ボリビア内政・外交(2022年2月)

令和4年3月1日

1 内政

(1)アルセ大統領の多民族国の日における演説

1月22日、アルセ大統領は、多民族国の日(2006年1月22日のモラレスMAS党政権発足に端を発する)の記念式典において約40分間演説した。
冒頭:2005年選挙における兄弟エボ・モラレスの歴史的勝利による2006年1月22日のモラレス政権発足が、民主的・文化的革命による政権樹立であり、多民族国家建国の起点であったとし、ボリビア史における英雄譚に触れ、19世紀から続く闘いと革命の歴史について語った。
アニェス暫定政権批判:全ての進歩は、デ・ファクト政権の手によって消されかけた。彼らは、植民地的共和制国家とネオリベラル経済モデルを復活させようとし、一部の者へ向けた特権付与と収奪へと復古しようとした。デ・ファクト政権による一年間で、我々が築き上げてきたものが全て後退した。権利、経済、社会的進歩は後退し、経済成長率は低下した。貧困と飢餓は増大し、格差が拡大した。
アルセ政権の実績:民主的に選ばれた我々政府は、国民の参加を通じて、(2021年を通じ全県において)経済サミットを開催してきた。国民に希望を取り戻すために、政府が何をしてきたか、それを国民に知ってもらうことは非常に重要である。国際価格が良かったとか、(パンデミックからの)リバウンド効果があったとか、そういう問題ではない。政府は、ボリビア国民を理解したうえで、経済モデルを構築し、世界的な危機やコモディティの価格下落の中でも成果を上げてきた。(飢餓対策給付金、付加価値税の還付、年金の返還、産業部門支援のための基金設立、電子入札の実現等の成果について言及した上で、)生産部門における需要と供給を促進するための政策が、2020年の(デ・ファクト)政権から復興するプロセスにおいて大きく貢献した。我々は、経済的に安定した道に戻った。2021年の第三四半期には8.9%の成長を記録し、2020年に記録したマイナス12.6%という史上最低の落ち込みを覆した。わずか二年で、ボリビアはすでに経済成長と発展の道を歩んでいる。
団結の呼びかけ:貧困から脱却するためには、所得の再分配を伴った経済成長が重要であることは言うまでもない。しかし、そのような社会を実現するにはまだまだ大きな課題がある。かつてとある革命家が述べたように「富の分配を公平にするだけでは十分ではない」のである。私利私欲や個人主義を放棄し、母なる地球と調和した、人間の連帯と相互補完性を伴った社会を構築する必要がある。資本主義、植民地主義、帝国主義に対する勝利は、さらに多くの社会政策と動員、人々の参加、意識と信念によって得られるものである。個人の野心や内部対立が盛んになると、我々の闘いは成功しない。我々政府は、団結を重視している。政府と社会運動、先住民、農民、民間セクター、愛国心のある専門家、人々と政府が、変革のプロセスのために団結する必要がある。

(2)アニェス前暫定大統領に対する裁判等

2月8日、元国家元首・政府首脳から構成される米州・スペイン民主主義イニシアチブ(IDEA)は声明を発出(メサCC党党代表やキロガ元ボリビア大統領らを含む21名が署名。)し、司法の政治利用及び司法上の戦争(Guerra Juridica)に対する懸念を表明するとともに、アニェス前暫定大統領に対する裁判における自由の権利を尊重するよう求めるとともに、近くボリビアを訪問するとされるガルシア・サヤン裁判官・弁護士の独立にかかる国連特別報告者がアニェス事案を把握し、アニェスと面会することを要請した。
同日、アニェス前暫定大統領は、当該声明に対して、「私が被害者となっている、MASの扇動による司法的リンチに対して、民主主義の価値を守るために声明を発出したイベロアメリカの元大統領らに感謝申し上げる。」旨ツイートした
翌9日、アニェス前暫定大統領は、自身の娘であるカロリナ・リベラを通じ、「国民の皆さんへ、今日私は、ミラフローレスの独房から、人生で最も困難な決断を下した。今日、私はハンガーストライキを開始する。」旨発表した。
同日、アニェス弁護団は、手続き等に16項目の違法の疑いがあると指摘し、本裁判は違法であるとした。
結果として、ラパス県第一反汚職裁判所は、アニェス前暫定大統領に対する口頭弁論の2月10日開始命令を取り消し、口頭弁論開始のためには、日付を改めた上で、新たに命令を発出する必要があるとした。
 

(3)ICCによるモラレス元大統領にかかる人道に対する罪に関する捜査不開始の決定

2020年9月4日、ボリビア国家利益擁護庁(当時)は、2020年8月、モラレスMAS党党首(元大統領)、ロサMAS党員及びワラチ・ボリビア労働総同盟(COB)書記長が道路封鎖を先導したことから少なくとも40名が酸素の供給を受けることができずに死亡したとして、国際刑事裁判所(ICC)に対して、人道に対する罪の認定を求めて右事態を付託していた。
14日、ICCは、ボリビアが付託した事態(自己付託)に関して、予備的検討の結果、捜査を開始する基準を満たしていないとの結論に達した旨発表した。
 当該事案を担当したカーンICC検察官は、「自身の職責は、政治的コンテクストについて判断を下すことではなく、あくまでもローマ規程に基づき、捜査の基準に合致しているかどうかを判断することである。今回の決定は、ICCに対して、本件に関するさらなる情報の提供を拒むものではない。」と述べた。
15日、モラレス元大統領は、「大量殺戮(ジェノサイド)や人道に対する罪を裁く、世界で最も権威のある裁判所が、ボリビア国民の死について我々を罪に問おうとした右派クーデター首謀者の虚偽に基づく付託を拒否した。虚偽に対する真実の勝利である。これまでもそうであったように、自分は被害者である。最も貧しい者を擁護し、天然資源を国有化し、ボリビアの主権を守るためには、証拠もなく政治的に我々を抹殺しようとする者に立ち向かわなければならない。」旨ツイートした。
 翌16日、モラレス元大統領は、「2020年のアニェス政権による要求に対する勝利である。真実及び正直のみで、国民の投票を得ている我々が勝利した。人間であるので、間違うこともある。しかし、我々は決して裏切らない。政治とは、国民及び祖国に対する愛をもって対処することである。」旨ツイートした。
 

2 外交

ウクライナ情勢

24日、ボリビア外務省は、「ボリビアは平和及び安全保障の維持を呼びかける」と題するウクライナ情勢にかかるコミュニケを発表し、ボリビア多民族国は、ウクライナ情勢を引き続き憂慮し、対話及び相互理解の欠如が大規模な紛争につながったことを遺憾とするとした。
また、ボリビアは、和平を呼び掛け、双方に国際法と国連憲章に則り、外交的な政治解決を模索するよう要求するとともに、全ての紛争関係国に、安全保障にかかる正統性の課題に取り組むため、建設的な対話と信義誠実原則の下、平和的な解決に達するよう国際的なシステムにおける外交メカニズムを優先しつつ、抑止的な行動及び軍事力の使用の回避の約束を求めるとした。
さらに、ボリビアは、平和国家として、人々が平穏に暮らす権利を推進する。そのためには、国際法の尊重、人権及び国際人道法の枠組みの中で、生命の保護が優先されなければならないとした
 

3 コロナワクチン関係

 2月16日、ファイザー社製ワクチン1,310,400ドーズ到着。
 
 これにより、2月末までに受領したワクチンは、累計23,815,040ドーズとなった。