ボリビア内政・外交(2022年11月)
令和5年1月19日
1 内政
(1)アルセ政権発足2周年にかかる大統領演説
11月8日、アルセ大統領は、国会2022年-2023年会期の開会式において、アルセ政権発足二周年に際しての演説を約2時間半に渡り行い、民主主義の回復、パンデミック封じ込め及び経済再建及び経済・社会・生産モデルの確立が課題であったとした。(2)国勢調査巡る騒擾
11月2日、クシカンキ開発企画相らは、サンタクルスにおける記者会見にて、サンタクルス側が対話に応じないことから、政府は11月4日から国勢調査実施時期を確定させるための技術会合を開催する旨発表した。11月3日クシカンキ開発企画相は「政府は、技術委員会を11月4日18:00からベニ県トリニダー市(ホセ・バリビアン自治大学)に招集・開会する。5日10:00から具体的な会合を開始する。」旨発表した。
11月8日深夜(9日03:00)、クシカンキ開発企画相は、記者会見において、「国勢調査をINEの計画から約1ヶ月前倒しし、2024年3月~4月に実施可能」との技術委員会の結論はアルセ大統領に報告される旨発表した。
11月11日深夜、アルセ大統領は「技術委員会の勧告を受け、国勢調査を2024年3月23日に実施する。また、その速報値を元に、当初提案した時期よりも1ヶ月早い2024年9月に予算配分を行う。」旨ビデオメッセージを発表した。
11月12日夜、政府は最高政令(DS)第4824号をもって、(1)国勢調査は2024年3月23日に実施する、(2)予算配分は同年9月に実施する、旨公布した。
11月16日夜、カルボ・サンタクルス市民委員会委員長は「市民ストライキに関連して逮捕された者4名が依然として釈放されておらず、国会における国勢調査実施日の法案審議が進捗していない。したがって、無期限市民ストライキは継続する。」旨発表する旨述べた。
11月17日、クシカンキ企画開発相は、上記発言を受けて記者会見を行い、「国家統計庁(INE)は、2024年9月に予算配分を可能とする、国勢調査の公式結果を発表できるように作業を進める。当該結果はTSEに対しても伝達される。」旨述べるとともに、「INEの発表は公式結果であり、右に基づいてTSEは新たな議席配分に関連する全ての作業を開始することができよう。」とした。
11月18日、メルカド下院議長、クシカンキ企画開発相及びハッセンテウフェルTSE長官らは、共同記者会見を行い、国勢調査の結果は2025年総選挙にかかる下院議席配分に然るべく反映されることを保証するとした。
23日夜、カマチョ・サンタクルス県知事及びクエジャルUAGRM学長は「我々の技術委員会によれば、既に国勢調査の2023年実施は不可能である。」旨述べ、予算配分及び2025年下院議員選挙のための議席分配が重要であり、国勢調査の2024年実施を容認する姿勢を示し、サンタクルス県選出の野党議員に対して国勢調査の2024年実施にかかる法律成立に賛成するよう指示したとした。
同日夜、コチャマニディス・サンタクルス市民委員会第二副委員長は、法律が公布されるまで市民ストライキは継続されるとした。
11月25日、下院本会議が招集され、憲法委員会から送付された法案の審議を開始した。11月26日04:00過ぎ、下院本会議出席議員119名のうち、賛成91、反対25及び棄権・無効3と3分の2以上の賛成多数にて可決された。メルカド下院議長は、下院が可決した法案を上院に送付するとして、「当該法案可決により、サンタクルスの市民ストライキが解除されることを期待する。」旨述べた。
11月26日、カルボ・サンタクルス市民委員会委員長は、市民ストライキの中断を発表した。
11月29日、上院は、MAS党内モラレス派議員の反対にもかかわらず、下院から送付された国勢調査法案を36名中21票の賛成多数にて可決した
(3)MAS党内の派閥争い
ア モラレス党首による「黒計画」の存在の告発及びアルセ政権閣僚等批判11月14日、モラレスMAS党首は、コチャバンバにおけるMAS新規党員登録に立ち会った際、国及び地方政府の権力者はMAS党員でなければならず、(アルセ政権の閣僚の一部のように)客人及び裏切り者はこれ以上受け入れない旨述べた。
11月27日、モラレスMAS党首は、チョケワンカ副大統領がMAS党一部指導者の忠誠心を金で買っていると非難して、チョケワンカと関係のある者数人は組合から追放され始めた旨述べるとともに、チョケワンカはそれらの者を利用して社会組織を分裂させ、批判されている閣僚(リマ、デル・カスティージョ及びモンターニョ)は政府を右翼化させているとした。
11月28日、フローレスMAS党下院議員団長は、キンタナ元内相がアルセ大統領の近親者に電話をかけ、2023年5月にもアルセ大統領の任期が終了する可能性がある旨警告したとして、右の証拠があるとするとともに、モラレス党首がアルセ大統領を常に攻撃していることを嘆いた。
イ 国勢調査を巡るやりとり及びMAS刷新派に対する批判
