2022年7月 ボリビア経済情勢

令和4年8月1日

1 経済指標など

(1)インフレ率:0.39%となり、1月から7月平均は1.58%。
(2)都市部失業率:4.61%(前月4.28%)で、前年同月比マイナス28%。
(3)外貨準備高:43億100万米ドル(前月:45億500万米ドル)で、前年同月比マイナス9.3%。
(4)対外債務:126億6,400万米ドル(6月時点)で、更新情報無し。
(5)対内債務:145億1,200万米ドル(前月:144億4,700万米ドル)で、前年同月比プラス27.7%。
(6)天然ガス輸出額:3億1,900万米ドル(前月:2億5,500万米ドル)で、前年同月比プラス48%。
(7)鉱物資源全体の輸出額:2億3,500万米ドル(前月:2億8,700万米ドル)で、前年同月比プラス3.5%。
(8)燃料輸入額(ガソリン及びディーゼル):4億9,100万米ドル(前月:4億6,900万米ドル)で、前年同月比プラス158%。
(9)貿易収支:7月時点で13億3,400万米ドルの黒字(前月:12億8,600万米ドルの黒字、前年同月:10億6,400万米ドルの黒字)。
(10)金輸出額:1億9,400万米ドル(前月:2億7,000万米ドル)で、前年同月比マイナス12.6%。
 

2 経済関連報道等

(1)2022年の経済成長率予測(7月21日)

 ボリビア中央銀行(BCB)は、シンポジウム「金融ボラティリティと不確実性を背景とするグローバルリスク」を開催し、アルセ大統領、モンテネグロ経済財政大臣及びロハスBCB総裁が所感及び分析を披露した。  
 モンテネグロ経済財政大臣は、2022年のマクロ経済指標は、GDP成長率5.1%、インフレ率3.3%、公共投資50億1,500万ドル、財政赤字マイナス8.5%と見込んでいる旨述べた。

(2)ウクライナ危機による影響など(7月21日)

 当地フリードリヒ・エーベルト(FES)財団はセミナー「ウクライナ危機下におけるボリビア経済」を開催し、メディナセリ(Mauricio Medinaceli)経済学者、アヤラ・リノ(Margot Ayala Lino)経済アナリスト及びガブリエル・エスピノサ(Jose Gabriel Espinoza)元ボリビア中央銀行理事らがそれぞれの分析を述べた。三者は次の点について共通の見解を示した。
 (1)ウクライナ危機のボリビアに対する影響はそれほど甚大ではないものの、中~長期的に間接的な影響を認める。貿易収支は、短期的には黒字化を記録する見込み。
 (2)天然ガス価格の高騰は、貿易収支黒字化をもたらすと予測する。しかし、天然ガス分野は、投資の不足による開発の停滞という問題を抱えており、生産量が伸び悩む。ウクライナ危機の特需を十分に活かすことはできない。
 (3)長期的には、価格の高騰する小麦やディーゼルを国内に安定供給するために政府が価格を統制(補助金を支給)するので、政府支出が増大することとなる。結果的には外貨準備の減少や財政赤字の悪化が懸念される。

(3)年金ファンド国有化にかかるICSIDの判決(7月12日)

 7月12日、投資紛争解決国際センター(ICSID)は、ボリビアによる年金ファンド(AFP)の不当な国有化について、ボリビア政府に対してBBVA(Banco Bilbao Vizcaya Argentaria、西)に生じた損害にかかる1億500万米ドルの賠償金支払いを命じた。

(4)ボリビアの抱える賠償事案・係争中の案件等

 ボリビアは、国有化政策等に起因する国際裁定において、少なくとも12回敗訴しており、賠償総額は7億1,400万米ドル(支払済み)に達する。賠償先は、ペトロブラス社(伯)、レプソル社(西)をはじめ、イギリス、ベルギー、ドイツ、スウェーデン、フランス、インド等の民間企業であり、総数は約20社に上る。係争中の案件として、ボリビア政府は、ジンダル社(印)、British Petroleum社(英)、グレンコア・ファイナンス・バミューダ社(スイスなど)などとの間に4件の訴訟を抱えており、請求総額は11億1,800万米ドルに達する。

(5)外貨準備高の減少及び対外債務にかかる経済財政大臣らの見解(7月27日)

 ボリビアの外貨準備高は、本年1月1日から7月14日の間、47億5,200万米ドルから42億1,900万米ドルまで約11.2%減少した。
 しかしながら、モンテネグロ経済財政大臣はFrance24のインタビューに対し、「現時点で、我々の外貨準備の水準は、輸入額の4~5ヶ月分をカバーしている点をまず考慮すべきである。」旨述べた。なお、ロハス・ボリビア中央銀行総裁は「国際基準によれば、外貨準備は輸入額の3ヶ月分をカバーするものである。IMFは3~4ヶ月分をカバーするものであると定めている。」旨指摘した。
 また、モンテネグロ大臣は、対外債務に関し、「短期的には、我々は外部の借款(クレジット)にアクセス可能である。IDB、世界銀行、ドイツ復興金融公庫(KfW)、CAF、JICAといった国際金融機関については、外部資金を調達するための計画を実行し、借金をする余裕が残されている。」旨述べた。

(6)ボリビアの貿易収支及び輸出状況等にかかるアルセ大統領等の発言(7月27日)

 アルセ大統領は、自身のFacebookアカウントにて、「2022年5月時点で、製造業はボリビアの輸出の50%以上を占め、28億9,200万米ドルに達する。」旨投稿した。輸出戦略や政府が実施した産業支援策により、今年1月から5月までの貿易収支は10億8,200万米ドルの黒字となった。クシカンキ開発企画大臣によれば、今般の貿易黒字に貢献した部門としては、製造業が51%、鉱業が23%、農牧畜業が21%を占めている。同大臣は、主な輸出先としてインド、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、日本を挙げた。
 ちなみに、輸入は、原材料、中間財及び資本財が81%を占めている。

(7)ボリビアにおける水銀の使用状況等(7月27日)

 7月26日、Inter-institutional Working Group on Responsible Gold主催のセミナー「金採掘における水銀:現状と代替案」が開催された。 
 ボリビア北部の河川及び地域が汚染されているという報告に対し、オレリャーナ(Marco Orellana)「有害物質及び人権」にかかる国連特別報告者は、水銀使用削減に向けたボリビアの努力不足に対して懸念を表明した。同特別報告者は、ボリビアが水俣条約に準拠した「水銀根絶に向けた国家行動計画」の策定を遅らせていることに対して遺憾の意を表し、「今日に至るまで、ボリビア政府からは水俣条約が義務づける(水銀使用削減)措置にかかる情報を受け取っておらず、国家行動計画の内容もプロセスも不明であり、既に策定が遅れている。」旨述べた。