ボリビア内政・外交(2021年11月)

令和3年12月1日

1 内政

(1)教育大臣の辞任及び新大臣の就任

 11月12日、検察庁が職務規律違反を理由に、アドリアン・ケルカ教育大臣に対し訴えを提起したことを受け、辞任を発表した。
 右提起の発端は、バルデラマ教育副大臣による検察への調査依頼であり、「ケ」大臣が、タリファ前高等教育課長に対して、ワッツアップで執行部役員採用試験の問題を、特定の受験者に渡すよう指示していた、というものである。
11月19日、アルセ大統領は、ケルカ前教育大臣の辞任に伴い空席となっていた、同大臣職に、チャンビ氏を任命した。
 根っからのMAS派であるチャンビ氏は就任会見で、教育の質を改善するため、全国の教職員組合、保護者、学生組合等、あらゆる関係者と協力していく旨述べた。
 

(2)アルセ政権発足一年大統領演説

保健衛生:2020年のパンデミック対策は、多数の感染者と少ない検査数、そして多くの死者によって特徴づけられた。しかし2020年11月(アルセ政権発足)以降、無料の検査、無料のワクチン接種、そして中央政府レベルから保健衛生システムの強化の三つのアクションを起こした。民主的に選ばれた我々の政権が発足して以降、一回目接種から三回目接種まで、合計7900万ドーズのワクチンを調達した。
 経済:2025年までに、ジェンダー格差、経済格差、社会格差を減少させるために、生産的コミュニティ社会経済モデルを復古し、強化していくつもりである。2019年、右派政権がネオリベラリズムへ回帰し、国家の現実に即さない政策をとったことにより、ボリビア経済は深刻な影響を受けた。それにより、GDP成長率はマイナス8.8%となり、史上最悪の数値を記録した。しかし、2020年11月に民主主義を取り戻したことにより、適切なコロナ対策を取りつつ、経済回復のための策を投じることができた。2021年には、投じた策の成果が出始め、同年第二四半期のGDP成長率は9.4%を記録した。2020年に民主主義を取り戻してからは、輸出も活発化し、2014年以降では最高額となる15億7600万米ドルの黒字を達成した。失業率に関しては、民主主義を取り戻して以降は減少しており、2021年9月には都市部失業率が6.2%まで減少した(前年度は約8%)。2020年10月(アニェス政権時代)から2021年9月にかけては、66万人が復職を達成したとみられている。
 司法改革:司法改革による汚職対策は、公共機関が市民に寄与する上で、アルセ政権の柱となる。2022年は、全国司法サミット(Cumbre Nacional de Justicia)を開催予定であり、来年10月までに実施が予定されている司法改革について議論したい。
 麻薬対策:アニェス前暫定政権では、コカイン約15トン、マリファナ約457トンを押収し、842の麻薬工場を摘発、2463人を逮捕した。しかし、民主主義を取り戻してからは、2021年9月30日までに、8606件の麻薬対策オペレーションを実施(前年比プラス12.6%)し、コカイン16トン、マリファナ106トン、工場摘発921件、2612人の逮捕を達成した。
 外交関係:国民主権という点において、ボリビアは国際機関やラテンアメリカ地域におけるプレゼンスを取り戻した。デ・ファクト政権は、世界銀行やIMF、米国へ従属することにより、ボリビアの外交にもダメージを与えていた。アルセ政権は、ペルーの新政権発足を祝福し、メキシコとは開発協力、貿易、移民等にかかる合意を締結した。アルゼンチンとは相互補完性に基づく新たな関係を構築し、チリとも、二国間合意を締結した。
 

(3)「祖国のための行進」(Marcha por la Patria)

