ボリビア内政・外交(2022年10月)
令和4年11月1日
1 内政
(1)国勢調査の実施時期を巡るサンタクルス県無期限市民ストライキ突入
10月11日、政府(INE)が招集した国勢調査にかかる技術的検討会合がサンタクルス市にて開催され、クシカンキ開発企画相、地方自治体首長等が参加したが、カマチョ・サンタクルス県知事、UAGRAM学長等は欠席した。10月21日、サンタクルス市内において、MAS支持派が呼びかけた無期限市民ストライキに反対する「人民集会」が開催(一部報道によれば、約10万人が参集)され、政府の国勢調査にかかる計画を支持する旨主張した。
10月22日00:00、サンタクルス機関間国勢調査推進委員会が呼びかけた無期限市民ストライキがサンタクルス県内において開始された。
同日、中央政府(プラダ大統領府相、クシカンキ開発企画相ほか)及びサンタクルス機関間国勢調査推進委員会(カマチョ知事、カルボ市民委員会委員長ほか)が会合したが、政府が2023年実施案を拒絶したため、交渉は決裂した。サンタクルス機関間国勢調査推進委員会は市民ストライキの継続を宣言した。
10月23日、カマチョ知事は、既に政府との交渉はあり得ないとして、「2023年実施について譲歩はあり得ず、目的を達成するまで市民ストライキは継続する。」旨述べた。
10月28日、アルセ大統領が招集した「国勢調査にかかる多民族会合」がコチャバンバ市において開催された。政府側からは、アルセ大統領、プラダ大統領府相及びクシカンキ開発企画相等が参列し、全国の地方自治体首長を中心に種々の社会団体・組織等約300名が参列したが、カマチョ・サンタクルス県知事は26日に不参加を表明したとおり参加せず、サンタクルス機関間国勢調査推進委員会からはクエジャルUAGRM学長が参加した。最終的には、実施時期は2023年10月から2024年4月までの間で合意された。
同日、カルボ・サンタクルス市民委員会委員長は「政府の言は信用できないことから、市民ストは継続される。」旨述べた。また、カマチョ・サンタクルス県知事は「市民ストは継続する。」旨述べた。
10月29日、サンタクルス機関間国勢調査推進委員会は、(1)無期限市民ストライキの継続を確認、(2)政府に対して、最高政令第4760号の廃棄とともに、国勢調査を2023年10月に実施するための技術会合(INE、サンタクルス、ラパス及びタリハ県関係者から構成)をサンタクルス県に設置の要求、することで合意した。
10月31日、サンタクルス機関間国勢調査推進委員会のクエジャルUAGRM学長及びカルボ市民委員会委員長は、それぞれ、市民ストライキに伴う(MAS支持派との衝突による)暴力の発生を避けるべく、政府と条件なしの対話を行う用意があるとして、政府が対話を招集するよう要請する旨述べた。他方、カマチョ知事は、市民ストライキを継続する旨ツイートした。
(2)MAS党内の内紛
10月3日、モラレスMAS党首は、リマ法相を非難する旨ツイートした。同日、コチャバンバ県チャパレ地方におけるコカ葉栽培農民に関連する行事にチョケワンカ副大統領及びモラレスMAS党首が同席した。チョケワンカ副大統領は、MAS党を分裂させたい者が活用しているSNS上の嘘について自身の支持層に警告を発した。
10月4日、モラレスMAS党首は、幾人か閣僚が権力を奪取するためにMASに対するクーデタを企図しているとして、アルセ政権の一部閣僚を批判した。
10月7日、MAS党全国拡大会合がコチャバンバにおいて開催され、モラレス党首ほかが参加し、15項目に合意した。その中には、MASの指導者としてモラレスを支持、「黒計画」を実行している右派及び帝国主義者に対する批判、汚職にかかるリマ法相、デル・カスティージョ内相及びモンターニョ公共事業相等に対する批判及び解任要求及びモラレス批判者に対する党除名要求等が記載されている。
10月8日16時頃、同日午前にモラレスMAS党首がリマ法相を批判したことを受け、リマ法相は自身のツイッターにモラレスの言が事実と異なる等としてモラレスを批判する8つの項目を掲載した。ただし、その4時間後、同ツイートは削除された。
10月9日、MAS党は声明を発表し、リマ法相がついに本性を現したとし、同法相は隠すべくもないゴニスタ(サンチェス・デ・ロサダ大統領派)であり、米国がモラレスを暗殺しようとしていること、メサ大統領(2005年当時)が訪日したために炭化水素法に署名できなかった等とした。
10月13日、アルセ大統領とモラレスMAS党首及びコチャバンバ熱帯6コカ葉農民連合指導部との会合がコチャバンバにおいて実施された。
10月16日、モラレスMAS党首は、自身に対する「Pachajcho」と呼ばれる軍事作戦が計画されているとして、国防省及び軍が一体となり、モラレス及びMAS党指導層に対する諜報を行っている旨述べた。
10月20日、アルセ大統領、チョケワンカ副大統領及びモラレス党首を始めとするMAS党幹部らが参加した会合が実施され、国勢調査のための市民動員、アルセ政権支持及び社会組織・党の緊急事態の確認に焦点を当てたとする発表がなされた。フルゲラMAS党全国指導部政治部門書記は、デル・カスティージョ内相及びリマ法相についてはアルセ大統領の手に委ねられたとした。
(3)アニェス前暫定大統領裁判関連
