成予定であるムトゥン製鉄所、農産物の生産増加は経済の好転・輸入への依存減少に寄与し、7月に新たに発見されたマヤヤ油田におけるガス生産も2026年には開始する予定であると述べた。加えて、バイオディーゼル工場の立ち上げやリチウム開発による産業の多様化および外貨の獲得を目指していると主張したうえで、ボリビアの戦略的パートナーおよび燃料不足問題を解決する救いとしてロシアにも言及した。
 なお、アルセ大統領は、債務返済を履行していると主張しているが、ブルームバーグは、ボリビア政府が金融危機を克服できなければ、政情不安、社会不安、治安の悪化に苦しむ同国をさらに不安定化させるだろうと警告している。
 

(4)サンタクルスの経済貢献

 国家統計局(INE)のデータを用いたボリビア対外貿易研究所(IBCE)の報告によると、昨年のサンタクルス県の国内総生産(GDP)は143億1,400万米ドルに達し、国内総生産(GDP)の31.5%を占めた。また、同県は農業分野でも主導的地位を確立しており、国内農業GDPの47%を占めている。さらに、東部農業畜産会議所(CAO)によると、サンタクルス県は国の食料の77%を供給している。
 

(5)金融システム監督庁(ASFI)による新たな海外送金手数料規制

 金融システム監督庁(ASFI)は、輸出企業から銀行へのドル流入を促進し、外貨へのアクセスの柔軟性を高めることを目的として、同部門による送金にかかる手数料規則を修正し、今年4月に設定された10%の制限を撤廃した。エコノミストは、これにより、輸出入業者は外貨へのアクセスが容易となる可能性が高く、多くのメリットをもたらすとの見解を示している。
 

(6)2023年の財政赤字

 ボリビア政府の発表によれば、2023年の財政赤字は341億4,700万Bs、国内総生産(GDP)比10.95%に達した。ボリビアは10年連続で財政赤字を記録しており、近年で最高の赤字は2020年に記録された(GDP比12.7%)、2021年と2022年にはそれぞれGDP比9.3%と7.1%に減少したが、2023年の赤字は、この10年間においてパンデミックの年に次いで2番目に高い数値となった。絶対値(341億4,700万Bs)で見ると、2023年の赤字は近年で最も高く、パンデミックの年(320億7,600万Bs)よりも高くなっている。
 

(7)ボリビアのインフォーマル市場

 国際労働機関(ILO)の2023年のラテンアメリカの見通しに関する報告書によると、ボリビアは引き続き非正規労働市場で1位を占めており、その割合は80.8%で、ラテンアメリカ地域平均の48%を大きく上回っている。
 

(8)ロシアとのリチウム生産にかかる契約締結

 9月11日、ボリビアリチウム公社 (YLB)は、ロシア企業ウラニウム・ワン・グループ(Uranium One Group)との間で、年間14,000トンのリチウム生産に向けた直接抽出・炭酸化プラントの建設契約を締結した。本契約により、今後9億7000万米ドルを投資してウユニ塩湖にプラントを建設し、「バッテリーグレード」の炭酸リチウムを生産する。また、YLBは、吸着法による直接リチウム抽出には、ロシアの技術を適用することで合意したとも発表している。本プラント事業は今後議会での承認後、30ヶ月間実行に移される。