11月13日、モラレスMAS党首は「国勢調査の2024年への延期は、政治的決定があったことによる。」旨ツイートし、アルセ大統領かチョケワンカ副大統領か、誰が決定したのかは判らないとして、国勢調査は2025年選挙に近い時期に実施されることから、今後とも政治的に利用され続けるであろう旨述べた。
11月15日、チョケ下院議員(MAS党サンタクルス県選出議員団長)は、2025年選挙準備の前に最高選挙裁判所(TSE)が国勢調査結果を得られることを保証する法案を提出した。これに対し、アルセ下院議員(モラレス派)は、即座に右行動を批判した。
11月20日、キンタナ元内相(モラレス政権)は、MAS党内刷新派(bloque renovador)を「思考停止に陥った駒」であるとこき下ろした。
11月22日、モラレスMAS党首は「国勢調査にかかる法律を可決することは、右派勢力と妥協する刷新者と自称する裏切り者による行為である。」旨ツイートして、右派との妥協した民主主義(democracia pactada)の最初のケースとなると批判した。
11月24日、MAS全国指導部は、ガルシア副党首を始めとする指導部10名の署名を付した声明にて、「国勢調査にかかる法律は必要ない。」と繰り返した。
11月29日、上院において、MAS党内モラレス派議員の反対にもかかわらず、国勢調査法案が賛成多数にて可決されたことを受け、モラレス派はMAS党内刷新派及びアルセ大統領を批判した。
(4)アニェス前暫定大統領裁判関連
ア 「クーデタI」事案関連11月15日、クーデタI事案にかかる告発を行ったパティ元下院議員(MAS)の弁護士は、クーデタI事案に関連するカマチョ・サンタクルス県知事(当時サンタクルス市民委員会委員長)に対する事情聴取が遅延しているとして、担当検事を不作為で訴えた。
11月16日、ラパス県地方裁判所第10刑事法廷は、クーデタI事案に関連して執られているアニェス前暫定大統領、コインブラ元法務大臣及びグスマン元エネルギー大臣に対する予防拘禁措置をさらに3ヶ月間延長する旨決定した。アニェス前暫定大統領らは、2021年3月に予防拘禁措置が執られて以来20ヶ月が経過しているが、今次で5回目、2023年2月16日までの延長となった。
11月30日、ランチパ検事総長は、36日間のサンタクルス市民ストライキに関連して、カマチョ・サンタクルス県知事に対する召喚状の発出が遅延していたとして、「クーデタIにかかる捜査は終了しておらず、検察はカマチョ知事を含むクーデタI事案に関連する者に対する陳述日程を再スケジュールする。」旨述べた。
イ EBA事案関連
11月29日に予定されていたEBA事案にかかる裁判所による予防聴取(audiencia cautelar)は、アニェス弁護側から合憲請願(amparo constitucional)が提出されたことを受け、12月5日に右にかかる判断が言い渡されることとなった。併せ、ラパス県地方裁判所第三(反腐敗等)法廷は、アニェス側から提出されていた起訴無効要請を棄却し、1月6日に予防聴取が行われることとなった。
(5)上下両院執行部の選出
11月4日、ボリビア国会において、次期2022-2023年会期の上下両院新執行部等として、上院はロドリゲス上院議長が3期連続、下院は新たにメルカド新下院議長が選出された。2 外交
(1)モラレスMAS党首のRUNASUR会合出席
モラレスMAS党首が、11月5~6日にブエノスアイレスで開催された第四回RUNASUR会合に出席した。同会合において、モラレスMAS党首は、「この機構の共有するイデオロギーは、反資本主義、反家父長制、反新自由主義、反帝国主義である。」として、RUNASURは南米の意識と経験から、逆境に立ち向かうために、多様性と団結を築く多元性に基づく民族の統合を強化する新しい政治運動として設立され、我々の大きな願いは、寛容と連帯そして普遍的市民権を備えた、人民の、人民のための、多民族米州を造ることである旨述べた。
(2)中国との関係
ア 11月14日、Huang大使は、防衛駐在官と共にロペス新ボリビア軍将軍を表敬した。両者は、中国による協力や両国軍の関係について意見交換した。イ 11月17日、ママニ外務次官は、出身地であるポトシの学生・教員代表団の一員として中国大使を訪問し、二国間関係、中国共産党全国大会、中国留学について意見交換した。同日、Huang大使は、ボリビア共産党が主催するイベントにスピーカーとして参加し、全人代の結果を発表した。バーチャルでボリビア共産党党員全員が参加した。
ウ 11月18日、Huang大使は、ブランコ外務省貿易担当次官と会談し、一帯一路構想における両国の通商関係について意見交換した。
エ 11月22日、Huang大使は、メルカド新下院議長を表敬し、第20回中国共産党全国大会の報告書を贈呈した。
オ 11月25日、Qiu Wiaoqui中国中南米特別代表の表敬を受けたアルセ大統領やロドリゲス上院議長、外務省は、それぞれのSNSで、二国間における各分野での協力関係強化をアピールした。