2024年7月 ボリビア経済情勢
令和6年8月1日
1 経済指標など
当月 | 前月(最終更新値) | 累計 | 前年同月 (23年7月) | 前年累計 | ||
(1) | インフレ率 | 0.47% | 0.54% | 2.98% | 0.37% | 1.16% |
(2) | 都市部失業率 | - | 3.84% | - | 3.82% | - |
(3) | 外貨準備高 | ‐ | 17億9,600万 (2024年4月) |
- | - | - |
(4) | 対外債務 | ‐ | 134億300万 (2024年5月) |
- | 135億8,700万 | - |
(5) | 対内債務 | ‐ | 199億7,300万 (2023年10月) |
- | 173億5,700万 | - |
(6) | 天然ガス輸出額 | ‐ | 1億4,400万 (2024年5月) |
- | 1億7,600万 | 12億4,700万 |
(7) | 鉱物資源全体の輸出額 | ‐ | 2億8,300万 (2024年5月) |
- | 2億2,600万 | - |
(8) | 燃料輸入額 | ‐ | 2億2,600万 (2024年5月) |
10億6,700万 (2024年1月~5月) |
3億1,700万 | - |
(9) | 貿易収支 | ‐ | 1億5,500万 (2024年6月) |
▲2億7,200万 (2024年1月~6月) |
▲4,400万 | ▲2,700万 |
(10) | 金輸出額 | ‐ | 7,300万 (2024年6月) |
- | 1億9,400万 | - |
※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計 | ||||||
※前年累計:前年1月~前年の当月の累計 |
2 経済関連動向
(1)米ドル不足関連
ア 7月1日、英国「エコノミスト」誌は、「ボリビアでクーデタは失敗したが、国は未だ問題を抱えている」と題して、「(軍の)蜂起は、少なくとも何らかの形で深い政治的・経済的危機によって引き起こされた」と分析した。
イ 7月3日、ラパス市内の両替所においては、非公式の並行市場における米ドルレートが10.1ボリビアーノス(Bs)まで上昇し、公式固定レートである6.96Bsから
45%上昇した。これは、6月26日のクーデタ未遂が要因とみられている。
7月14日、並行市場における米ドルレートが10.25Bsに達した。
7月15日、並行市場における米ドルレートが10.35Bsに達し、48.7%の乖離となった。
7月31日、ラパス等主要都市においては並行市場における米ドルレートが12.5Bsに達し、80%以上の乖離となった。
ウ 米ドル不足の問題が解決していないため、企業家たちは、国が直面している危機の共同解決策を模索するため、政府との緊急対話を要求している。
エ 7月5日、MSC、Hapag Lloy、One(Mercator)の世界3大海運会社は、ボリビアとの取引は維持するものの、輸出入貨物の輸送費について、ボリビアにおいてでは
なく、チリ及びペルーの事務所においてのみ米ドルによる支払いを受けることを決定した。
ボリビア港湾サービス管理局(ASP-B)は、ボリビアと取引する海運会社が運賃を100%以上値上げしたことを確認した。
また、7月10日には、海運会社マースクがボリビアにおける輸出入サービスの代金の受け取りを停止すると発表した。
オ 7月25日、金融システム監督庁(ASFI)は、主に海外送金を目的とした米ドル売買の手数料徴収に投機的な波が押し寄せているとの指摘を受け、米ドル建てで行われる
業務については引き続き5%~10%を適用し、その他の外貨建てで行われる
業務については、手数料の上限を最大20%とすることを決定した。
ASFIによると、手数料の徴収に関する規制を遵守しなかった金融仲介業者数社に対し、全世界で2,130万Bsの制裁金が適用された。
カ 7月29日、ボリビア中央銀行(BCB)は、米ドル不足に対する新たな措置として、製品を輸出する国営企業は米ドル建て債務を負わないことを認めた。
