ボリビア内政・外交(2021年10月)

令和3年11月1日

1 内政

(1)2019年騒擾を巡るアルセ大統領演説に対するEU報道官声明等

 9月23日、アルセ大統領は、ボリビアにおける憲法秩序の破壊には、国内勢力の関与があった。併せ、アルマグロ米州機構(OAS)事務総長を通じたOAS、アルゼンチン、EU代表及び国際的なNGOのような他国政府の関与もあったと述べた。
 これに対し、9月30日、EUは,アルセ大統領が2019年の政治危機に関連して「憲法秩序の崩壊」に参加したと主張した、ボリビアの元EU大使に対して行った非難を断固として拒絶する、とのEU報道官声明を発出した。同声明は、2019年11月、EUは、カトリック教会の指導の下、モラレス大統領の明示的な要請に応じて、MAS党の代表者を含む全ての政党の主要な関係者が参加する会合の促進を支援し、相互尊重に基づいて、全ての分野でボリビアとの強固で建設的な関係を築くために活動していると続けた。
 同日、ボリビア外務省は声明を出し、米州人権委員会の学際的独立研究グループ(GIEI)は、憲法上の秩序が破壊された2019年11月の政治危機の間に深刻な人権侵害が行われたと判断した、これらの事実は、管轄当局によって調査されている最中であり、右調査により、人権侵害に関与した可能性のある国内および国際的な関係者の責任の程度を特定することが可能になる、ボリビア政府は、相互尊重・補完性・連帯及び国家の内政不干渉に基づいて、強固な関係を構築することにかかるEUのビジョンを共有しているとした。
 

(2)大統領の無限再選に関する憲法裁判所の判決

 憲法裁判所(TCP)は、9月1日付け文書(003/2021-RQ)を以て、大統領の再選を無制限に可能とする2017年の判決084/2017を取り消すよう要請していた憲法弁護士及び学識者らの申し立てを、人権及び弁護士らによる手続の非適格性(判決の取り消しを要請できるのは、大統領、国会議員及び自治体の最高執行機関のみ)を理由に、改めて却下した。
 右により、2019年のモラレス大統領(当時)の4期目への立候補は改めて合憲とされた。なお、現行憲法上、再選は1度のみ可能とされている。
TCPに申し立てていた弁護士の一人は「我々は既に提起したとおり、説明及び修正を求めた。明らかに憲法裁判所はノーと言う。したがって、ボリビア国内における手段は使い尽くしたことから、今後は国外ルートに提起するかを検討する。」旨述べた。
 

(3)アニェス前暫定大統領の動向等

ラパス第10裁判所(刑事法廷)は、第一クーデターに関連する扇動、教唆、テロ行為の罪で問われているアニェス前暫定大統領の拘禁期間を、コインブラ前法相とグスマン・エネルギー相とともに、5か月間延長することを決定した。また、「ア」前暫定大統領が、極度の拒食症を患っており、ミラフローレス刑務所で精神的迫害を受けたことが明らかになった。
10月8日、マイタ外相は、米州人権委員会(CIDH)が、アニェス前暫定大統領と息女であるリベラ氏による、保護措置の誓願を退けたとして,「今回のCIDHによる正式な声明により、ボリビア政府は、アニェス前暫定大統領に対する予防拘禁措置について何ら不備はなかったし、同氏の生命が危険にさらされていることもなかったことが明らかになった。」と述べた。
CIDH事務局が、同委員会の基準に沿って、アニェス前暫定大統領とリベラ氏による誓願を調査した結果、ボリビア政府は、アニェス前暫定大統領が自傷行為を繰り返さないよう必要な措置を講じていると判断した。
 他方、CIDH事務局は、今後もモニタリングを継続するとし、権利が侵害されていると考えられる場合は、アニェス側は、再び保護措置を要請することが出来るとした。
10月14日、欧州議会は、アニェス前暫定大統領を、中南米における反政府派に対する抑圧、公正な司法手続及び、法の支配の脆弱性のシンボルとして、サハロフ賞最終候補者2名1団体のうちの1名としてノミネートした。他に、ロシア野党勢力の指導者であるアレクセイ・ナワリヌイ氏、女性の保護を訴えるアフガニスタンの女性社会団体がノミネート。
 

2 外交

(1)ルワンダとの外交関係樹立

9月22日、ボリビア及びルワンダは、相互理解を促進し、友好・協力関係を強化することを希望して、共同声明に署名し外交関係を樹立した。
その際、マイタ外相は、世界の人々、今回は内陸開発途上国であるルワンダとの経験の交換にかかる協力及び連帯の重要性を強調した。
 

(2)インドネシアとの二国間協議の設立に関する覚書署名

9月22日、マイタ外相及びインドネシア外相は、二国間協議の設立に関する覚書に署名した。
 この手段により、両国は、国民の利益のために、政治的・経済的・社会的・技術的その他の問題について二国間協議を実施し、意見を交換する
 

(3)マイタ外相の露訪問

10月22日、露を訪問中のマイタ外相は、ラブロフ露外相と会談し、両国の補完的な関係、連帯、国際協力を再確認した。両国及び、両国国民を結ぶ共通の利益、友好関係の枠組みの中で、2国間及び、多国間関係、地域横断的課題、貿易関係について意見交換した。
 コロナ関連においては、ボリビア国民の対コロナ免疫性を高めた露からのワクチンや医療物資の供与が強調された。
 また、エネルギー、保健衛生、調査、防衛といった分野での協力関係を確認し、文化、情報通信、教育分野における引き続きの協力関係強化で一致した。
 露ロスアトム社の協力の下進められている、原子力技術調査開発センター建設の進捗状況についても協議された。
 国際場裏については、世界貿易機関や国連での協力、麻薬及びサイバーセキュリティ分野での連携を確認した。
 

(4)マイタ外相の伊訪問

 10月26日、マイタ外相は、伊ローマで開催中の第10回伊ラテンアメリカ会合に出席し、「人、地球、繁栄」をテーマとした3つのパネルディスカッションのうち、「繁栄」に参加した。
同会合は、10月30日から31日にかけて同国で開催されるG20を見据えたものになっており、G20でも扱われる、人に焦点を当てた包摂的社会実現のための政策の推進、環境保護、持続可能な経済成長の促進といったテーマをラテンアメリカ・カリブ地域に当てはめる形で行われた。
 

3 コロナワクチン関係

 10月13日及び16日、スプートニクVが合計52万2500ドーズ到着。
 10月23日、ファイザー社製ワクチン100万350ドーズ到着。
 これにより、10月末までに受領したワクチンは、累計15,221,770ドーズとなった。