2022年4月 ボリビア経済情勢

令和4年5月1日

 1 経済指標など

(1)インフレ率は、マイナス0.02%となり、2022年1月から4月累計は0.41%となった。一方、品目別では、小麦(5.28%増)となり、ウクライナ情勢の影響による物価高騰が目立った。
(2)都市部失業率(前月5.27%)は、更新情報無し。
(3)外貨準備高は、46億米ドル(前月:45億9900万米ドル)で前年同月比マイナス0.5%となった。
(4)対外債務は、125億8900万米ドル(2021年7月時点)で、更新情報無し。
(5)対内債務は、141億5900万米ドル(前月:139億9800万米ドル)で前年同月比プラス33%となった。
(6)天然ガス輸出額は、2億2600万米ドル(前月:2億4000万米ドル)で前年同月比プラス24%となった。
(7)鉱物資源全体の輸出額は、2億7400万米ドル(前月:2億7100万米ドル)で前年同月比プラス23%となった。
(8)燃料輸入額(ガソリン及びディーゼル)は、2億9900万米ドル(前月:2億2800万米ドル)で前年同月比プラス115%となった。
(9)貿易収支は、4月時点で6億9800万米ドルの黒字(前月:4億9700万米ドルの黒字)となった(前年同月:4億5300万米ドルの黒字)。
(10)金輸出額は、1億8800万米ドル(前月:2億1900万米ドル)で前年同月比プラス8.6%となった。
 

2 経済関連報道等

(1)ボリビア・アルゼンチン首脳会談

 4月7日、アルゼンチンを公式訪問したアルセ大統領はフェルナンデス亜大統領と首脳会談を実施した他、両国担当大臣による天然ガス売買及びリチウム開発にかかる覚書の署名に立ち会った。
 同覚書には、(1)リチウム及び蒸発資源の科学技術交流促進、(2)リチウム技術及びリチウムに関わる経験の交流、(3)独立した技術と開発の促進を目的とする科学技術の推進、(4)リチウム及び蒸発資源にかかる調査、教育、社会科学、技術、科学的プロセスに関するプロジェクト及びプログラム開発への参画といった点が盛り込まれた。
 また、本年5月にボリビアリチウム公社(YLB)とY-TEC社(亜)間で技術会合を開催することで合意した。
 天然ガスに関しては、YPFBによるバカ・ムエルタ油田への投資及びエネルギー分野における協力関係の促進について合意するとともに、ボリビアの天然ガスが増産した際には、アルゼンチンに対して優先的に供給することで合意した。

(2)書籍「建設的資本」の出版

 4月5日、当地ミレニオ財団は、ボリビアにおける直接外国投資にかかる分析書籍「建設的資本(Capital Construcctivo)」を出版した。同書では、鉱業、エネルギー、通信、電力、農業及び手工業の各分野から、ボリビアにおいて良質な投資を実現した代表的企業について分析しており、鉱業分野からは住友商事が100%出資するミネラ・サン・クリストバル(MSC)社が選出された。

(3)公的債務

 4月18日、世界銀行は、ラテンアメリカ・カリブ経済にかかる定期報告「Consolidando la recuperacion: Aprovechando las oportunidades del crecimiento verde」を公表し、ボリビアの公的債務(中央政府、地方政府、国営企業、対外債務、対内債務を全て含む)がGDPの80%に迫っていると発表した。なお、同書はこの値が、ラテンアメリカ・カリブ地域の平均(69.8%)を上回っているが、最高値ではないと述べている。
 これに対し、経済財政省は、コミュニケを発出し、次の3点について強調した。
 (1)2022年2月時点で、公的債務総額はGDPの43.6%であり、国際機関の定める限界値を下回っている。
 (2)暫定政権時代の公的債務の大幅な増加には、民主的に選出された政府(当館注:現MAS党政権を意味する)が慎重な政策により対処している。2020年に記録した対内債務の爆発的な増加は安定し、債務は持続可能な方向へと戻りつつある。
 (3)現在、ボリビアは、政府による経済立て直しを通じて、経済面における結果を示し、国際的なイメージを改善すべく課題に取り組んでいる。

(4)ロシアによるボリビアからのリチウム調達

 4月19日、当地エル・デベール紙は、デミノフ(Valsdislav Demidov)産業貿易省冶金局副局長(露)によるロシアのリチウム調達状況にかかる発言について「リチウムを求めるロシアにとっての選択肢はボリビア」と題して報じた。報道によれば、同副局長は「ロシアは戦略的資源(リチウム)の調達をアルゼンチンとチリに依存しているが、ロシアのウクライナ侵攻により、両国はリチウムの供給を停止した。ボリビアがロシアに対するリチウムの供給を停止した場合、リチウムの調達先がなくなるため問題は深刻である。ロシアには、国内各所にリチウムの加工施設があるが、原料が輸入されなければ、リチウムイオンバッテリーの供給に支障を来し、大きな問題が生じるかもしれない。」旨述べた。

(5)水銀輸入及び使用状況

 当地研究機関CEDIBによれば、ボリビアは、金採掘における水銀の使用を規制しておらず、国内基準や国際条約にも違反している。また、世界第二位の水銀輸入国である。
水銀の用途は、金採掘であり、ボリビアの環境法では、「金採掘は水銀を回収する装置を用いる」ことを義務づけているが、90%は規制を遵守していない。CEDIBによれば、ボリビアは水俣条約に署名しているにもかかわらず、同条約を遵守するための法整備が不足している。

(6)炭酸リチウム及び塩化カリウム生産

 炭化水素省によれば、4月時点で炭酸リチウムの工業生産プラントは、76%が完成しており、ボリビア政府は、2022年末までに、15000トンの炭酸リチウム生産を見込んでいる。また、モリナ炭化水素大臣は、コチャバンバ県に国内供給向けの肥料用塩化カリウム生産工場を建設する旨発表した。

(7)リチウムにかかるバーチャルフォーラムの開催

 4月12日、ボリビア主導の下、バーチャルフォーラム「ラテンアメリカから見たリチウムの展望」が開催され、ボリビア、アルゼンチン、メキシコ、チリの四カ国とラテンアメリカ・カリブ経済委員会が参加した。同フォーラムにおいて四カ国は、リチウムに関する対話を、今年中に最高レベルの国際会議で議論することで合意した。

(8)リチウムトライアングル構想

 4月26日付けエル・デベール紙は、ボリビア、アルゼンチン、チリが「リチウムトライアングル」と呼ばれるリチウム産業化のための共同プロジェクトを目的とし、政治的な接近を開始していると報じた。同報道では、「世界のリチウムの58%がこの三国に集中しており、三国の政治的傾向も一致している。この共同性は、地球規模でのエネルギー転換と電気自動車の推進の未来を決定づけるカギとなるだろう。」旨報じられた。

(9)給与上昇率

 経済財政省は、2022年の給与上昇率に関し、ボリビア政府がボリビア労働総連(COB)と合意に至った旨発表した。同合意では、基本給3%上昇及び最低賃金4%上昇が約され、公共部門では医療部門と教育部門だけが対象となる。