当該措置により、国営企業の売り上げは、まずはBCBに米ドルにて納められ、各国営企業はBCBからボリビアーノスにて売上金を受け取ることになる。このため、
国営企業は輸出売り上げによる米ドル入手が直接できなくなることから、米ドルによる支払いの際に米ドル調達コストが増加する。
(2)燃料不足関連
ア 全国的燃料不足米ドル不足に起因する燃料不足も全国的に深刻で、ガス・スタンドには長蛇の車両の列が断続的に発生している。サンタクルス県においては、都市部の公共交通機関の
50%、貨物輸送でも同様の割合がディーゼル不足で麻痺している。また、農業生産者も燃料不足により食糧供給が危ぶまれていることを懸念している。
この状況を緩和するため、ボリビア石油公社(YPFB)は、7月末にも4,000万リットルの燃料をチリ・アリカ港から供給すると発表した。
イ ロシアからの燃料輸入
7月25日、YPFBは、チリ・アリカで燃料の荷揚げを待っている船が3隻あることを確認した。このうち1隻Zeynep号はロシアからのディーゼルを積んでおり、燃料不足を
解消するために33,000トンの燃料を荷揚げするため、好天に恵まれるのを待っている。
7月30日、ロシアから2隻目となる船Sino Faith号がチリ・アリカ港に到着した。
(3)カントリーリスクの上昇
6月26日のクーデタ未遂後、ボリビアのカントリーリスク(JPモルガンによる評価)は上昇し、6月27日には2,027ポイントに、6月30日には2,065ポイントに達し、アルゼンチンとエクアドルを上回った。
7月19日、カントリーリスクはさらに上昇を続け、中南米域内ではベネズエラに次ぐ2,100ポイントに達した。ボリビア全国エコノミスト協会会長は、カントリー
リスクは 海外からの直接投資や対外資金調達に影響すると考えている。
7月22日、カントリーリスクは2,117ポイントに達し、債権者や外国人投資家から経済運営に対する不確実性や不信感が高まっている。
(4)IMFのインフレ予測
7月8日、国際通貨基金(IMF)は、本2024年のボリビアのインフレ率を4.8%と、政府予測の3.6%を上回ると予測した。クシカンキ開発企画相は、6月までの累積インフレ率は2.49%で、国際情勢にもかかわらずボリビアが物価の安定を維持していることを反映しているとした。
(5)ボリビアのメルコスール加盟
7月8日、アルセ大統領は、パラグアイにて開催されたメルコスール首脳会合に出席し、ボリビアの加盟議定書を寄託するとともに、メルコスールとアンデス共同体の「統合の蝶番」としてのボリビアの役割に対するコミットメントを表明した。
(6)海外直接投資
7月10日、ボリビア中央銀行(BCB)は、ボリビアが本2024年第1四半期に受け入れた純海外直接投資は、主に製造業と鉱業部門であり、7,200万米ドルに達したと発表した。
(7)ラパス県における新たなガス田の発見
7月15日、アルセ大統領はラパス県北部に1.7TCFの天然ガス埋蔵量を有するガス田マヤヤ(Mayaya)セントロ-X1 IE(MYC-X1 IE)を発見したと発表した。同ガス田は、その生産年数期間に約68億米ドル生み出すことが期待されている。
(8)非正規雇用
7月18日、ボリビアは2023年に80.8%という、地域としても国際的にも最も高い非正規雇用の割合を記録した。なお、2022年は84.5%であった。(9)中国企業、コチャバンバ市に電気バス組立工場の設立へ
7月22日、レイェス・コチャバンバ市長は、コチャバンバ市に「中国製バスの工場または組立工場」を設立するため、電気バスメーカーと覚書を交わすために中国を訪問すると発表した。同市長によると、右電気バス工場にて組み立てられるバス車両はボリビアの他の都市や近隣諸国にも販売する予定である。
(10)ミレニオ財団による「ボリビア経済2024年報告書」
7月3日、ミレニオ財団は、経済危機の原因は輸出の減少と高額の財政支出にあると指摘するとともに、財政、金融、為替、金融の不均衡の悪化を警告した。なお、併せて、投資を呼び込み、大規模な「メルトダウン」を回避するために、開発モデルの変更とともに、外貨不足を解消するための資金を得るため、国際通貨基金
(IMF)との融資プログラムの交渉を提案している