2024年8月 ボリビア経済情勢

令和6年9月1日

1 経済指標など

      当月  前月(最終更新値)  累計  前年同月 (23年8月) 前年累計 
(1)   インフレ率  1.58% 0.47% 4.61% 0.39% 1.55%
(2)   都市部失業率  - 3.84%
(2024年4月)
- 3.77% -
(3)  外貨準備高  19億500万
(2024年8月)
- - -
(4)  対外債務  134億300万
(2024年5月)
- 134億8,500万 -
(5)  対内債務  199億7,300万
(2023年11月)
- 174億3,000万 -
(6)  天然ガス輸出額  1億3,800万
(2024年6月)
8億7,700万
(2024年1月~6月)
1億6,400万 14億1,100万
(7)  鉱物資源全体の輸出額  1億8,000万
(2024年6月)
- 2億4,800万 -
(8)  燃料輸入額  1億6,100万
(2024年6月)
12億2,900万
(2024年1月~6月)
1億4,700万 18億4,800万
(9)  貿易収支  1億5,500万
(2024年6月)
▲2億7,200万
(2024年1月~6月)
8,200万 5,600万
(10)  金輸出額  7,300万
(2024年6月)
4億2,600万
(2024年1月~6月)
1億9,400万 18億3,200万
             
    ※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計          
  ※前年累計:前年1月~前年の当月の累計

注:上記情報は2024年8月時点データ

 

2 経済関連動向等

(1)ボリビアの累積インフレ率(1~8月)

 ブルームバーグの発表によると、ボリビアの前年比インフレ率は5%を超え、中南米地域でワースト3位(アルゼンチン:236.7%、ベネズエラ:35.5%、ボリビア:4.61%)となっており、他国と比較しても急激にインフレ率が悪化している。
 

(2)2024年 第1四半期の経済成長(1.31%)

 国家統計局(INE)によると、国際的なシステム危機という状況下で、世界経済活動は減速し、インフレ問題の再燃や金融状況の引き締め、さらに気候変動の影響は各国の生産サイクルに悪影響を与えた。こうした状況にもかかわらず、また生産活動に対する外部からの公的融資も限られているにもかかわらず、2024年第1四半期のボリビア経済は前年同期比1.31%の成長を記録した。最も大きなプラス成長を記録したのは、電力、建設業、その他サービスであった。他方で、貿易、製造業、炭化水素部門はマイナス成長を記録した。
 

(3)政府及び経済界代表による17項目の合意

 政府及び経済界代表は、「経済と生産のための国民対話」と題し、8月14日及び16日の2日に亘り会合を行った。同会合には、政府から、アルセ大統領を筆頭に、経済財務相、開発企画相、炭化水素・エネルギー相、環境・水相、農村開発・土地相、生産開発相、ボリビア中央銀行総裁が、経済界から、ボリビア民間企業化連盟(CEPB)、全国工業会議所(CNI)、全国商業会議所(CNC)、サンタクルス商工サービス観光会議所(CAINCO)、東部農業畜産会議所(CAO)、ボリビア観光会議所(CBT)、小規模・零細企業全国連合(CONAMYPE)の各代表等39の民間企業・ビジネス団体代表者らが出席した。
両者が署名した合意は、(1)国会における対外借款法案の承認、(2)新規対外借款の交渉、(3)米ドル需要への配慮、(4)民間企業による燃料の直接輸入、(5)密輸及び汚職との闘い、(6)付加価値のある輸出強化と外貨流入、(7)投資及び輸出の促進、(8)輸出業者向け融資プログラム、(9)関税引き下げに向けた取り組み、(10)代替エネルギーへの投資、(11)炭化水素への投資法案、(12)バイオディーゼル生産促進、(13)輸入代替産業化、(14)バイオテクノロジー、(15)観光閣議の設置、(16)ボリビア産品の消費及び自国民雇用の創出推進、(17)常設会議の開催の17項目からなる。
 

(4)炭化水素補助金の廃止

 モリーナ炭化水素・エネルギー相は、炭化水素補助金が2008年の2億ドルから2023年には20億ドル近くに増加しており、燃料の一部(30%~40%)が密輸により価格の高い他国で販売されていることを認めたうえで、燃料補助金は国の構造的な問題だと指摘した。加えて、リマ法相によれば、この補助金は2024年には40億米ドルに達し、2023年の2倍になると明らかにしている。
 また、モンテネグロ経済財務相は、燃料補助金維持のコストは国内総生産(GDP)の3.5%に相当することを認め、補助金政策を廃止するかどうかの分析は、単純な技術的解決策ではなく、だからこそ国民が補助金維持の意味合いと廃止の利点を知ることが必要であると述べた。なお、アルセ大統領は補助金廃止に関する国民投票を実施するとしている。
 

(5)暗号通貨の利用

 暗号通貨の使用制限が撤廃される前(6月26日)、ボリビアではすでに1日あたり約400件のデジタル資産取引が登録されており、月間取引高は700万米ドルから1,000万米ドルとなっている。現在、ボリビアで最も広く使用されている3つの暗号通貨は、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、テザー(USDT)であり、その相場はパラレル市場における為替レートの基準となっている。金融エンジニアによると、主にサンタクルス県を中心に、 輸入資金調達の代替手段として利用が増加しているという。
 

(6)2024年上半期の貿易収支

 国家統計局(INE)の報告によると、同国の貿易収支は3ヶ月連続でプラスを記録した。しかし、6月時点で対外貿易収支は2億7,100万米ドルの赤字となっている。2024年上半期の輸出額は43億1,400万米ドルに達し、 前年同期比21%減となった 。大豆の輸出は、2023年同期比で上半期に70%減少した。油糧種子生産者は、干ばつその他の要因による今年の輸出可能黒字の減少により、このセクターは少なくとも6億ドルの損失を被るだろうと見積もっている。
 

(7)無関税輸入

ア 8月14日、ボリビア政府は、最高法令5195号および5197号にて、小麦、小麦粉、バイオディーゼル機械の輸入に関して、
  2024年12月31日までゼロ関税を適用する最高法令を公布した。最高法令5195号には、小麦種子の異なる品種、および小麦粉とライ麦粉の混合物も対象となる。
  国家税関のホセ・ルイス・モリネド(Jose Luis Mollinedo)地方部長は、国内市場における小麦とパンの供給を確保することが前提であり、
  これらの製品の密輸を防止するためであると強調した。他方、最高法令5197号は、ディーゼル油の輸入を徐々に代替することを目的としている。
イ 8月28日、ボリビア政府は医薬品の輸入関税を本年中までゼロとする最高命令を承認し、輸入業者の負担を軽減し、最終的には医薬品の
  価格上昇を緩和することを目的としている。医薬品の輸入関税がゼロになることで、国内産業は医薬品のほか、ビタミン剤、抗生物質などの製造に必要な有効成分も購入可能となる。
 

(8)対外貿易ワンストップ窓口の設置

 ボリビア政府は、8月28日付けで最高法令第5211号を承認し、対外貿易ワンストップ窓口(VUCE)の設置を決定した。本窓口は、対外貿易業務に必要な書類の管理・処理を一元化するプラットフォームであり、関連するボリビアの25の機関が同プラットフォーム上で運営され、輸出入の事前承認・証明書の発行などを行う。これにより輸出入手続きにかかる時間は従来の3ヶ月から5日に短縮されるという。VUCEは9月28日より運営を開始予定である。