11月23日、オルロ県カラコージョにおいて、モラレス元大統領の他に、アルセ大統領、チョケワンカ副大統領、ママニ下院議長、ロドリゲス上院議長といった政府高官、MAS党支持者が集い、アルセ現政権への支持や民主主義の回復を訴えるための行進の開始が盛大に行われた。
モラレス元大統領は、行進は平和的に行うとしつつ、「ラパスに向かって、我々の力を示そうではないか。我々には、民主主義を堅持するという大きな責任がある。我が同胞であるアルセ大統領は、彼ら(右派)によって壊滅的なダメージを受けた経済を立て直そうとしているのである。この変革に反対する者は、つまり貧しい者を救うつもりがないのだ。右派にとって多民族国は好ましくなく、彼らが政権にいるとき、クーデターこそが民主主義なのだ。」と述べた。
25日、バステイロ亜大使(Ariel Basteiro)は、祖国のための行進に参加し、「エボ(モラレス)、ルチョ(アルセ)、ボリビアは一人ではない。声を上げよう(ganar la calle)。」と呼びかけ、モラレス元大統領が亜に逃亡中(2020年)に、ボリビアに民主主義を取り戻すための組織化活動を行っていたことを明らかにした。
 バステイロ大使の参加に対し、野党側は内政干渉だと批判し、相応の対応を検討中であるとした。
 

2 外交

(1)アルセ大統領のCOP26出席

グラスゴーで開幕中のCOP26に出席したアルセ大統領は演説の中で、「先進国は、新グリーン資本主義に道を開くため、新しいルールを押しつける、まさに新カーボン植民地主義(nuevo colonialismo del carbono)を世界的に推し進めている。」と述べた。
また、「先進国は、底なしの消費社会モデルから転換し、発展途上国に対する財政援助、技術移転を着実に行うことによって、即座に真の二酸化炭素削減を実現しなければならない。」とし、先進国に対して、約束を守り、結果を出すよう求めた。
さらに、「もし今の世代がこの気候変動問題を解決できなければ、次の世代にとって非常に重たく、解決不可能な事態に陥ってしまうであろう。」とした。
11月5日、ラ・プラタ川流域(Cuenca del Plata)政府間委員会委員長を務めているママニ外務次官は、ラ・プラタ川流域協定(Tratado de la Cuenca del Plata)参加5か国(ボリビア、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン)が直面してる気候に関する問題について説明を行った。
その中で、ママニ次官は、特に直近2年間で、流域国が水質体系の著しい悪化、水不足に直面しており、河川航行や食料生産に問題を生じさせ、経済的、エネルギー的損失をもたらしており、流域のバランスや人々の生活に影響を及ぼしているとして、警鐘を鳴らした。
最後に、同流域地協定参加国を代表して、持続可能な開発と貧困撲滅に向けて、パリ協定の包括的達成に取り組むことを表明した。
 

(2)ニカラグア大統領選

11月8日、ボリビア外務省は、11月7日の大統領選が、民主的に行われたことに対して、同胞であるニカラグア国民に祝意を表し、ニカラグア国民の主権が確保され、多くの人々の参加を得たことで、民主主義が強化されると確信している、とのプレスリリースを掲載した。
キロガ元大統領(Jorge Tuto Quiroga)は自身のツイッターで、「ニカラグアの見せかけだけの選挙結果に祝意を表している国々が、暴君の連帯を見せている。ボリビア国民は、オルテガ独裁政権から解放されるまで、ニカラグア国民と共にある。」と批判した。
 

(3)リヒテンシュタイン公国との外交関係樹立

11月17日、米ニューヨークにおいて、ディエゴ・パリー(Diego Pary Rodriguez)・ボリビア国連大使とベナベザー(Christian Wenaweser)・リヒテンシュタイン国連大使との間で、外交関係を樹立する共同声明に署名がなされた。
外交関係の樹立により、国連憲章に則った、2国間の相互理解、協力関係の強化が期待される。また、平和、国家間の平等、国家主権や内政不干渉等について確認した。
 

(4)米民主主義サミットからの除外

 米バイデン政権は、12月9日、及び10日、バーチャル形式で世界100か国以上を集めた民主主義サミットを開催するが、同政権は、民主主義サミットから、ボリビアを含め、キューバ、ベネズエラ、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ハイチの計8か国を除外した。他方、アルゼンチン、メキシコ、ペルーといった、アルセ政権と同盟関係にある国々は、招待された。
 

3 コロナワクチン関係

 10月23日、ファイザー社製ワクチン9万90ドーズ到着。
 これにより、11月末までに受領したワクチンは、累計15,311,860ドーズとなった。