10月13日、ボリビア食品公社(EBA)事案について、ラパス県地方裁判所第三(反腐敗等)法廷は、EBA理事の不正任命等の容疑について、アニェス前暫定大統領弁護側からの大統領時の事案であることから弾劾裁判に付すべきとの要請に対して、通常裁判に付すべきとの判断を下した。(4)世論調査(10月1日~2日調査による支持率)結果
・アルセ大統領:46%(51%(7月))・モラレス元大統領(MAS党首):26%(32%(7月))
(5)コパ・エルアルト市長のタイムズ誌2022年世界の新進リーダー100人選出
コパ(Eva Copa)エルアルト市長が、タイムズ誌が選ぶ2022年世界の新進リーダー100人にノミネートされた。35歳の市長は、2019年の社会危機の際の政治活動及び2021年地方選挙における市長当選が評価された。(6)米州人権委員会報告書
10月2日、2009年にサンタクルス市所在のラス・メリカスホテルでなされた処刑と拷問の責任をモラレス元大統領(当時大統領)に問う米州機構(OAS)米州人権委員会(IACHR)の報告書の流出について、モラレスMAS党首はリマ法相を非難した。その後、リマ法相は、IACHRが機密案件として扱っている事案の漏洩について、アルセ政権はIACHRに苦情を申し立てたことを発表するとともに、当該文書は手続きに即して政府によって分析され、回答を作成しているとした。7月に同文書を受領した検察庁は、法務省及び外務省に送って、分析を依頼していた。なお、後日、リマ法相は、モラレス元大統領に対する本事案による告訴の可能性を否定した。
2 外交
(1)米国との関係
10月7日、フィリップス(Charisse Phillips)米国臨時代理大使が2年余の在勤を終えて離任した。なお、10月6日夕刻から開催された当地米国大公邸におけるフィリップス臨代離任コクテルにはボリビア政府からは誰一人として参列しなかった。(2)イランとの関係
ア 10月10日、外務省は、イラン・イスラム共和国におけるフェミニスト行進に関する最近の発言により、ペレス駐イラン大使を本国に召還した旨発表した。イ 10月18日、イラン革命防衛隊のコッズ部隊やテロ組織ヒズボラとのつながりの疑いで捜査中のイラン人パイロットGholamreza Ghasemi Abbas氏(1958年11月22日テヘラン生まれ)が、ブエノアイレス発サンタクルス行きへのフライトに搭乗し、サンタクルスに到着した模様。なお、その後の足取りは不明。
(3)ロシアによるウクライナ侵攻関係
ア 10月7日、ボリビアは、国連人権理事会において採択に付された、ロシアの軍事侵攻にかかる独立専門家グループの設置決議に反対票を投じた。イ 10月12日、ボリビアは、国連緊急特別総会におけるロシアによるウクライナの4州の「違法な併合」を非難する国連決議に棄権した。なお、マイタ外相は、棄権したものの、「領土の併合と占領を含む」いかなる侵略の行使も拒否すると述べた。
ウ Diagnosis社の調査によると、ボリビア人の53%が、ロシアは(ウクライナによる)挑発行為なしにウクライナに侵攻し、人道に対する罪を犯したと考えている。一方、16%がロシアはNATOやアメリカから自衛していると回答した。
(4)キューバとの関係
El Deber紙は、ボリビア人医師がキューバに留学する際の奨学金契約の機密保持条項を入手した。文書によると、キューバへの奨学金支給は、モラレス政権が資金を提供したものである。つまり、キューバの協力体制は、ボリビアから経済資源を獲得するための仕組みであった。(5)ブラジルとの関係
ア 10月2日、アルセ大統領は自身のツイッターにて、伯大統領選挙第一回投票に勝利したルーラ候補に対する祝福メッセージを発信した。10月30日、アルセ大統領は自身のツイッターにて、伯大統領選挙決選投票にて当選が確定したルーラ候補に対する祝意のメッセージを発信した。
10月31日、アルセ大統領は自身のツイッターにて、ルーラ次期伯大統領と電話会談した旨発信した。
イ 10月26日、ボルソナロ伯大統領は、アニェス政権期のロペス元国防相が亡命者として自国におり、自分が統治する間はブラジルから出ることはないと述べた。また、アニェス前暫定大統領の亡命を認める意向を改めて表明した。
10月31日、ボリビア検察庁は、ブラジルにいるロペス元国防相及びカルデロン元警察庁長官の引き渡し手続きを開始した旨発表した。
(6)中国との関係
ア Huang Yazhong大使は、中国企業がボリビアで実施する複数のプロジェクトの総合安全性に関するオンライン形式の検査に参加し、エルアルトの水プロジェクトの監督に立ちあった。ボリビアにおける中国プロジェクトの様々なリスクや弱点を解決する活動の一環であり、第20回共産党大会の各行動プログラムに連動している。報告したのは、China Harbour, China Railway Construction International, China Construction International y CECの各社と、在ボリビア中国商工会議所である。イ 10月14日、モラレス元大統領らが中国共産党第20回全国代表大会に祝電を送ったことを中国大使館が発表した。
ウ 10月18日、Huang大使は、中国・ボリビア友好議員連盟(2021年10月に設立)のメンバーと会談し、中国共産党第20回全国代表大会、二国間協力、台湾問題が議題となった。
エ 10月23日、習近平氏が中国共産党中央委員会総書記に再選されたことについて、ボリビア共産党とモラレスMAS党党首から祝電が発せられた。