2024年5月 ボリビア経済情勢
令和6年6月1日
1 経済指標など
当月 | 前月(最終更新値) | 累計 | 前年同月 (23年5月) | 前年累計 | ||
(1) | インフレ率 | 0.63% | 0.57% | 1.95% | 0.57% | 0.57% |
(2) | 都市部失業率 | ‐ | 3.84% | - | 4.04% | - |
(3) | 外貨準備高 | ‐ | 17億9,600万 | - | - | - |
(4) | 対外債務 | ‐ | 133億7,700万 (2024年3月) |
- | 133億2,700万 | - |
(5) | 対内債務 | ‐ | 199億7,300万 (2023年11月) |
- | 165億4,800万 | - |
(6) | 天然ガス輸出額 | ‐ | 1億4,100万 | 5億8,800万 (2024年1月~4月) |
1億5,700万 | 9億 |
(7) | 鉱物資源全体の輸出額 | ‐ | 2億3,600万 | - | 2億5,200万 | - |
(8) | 燃料輸入額 | ‐ | 2億3,300万 | 8億4,000万 (2024年1月~4月) |
2億4,000万 | 11億9,200万 |
(9) | 貿易収支 | ‐ | 400万 | ▲4億6,000万 (2024年1月~4月) |
500万 | ▲4,500万 |
(10) | 金輸出額 | ‐ | 9,300万 | 2億7,900万 (2024年1月~4月) |
1億9,400万 | 12億4,000万 |
※累計:本年1月~当月(最終更新月)の累計 | ||||||
※前年累計:前年1月~前年の当月の累計 |
2 経済関連動向等
(1)5月のインフレ率
5月のインフレ率は0.63%で、2024年1月から5月の累積インフレ率は1.95%と、今年に入って最もインフラが進んだ月となった。政府は、5月のインフレ率が2022年10月以来の高率になった要因として、(1)天候の影響、(2)輸入インフレ、(3)ボリビア製品の国外密輸の3つを挙げている。加えて、政府はインフレを抑えるために、密輸の規制、生産促進、公正な価格フェア、市場統制、補助金の措置を講じると発表するとともに、5月のインフレ上昇にもかかわらず、「ボリビアはこの地域で最も低いインフレ率を維持している」旨強調した。
(2)2024年第1四半期の貿易統計
ボリビア国家統計局(INE)の報告によると、2024年第1四半期(1月~3月)の累計貿易収支はマイナスとなり、4億3,800万米ドルに達した。同期の輸出額は19億2,100万米ドルに達し、前年同期より27%(7億2,400万米ドル)減少した。輸入額は23億5,900万米ドルに達し、前年同期より16%(4億3,800万米ドル)減少した。
主要国別貿易収支では、対中国、対米国、対アルゼンチンが大きな貿易赤字を記録した。一方で、アラブ首長国連邦、日本、韓国とは、金、亜鉛、銀など鉱物資源の輸出により黒字となった。輸出は全品目減少したが、特に天然ガス(23%減)および金(76%減)の減少が顕著であった。なお、貿易収支は7か月連続で赤字を記録している。
(3)リチウム開発の公募状況
ボリビアリチウム公社(YLB)のリチウム開発の国際公募に関し、フェーズ2に進んだ企業26社のうち、21社が審査を通過し、フェーズ3に進んだ。右21社には、アルゼンチン、香港、チリ、米国、オーストラリア、ボリビア、中国、アイルランド、フランス、英国、ロシア、スイスの企業が含まれている。
(4)米ドル不足への対策
5月24日、政府と民間実業家らは、米ドル不足への対応として中国とブラジルからの輸入にそれぞれ中国人民元及び伯レアルを使用することを発表した。モンテネグロ経済相によると、この通貨スワップ(通貨交換)締結に向け、中国とブラジルの中央銀行との交渉が既に進められている。なお、米ドル不足を考慮し、市中銀行は輸入業者にユーロを提供しているが、金融システム監督庁(ASFI)が課す上限10%よりも高い手数料を課している。一部のビジネスマンは、ウニオン銀行を通じた中国人民元での取引が機能していないと指摘している。
ちなみに、ASFIは、2月、海外送金・決済の手数料徴収の上限(10%)を定めていたが、市中銀行はこの規定を遵守することが難しく、顧客は国内の金融システム外で海外取引を行わざるを得なくなっている。
(5)米ドル不足による国内産業への影響
5月6日、国内産業界の代表がモンテネグロ経済財務相と面談し、原料や医薬品の供給が困難な製薬部門へのドル供給を要請した。米ドルでの海外決済を必要とするすべてのセクターにとって、為替レートのギャップと取引先を失うリスクにより、20%以上のコストが発生し、最終的には輸入製品の不足と最終消費者の価格上昇につながる可能性があるとしている。全国零細・小規模企業連合(Conamype)もまた、同生産部門の少なくとも50%が、投入資材の輸入に必要なドルが不足しているため、操業を停止していると報告した。
(6)対外債務
5月13日、ボリビア中央銀行(BCB)は、本年3月31日時点で、対外債務残高の対国内総生産(GDP)比が近年で最低水準を記録したと発表した。今年第1四半期の対外債務残高は133億7,700万米ドル、対GDP比率としては26.9%となり、BCBにとって、これはボリビアが債務余力を持ち続けていることを意味するほか、債務残高対GDP比の持続的な低下は、現政権による適切な経済政策の実施の結果であると強調している。他方で、この債務返済のための支出により、BCBへの外貨流入が米ドルの流出を下回っていることが外貨準備高減少の一因となっているものの、政府はより多くの対外融資の獲得を目指している状況のため、今後も対外債務残高は累積するとみられている。
(7)外貨準備高
5月2日、ボリビア中央銀行(BCB)は、4月30日現在の外貨準備高が17億9,600万米ドルに達し、2023年12月時点より8,800万米ドル増加したと報告した。内訳は、金94%(16億8,800万米ドル)であり、そのうちBCBが22.45トンを保有、さらにそのうち15.94トンが海外に預託され、3.73トンが精錬中、2.78トンが金庫に保管されているとしている。金以外の残りの1億800万ドルは米ドル、特別引出権(SDR)及びIMF準備金である。サンタクルス・エコノミスト会の分析によると、認証されていない金を計上しなければ、4月までの外貨準備高は13億800万米ドルである。(8)ボリビアの非正規雇用
国際労働機関(ILO)のデータによると、ボリビアは労働者の85%が非正規労働者であり、ラテンアメリカ・カリブ海諸国の平均(53.7%)を上回っている。ボリビア国家統計局(INE)が発表した2023年第4四半期の継続雇用調査によると、ボリビアの経済活動人口(EAP)は690万人、そのうち正規雇用者は105万3470人に過ぎないと推定されている。のロメロ(Fernando Romero)タリハ経済大学学長によれば、男女別では、女性の非正規雇用率が87%と最も高く、男性は83.1%である。(9)ボリビアの観光業
観光産業の発展度を測定する旅行・観光開発指数(Travel and Tourism Development Index)の新版が世界経済フォーラムより発表され、調査対象となった119カ国のうち、ボリビアは94位にランクインした。南米地域では、ブラジルが最も高く、次いでチリ、メキシコが続き、ボリビアは同地域最下位のベネズエラ(103位)に次ぐ結果となった。なお、持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)によれば、ボリビアはコロナ禍で観光客数が減少したものの、2022年には好転が見られ、同年の観光収入は5億3,000万米ドルに達しており、2024年もこの数字は改善するとみられている。